ワールドウィザーズ Record of War 作:Pi ZERO
第502統合戦闘航空団、通称ブレイブウィッチーズに配属されてから一夜が明けた。
俺に用意された機体はスーパーマリン・・・いや、こちらの世界では“ウルトラマリン”か──スピットファイアMk.Ⅸ。俺が元いた世界でドイツの侵攻により滅亡の危機に瀕した祖国を救った機体で思い入れも深い。ちなみに俺がこの世界へ来た直後にテスト飛行で使ったのはこいつの少し前に主力張ってたMk.Ⅴだ。
で、このMk.Ⅸ。どうやら戦地の気候等に合わせて調整されており、部品もいくつかが寒冷地対応仕様のものに付け替えられているらしい。確かにこんな寒い所じゃ通常状態だと性能をフルで発揮するのは難しいだろう。そう思えば乗り手としては実にありがたいサービスだった。
続いて武器だ。皆それぞれ機関銃やらロケットランチャーやらを使っており、その中でもMG42は多くのウィッチたちが使っているとのことだ。
MG42・・・俺のいた世界では『ヒトラーの電動ノコギリ』なんて呼ばれていたが、恐らくこの世界では『フリードリヒ皇帝の電動ノコギリ』とでも呼ばれているだろう、なんてことを伯爵(ヴァルトルート・クルピンスキーの愛称)に話してみたら、「いや?別にそんなことないけど? なに?それもジョークの一種?」ってバカにしてきたから、被っていた略帽をぶんどってあさっての方向へ投げ飛ばしてやったら上手い具合に風に煽られてなんかの塔の天辺に引っかかった。それを見た伯爵が、
「うわあぁぁ!? なんてことするんだバーリング!」
って泣きながら取りに行った。ざまあみろ。
──後から聞いた話だとその塔は雁淵がロスマンから課せられた特訓で使ったものらしい──
で、俺が使う銃はDP28。そこはブレンガンだろ、と言いたいかもしれんが、俺は銃に関しては機体ほどこだわりはないからどれでもいい(回された理由もストックが多くあるからってことらしい)。たとえ元の世界じゃ気に入らない共産主義者どもが使っていたものだとしてもな。そんなわけだからありがたく使わせてもらうぞ。
*
サーシャの講義が終わったら、今度は隊員全員でブリーフィングだ。
と、ここで誰かがいないことに周りが気づく。
そう、伯爵がいないのだ。
「バーリングさん、あの偽伯爵が何処にいるか知らない?」
「さあな。女の子をナンパでもしに街へ繰り出したんじゃないのか?」
「──ご生憎様、そんなのは嘘だってすぐバレるよ。バーリング」
振り向くとそこには何事もなかったかのように涼しい顔をした伯爵がいた。
・・・・・・いや、何事もないというのは間違いだ。何故かは知らんが尻をさすっている。尻餅でもついたのだろうか。
いや、それよりも。
「今の言葉はどういう意味だ。すぐそこに街があるんだからお前の
「・・・・・・
「なに・・・?じゃあ、あの街は・・・無人だというのか?」
「そういうこと」
「っ、」
参った・・・まさかそんな事情があったとは・・・。
「・・・すまない。何も知らないとは言え、今のは失言だった」
「気にするな。話していなかった私たちにも非はある。さて、これで全員揃ったな?揃ったところでブリーフィングを始めるぞ」
全員が揃ったところでやっとブリーフィングが始まる。進行は隊長であるラルとロスマン主導のもと行われた。現在ネウロイの勢力圏はどうなっているのか、敵はどう侵攻しているのか、どんなタイプが確認されているか、それに対するこちらの対策はあるのかどうか、と言った内容が語られた。一部の者たちにとっては既に何度か聞いた内容も含まれているらしく、まともに耳を傾けているのは俺と雁淵ぐらいだった。
それにしても聞けば聞くほどネウロイっていうのは謎だな。こいつらは一体何が目的で人類に戦争を吹っ掛けてきたのか。その目的は何なのか。
分かっているのは、人類に対してあからさまな敵意があることだけ。話し合いの余地は無し。“この世界”の戦争ってのは分かりやすいくらいシンプルだ。まるで子供が好きそうな勧善懲悪のヒーローごっこだな。
なんて思っていると、突然基地中に緊急警報のベルが鳴り響いた。
“奴ら”が来たんだ・・・・・・。
情報によると敵は大型1、小型多数とのこと。
今回の出撃メンバーのうち、当然俺が選ばれた。俺の腕試しが目的だろう。
メンバーには戦闘隊長のサーシャと、教官のロスマンがいる。下手な飛び方はできそうもない。
装置で固定されているスピットファイアに足を突っ込み、魔力を解放する。
「すごい魔力・・・・・・」
「ええ。これだと、
ロスマンとサーシャが何か言っていたような気がしたが、暖気するためにマーリンの回転を上げていたため、その音でかき消されて何を言っていたのかさっぱり聞こえなかった。
──よし、いい具合に温まってきた。銃の簡易メンテもOK。準備完了。
「バーリング、出撃する」
新しい仲間と、新しい翼とともに、オラーシャの寒空へと飛翔した。
編成は、サーシャ&クルピンスキー、管野&ニパ、ロスマン&雁淵、そして俺だ。
雁淵を連れてきたのは少しでも実戦経験を積ませるためらしい。試験監督と子守りを同時にこなすとは、教官も楽じゃないな。
しばらく飛んでいると、眼前には小さな黒い点が多数、大きな黒い物体が一つ確認できた。
“この世界”に来る前にも確認した、あの姿。
間違いなく、
「バーリングさん、私とひかりさんがサポートに回るわ」
「いいのか?」
「・・・あなたの場合、その方が手っ取り早く実力を確かめられるのよ。違うかしら?」
「ふっ、よく分かってるじゃないか」
教官から許しが出たんだ、遠慮なくやらせてもらおう。
「っ!」
DP28を構え、トリガーを引く。まずは手近な小型を一機。
「よっと」
10時と3時方向からのビームを躱し、反撃して二機撃破。
背後から三機迫ってきた。三機のうち二機はロスマンと雁淵が撃破し、残り一機は反転して撃破。
──それにしても雁淵の奴、無駄玉が多いな。小型一機落とすのに何十発使ったんだ?
一方、サーシャたちのほうは小型の群れを掻い潜って、大型を攻めていた。
どうやら、大型が小型を無限に排出しているらしい。つまり、母機を落とせば子機は消滅する。
それなら話は早い。俺も大物狩りに参加させてもらう。
──さて、この大型とやら、再生速度と堅さは小型の比でなく、装甲を削ってもすぐに元通りになってしまう。
まだ魔力がなかった“あの時”とは違い、マシにはなっているが落とせなければ意味がない。
で、こういうタイプの奴らは“コア”と呼ばれる、いわば人間でいう心臓にあたる部分が弱点らしく、そいつをあぶり出して破壊すれば撃破できるらしい。
ただ、そのコアを見つけるのに苦労するわけだ。
「コア・・・コアさえ見つけれれば・・・」
「ひかりさん。分かっているわね?“あの能力”は使ってはいけないこと」
「はい・・・」
「・・・?」
あの能力?なんの話だ?
なんて思考が別の方に向いた途端、デカブツの攻撃がこっちに来た。咄嗟にシールドを展開して防ぎきるが、火力の方も小型の比じゃなく、衝撃で体がよろめく。
「やってくれたな・・・!」
こっちも反撃して奴の体を削ってやる。
「ちっ、コアはどこだ・・・!」
悪態をつきながら引き金を引いていると、赤く光る五角形の立方体が姿を現した。あれがコアか。
「──ナイスアシストだよ、バーリング」
コアの発見に浮かれた隙を突かれ、伯爵が持つMP43が火を噴き、奴のコアを撃ち抜いた。
「・・・・・・これは、さっきの仕返しだよ」
そう言ってウィンクしながら悪戯っぽく微笑む。さっきのことまだ根に持ってたのか・・・。
何にせよ、俺の
「──小型3、アシスト1。まずまずのところね」
「それにしてもスゴイね。前にいた部隊でもトップエースだったとか?」
「まっ、どっかの誰かよりかは使えそうだな」
ロスマンとニパが賞賛し、管野は嫌味っぽく雁淵のほうへ視線を向けていた。その雁淵当人は悔しそうに唸っていた。
「確かに、よく飛べていたと思います。・・・・・・でも、
やれやれ、ここでも言われちまうのか。それもメカニックであるサーシャから言われるともなると言葉の重さが変わってくる。
「どうだったバーリング?この部隊での初めての実戦の感想、是非とも聞きたいな」
伯爵から言われて思わず考え込む。思ったことを言えばいいのだろうが・・・・・・・・・・・・そうだな。
「綺麗過ぎるな。“この世界”の空は。“俺のいた世界”なんかよりも、ずっと──」
「えっ?」
「っ、・・・・・・・・・いや、なんでもない。忘れてくれ」
いかん・・・・・・思わず口走ってしまった。
察してくれないことを祈りながら、他よりも巡航速度を上げて基地へと帰還した。
*
翌日。ブリーフィングルームに集まった俺たちは、チーム編成が変わったことを部隊のトップ3から告げられた。
どうやら俺が加わったことと、昨日の俺の実力を判断して決めたらしい。
そして、ロスマンから小隊の内容が発表された。
「──では、再編された小隊を発表します。隊長、サーシャ、私の三人。管野、ニパ、クルピンスキーの三人。下原、ジョゼの二人。そして、バーリングとひかりさんの二人。以上よ」
「コールサインのほうも後日決めて各人に付けますのでそのつもりでいてください」
「なんだ、再編って言っておきながら大して変わってないじゃないか」
「敢えて言うなら、新しく入った二人のチームが追加されたぐらいだよね」
「あ、あのっ、バーリングさん。よろしくお願いします!」
「ああ・・・・・・」
俺は、体良く子守を押し付けられたらしい───。