ワールドウィザーズ Record of War   作:Pi ZERO

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今回は改稿前には書かなかった新録です
また私が考案したオリキャラが形を変えて登場します


#05.Solo wing "PIXY"

 ふと基地の廊下を歩いていると先にある一室から話し声が聞こえてきた。掲げられてる札には“医務室”と書いてあり、話し声からして男と女のものであることが分かる。

 この基地で男といえば俺を除けば魔力を持たない単なる一般兵であり、女といえば彼女(ウィッチ)たちのことだ。

 前にガランドからウィッチと男性兵士の接触は限られてる云々の話を聞いたことがあるのを思い出した。この基地では俺を例に、そこまで厳しくはないのだろうか?

 とはいえ、あまり他人のプライベートに深く突っ込みたくもないので素通りしようと思ったが、声の主が我らが隊長さんのであることを知り、その場に留まってしまい、聞き耳を立てる。

 

『相も変わらず、傷は痛むのか?』

 

『そうだな・・・・・・お前が用意してくれたこのコルセットのおかげでいくらか痛みは抑えられているがな』

 

『なら・・・・・・“いつもの”だな』

 

『頼む』

 

 すると布や紐が擦れる音が聞こえてくる。もしや服を脱いでるのか?

 誰が?男のほうがか?そんなわけない。脱いでるのはラル隊長のほうだ。

 

『・・・・・・さあ、始めてくれ』

 

『ああ。始めるぞ』

 

 次に聞こえたのは魔力を発動した音。

 かなり強大なのか、扉からも魔力の光が溢れ出ていた。

 

『はっ、うっ・・・ぐっ、ああっ・・・!!』

 

『! グンドュラ!大丈夫か!?』

 

『だ、大丈夫だ・・・続けてくれ・・・』

 

『あまり辛いようなら言ってくれ。お前の体が一番大事だからな』

 

 その後もラル隊長が悶え苦しむ声が聞こえてくる。

 この扉の向こうで、一体なにが起きてるんだ?

 ・・・・・・まさかセック──

 

「って、うおぉっ!?」

 

 急に襟首を掴まれ、医務室の角に連れてこられ、壁に叩きつけられる。

 一体誰が・・・・・・

 

「やれやれ。盗み聞きなんて、きみも趣味の悪いことしてるね~」

 

「・・・なんだ伯爵かよ」

 

「なんだとはなにさ!ホントに酷い奴だなきみって人は!」

 

 お前だからだよ。と、口には出さず内心呟く程度に留める。

 

「それで?君は一体なにを想像していたんだい?」

 

「・・・・・・なにをって、なにをだよ」

 

「医務室で隊長がなにをしていたか、てことさ」

 

「それは・・・・・・」

 

「まさか、セックス。なんて言わないよね?」

 

「なんの惜しげもなく言うな。恥ずかしくはないのか」

 

「べっつに~。それで?どうなのさ」

 

「だからそれは・・・・・・」

 

 まずい。素直に「セックスだと思う」なんて言えるわけがない。

 特に伯爵(こいつ)が相手なら尚更だ。どんなことを周りに言いふらすか想像に難くない。

 伯爵に詰め寄られ、言い淀んでる中、だれかの視線を感じた。

 視線を向けた先には、先程から話題になっていた人物である、ラル隊長だった。

 

「「あっ・・・・・・」」

 

「お前たち。そこでなにをしている?」

 

「た、隊長。あの~これにはわけが・・・・・・」

 

「・・・・・・仲がいいのは結構だが、ほどほどにしておけよ」

 

 そう言って隊長は去っていった。

 

「おい。どうしてくれるんだ。お前のせいで勘違いされたぞ」

 

「ちょっと!僕一人のせいにするつもり!?」

 

「こんな状況を作ったのはお前だろう!」

 

「なにさ!バーリングのバカー!!」

 

 伯爵は自棄になって走り去っていった。

 言いたくはないが、あいつホントにめんどくさいな。いろんな意味で。

 

 

 *

 

 

 伯爵とラル隊長が去ったところで、俺は再び医務室の前に立っていた。

 この扉の向こうで先ほどなにがあったのか、その真相を確かめたい気持ちになったのだ。

 とりあえず俺の答えが外れてほしいことを祈りながら扉をノックした。

 

『どうぞ』

 

「失礼する」

 

 医務室の向こうには白衣を着た男が一人いた。恐らくこの部隊の軍医だろう。

 

「君は確か、この前グンドュ・・・・・・隊長が言っていた例のウィザードか?」

 

「アレクシス・フレッド・バーリングだ。よろしく頼む」

 

「どうも。俺はこの部隊の医師を務めるヘンリック・シェーンだ。よろしく頼む、バーリング」

 

 ドクター・ヘンリックと握手を交わす。そういやまだこの基地の奴ら全員と挨拶を終えていなかったことを思い出す。

 

「それで?今日はどうしたんだ?」

 

「ああいや、挨拶をしようと思ってな。別に怪我や病気があるわけじゃない」

 

「それはなにより。元気なことは医者としては嬉しい限りだからな」

 

 そりゃそうだ。軍人も医者も暇なことが一番だからな。

 とりあえず、話のネタにさっきのことを聞いてみるか。

 

「なあ、さっきラル隊長の声と魔法力の音が聞こえたんだが、ここでなにをしてたんだ?」

 

「・・・・・・ああ、聞こえていたのか。いやなに、別にやましいことをしてたわけじゃない。普通に治療をしていただけだ」

 

「治療?」

 

「・・・・・・隊長には過去の戦いで負った古傷があるんだ。これがまた重傷でな。今は魔法繊維のコルセットを付けて痛みを緩和させているが、月に何度か、定期的に俺の治療を受けさせているんだ」

 

 あの腰に巻いていたコルセットにはそんな意味があったのか・・・。

 ん?待てよ。

 

「それじゃあ、あの魔法力は・・・・・・」

 

「君の思ってるとおりだ。この通り、な」

 

 そう言ってドクター・ヘンリックは手のひらに魔法力を球状の光にして出して見せた。

 光から感じる暖かさに癒される気分になる。

 

「そう、俺は治癒魔法が使えるんだ。君と同じウィザードだ。そう、お前と同じ(・・・・・)、な」

 

「っ!!」

 

 その言葉につい体が反応して素早く距離をとる。

 

「おいおい。そんなに警戒しなくてもいいだろう?ここで殺し合いなんかして何の意味がある?」

 

 拳銃に手をかけた右手を見ながらドクターは言う。

 こいつも同じだ。

 俺と同じく、あの世界からやってきて、この世界でウィザードになった男だ。

 違いは陣営。俺が連合国なのに対して、目の前にいるこの男は枢軸国。つまりは敵同士だ。

 だがドクターはそんな過去があるにも関わらず、私情を挟まずにこの世界で自分がやるべきことをやっている。

 なら今は、信用してもいいだろう。

 

「・・・悪かった。どうもゲルマンアレルギーがひどくてな・・・」

 

「安心しろ。俺はオーストリア人だ」

 

「この世界で言うオストマルクか?まっ、どっちにせよそれを聞いて安心したよ。・・・・・・ところで一つ聞きたいんだが・・・」

 

「なんだ?」

 

「隊長や他の皆はあんたが異世界人だって知ってるのか?」

 

「知らないさ。なぜなら俺は転生してここへ来たからな」

 

「転生・・・・・・つまり前の世界で死んで、この世界で新たに生まれ変わったと?」

 

「そういうことだ」

 

 通りでな。俺と同じならば初対面であんな反応をするはずがない。ガランドも俺が異世界の人間であることは話していないようだしな。まあ、あいつらは知らない方がいいのだろうが。

 

「ドクター。最後に一ついいか?」

 

「なんだ?」

 

「あんたにとって隊長はどんな人なんだ?」

 

「・・・・・・この世界で一番大切な人だ」

 

 自分で言うのも難だが、無粋な質問に迷わず答えたドクターは俺よりできた“男”であることはよくわかった。

 

 

 *

 

 

 ドクターとの邂逅を終えた俺は格納庫へと足を運んでいた。

 そこでは昨日壊れた雁淵のストライカーユニットを修理しているのが見えた。

 雁淵は整備知識のあるサーシャとなぜかいるニパの二人の立ち会いのもと、整備にあたっていた。

 

「よお。機体のほうは直りそうか?」

 

「あっ、バーリングさん」

 

「ええ。なんとか修復は可能です。部品も今あるもので十分回るのが幸いでした」

 

「命があることに越したことはないが、機体は大事に扱わなきゃ、一人前のエースとは言えないぞ」

 

「その通りですが、バーリングさんも荒っぽい飛び方は控えてくださいね。壊すまでとはいかなくても、ユニットは悲鳴を上げてるんですからね」

 

 俺なりにいい事を言ったつもりなんだがサーシャに「その言葉そっくりそのまま返してやる」と言わんばかりに釘を刺された。まあその通りっちゃその通りなんだがな・・・・・・否定できん。

 

「ところでニパはなにをしてるんだ?」

 

「おまじないだよ。ひかりが強いウィッチになれるよう験担ぎしてるんだ」

 

 そう言うニパの手には赤い塗料に塗れた刷毛が握られていた。よく見るとこれから取り付けるであろう右主翼が赤く染められていた。

 そうこうしてるうちにその翼が付けられ、雁淵のユニットの修復が完了した。

 

「ふぅ、これで終わりました。ユニットは無事に治りましたよ」

 

「ついでに、ちょっとだけイメチェンしたね」

 

「わぁー!かっこいいなー!よかったね、チドリ」

 

 右翼が赤く染められたユニットを見て興奮する雁淵。

 それにしても、片方の羽が赤く染められた機体、というとあの伝説を思い出す。

 

 ──“とある戦場で右翼を失いながらも帰還し、それを誇るかのように右翼を赤く染めた”──とされる、あの伝説。

 

Solo wing Pixy(片羽の妖精)・・・か・・・」

 

「あれ?バーリング中尉も知ってるの?『片羽の妖精伝説』を」

 

「ああ。ちょっとな。・・・喜べ雁淵。その機体で飛ぶ以上、お前は死ぬことはなくなる。文字通り“不死身のエース”になれるぞ」

 

「ありがとうございます、バーリングさん! えへへ・・・不死身のエース、か・・・」

 

 雁淵は満足気に微笑んだ。

 ・・・・・・たとえ今は未熟な妖精も、いつか伝説の片羽の妖精になれるかどうか、俺が見極めてやろうじゃないか。

 

 なあ、相棒(バディ)

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