ワールドウィザーズ Record of War   作:Pi ZERO

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#06.Cold Battle

 朝。

 部隊のみんなと一緒に朝食をとる俺は今日も美味い飯に舌鼓をうつ。

 こんなにも美味い飯を毎回作ってくれるのは下原だ。一応この部隊にはちゃんとした炊事班がいるんだが、料理が好きな彼女は自ら進んで炊事を行っている。

 それにしても美味い。こんなにも美味い飯は今まで食べたことがない。

 俺たちスコットランド人はイングリッシュ共なんかと違ってちゃんとした郷土料理があるし当然美味いのだが、下原は隊員たちの出身国に合わせた郷土料理を作ってくれる。

 カールスラント(ドイツ)オラーシャ(ソ連)スオムス(フィンランド)扶桑(ジャパン)といった感じでメニューが豊富だから毎回違う料理を出してくれるので飽きが来ない。下原は将来きっと良いお嫁さんになるだろう。

 

「ひかりさんはなにか得意な料理とかあるの?」

 

「お姉ちゃんが作る海軍カレーが好きです!」

 

「んなことを聞いてんじゃねえんだよ!」

 

 雁淵の的外れな回答にツッこむ管野のやり取りで食堂が笑いに包まれる。俺も思わず吹き出してしまう。

 

「思ったんだけどさ、バーリングは料理とかできるの?」

 

「えっ?」

 

 伯爵の突然の質問に思わず言葉が詰まる。

 料理ができるかだって?・・・・・・できるように見えるか?

 そりゃあイングリッシュ共より良いもん食ってはいるが生憎と俺は食う専門だから料理を全くと言っていいほどしたことがない。したがって料理なんてできるわけがない。

 ・・・・・・いや待てよ。そういえばミドルスクール(中学)のときに調理実習をやったことがあったな。確かあの時は・・・・・・。

 

「それで?どうなの?」

 

「・・・・・・中学のときに調理実習をやったことがある。何を作ってたかは忘れたけどな」

 

「へえ。それでどうなったの?」

 

「・・・同じグループの奴らと悪乗りして料理をしていたら・・・・・・なんやかんやあって最終的に・・・」

 

「どうなったんですか?」

 

「・・・・・・調理室を爆破させた」

 

 直後、みんなが一斉に料理や紅茶を吹き出したり、持っていた食器を落としたりして絶句した。ちなみに嘘は言っていない。確かに調理室を爆破させたことがある。忘れるはずもない。こうして思い出せるくらいに今でも鮮明に覚えている。

 

「バーリング。今後お前は厨房に立つことを厳禁とする。これは命令だ。いいな」

 

 懸命な判断だ、隊長殿。

 正直俺もあんなこと(自業自得ではあるが)があってから料理なんてしたくないと思ってたからな。

 

 

 

 満腹になった腹を抱えながら部屋に戻ると、いつも通り(・・・・・)辺り一面キレイになっていた。俺が部屋を出る前はこんなんじゃなかったはずだが、毎回毎回一体誰が?この基地のベッドメイカーがやってくれたのだろうか。

 ふと、隣の部屋が騒がしくなって、何事かと見に行ってみると、そこには「痛って~!」と頭を抱えている管野と、雁淵とジョゼがいた。

 本が散らばっているのを見ると、どうやら管野と雁淵が追いかけっこして、その末に管野が雪崩こんできた本の角に頭をぶつけた、てところか。

 そんな管野をジョゼが治癒魔法で治してあげた。

 

「ジョゼさん、顔赤くなってますよ?」

 

「私、治癒魔法を使うと体が熱くなるの・・・じゃあ、私はこれで・・・」

 

 ジョゼは掃除用具一式を持って部屋を出た。なるほど、ジョゼが部屋の掃除をしてくれていたのか。

 

「おめーらいつまでいるんだよ。とっとと出てけ!」

 

 ジョゼが去っていった先をボーッと眺めてたら雁淵と一緒に管野にたたき出された。ここはあいつの部屋だったのか。普段の姿からくるイメージからして、意外にも本が好きなんだな。

 

 

 

 ブリーフィングを終え、与えられた任務に取り組む。今回の任務は偵察任務だが、範囲を拡大して、ラドガ湖北東、ペトロザボーツク周辺まで偵察飛行することとなった。

 本来の担当は下原・ジョゼの二人だったが、ロスマンの提案のもと、雁淵の遠乗りの訓練と称して同行することになった。当然俺も保護者・・・いや相棒(・・)として同伴することになった。

 それで、一緒に飛んでて思うのは、どうも雁淵と一緒にいる時のジョゼの様子がおかしい。まるで彼女を避けているような感じだった。

 そんな中、雁淵と下原は同じ扶桑人同士ということもあり、会話に華を咲かせていた。

 ・・・と思っていたら、下原に変化が現れた。

 

「502部隊でずっと活躍してるなんて、下原さんはすごいですね!」

 

「そんな・・・私ってあまり部隊の役に立ってませんから・・・」

 

「今朝の料理もみんな喜んでたじゃないですか!」

 

 雁淵が長所を褒めてくれたようだが、どうも本人は腑に落ちないようだった。

 

「料理なんて関係ないです。この部隊にいるからにはネウロイと戦って戦果を上げないと・・・」

 

「定ちゃんがダメなんてこと、ないよ!」

 

 悲観にくれる下原を声を上げて否定したのはさっきから黙っていたジョゼだった。直後に彼女はハッとして、任務に集中するよう俺たちに呼びかけた。

 ・・・それにしても、自らの力不足に悩む下原といい、雁淵を避けるジョゼといい、心配だな。このままなにもなければいいんだが・・・・・・。

 

 

 

 なーんて、俺の気持ちもお構いなしに、俺たちはネウロイに遭遇した。哨戒任務だってのに、楽に終わらせてくれないな。

 

「もしかして、このネウロイが街を凍らせたの!?」

 

 ジョゼの言うとおり、俺たちの下に見えるのは凍結した街だった。ネウロイもファンのような奇抜な形をしていた。

 

「こちらジョゼ、ネウロイ発見。502部隊、応答してください!・・・・・・だめ、基地と連絡がとれない!」

 

 ジョゼが基地に連絡を取るも向こうからの返事はない。どうやら以前と同様、音信不通の状態のようだ。

 

「定ちゃん、どうしよう」

 

「・・・戦いましょう。ここでネウロイを倒しておけば・・・!」

 

 下原は戦うほうを選んだか。どんな奴かも分からない以上は、一度様子を見て引き返すべきだと思うが、どうやら(やっこ)さんは俺たちを簡単に帰してくれる気はないようだ。なら、やるしかないよな。

 

「ピクシー、俺たちもやるぞ」

 

「はいっ!」

 

「いいか、相手がどんな奴か分からない以上は迂闊に近付くなよ」

 

「了解です!」

 

「定ちゃん!無茶しない方がいいよ!」

 

「私だって502のウィッチよ!一つでも多くのネウロイを倒すの!」

 

 先行した二人のフォローに回ろうとするが、突如ネウロイがファンの羽をこちらに向け、冷気を放出した。風は冷たく、体が凍りそうになる。

 

「嘘、銃が凍って使えない!」

 

「ユニットも凍ってる!」

 

 冷気を浴びたことで二人の装備が凍りつき、使用不能になってしまったようだ。

 機械を凍らせるほどともなれば、いよいよまずい。ここは隙を突いて、なんとか上手い具合に後退するしかない。

 

「ピクシー、俺が奴を引き付ける。お前はその隙に二人と一緒に先にこの空域から離脱しろ」

 

「でもっ!」

 

「俺のことなら心配はいらん。急げ、お前があの二人を守るんだ」

 

「は、はいっ!」

 

 雁淵が二人のほうへ駆け寄ったのを見届け、俺はネウロイに向き直る。

 

「お前の相手は俺だ!」

 

 MG42の弾丸を叩き込んでこちらに気を引き付ける。

 

「!! ちっ・・・!」

 

 左のユニットに冷気が掠め、出力がやや落ちるが、まだやれる。まともに浴びさえしなければどうってことはない。

 

「・・・このままじゃバーリングさんが危ない・・・・・・すいません、私いきます!」

 

「雁淵さん!?」

 

「私の銃は凍ってません。やってみます!」

 

「ダメ!雁淵さん、戻って!」

 

「!? ピクシー、何をしている!下原たちと一緒に先にいけと言ったはずだぞ!」

 

「バーリングさんを置いてはいけません!」

 

 するとネウロイが雁淵のほうへ向き、ファンを回転させた。

 

「ピクシー、逃げろ!」

 

 俺が声を上げるも時既に遅く、雁淵はファンから放たれた冷気をまともに浴びてしまう。

 

「か、体が・・・凍って・・・」

 

 体が凍り、ユニットは完全にパワーダウン。雁淵は重力に引かれて墜落した。

 

「ピクシー!」

 

「「雁淵さん!!」」

 

 落ちていく雁淵に気を取られた俺たちの隙を突いたネウロイは、今度は二人に冷風を浴びせた。

 

「エンジンが止まった!?」

 

「こっちも、出力低下!だめ、落ちる・・・!」

 

「「きゃあぁぁーーー!!」」

 

「下原!ジョゼ!」

 

 雁淵に次いで下原とジョゼも墜落した。

 

「くそっ!」

 

 もはや俺一人ではこいつ(ネウロイ)に対抗することはできない。

 落ちていった仲間たちを追って、地上へと急降下した。

 

 

 

「雁淵ー!下原ー!ジョゼー!何処にいるー!」

 

 吹雪の中、大声で三人を呼ぶ。辺りを見回していると、下原とジョゼを見つけた。

 

「二人とも大丈夫か?」

 

「はい、なんとか・・・」

 

「・・・雁淵さんは?」

 

「まだ見つかっていない。急いで探すぞ」

 

 ユニットを脱いで、二人と一緒に雁淵を探す。すると二人が先に見つけたようで、その先には逆さまになって地面に突き刺さっている雁淵の姿があった。

 

「「せーの・・・っ!」」

 

 二人が引っ張って雁淵を救出した。雁淵の顔色は悪く、肌も冷たい。これはかなりまずい状況だ。

 

「雁淵さん!しっかりして!」

 

「・・・ぅっ、ぅぅ・・・・・・寒、ぃ・・・」

 

「冷たい・・・凍傷になりかかってるわ」

 

「どうしよう・・・・・・私のせいよ!私がネウロイを倒すことにこだわったから!はじめから逃げていれば、こんなことには・・・」

 

 涙を浮かべ後悔する下原。直後、ジョゼが彼女の頬を(はた)いた。

 

「定ちゃん、自分を責めるのは後!今やるべきことは、雁淵さんを助けることだよ!」

 

「・・・そうね、ジョゼの言う通りよ。なんとしても、雁淵さんを助けましょう!」

 

「よし、なら早速行動開始だ。ジョゼは雁淵の治療を、下原は寒さを凌げそうな洞穴を作ってくれ」

 

「「了解っ!」」

 

「さて、俺は・・・」

 

 なにか出来そうなことはないかと模索していると、ネウロイの鳴き声が聞こえてきた。しかも、聞こえてきた方向からして、上空にいる奴ではなく、地上にいる別の個体のようだった。

 

「今のって・・・」

 

「そんな、こんな近くにネウロイが!?」

 

「・・・恐らく、集団から孤立して単独で動いてる奴かもしれないな。言うならばはぐれネウロイってとこか」

 

「はぐれネウロイ・・・ですか」

 

「・・・下原、ジョゼ。雁淵を頼む。俺は奴にここを特定される前に遠くへ引き離す」

 

「そんな、無茶です!」

 

「なんとか気配を消してやり過ごせば・・・」

 

「足音は確実に近づいてきている。身を隠そうにも間に合わない。ならばこっちから出向いてやるまでだ。とにかく、ここは任せたぞ」

 

「バーリング中尉!」

 

 雁淵を二人に託し、MG42を構えてはぐれネウロイのほうへと駆けていった。

 

 

 

 思ったとおり、陸戦特化の歩行ネウロイが一体、単独で動いていた。

 しかも移動している先は三人がいる方向だ。

 背後から奇襲して、はぐれネウロイの気を逸らす。

 

「そうだ・・・こっちに来な、一匹狼(ロンリーウルフ)

 

 三人がいる方とは真逆の方向へおびき寄せる。あえてストライカーユニットなしで挑んだのは、健在なユニットを残しておけば、いざって時に三人が逃げることができるようにするためだ。なにも言わなかったからそのことを察してくれるかどうかは別として、もっともそう簡単にくたばる気はないがな。

 

「とはいえ、ユニット抜きは流石に厳しいか・・・!」

 

 魔法力は主に身体能力強化に回し、シールドや武器の強化は魔法力増幅装置を備えたユニットを履くことで可能になる。

 そのためユニット抜きの状態では魔法力に限りがあるため均等に魔法力を分けることができず、どれか一つに集中させなければならない。無論、その差は個人の魔法力量によって大きく変化する。幸い俺は並みのウィッチよりも魔法力量が多いので、ユニットを履いてるときほどじゃないにせよ、なんとか上手い具合に魔法力をコントロールすることができた。

 

「もう少し、もう少し引き離さなければ・・・」

 

 再度MG42を構え、引き金を引くが、弾は発射されなかった。

 

「こんなタイミングでジャムか! ・・・ぐあっ!」

 

 銃に悪態を突いた際に隙が生まれ、ネウロイの攻撃を完全に防ぎきれず、体が吹っ飛ばされる。

 

「くそっ、こんなところで・・・」

 

 こちらに向けてビームをチャージするネウロイ。だが、突如上空から放たれた弾丸によってコアを貫かれ体が崩壊。俺を殺すことは叶わなかった。

 でも一体誰が?

 

「間一髪のようだったな」

 

 そう思っていると一人のウィッチ・・・いや、ウィザード(・・・・・)が俺の前に降り立った。

 顔立ちと着ている軍服からしてゲルマン野郎であることが分かった。

 

「・・・何者だ、てめえ」

 

「助けてもらったのに随分な態度じゃないか。ブリティッシュがジェントルマンっていうのはどうやら嘘だったみたいだな」

 

「人んちを荒らしに来た野郎にまで親切にする必要はないっていうのが俺のポリシーなんだよ」

 

 あの戦いで俺はゲルマン野郎、ひいてはドイツに対する怒りは強くなっていた。この世界に来て初めて会ったガランドやラル隊長、ロスマン、伯爵は俺の世界で言うドイツ人ではあるが、流石に彼女たちを恨むのはお門違いだ。

 だけど目の前にいるコイツは気に入らない。まるで俺と同じ(・・・・)ような感じがするのだ。

 

「まぁ、お前の考えている通りだ。見ての通り俺もウィザードだ。そしてお前と同じく、この世界の人間じゃない(・・・・・・・・・・)

 

「なにっ・・・!? ということは、お前も・・・!」

 

「そういうことだ」

 

 あろうことか俺と同じ境遇にある奴がもう一人いるとは思わなかった。しかもよりにもよって宿敵であるゲルマン野郎とは。

 

「しかしお前もツイてるな。俺が哨戒任務でここまで飛んでこなかったら、今頃お陀仏だったぞ」

 

「哨戒任務だと?どこの部隊の預かりだ」

 

「第503統合戦闘航空団、通称「タイフーンウィッチーズ」。今はそこで世話になっている」

 

 他にも統合戦闘航空団があるとは聞いてはいたが、まさかそのうちの一部隊の奴とはな。

 

「さて、長居はできないからな。俺はここでお暇させてもらう。仲間たちも今頃心配しているかもしれないぞ」

 

 そうだった。こいつのことが気がかりではあるが、今はそれよりも早く彼女たちのところへ戻らなければ。

 だがせめて・・・。

 

「待て。せめて名前くらいは教えてもらうぜ」

 

「・・・ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の、ミヒャエル・ヒルシュだ。覚えておけ」

 

「アレクシス・(フレッド)・バーリングだ」

 

「バーリングか。覚えておこう」

 

「俺を助けてくれたことにはあらためて礼を言う。だが今度会った時には・・・」

 

「それまでにお互い生きていればの話だがな」

 

 俺の言葉を遮ってミヒャエルは上昇し、去っていった。

 煮え切らない思いが胸の内を苦しめるが、今はそれよりも下原たちのもとへと急いで戻ることにした。




今回登場したミヒャエル・ヒルシュは503の情報が全解禁されたら書こうと思ってるウィザードの一人です。

503の情報全解禁……一体いつの話になるんでしょうかね(遠い目)
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