ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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発電所でのあれこれ

そして翌朝早くにボールを受け取るとそそくさとポケモンセンターを後にしていた。

 

「何で昨日に限ってあんな騒ぎを起こすかな……あれグリーンさんが見たら腹抱えて笑うんだろうなぁ」

 

「ツカサ! これ、使うといいよ」

 

「え、秘伝マシン……セレナ、これ貰ってもいいの?」

 

「水上を移動するのになみのりを使うでしょ? だけどツカサがカロスにやってきて一緒に旅をするなんて、よく考えれば凄い事よね。これは運命でしょ」

 

「俺の頭の中にさ、いつも聞こえる声があるんだ。聞こえるのはこうだよ。運命に逆らえってな! ……あ、嘘です、そんな目で見ないでくださいセレナ様」

ここぞとばかりに工藤を真似て運命を否定した途端、セレナが凄い目で見てきてガチでビビっている。

 

「ふぅ、全く……それじゃ、またね?」

 

「はーい……あー、怖かった。とりあえず先に進もう」

 

 

そのまま十二番道路であるフラージュ通りへと足を進めていた。

 

「おー、なみのりが出来そうな水辺があるなー……イワパレスのボールがない」

妙に軽いなと腰のホルダーに触れ、一つだけない事に気がつきサーッと顔色が青くなっていく。

 

「それはファイトバッジ……君、ちょっといいかな?」

 

「は、はい?」

 

「だ、大丈夫? 倒れそうなくらい真っ青だけど」

 

「へ、平気っす……あ、ちょっとごめんなさい」

スマホに着信があり、少し離れた場所で出ている。

 

 

「……あー、よかったぁ。うん、うん……わかった。次に会う時までよろしく。ちなみに好物は抹茶のポフレで、弱点だけどバトル以外では水遊びが好きだから……うん、じゃあまた」

通話を終え、顔色もよくなって戻ってきていた。

 

「心配事は大丈夫だったのかな?」

 

「はい、彼女が見つけて保護してくれてましたから。ホルダーの四番目がちょっと緩んでたみたいで」

 

「それならよかったよ。それで君にお願いしたいのはね、溺れかけた僕を助けてくれたラプラスの事なんだ」

 

「ラプラス?」

 

「そう。でも僕じゃ彼女に広い世界を見せてあげられない……ファイトバッジを持つ強いトレーナーさん。君がよければラプラスと一緒に旅をしてくれませんか?」

 

「これも何かの縁ですし、いいですよ」

 

「ありがとう! ラプラス、カロス地方という広い世界を泳ぐんだよ!」

 

「これからよろしく、ラプラス」

 

 

ラプラスの入ったボールを受け取り別れを告げ、少し行った所にある浜辺でラプラスをボールから出していた。

 

「改めてよろしくね。それとまず、なみのりを覚えてもらいたくて」

 

「きゅー」

 

「……癒し系だなぁ」

頭をツカサのお腹に優しく押し付けて甘えており、ニンフィアにライバルが現れていた。

 

 

ポフレを与えたりして仲良くなってからなみのりを覚えてもらい、カロスでは初の水上への一歩を踏み出している。

 

「すぐ対岸は見えるけどラプラスの背中は快適だなぁ」

 

「きゅー」

 

「いや、ちょっとラプラス? 何で着いたのに岸からまた離れ……え、嬉しいからまだ乗せておきたい?」

 

「きゅー!」

 

 

しばらく水上を楽しみようやく対岸におろしてもらえ、撫で撫でしてからボールに戻していた。

 

「逃れられぬ水上……メェール牧場?」

 

少し歩いた先には農場があり、無料で自由にメェークルに乗れるという看板が入り口に置いてある。

 

誰もおらず勝手に乗っていいものかと悩みながら寝ているメェークルを優しく撫でていると、後ろから足の間に違うメェークルが勢いよく頭を入れてきて自然と跨がる形になっていた。

 

 

「走り始めはサイホーンより速いけど、トップスピードはサイホーンのが速いな」

 

「くくー!」

 

「よしよし、風のように駆けろ!」

 

………

……

 

あれから散々楽しんでから浜辺に戻り、持ってきていたシートを敷き寝転がっている。

 

「〜♪」

 

「フィア〜♪」

 

「きゅ〜♪」

 

「〜♪」

 

「フィアフィア〜♪」

 

「きゅきゅ〜♪」

 

ニンフィアとラプラスはご機嫌でツカサに寄り添いながら鼻唄に合わせて何かを歌い、ゲッコウガとルカリオは波打ち際で立ち会って手合わせをし、リザードンとファイアローは空中戦を繰り広げていた。

 

 

それから少し皆で昼寝をしてから次の町へと向かい始め、自転車で風を切りながら進んでいく。

 

「次はヒヨクシティ、高級リゾートだったかな……やっぱ自転車だと速いわ。もう着いちゃったし、旅を楽しむなら徒歩のがいいかもしれないな」

 

入ってすぐにホロメールを受信したので確認している。

 

『ツカサ、ポケモンジムの前で勝負を挑むわ。準備しておいてよね』

 

「イワパレスについては……」

 

『あ、そうそう。イワパレスなんだけどしばらく借りたいの。私のポケモン達を指導してくれて、教官役になってもらっているから。それじゃあね!』

 

「イワパレスは先生としてやってるんだな……しょうがない、切り替えていこう」

 

 

いいつりざおを貰ったり、技マシンクイズに答えたり、しあわせたまごを貰ったりしながらシーサイドステーションに向かっていく。

 

「モノレールにもの……あ、プラターヌ博士と多分カルネさん」

くだらないダジャレを言おうとしながら中に入ると、プラターヌと変装をしたカルネが居て思わず声に出していた。

 

「やー、ツカサ! コングラッチュレーション!! ついにメガシンカに必要な物を手に入れたね! ポケモンにメガストーン、トレーナーにメガリング、そして絆というわけだね」

 

「絆?」

 

「あ、カルネさんもお久しぶりです」

 

「僕の推測ですが絆がポケモンの持つ新たな進化のカギを握っているのです。ですが絆とはなんなのか? 何故カロスでのみメガシンカの実例があるのか? わからない事ばかりです……」

 

「例えば……ですがカロスの伝説のポケモンは? 他の地方になくてカロスだけに存在する……という意味でですけど」

 

「ああ! ああ!! なるほどです!! 調査する事が増えてワクワクが止まらないねー!」

 

「俺だけ蚊帳の外感が半端ない」

 

「そうだった! コレを渡す為に来たんだったよ」

 

「秘伝マシン2……そらをとぶ、ですね」

 

「うん、そうだよ! 今まで訪れた事のあるポケモンセンターへひとっとびさ! ではツカサにカルネさん、また会いましょう!」

 

「はーい」

去っていくプラターヌの背を見送っていると隣に誰かが立つ気配がし、見ると変装したカルネがこちらを見ていた。

 

「あたしがお芝居をする時って演じるキャラクターと自分との間に絆を探してるのかも。違う部分ばかり探すとキャラがイヤになっちゃうけれど、同じ部分を数えていけば理解できるかもしれないでしょ。……なんてね! ツカサ、今度会う時はポケモン勝負しましょうね」

 

「はい、それではまた」

カルネを見送りモノレールのステーション内を彷徨いている。

 

 

「うふふ。女優のカルネさん、モノレールにものれーる。うふふ」

 

「俺と同じ仲間がいた」

 

 

そんな奇跡の出会いに感動しながらモノレールに乗り、ファイアローにそらをとぶを覚えさせながら到着するのを待っている。

 

「『ヒヨクシティ 海辺と高台が連なる街』……随分高いとこまで来たなぁ」

高台から海辺の方を見下ろしながら呟いていた。

 

 

「さてと……ハッ、殺気!」

 

「遅れてゴメンね。メガシンカが見たくなったの。もちろんメガシンカを使うかはアナタの自由だけど。ポケモンの可能性……その一端に触れてみたいの」

 

 

「わかった。それじゃあいざ、尋常に……」

 

「勝負!」

 

 

距離を取って投げられた二つのボールからファイアローとニャオニクスが現れた。

 

「ファイアロー、アクロバット!」

 

「ニャオニクス、ねこだましよ!」

 

仕掛けようとしたファイアローにニャオニクスのねこだましが決まり、それに驚き体勢を崩して地面に落ちてダメージを受けいる。

 

 

「毎回それにやられるんだよなぁ……何か持ってたら厄介だ。ファイアロー、どろぼうだ!」

 

「チャームボイスでファイアローを魅了しちゃいなさい!」

 

 

空を飛び回り撹乱しながら突撃して持ち物を奪い取ろうとするも何もなく、その時の爪によるダメージでニャオニクスは苦しそうな表情を浮かべている。

 

そしてお返しとばかりにチャームボイスを繰り出すも、騒がしいパーティーメンバーとトレーナーで慣れているからか平然としていた。

 

 

「後一息だ、アクロバットで派手に決めてやれ!」

 

「くっ、ニャオニクス避けて!」

 

特訓の成果だと言わんばかりに空を舞うように飛び、それに翻弄されているニャオニクスをすれ違い様に掴み空に放り投げている。

 

ニャオニクスが追撃を恐れ見回すがファイアローの姿が見当たらず、気がついた時には真上から突撃して来て地面に叩きつけられていた。

 

 

「やだかっこいい……」

 

「しかも自分だけはギリギリで空に戻ってるなんて。アブソル、お願い!」

 

「ファイアロー、お疲れ様。行こうぜ、相棒!」

 

ニャオニクスをボールに戻しアブソルを繰り出したセレナを見て、ここだなとファイアローを戻してルカリオを出している。

 

 

「そのルカリオ……」

 

「俺達の絆が更なる力を呼び起こすんだ。メガシンカ!」

 

ツカサがメガバングルのキーストーンに触れると、赤いバンダナに付いているルカリオナイトが呼応して激しい光を放った。

 

 

「やるぞ、メガルカリオ!」

 

「クァンッ!!」

 

ルカリオが包まれていた光を振り払うと姿が変わり、やる気も十分でかなりの迫力を出している。

 

 

「メガルカリオ、グロウパンチ!」

 

「あれがメガシンカ……アブソル、でんこうせっか!」

 

アブソルは素早い動きでメガルカリオに攻撃を叩き込んだが、そのまま左手で掴まれて右ストレートを叩き込まれ一撃で意識を刈り取られていた。

 

 

「流石にメガシンカ相手は重かったわね……お願い、ハリボーグ!」

 

「お疲れ、ルカリオ。リザードン、お前の出番だ!」

 

ハリボーグが出るのを見てルカリオを戻し、相性がいいリザードンを対面させている。

 

前回のバトルでハリボーグはトラウマが出来たらしく、リザードンの姿を見てビクッ!と後退っていた。

 

 

「リザードン、つばめがえし!」

 

「あっ、しまっ……ハリボーグ!」

 

空から強襲して再び尻尾による一撃を与えようとしたが避けられ、ホッとしている所を鋭い拳で打ち上げている。

 

 

「……」

 

「あなたのポケモンってみんな凄い動きをするわよね」

 

そして落ちてきた所を尻尾でスイングして吹き飛ばしてダウンさせていた。

 

 

「ニンフィアが仲間になってからみんなおかしいくらい強くなってるなぁ」

 

「ポケモントレーナーとしてもアナタが凄く気になる……」

 

「うん?」

 

「アサメタウンから旅立って道のりは同じなのに、強さは同じではないのね。何が違うのかしら……? それじゃジムの挑戦、ベストを尽くしてね」

 

「うん、がんばるよ。俺のイワパレスの事もよろしくね」

強さの違いは新米トレーナーとバッジ40個所持のベテランの差でもある。

 

 

ジムに挑む前にフレンドリィショップに寄り、まひなおし、どくけし、なんでもなおしを20個購入していた。

 

「持ってない時使いたくなる、まひなおしとどくけし。いつも戦うトレーナーの味方、フレンドリィショップはお薬屋さんも兼ねてるな」

 

 

そして高台をくり貫かれたように作られたジムに入ると、中には巨木を中心にロープで上ったりぶら下がって渡るアスレチックのような仕掛けが至る所にあった。

 

「つ、着いた」

一番上にはデスクと本棚があり、椅子に座って何かを書いている人がいる。

 

「おう! 来なすったか。私がジムリーダーのフクジ。……で、どうだったかな。まっすぐ伸びた草木を集め作った草のアスレチックは」

大きな鋏を手に庭師のようなお爺ちゃんが椅子から立ち上がり、ニコニコしながら尋ねてきた。

 

「童心に還るっていうか、楽しかったですよ」

 

「君が感じた気持ちが私のジムリーダーとしての強さ何だが試すかい?」

 

「それはもちろん」

 

 

「さぁ、ワタッコ行ってきなさい」

 

「ファイアロー、出番だ!」

 

距離を取った二人からボールが投げられると、ワタッコとファイアローが同時にフィールドに現れていた。

 

 

「ファイアロー!」

 

「キュイイッ!!」

 

「ほう……」

 

名前を呼ばれ目を合わせただけでワタッコに突っ込み、そのままアクロバットの一撃でダウンさせている。

 

 

「ん……?」

 

「ゴーゴート、行ってきなさい」

 

ワタッコを回収してゴーゴートを出しているが、ツカサは自重しているファイアローを不思議そうに見ていた。

 

 

「まぁ、いいか……アクロバット!」

 

「ゴーゴート、守りを固めて耐えるんだ!」

 

ゴーゴートはこれから与えられる攻撃を耐えようと守りを固めているが、直後に与えられたファイアローの一撃はとても重く防御を突き抜けてダウンさせられていた。

 

 

「今の……なんたら神拳みたいに内部にダメージが行ったのかな?」

 

「面白い。さぁ、ウツドン見極めてきなさい」

 

ツカサは厚そうな防御を抜いたファイアローの事を考えており、フクジはゴーゴートを戻し最後にまさかのウツドンを出している。

 

 

「……え? あ、アクロバット!」

 

「……」

 

まさかのウツドンに動揺しながら指示を出し、フクジはジムリーダーとして見極める為に何も言わずに見ていた。

 

場所が場所だけに自重しているファイアローが加速してウツドンを蹴り飛ばし、起き上がった所を更に蹴り飛ばし、それを続けて転がし回している。

 

そして何度目かの蹴り飛ばしで目を回してダウン、そのまま動かなくなっていた。

 

 

「自重も出来るなんて良妻になれるな、ファイアロー」

 

「ポケモンとの友情は慌てず騒がずじっくりと……言うまでもなく仲良しみたいで結構。ポケモンは君を信じる、君はポケモンを信じる……胸のすく勝負だったよ。さあさ、勝利の証プラントバッジだよ」

 

「ありがとうございます。これで四つ目だ」

受け取ったバッジをケースにしまいながら呟いていた。

 

「後これも持っていきなさい。その技マシン、くさむすびを使えば草を絡ませ相手を転ばす。相手が重ければ重いほど威力が上がるんだよ。……アスファルトを突き破り成長する草木の強さが私の憧れなんだよ」

 

「何から何までありがとうございました。それでは失礼します」

 

「帰りはそこの滑り台を使うといいよ。これからもがんばりなさい、君ならもっと上を目指せるはずだよ」

 

「……ありがとうございます!」

頭を下げて礼を言い、滑り台に向かっていった。

 

 

アスレチックの滑り台なだけはあり、開けられた木の中を通ったりしながら加速して最後は出口から放り出されるようにして着地を決めている。

 

「カントーのジムもこれくらい攻めればいいのになぁ」

 

………

……

 

今から街を出るか悩んでいるとホロメールが届き、誰からだろうと確認している。

 

『久しぶりですね。プラターヌ博士から聞きました。何でもメガシンカを使えるようになったとか。その力であなたの未来をより良い方向に変えるのです。 新しく美しい世界に変えるため、どうすればいいかよく考えてみてください』

 

「フラダリさんか……ちょっと不安になるな」

 

ホロメールを見て得体の知れない悪寒が走り、今後何もないといいなと考えながらヒヨクシティを後にして連絡通路へと向かった。

 

 

「待っていたわ!」

 

「うおっ! そ、その声はジーナさんか」

 

「驚かせてゴメン。待っていたわけではなくて、プラターヌ博士に頼まれて発電所に行こうとしてたんだ」

 

「デクシオさんも。発電所って……ミアレの停電、結構経つのにまだ直ってないんですか?」

 

「そうなんだよ。この先の十三番道路とミアレシティを繋ぐゲートが、謎の停電で閉じているから調査をしないといけなくてね」

 

「ライフラインの一つが断たれてるのにミアレの人達って悠長なんすね……」

 

「さてセントラルカロスにコーストカロスとくればお次は何かしら!?」

 

「答えを言ってしまうけれどマウンテンカロスなんだよね。という事でまたパワーアップさせますね」

 

「よろしくお願いします」

ポケモン図鑑を取り出すと二人に手渡していた。

 

「あなた……ちょっと大人の顔になったかしら……? なんてね! それではお暇するわ。ボンヴォヤージュ!」

 

「颯爽と去って行ったけど、ジーナさん達一つか二つ年上だからって子供扱いはなぁ……下手したら俺のが年上に見える童顔な二人なのに」

 

 

後を追うように連絡通路を出て十三番道路、ミアレの荒野に出た。

 

「か、風が強い! 目にゴミが……いたたたた! 地面からフカマル出てきて足を軽く噛んでる! ら、ラプラス!」

 

少し進んだだけで一人お祭り状態であり、ニコニコして嬉しそうなフカマルに足を噛まれていた。

 

ラプラスを出したが噛んだ状態ではどうしようもなく、どうしたらいいのかとラプラスは困っている。

 

 

「し、仕方ない……頼むから捕まってくれ!」

 

「がぶがぶ」

 

「いったぁぁぁ!! お兄さん許して!」

強く噛まれたらしくボールをすぐに当てている。

 

抵抗もなく捕獲が成功し、科学の力でパソコンへと転送されていった。

 

 

「ジーンズが穴だらけ。一度ポケモンセンターに戻って着替えて、これはお願いして捨ててもらうしかないな……」

 

 

そしてつい先程までいたヒヨクシティに戻ってポケモンセンターに直行。

 

怪我はないが穴だらけのジーンズの男に、笑顔だったジョーイさんも驚きすぐに別室を用意してくれた。

 

「治療するからって着替えようとしたのを止められて、下だけトランクス状態って俺が変態みたいで困る」

 

「バカな事を言ってないで早く見せなさい! ……フカマルに噛まれたって話だけど、何でかすり傷一つないのかしら?」

 

「マサラタウン出身者にはよくある事なんだよなぁ……だから恥ずかしいんで着替えたいんですけど」

 

「……まぁ」

 

「そんなに顔を赤くしてどこ見てんすかね……」

 

 

何故か着替えてる間も出ていかなかったジョーイさんに穴だらけジーンズの処理をお願いし、捕まえたフカマルの確認をパソコンで行っていた。

 

「また♀、性格はむじゃき……まぁ、旅には連れていけないわ。服の替えにも限界があるし」

 

「ちょっとこれはどういう事なの?」

 

治療しようとしてくれた先程の私服のジョーイさんが鞄にジーンズを仕舞って持ち帰ろうとした時に何かに気がつき、それを手にパソコンを使っているツカサにグイグイ来ていた。

 

 

「はい? あー……ポケモンドクターの免許とブリーダーの免許ですね。いや、ちょっとした打算もあって取ったんですけど」

 

「どちらも年齢関係なく実技と筆記を合格して、研修先でしばらく働かないと貰えない難関の資格のはずよね?」

 

「天才やら何やらとやたら持ち上げられて、それが嫌になってどっちも免許貰ってからは身内のだけしか見てないよ」

是非うちにと勧誘されて嫌になったらしい。

 

ぶっちゃけハルカ、ヒカリ、メイの誰かにいつか雇ってもらう為に真剣に取り組みすぎて才能が開花した結果がこれ。

 

トレーナーとしても優秀だが、ポケモンに関わるサポートの才能の方が上だった。

 

 

「そんな簡単な物じゃないはずなのに……」

 

「ちなみに色んな繋がりで闇医者的な人も知り合いにいるよ。ハザマ先生、法外な額を取るけど腕は超一流だった」

 

「闇医者!?」

 

「まぁ、それより……はい、ありがとう。それじゃあ、またいつか」

パスケースに入れっぱなしだったそれを回収し、追求される前にさっさとポケモンセンターから離れていった。

 

 

 

再び十三番道路の荒野に着くと足元を警戒しながら進んでいく。

 

 

「ナックラーは可愛いなぁ……」

 

並走してくる姿に癒されながらも捕獲はせず、 荒野を自転車で走り回って発電所を探し回っていた。

 

 

ようやく見つけた発電所の前には顔馴染みになってきているフレア団のしたっぱが立ち塞がっていたが、あっさり倒してそいつが落とした発電所に入るパスを回収してさっさと中に入っていく。

 

中にもフレア団のしたっぱが居り、ミアレへの送電を止めて電気を奪っている事が発覚していた。

 

「何で悪の組織は毒、悪のポケモンを使うのが多いんだろう。印象悪くなるからやめたげてほしいわ」

 

 

そのまま進むと坊主頭に白いスーツを着た男と、赤いスーツに赤いスカートにバイザーを付けた茶髪の女が何かを話していた。

 

隠れて聞いていたがよく聞き取れず、少し近づいてみると……

 

「あのトレーナーの始末かしら?」

 

「驚きだな。作業者以外にも始末する者が増えたか」

 

「俺はスネークになれない。はっきりわかんだね」

 

 

そのまま幹部らしき男が始末させようとヘルガーを直接ツカサに向かわせるも、投げる前にボールから飛び出したルカリオのはどうだんで吹き飛び一撃でダウンしていた。

 

 

「くっ、すまない! 科学者、後始末を頼む!」

 

「アハハ! いいの? トレーナーさん、カモーンしちゃって!」

 

「ん?」

ルカリオはまた同じ事が起きないよう警戒しながら傍に控えている。

 

「わたくしの名前はアケビ。ご覧の通りフレア団でとある研究をしている科学者です。あなたには悪いのですがお願いされちゃったからね」

 

 

「ルカリオ!」

 

「グラエナ、片付けなさい!」

 

控えていたルカリオが前に飛び出し、ボールから出て飛びかかろうとしたグラエナを牽制していた。

 

二人が指示を出す前に二体は動き始め、それぞれの主人に勝利をもたらそうとしている。

 

 

「……ルカリオ、はどうだん!」

 

「グラエナ、こわいかお!」

 

グラエナが指示通りにこわいかおをしようとしたが、放たれたルカリオのはどうだんが顔面に直撃して吹き飛びダウンしていた。

 

 

「ルカリオ、よくやった」

 

「くぁん!」

 

「……強いのねアナタ。うん、強いよねアナタ」

グラエナをボールに戻しながらアケビは呟いていた。

 

 

「ほら、倒したんだからさっさとミアレに電力を……」

 

「アハハ! あなたおもしろーい! また会いましょ」

 

そう言うと幹部の男と共にツカサの間を素早く抜け、どちらかを捕まえようとしたが二兎を追う者一兎をも得ずそのものになっていた。

 

 

「ちくしょう、毎回組織的なのと戦うと逃がすんだよなぁ……」

 

「あらあなた。あたくし達よりもはやく、ここにいた得体の知れない連中を追い払ってくれたの?」

 

「え……だ、誰なんだいったい……」

赤と青の仮面をつけ、赤と青のマフラーを付けた見知った二人に気づいてない体で話しかけている。

 

「……そうね! カロスを守る人が多いことはいい事ですもの。感謝の気持ちですわ! ポケモンを元気にしますわね!」

 

「あ、はーい……」

 

「うん! 君とポケモンは最高のチームみたいだね。とはいえ無理は禁物ですよ。これを持っていてください」

 

「あ、かいふくのくすり……こんな高い物をありがとうございます」

 

「いや、いいんだ。君達のお陰でミアレの停電も直りましたよ。つまり十三番道路とミアレシティを繋ぐゲートも通行可能になったんです」

 

「ではあたくし達謎の人はこれで。さようならは言われる前にあたくしから言いたいの。オ・ルヴォワール!」

 

「……バレバレなんだよなぁ。セシリア好きな俺はジーナさんの喋り方にドキドキしちゃう」

 

 

作業員が集められていた場所に安全だと告げに行くと感謝の言葉に技マシン等を貰え、少し休んでいくように言われて椅子に座らされコーヒーやお菓子もご馳走になっていた。


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