荷物を持ち軽く1Fを歩いただけで全身筋肉痛になったルルーシュを見てまずは鍛えないとダメだなと探索を一時中止し、筋トレやランニングでスタミナ諸々を付けさせていた。
「俺が持って来てた唯一使える科学の力って凄ぇ鞄のお陰で荷物は楽々だけど、武器や防具は重いからなぁ」
「私は平気ですね」
「私もツカサと1Fを回っていたから平気ね。ガンナー、私にピッタリよ」
「なぁ、あいつ倒れて死にかけてるけどいいのか?」
「うわっ、ルルーシュゥゥゥ!!」
ひたすら走らせてそれを眺めていたツカサは倒れているルルーシュに慌てて駆け寄って行った。
………
……
…
「ルークがギルドに入ってくれたからとりあえず安定するな」
「でもツカサは不思議な奴だよなぁ。何でも話しちまうっていうか、俺の話を聞いて泣いてたよな」
「ガチ泣きしちゃったのを忘れて欲しい。レプリカで消える運命とか悲しすぎんだろ……」
「俺の為に鼻水出して噎せるくらい泣いてくれたのを忘れられるかよ。しかしマジで技も力も使えないのはやばいな。剣術の型は出来るのになー」
ルークとの出会いは広場でポカンとした顔で辺りを見回している所に通り掛かり、何かを察したツカサが声をかけて宿に連れ帰った事だった。
詳しく話をすると生活の為にもと即座にギルドに加入し、その晩に疲れて熟睡するルルーシュを尻目に話を聞かせてもらったらしい。
その話があまりに悲しく切なくて号泣。
噎せるツカサを心配してルークが背中を摩るくらい泣いていた。
「だよなー」
「でも指示されて戦うのは新鮮でいいわ。問題はルルーシュが予想外の展開に弱いのとスタミナがない事だけどな」
「そうなった時は俺に指揮がスイッチするようになったから」
オールラウンダーなツカサにルルーシュは指揮のコツを教えており、並のギルドリーダーより遥かに高い指揮を執れるようになっていた。
「まぁ、それが妥当だな。仲間はこれ以上増やさないのか?」
「きっと俺達みたいな流れ着く人が居るだろうから、その人達に仲間になってもらおうかなって。仲間が増え始めたら誰も住んでない幽霊屋敷を買い取ろうと思う」
「あぁ、あの」
「なぁ、ルーク……そろそろセクシーなお姉さんが来てもいいと思わない?」
「いや、興味な……いわけでもないか。ただヒステリックなのは勘弁だな」
「この話に乗ってくれるルークは最高の親友になれる」
「ツカサを見て今が消滅間際の幻でも楽しみたいと思ったからさ」
「楽しむ余裕は大事よ。まぁ、俺もマミが来るまでは余裕なかったけどね」
デートや身体を重ねる事は今も休養日にしており、その翌日の二人のコンディションは最高になっている。
奇しくもハイランダーとガンナー、とある国でのペアと同じ組み合わせだから面白い。
向こうのガンナーとは胸部装甲の暑さが段違いだが。
「まぁ、でも今の俺には恋愛とかは早いわ。ツカサと買い食いしたり、ルルーシュ見ながら駄弁ったりする方が楽しいし」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないの。とりあえず今日はもう寝ようぜ。明日は……何か嫌な予感がするけどルルーシュは二人に見てもらって、俺とルークの二人で買い食いしよう」
「あの串焼きの肉は外せないとして……あのチキンカツサンドをまた作って欲しいんだ」
………
……
…
マミはイライラ、マシュは冷たい目、ルルーシュは笑いを堪えた顔、ルークはご愁傷様といった顔で正座させられているツカサを見ていた。
「違うんです、俺は違うんです!」
「みぃ……ツカサはボクに誓ったのですよ? 『古手 梨花、俺は君と共に生き君と共に死のう』と」
「俺じゃない俺なんです!」
「フハハハハ! 語るに落ちたなツカサ! 貴様こそロリコンではないか!」
「うっせー! シスコンもやしは黙ってろ!」
いつものパターンで昼にツカサが集合場所にまだ幼い少女と恋人繋ぎで帰って来て、マミ達に見つかり小石等が散らばる地面に正座をするよう言われて今に至る。
尚、恋人繋ぎはしないと襲われたと叫ぶと言われ止むを得ずしていただけだったが。
「ツカサ」
「あ、ごめんなさい……」
マミの優しい声と笑ってるのに笑っていない目を見てビクッ!としている。
「その被ってる猫を取って話さないかしら、古手さん?」
「……ふふっ、バレていたのね」
「それはもう」
二人の間に火花が散り、強かになってきたマシュは先輩先輩と正座しているツカサの肩に強く手を置いていた。
「痛い痛い痛い! マシュ、脚に小石が食い込むからやめてぇ!」
「あぁ……この先輩の懇願にゾクゾク来るのは何なんでしょう」
「うん、俺は恋愛とかしばらくいらない」
「ああ、俺もルークに同意する。寧ろツカサはマミ以外には手も出していないのにあの対応、見ていて可哀想になってきた……」
それからマミと梨花の睨み合いからの嫁アピール合戦、何故かマシュの額に浮かぶ青筋、ツカサの脚に食い込む小石、怖くなって逃げたルルーシュとルークと中々のカオス具合だった。
そして……
「少し不満だけどマミが正妻、私が側室で決着がついたわ」
「意味が分からないよ」
「世界樹探索に古手さ……梨花さんも加わってくれるそうよ」
「ええ。身体を重ねるのは私の身体がしっかりしてからになるわね……何で出会った頃の身体なのかしら」
「せーんぱい?」
「いや、重ねる気はな……マシュの言い方は可愛いのにいってぇぇぇぇ!!」
両肩を掴み可愛らしく言いながら力を入れ、ツカサの脚に小石を食い込ませていた。
それから数日が経過し、表向きには猫を被りギルドメンバーには素の梨花がいた。
「もうこの世界に女の子は流れつかないでほしい。その世界の俺がほぼやらかしてるパターンだから死ねる」
「あぁ……あの後マミに連れ去られて、翌日ゲッソリして帰って来ていたな。マミはツヤツヤしていたが」
「あっ……」
「あれが続いたらいつか死ぬから。世界樹踏破するって目標出来たのに死んじゃうから」
「ルルーシュ、ガンナーはもう一人探した方がいいな」
「ああ、確かに。いつマミが孕むか分からないからな」
「まだ1Fも探索終わってないのにパパにはなりたくないよ! せめて前人未踏の所まで行った後なら吝かではないけど」
野郎だけの部屋でかなり生々しい話になり、ツカサは耳を塞ぎたくて仕方がなくなっていた。
「私的にはガンガン女性の迷い人が来て、修羅場になっている所が見たい」
「第三者としては面白いもんな」
「いつか二人に彼女が出来たらある事ない事吹き込んでやるからな……」
………
……
…
「ルルーシュを鍛え終わる前に梨花が鍛え終わるとかどういう事なの……」
「みぃ、ボクと貧弱もやしを一緒にしないでほしいのですよ」
「ぜぇ……ぜぇ……」
「ほら、何とか作ったなんちゃってスポーツドリンク。でもそろそろ行けそうだな。まだ職の許可出てない梨花は宿屋で留守番だけど」
座り込むルルーシュになんちゃってスポーツドリンクの入ったカップを手渡し、今までより遥かにマシになっているのを確認している。
「仕方ないわね」
「早いとこあの家買わないとなー」
そろそろ拠点として皆が住める家を用意しないといけないから稼がないとダメだなと考えていた。
「はぁ……生き返る」
「お前いつも生き返ってんな」
梨花が洗濯物の入った籠を持ち洗いに行くのを見送り、ルルーシュが落ち着くまで隣に座って待っていたらしい。
「仕方ないだろう。しかし俺が言えた事ではないが我がギルドは色物集団だな」
「みんなキャラが濃すぎて俺が薄いっていう」
「お前含めてみんな同じくらい濃いがな」
「マジか……みんなでマミの世界の魔法少女について話し合った末の結論は怖かったよなぁ。マミは取り乱すと思ったのにケロッとした顔で何処かで会ったら潰す発言してて、あっちも怖かったけど」
ツカサと共依存の恋仲になり普通の身体に戻って大人の階段も登った事で余裕も生まれ、ルルーシュとツカサが辿り着いた結論にも全く動じなかった。
「元の世界で聞かされたり、ツカサが居なかったら発狂していただろうな」
「マミもこっちに来て色々成長したから。誰もが一度はかかる病が黒歴史になって悶えてる姿も可愛いし」
「相変わらずマミには甘いな。それよりマシュと梨花の世界にツカサが居たのなら、もしかしたら俺達の世界にも居たのかもしれないな」
「マミの世界には居るかもしれないけど、二人の世界には居ないと思うけど」
「いや、何か絶妙な場所にいる気がするぞ。フラグを満たさないと出現しない代わりにとんでもない性能を持つみたいな感じでな」
「えっ、俺隠しキャラなの?」
「……そういえば凄腕のテストパイロットを徴収するかで会議が難航した事があったな。期を見てと流れたが、意外とそれがツカサだったのかもしれない」
「それはない。人型兵器のテストパイロットとか心くすぐられるけど」
「ツカサを味方に付ければ勝てるような気がして仕方がない。……いや、まさか途中からブリタニアに居たのか? データは揃ったからテストパイロットはクビにしたと言っていたような」
「外付け勝利の女神とか見つけたら監禁待ったなし」
こんな本格的探索開始二日前。
きっとツカサはあらゆる世界で隠しキャラ扱いで存在してる。
セプテントリオンと戦ってたり、タルタロスに挑んでたり。
クロスオメガ、ジュウレンジャー来たし次はシンケンジャーでサムライハオーはよ。