ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

25 / 56
繋がりはこんな所から

翌朝、メレシー達が騒いでいる声で目を覚ましていた。

 

すかさずツカサにディアンシーが居なくなった事を身振り手振りで伝え、探すのを手伝って欲しいと土下座のような仕草を三体並んで行っている。

 

「手伝うから土下座はやめよう。とりあえず周囲を……」

 

『おはようございます!』

 

「……この声はどこからだ?」

 

『ゴージャスボール、本当に素敵でした! 暖かくて、ふわふわした感じで……』

 

「……まぁ、用事が終わったらボールとのあれこれを切ればいいだけか」

 

『いいえ、終わってもこのままでいいのです。私はあれからすぐに考えました。ツカサのポケモンになってしまえば他の人間には捕まらない、と』

 

「意外といい案だから否定出来ないわ。登録されてるからディアンシーは俺のゴージャスボール以外は弾くようになってる」

 

メレシー達もその手があったかとばかりにディアンシーを褒め称えており、ツカサも悪くない手だなと世間知らずなお姫様を見て頷いていた。

 

『ですのでツカサ、私はゴージャスボールの中に居ます』

 

「いや、違うわ。こいつただ興味本位で入ってハマっただけだ」

 

ニコニコウキウキしながらゴージャスボールに入って行ったディアンシーを見て感心した自分を恥じている。

 

 

着替えてから寝袋等を鞄にしまい、テントもスイッチ一つで小さくなりそれも鞄にしまっている。

 

「メレシー達もゴージャスボールに入れたけど、めっちゃ感動してて引いた。俺もポケモンだったら入ってみたいわ」

 

朝食もそこそこにバンバドロの背に乗り、ゆっくり帰って行く。

 

 

そのまま何事もなくゼルネアスがよく居る広間に着き、ディアンシーをボールから出して話をさせていた。

 

その結果

 

『……ゼルネアス、分かりました。ツカサ、ダイヤモンド鉱国に代々伝わってきたこれを貴方に授けます』

 

「ん? ……ピンク色のダイヤモンド?」

 

『私達はまだ出会って一日……ですが私達はもう以心伝心の仲』

 

「いや、俺は君が分からないよ」

 

『お揃いです!』

 

ディアンシーが首から下げているネックレスには同じようなピンク色のダイヤモンドが付いており、それを見せながらドヤ顔で胸を張っていた。

 

「……ああ、なるほど。そっちが本命だったわけか」

 

『お願いします!』

 

「久しぶりだな……我が心に応えよキーストーン! 進化を超えろ、メガシンカ!」

 

『凄い……これが!』

 

貰ったダイヤモンドの影響で特殊な演出になったのか、メガリングから放たれる光がピンク色になっていた。

 

そしてディアンシーを包んだ光が吹き飛び、再びその姿を現すと……

 

「何かお姫様みたいになったな」

 

『これが私……出来ました!』

 

ディアンシー は綺麗なドレスを纏ったような姿になり、上手くいかなかったダイヤの精製を試して成功していた。

 

「ダイヤ?」

 

『今代の姫様が初代の姫様と同じお姿に……! お美しいお姿ですぞ!』

 

「えっ、お前等も喋れたのかよ!?」

 

『すぐに帰りましょう! 今なら新しいダイヤを作れます!』

 

「あっさり解決したなぁ」

 

『ツカサ、これは貴方への感謝とお礼です。人間には価値のあるものだと聞いています』

 

「いや、ダイヤをこんなに渡されるとか反応に困るっていうか……」

 

『さぁ、行きましょう!』

 

『ツカサ殿、ダイヤモンド鉱国はあの洞窟を奥に向かうと辿り着けますぞ!』

 

「……ん?」

 

結局ゴージャスボールに入った四体を送っていく事になっている。

 

 

数日かけて地下のダイヤモンド鉱国に着くとディアンシーを見てメレシーや地下に住むポケモン達は盛大に歓迎し、一緒にいる人間であるツカサの姿を訝しげに見ていた。

 

歴史を研究しているメレシー達が初代のディアンシーに人間のパートナーがいた事を思い出し、まさかと思いながらも期待した眼差しをツカサに向けていた。

 

 

『ツカサ、私はすぐに聖なるダイヤの元に向かわなければいけません』

 

「ああ、分かったよ」

 

 

そのまま聖なるダイヤが安置されている場所に向かうと、その瞬間を見ようとした野次馬が後を追ってきて大変な事になっている。

 

広間の中心にある巨大なピンクダイヤモンドは力を失いかけているのか少し色が暗く、本当に後少ししか保たない事が見るだけで分かった。

 

ディアンシーはそのダイヤに力を込めるのではなく、今後また長い期間エネルギーが絶えない様に新しく創り出すつもりのようだった。

 

『このご先祖様が創り出してくれたダイヤは宝物庫に。ツカサ、お願いします』

 

「それはいいんだけど俺のメガリングはちゃんと直る? あのダイヤがキーストーンに吸い込まれたかと思ったら、ピンクを基調にしたファンシーなリングになっちゃって恥ずかしさMAXなんだけど」

 

『……さぁ!』

 

「はいはい……」

 

………

……

 

「いやー、しかし聖なるダイヤが生み出される所は綺麗だったな。メガシンカしたディアンシーを見て初代の生まれ変わりだって大騒ぎしてたし」

 

「私は間近で聖なるダイヤを創り出した時の光を浴びたツカサが、テレパシーを使わなくても私達の言葉を理解出来るようになった事に驚きました」

 

「ちゃんと使いこなせるようになれば、オンオフ可能っぽいのはありがたいよ。これでまた医療で救えるポケモンが増えるし」

 

ドクターとしてのアドバンテージが凄まじい事になったが、正直早くオフにしたくて仕方がないようだった。

 

 

「ツカサの家のお庭に出口を掘るとダグトリオとディグダ達が張り切っていましたから、数日はお泊まりです」

 

「遊びに来る気満々じゃないか……」

 

 

その数日でしっかりオンオフのコツを掴み、普段は聞こえないように出来てホッとしている。

 

正当な報酬だと言われディアンシー達に改めて渡された袋一杯のピンクダイヤモンドにドン引きし、受け取りはしたが扱いに悩みながら鞄にしまいバンバドロへ跨っていた。

 

『落ち着いたら皆で遊びに行きますね』

 

「姫様が無闇に出掛けるべきじゃないだろ」

 

『寧ろパートナーのツカサが帰る事がおかしいと皆は騒いでいます』

 

「とりあえずゴージャスボールは部屋に置いとくから。……走れバンバドロ、風のように!」

 

にじり寄ってくるゴーリキー達を見て、すぐにバンバドロを走らせていた。

 

 

 

全力でその日の内に帰宅するとしばらく冒険はいいやと皆をボールから出して自由にさせ、ツカサは風呂に入って汚れを落としている。

 

「長い事地下にいたからか、目がチカチカするなぁ………カミツレさんみたいな事を言ってしまった」

 

風呂から上がると早い内に寝ようとしたが、思い立ってカミツレに先程の発言をメールで送っていた。

 

それが終わると家に残っていたアママイコ、ミミッキュ、ルガルガン、ニンフィアを部屋に連れていきそのまま眠りに就いていた。

 

 

 

そんな面白おかしい日々を過ごしていたある日、レイナとその両親から手紙が届きすぐに確認している。

 

「お誘いの手紙だ……立派な招待状と手紙、それとレイナちゃんからの手紙。やだ、嬉しい……」

 

改めてお礼がしたいという手紙に今度開くパーティーへの招待状が同封されており、返事が貰えれば二週間後の週末に迎えを出すと書かれていた。

 

そしてレイナの手紙には大好きなお兄ちゃんに向けた想いのこもった言葉がたくさん書かれていた。

 

同封されていた画用紙には白衣姿のツカサとピカチュウとレイナが並んでいる絵が描かれ、二枚目にはツカサとチャンピオン戦で見せた仲間達に囲まれたツカサが描かれている。

 

「これは額買ってきて部屋に飾るしかないわ。行きますって返事を書いてから買いに行こう。ミアレならあるだろうし」

 

 

その二週間の間にセレナやサナとラブコメしたり、ミミッキュの群れがディアンシーに招かれて地下鉱国に移住したりしていた。

 

「久々にカロスを旅した面々が全員集合してると感慨深いものがあるな。ラプラスだけ居ないのは残念だけど、湖に居たいみたいだから仕方ないね」

 

セレナが素のままだと目立つからとプレゼントしてくれた黒縁の眼鏡をかけ、勢揃いした面々を見て呟いていた。

 

「フィア!」

 

「お前は家にいるか庭にいるかだもんなぁ……ピカチュウと喧嘩だけはするなよ。しかし迎えって言っても、こんな町外れまで来てくれるなんて」

 

「……ツカサ様、お迎えにあがりました」

 

「えっ、あっ、はい」

 

ニンフィア達をボールに戻して玄関に鍵をかけていると背後から声をかけられ、振り向くとツカサのイメージの執事通りのご老人が立っていた。

 

ぶっちゃけ見た目も声もギャリソン時田だった。

 

「本日ツカサ様をエスコートさせていただくトキタと申します。さぁ、どうぞお乗りください」

 

「お世話になります」

 

………

……

 

車内で会話をしている内に仲良くなり、コボクにある立派なお屋敷に着く頃には連絡先を交換していた。

 

「マジか……」

 

「さぁ、こちらです」

 

 

案内されて向かった広すぎる中庭には結構な人数の人が居り、ドレスやスーツ姿の者ばかりではなく私服の者も多々居てツカサはホッとしている。

 

「……お二人には資金援助をしていただいて感謝しています」

 

「以前ルザミーネさんにはお世話になりましたし、私達が出来るのは保護をする貴女達への資金を出す事だけですので」

 

ブロンドの長い髪の女性がレイナの両親と話している姿が見え、レイナも少し離れた場所で同じようにブロンドの髪の男の子と女の子に遊んでもらっているのが見える。

 

 

「うわぁ、あの女性すっごい美人さんだな」

 

「はっはっはっ、ツカサ殿はお盛んですな。正式に始まる時間までしばし私と話でもしていましょうか」

 

「喜んで」

 

 

眼鏡を掛けて隅にいるからか誰もツカサに関心を抱いておらず、談笑しながらパーティーが始まるのを待っていた。

 

そして始まってすぐに気がついたのはこれがレイナの誕生日のパーティーだったらしく、プレゼントを用意してないという事に思い至って頭を全力で働かせている。

 

「ドリンクはいかがです?」

 

「いただきます」

 

壁際で頭を悩ませているとメイドが近づいてきて、アルコールの入っていないグラスを手渡されていた。

 

 

喉を潤してグラスを近くのテーブルに置くとハッと何かに気がつき、そのまま壁際に戻ると鞄の中を漁り始めた。

 

ディアンシーに協力してもらってピンクダイヤモンドを加工し、市販のネックレスを基礎にして新しいネックレスを作っていた事を思い出したらしい。

 

その内にセレナかサナにでもあげようと傷つかないようにちょっとしたお洒落な箱に入れてあり、まだ小さい子には早いかもしれないがと後で渡そうと取り出したそれを鞄に戻している。

 

 

安心して料理を摘んでいるとツカサを見て場違いじゃないかとヒソヒソ話している者もおり、身の程知らずのトレーナーをバトルで倒していい所を見せようとする者もいたが……

 

「リザードン、じしん!」

 

「ブーバーン、避け……!」

 

リザードンの鋭いアッパーでブーバーンが宙に浮き、立派な尾で更に高く弾き飛ばされていく。

 

それを飛んで追い掛けたリザードンは落下するブーバーンの顔を掴み、更に加速しながら地面に向かって突っ込んでブーバーンを叩きつけて地震のような衝撃を起こしていた。

 

 

相手は結構強い事で有名だったらしく、手も足も出ずに倒されたのを見て皆が驚いている。

 

倒された当人も信じられないらしく、何かの間違いだと甘えているリザードンの頭を撫でている男を睨みつけていた。

 

「よしよし、加減出来たのは偉いぞ」

 

「ふ、ふざけるな! 貴様みたいなトレーナーに私が負ける訳がない!!」

 

「はい?」

 

「私はこれでも四天王と戦った事があるんだぞ!」

 

「へー」

 

「それが貴様なんぞに!」

 

 

そのままカッとなりツカサに掴みかかろうとした所に執事達が割って入ってきた。

 

「お客様、出口はこちらになります」

 

「これ以上こちらのお客様にご迷惑をかけるようでしたら、私達がお相手致します」

 

「な……わ、私は招かれたから来てやったんだぞ!」

 

「君の事は義理で招いただけだよ。だがこれでもう二度と会う事もないだろうね」

 

「っ! 帰るぞ!」

 

レイナの父も来ていたらしく、そう告げると男は若い女性を連れて逃げるように去って行った。

 

「先生、お久しぶりです。不快な思いをさせてしまって……」

 

「ピッカ! ピカチュ!」

 

「お久しぶりで……うおっ! あはは、ピカチュウも元気みたいですね。眼鏡はちゃんと返してね」

 

身体をするすると登ってきたピカチュウが頬擦りをするのに邪魔だと眼鏡を取り、手に持ったまま頬擦りをしていた。

 

 

近くにいた女性はそんな野暮ったい眼鏡を外したツカサの顔を見て息を呑み、ツカサは気にせずピカチュウから眼鏡を返してもらって眼鏡ケースにしまって鞄に戻している。

 

「ははは、どうやら先生の事が大好きみたいで。レイナと一緒に毎日録画していたあのバトルを見てるんですよ」

 

「チャァ……」

 

「いやぁ、その……照れますね」

 

「さぁ、こちらへ。……それと先生が来てくださるのをレイナへは秘密にしているので、ちょっとしたサプライズゲストになっていただきたいのですが」

 

「ええ、構いませんよ」

 

レイナはパーティー用のドレスに着替えに席を外しているらしく、鉢合わせないよう肩にピカチュウを乗せたままレイナの父の後に続いて歩き出した。

 

………

……

 

通された客室で呼ぶまで待っていてほしいと言われ、仕方なく椅子に座りピカチュウを膝に乗せてボーッとしている。

 

軽くピカチュウの健康診断を行っているとメイドが迎えに訪れ、鞄を肩にかけ反対側の肩にピカチュウを乗せて付いて行った。

 

 

「お金持ちって凄い」

 

中庭では既に誕生日を祝う歌を皆で歌っており、設置された舞台の上で両親やブロンド髪の女性の家族が同じように歌って祝福していた。

 

だがレイナは心ここに在らずといった様子で、目の前のケーキには目も向けずにキョロキョロとゲストの方を見て誰かを探しているようだった。

 

「いない……」

 

目当ての者がどこにも居らずジワッと目に涙が浮かび始め、それを見て両親は慌ててメイドや執事にGOサインを出している。

 

 

「ケーキが美味しそう。……えっ、ちょっ、高いですから一度降りて回り込むとか」

 

「時間がありませんので」

 

「お嬢様を泣かせるわけにはいきませんので」

 

脚立に乗りバレないよう覗いていたツカサだが、そこから飛んで舞台に降りるよう促されて物凄く焦っていた。

 

「分かりましたよ……でも8メートル近くあるのに?」

 

「トレーナーなら平気です」

 

「解せぬ。……分かりましたよ、行きます」

 

「ピッカァ! ピカチュ!」

 

流石に冗談で本気で飛ぶとは思わなかったようで、飛ぶように促した執事とメイドは真っ青になりながら慌ててどうなったかを見に向かって行った。

 

 

泣きそうな顔のレイナの真後ろに某怪盗のように華麗に着地し、レイナの両親以外の面々の度肝を抜いていた。

 

急に歌が止まった事をレイナは不思議に思い、俯いていた顔を上げると皆が口を開けて自分を見ていた。

 

「レイナちゃん、お誕生日おめでとう」

 

「あ……ふぇ……うぅぅっ!!」

 

ずっと聞きたかった声が聞こえてすぐに振り向き、会いたかった存在を見つけて涙が溢れ思い切り抱きついて泣いてしまっていた。

 

抱きつかれたツカサは驚いていたが優しく抱きとめ、頭を撫でて落ち着くのを待っている。

 

 

レイナが落ち着いて離れると涙と鼻水が出ており、苦笑しながらハンカチで拭いてあげていた。

 

「ふーっ……えへへ」

 

「改めてお誕生日おめでとう」

 

「ピッカァ!」

 

「ありがとうお兄ちゃん、ピカちゃん!」

 

どんなプレゼントよりもツカサが祝ってくれる方が嬉しいしく、ロウソクの火を消す時も手を握ったまま離さずニコニコしていて皆ほっこりしている。

 

そしてカロス新チャンピオンの登場にゲスト達は驚き、ブロンドの髪の女性の息子と思われる男の子は登場の仕方を目撃していたらしく目をキラキラさせていた。

 

 

ゲスト達にもケーキが配られ、後はパーティー終了まで自由にと言われ皆がそれぞれ談笑したり料理を楽しんだりしている。

 

「まさかの子供枠にされてしまった。ルザミーネさんにも挨拶したら、体良く二人を押し付けられたでござる」

 

「えへへ~、お兄ちゃん」

 

「お兄さん」

 

「兄さん」

 

そして面倒見が良く仲良く遊んでいる内に二人にもすっかり懐かれていた。

 

「レイナ、頬にクリーム付いてるぞ。リーリエとグラジオも」

 

甘えてくるレイナの頬についたクリームを拭き取り、九歳と十一歳の兄妹の頬についたクリームも拭き取っている。

 

「んー」

 

「えっと、ありがとうございます」

 

「そういう兄さんも口の端に付いてるよ」

 

「これはあれだから、チャームポイント的なやつだからセーフ」

 

それをハンカチで拭いた所でプレゼントを思い出し、ピカチュウを肩に乗せたまま鞄からそれを取り出している。

 

 

「お兄ちゃん?」

 

「レイナ、これは俺からのプレゼント。あまりいい物じゃなくてごめんね」

 

少しオシャレな箱をレイナに渡しながら申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「いいの! お兄ちゃんからのプレゼントなら何でも嬉しいから……わぁ」

 

「綺麗です……」

 

「まだちょっと早いかもしれないけど。……大きくなっても大切にしてくれたら嬉しいな」

 

レイナに目線を合わせるようにしゃがみ、彼女が開けた箱の中からネックレスを手に取り首にかけながら呟いていた。

 

「絶対大切にする! パパ、ママ!」

 

自慢したくて仕方がないらしく、ツカサの肩から飛び降りたピカチュウと共に両親の元へと走って行った。

 

 

「ふふ、可愛いです」

 

「あのまま真っ直ぐ育ってほしいよ」

 

「兄さんがいれば大丈夫だと思う」

 

「あ、そうだ。二人には電話番号とアドレスを教えておくよ。何かあった時に連絡してくれれば助けになるから」

 

そう言うとメモ帳とペンを取り出してアドレスと番号を書き、リーリエとグラジオの二人に一枚ずつ渡している。

 

 

「何かなくても連絡したらダメなんですか?」

 

「確かに。兄さんと普通に連絡を取りたいと思ってるんだけど」

 

「いや、いつでも連絡してくれていいよ」

 

向こうでレイナの両親が驚き慌てている姿が視界に入り、どうしたんだろうと思いながらもリーリエとグラジオの相手をしていた。

 

………

……

 

誕生日のパーティーも終わり、またいつかと帰って行くルザミーネ一家とお別れしていた。

 

「二年後くらいに何かに巻き込まれてそうな一家だったなぁ」

 

「先生、今日は泊まっていってください。それとレイナへのプレゼントについてちょっとお話が……」

少し顔色が悪い両親がそう告げて懇願するような目をしていた。

 

 

ツカサからしたらピンクダイヤモンドは部屋にたくさん転がっている石のような物だが、他の人達からしたらとんでもない値段がする超高級品だった。

 

この世界ではディアンシーにしか創れず、その存在も幻で世界にほんの少ししか出回っていない貴重な宝石。

 

 

そのまま防音の部屋に通されるとムスッとした顔のレイナが母に宥められ、傷つかないように厳重に保管されたネックレスが入った箱がテーブルに置かれていた。

 

「先生、流石にこれは受け取れません。これだけの大きさのピンクダイヤモンドを使ったネックレス、私達の家が全財産をはたいても買えないレベルの物です」

 

「……三人にならいいですね。これから見せる事は内密にお願いします」

 

「それってどういう……」

 

「ディアンシー、この子がお前が会いたがっていた俺がプレゼントを贈った相手だよ」

 

 

ラプラスの代わりに行きたいとワガママを言い、仕方なく連れて来ていたディアンシーをボールから出していた。

 

「う、そ……」

 

「まさか……」

 

「わぁ、お姫様みたい……」

 

『レイナ、初めまして。私はディアンシー、ツカサのパートナーです』

 

美しい幻のポケモンを前に両親は開いた口が塞がらず、レイナはその可愛さに言葉を漏らしていた。

 

「し、喋っているの?」

 

「せ、先生?」

 

「テレパシーで脳内に話し掛けているって考えるといいと思いますよ。世間知らずでワガママな所もありますけど、優しいポケモンですから……いや、待てよ? 俺にはワガママばかりで優しくないような」

 

 

ディアンシーはレイナと握手をし終えるとツカサの隣に座り、ツカサの為に用意されたケーキを見つけてそわそわしていた。

 

「俺はさっき食べたから、ディアンシーが食べていいよ」

 

『ありがとうございます! 流石は私のパートナーです!』

 

「ディアンシーを見てもらえれば分かると思いますけど、プレゼントしたネックレスのピンクダイヤモンドとそれの加工を手伝ってくれたのも彼女なんです」

 

器用にフォークでケーキを食べてニコニコしているディアンシーの頭を軽く撫で、問題のピンクダイヤモンドについての話をしていた。

 

「幻のポケモン、ディアンシー……」

 

「はい。自分はこいつのパートナーですけど、ピンクダイヤモンドを創り出させようと思っていません。……まぁ、勝手に出すんで頭を悩ませているんですけどね」

 

『……私が創り出した物は私の意思で消す事が可能です。歴代のディアンシーの物は不可能ですが、ツカサから奪おうとしても無駄になります』

 

「ピカ? ピカピ?」

 

『はい、私が認めない限りツカサ以外の者に渡っても消えます……というよりも消します』

 

ツカサがパートナーになって頻繁に遊びに来るようになり、ツカサのポケモン達から様々な話を聞いて姫から女王と呼べる様な存在に内面が成長し始めていた。

 

「おぉ……プリンセスからクイーンに成長してる感じがするな」

 

『ツカサのパートナーとして当然です』

 

ポケモンを愛し愛されるトレーナーの鑑であり、そんなツカサを知る各地方を巡った時に守ったり戦ったりした様々な伝説や幻のポケモンが森に住み着いていたりする。

 

「……先生は本当に私達を驚かせてくれますね」

 

「あの、俺の事はツカサって呼んでもらいたいです。先生って柄でもないですし、敬語もいいですから」

 

「ですが……」

 

「あなた、あれは先生……ツカサ君のお願いみたいよ」

 

「そうか……」

 

「それとネックレスはレイナちゃんに俺とディアンシーがプレゼントしたものですから、返すなんて言わないでください」

 

「分かった。お世話になったツカサ君の頼みは断れないよ」

 

ディアンシーとケーキを食べるレイナを三人で見て、ほっこりしながら和やかな空気になっていた。

 

 

そのままピカチュウとディアンシーと話をし始め、レイナは改めてディアンシーからネックレスを受け取り嬉しそうにしている。

 

大人組は改めて紅茶を楽しみながら積もる話やパーティーでの話をしていた。

 

「ツカサ君を紹介してほしいって人が多かったのよ? 映画ファンな奥様方もいて、主人の恩人だから私からは無理なのってお断りしたけど」

 

「三人から離れて料理を取りに行った時に結構話かけられましたね。こう、何て言うか……ボディタッチが激しかったですけど。ご迷惑にならないように対応しましたが」

 

様々な女性に話し掛けられては当たり前のようにハグをされて目を白黒させ、早々に料理を手に三人の元へ戻っていたようだが。

 

「私も娘や孫がファンだから後日でもいいからサインを貰えないかと言われたよ。私は妻の恩人だから図々しい真似は出来ないと断ったが」

 

「えっと、それくらいなら書きますよ?」

 

 

そんな和やかな時間も終わり、案内されて風呂に入って出ると新しい服や下着にパジャマが用意されていた。

 

着て来た物はクリーニングに出してから後日届けるとのメモが残されており、仕方なくパジャマを着てからオーダーメイドの高そうな服を持って部屋に戻っている。

 

「広すぎて不安になるなぁ」

 

………

……

 

久しぶりに歩いて帰るからと送ってもらうのを断り、三人にメイドや執事といった面々に見送られながら帰って行く。

 

「さてAZに連絡したし、久々に旅みたいな事をして帰ろう」

 

そう言って暫く歩いていると急に目眩がし、膝をついて耐えていると目の前にフワフワと見た事のない不思議なポケモンが浮いていた。

 

帽子のような透けた部分があり、そこから女性の髪のようになった触手が伸びている。

 

それがツカサに触れようとした瞬間にルカリオがボールから飛び出し、問答無用で蹴り飛ばして普段はしない牙を剥き出した威嚇を行っていた。

 

「……お前が何かは分からない。ただ野放しにしてはいけないって何かが俺の内側から叫んでる」

 

フワフワと浮きながらもツカサに近づき、ルカリオを警戒しながらも触れようとしてくる。

 

 

「……ルカリオ、試してみたい」

 

「……クォン」

 

ルカリオが仕方ないと渋々引き下がり、フワフワと浮いているポケモンはツカサに触れ……

 

「……取り込まれた感が半端ない。ただこいつは別個体と違って、ずっと俺を別世界から見てたとかちょっと怖すぎんよー」

 

受け入れて心が通じ合っており、ルカリオに蹴られた部分を傷薬で治してあげている。

 

「!」

 

「え、マジか。最後の一体が空いてるって結構前に見て聞いてたから、急いでこの世界に来たって?」

 

そうして一度ツカサを解放するとソワソワウロウロし始めていた。

 

「おお、何ともない。私達を研究しているあの人からはUB1ウツロイドと呼ばれている、か。どうせなら最後の仲間になる?」

 

いつも持ち歩いている空きのモンスターボールを手に取りながら聞いてみると、機敏な動きでボールに触れて中に入りカチッと抵抗なく捕まっていた。

 

「……ルカリオ、なんかごめん」

 

「……」

 

危害を加えるどころかツカサに捕まりたくて出てきた事が明らかになり、なんとも言えない空気のままボールの中に戻って行った。

 

 

それからフラフラしながら数日かけて自宅に戻り、第七世代の仲間達にウツロイドを紹介している。

 

「さて、ウツロイドは親睦を深めておいて。俺はディアンシーを送ってくるから」

 

そう言うとカロスを旅した面々を連れ、庭に作られた地下へ続く道を降りて行った。

 

 

そして今度は視界が急に真っ白になり……

 

 

 




かなりの富豪にしておけばこんな感じに繋げられるかなって。
次回はあっさり映画話。

UBはウツロイド以外もその内に加入予定。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。