ポケットモンスターXY 道中記   作:鐘ノ音

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カロスで初めてのジム戦

七時にセットしていた目覚ましで起き、寝癖を直してから新しい服に着替えている。

 

着ている物以外に七日分の着替えがあるので、センターに着いて洗濯して乾燥機を使いローテーションすれば何とかなりそうだった。

 

 

「朝は……クロワッサンとカフェオレとサラダでいいか」

 

ジムに挑戦するのに朝は軽くしようと簡単な物だけを頼み、食堂で美味しく戴いている。

 

荷物を取りに部屋に戻り、ケロマツとヤヤコマの入ったボールをジョーイさんから受け取って礼を言ってからポケモンセンターから出ていった。

 

朝日が眩しく思わず伸びをし、腰のホルダーにボールをセットしている。

ジムに挑む前にハクダンシティを見て回ろうと足を進めた。

 

 

『ハクダンシティ。古式ゆかしい街』

 

街の中央にある水場にはロゼリアの像があり、像の両手の花の部分から水が流れていて涼しげでいいなと思いスマホで写真を撮っている。

 

他にもトレーナースクールもあるが興味がないのでスルー、カフェが多いなと考えながらジムへと向かっていった。

 

するとジムの前に昨日追い抜いて行ったローラースケートの少女がおり、勝てばローラースケートをくれると言うのでジムに挑む前の前哨戦だと考えバトルを受けている。

 

だがヤヤコマがつつくだけの簡単なバトルだった。

 

 

「うわー、凄い! ジムリーダーより強いかも! はい、約束してたコレ!」

 

「ねんがんの ローラースケートをてにいれたぞ!」

 

「使い方は……お兄さんなら分かるよね!」

説明書を探してごそごそしていたが、どうやら無くしたのか誤魔化している。

 

「なんと」

 

「あ、あはは……バイバーイ!」

ツカサの何とも言えない目に耐えられず滑っていってしまった。

 

「雑だなぁ……まぁ、いいか。検索すれば出てくるだろ」

ジムの壁に寄りかかりながらスマホをネットに繋ぎ、ローラースケートの使い方を見始めた。

 

 

………

……

 

無事に使い方は分かったがこんな事をしている場合ではないと、ジムがもう開いているか確認するのにドアの前に立って軽く押してみている。

 

「よかった、開いてる」

開いている事が分かるとそのまま中に入っていった。

 

中に入ると一人のおっさんが居てチラチラ見てくるが無視、それよりも飾られている写真に目が行き見て回っている。

 

その写真には虫ポケモンが多く映っていて、使うならヤヤコマだなと考えながら全て見終えていた。

 

部屋の中央にある棒で下に降りるようで、おっさんの何か言いたげな視線を無視して棒に捕まり下まで滑り降りていった。

 

 

「うおっ! このジムは蜘蛛の巣的な仕掛けなのか。めっちゃ怖いんだが」

不安定な足場におっかなびっくり歩いている。

 

トランポリンのような弾力もあり、それが歩きにくく少し怖いようだった。

 

そのままおっかなびっくり進んでいくとジムに所属しているトレーナー達がバトルを挑んで来て、ここでもヤヤコマのつつく無双が繰り広げられている。

 

そしてそのまま全てのトレーナーを倒すとジムリーダーの元にあっさり辿り着く事が出来た。

 

「あの」

 

「勝負に挑むその表情。いいんじゃない、いいんじゃないの! 初めてのジム挑戦? いいんじゃない、いいんじゃないの! 負けて悔しがるのも……勝った瞬間もどちらも被写体としてサイコー! いいんじゃない、いいんじゃないの!」

 

 

「は、はぁ……」

朝からテンションが高い女性のジムリーダーに引きながらも話はしっかりと聞いている。

 

「さあて、このビオラ。シャッターチャンスを狙うように勝利を狙っていくんだから! やるわよ、アメタマ!」

そう言うと許可も取らずにパシャっとツカサを撮影し、アメタマを繰り出していた。

 

「行け、ヤヤコマ!」

 

 

二匹はにらみ合うようにして向き合い、互いにトレーナーの指示を待っている。

 

「ヤヤコマ、つつく!」

 

「アメタマ、あわよ!」

 

ツカサの指示を聞いたヤヤコマは宙を滑空してアメタマに接近し、その嘴で思いきりつついていた。

 

だがアメタマも負けじとあわを吐き離れようとするヤヤコマを追撃し、両者決め手に掛けたまま元の位置で再びにらみ合いを始めている。

 

 

「ヤヤコマとにかくつつくんだ!」

 

「アメタマ、ちょっと来なさい!」

 

アメタマはすぐにビオラの所に向かい、キズぐすりでつつかれた所を治療してもらっている。

 

そして元の場所に戻った途端にヤヤコマにつつかれ、治してもらった場所以外が傷ついてプラマイ0になっていた。

 

 

「ヤヤコマ!」

 

「あ、アメタマ!」

 

分かってると言いたげに目配せをしたヤヤコマがアメタマをつつき、耐えられなかったアメタマをダウンさせている。

 

 

 

「ヤヤコマ、よくやった。次はお前だ、ケロマツ!」

 

「アメタマの敵討ちよ、ビビヨン!」

 

そしてツカサはアメタマを討ち取ったヤヤコマを戻してケロマツを繰り出し、ビオラは最後の一体であるビビヨンを繰り出していた。

 

 

「ケロマツ、みずのはどう!」

 

「ビビヨン、かたくなる!」

 

水の振動がビビヨンに襲いかかるがどうという事はないらしく、攻撃に耐えて身を堅くしていた。

 

 

「ケロマツ、もう一度みずのはどう!」

 

「ビビヨン、まとわりつく!」

 

ビビヨンが鬱陶しくケロマツにまとわりつくが、至近距離からの水の振動はダメージが大きかったのかビビヨンは少しふらついていた。

 

「みずのはどう!」

 

「まとわりつく!」

 

一番最初のジムだから仕方がないとはいえ、互いに同じ技を繰り返すだけで今一迫力も何もない。

 

ケロマツとビビヨンもそれを感じているのか、若干手を抜いているようにも見えてくる。

 

そしてビオラは目の前の男がジムリーダーを前に一切の緊張をせず、自身のポケモンの限界を把握して指示を出しているのに気がついていた。

 

バトル中に目の前の男が何者なのかと考えていたせいで……

 

 

「みずのはどう!」

 

「しまっ……ビビヨン!」

 

ツカサは自分を見ているビオラの一瞬の隙を突き、まとわりついていたビビヨンに零距離で叩き込むように指示を出し吹き飛ばしてダウンさせていた。

 

 

 

「……勝ったか」

 

「貴方は……ううん、貴方と貴方のケロマツは最高のコンビね。いいんじゃない、いいんじゃないの!! ホラ、これをどうぞ!!」

ビオラはポケットからバグバッジを取り出すとツカサの手を掴み、掌にバッジを乗せている。

 

「ありがとうございます」

 

「それと技マシンもプレゼント!」

 

「技マシン83、まとわりつく……か」

さっき散々使われた技だから印象に残っているが、その技にあまり興味がないからかすぐに鞄にしまっている。

 

「技マシンを使うと一瞬でポケモンに技を覚えさせる事が出来るの。ちなみに技マシンは何度でも使えるのがポイント」

 

「エコですな」

結構前までは使い捨てだったのになー、と考えながら呟いていた。

 

「さて、あたしの後ろにテントがあるよね。その先の階段を昇ればすぐ上に戻れまーす」

ビオラがそう言うとサッとテントが開き、その先には階段が見えている。

 

「あ、その前に一緒に写真撮ってもらっていいですか? これからもバトルをしたジムリーダーと並んで写真を撮りたいので」

 

「いいわよ? あ、ちょっと来て!」

ビオラは近くにいるミニスカートの少女を呼びだしていた。

 

「ビオラさん、何ですか?」

 

「あたしとこの挑戦者君が並ぶから写真を撮ってほしいの」

 

「あ、これでお願いします。それと俺はツカサです」

ツカサはスマホをミニスカートに手渡し、少し間を開けてビオラの隣に並んだ。

 

「それじゃあ撮りますよー……」

 

「……♪」

 

「ッ……ちょっ、まっ!」

急に寒気がしたと思ったらビオラが左腕に抱きついてきて、慌てているタイミングで撮られてしまった。

 

「ふふふ、負けて悔しかったしちょっと仕返しも兼ねて」

 

「災難でしたねー。お兄さん、顔真っ赤ですよ?」

ミニスカートの少女はクスクス笑いながらスマホを手渡してくる。

 

「悪魔だ、ここに小悪魔が二人も居る……えっと、ありがとうございました」

柔らかくていい匂いだったなぁと考えながら冷静にスマホを受け取り、ビオラ達に礼を言いながら階段を昇っていった。

 

 

どこに通じているのかと考えながら昇ると一番上で壁が横にスライドし、出てみると入り口にあった大きな写真が出口になっていた。

 

そのまま何事もなく出ていこうとするとおっさんが慌てて近寄ってきて、今を逃したら無視され続けると思ったのか話しかけてくる。

 

「おー! バクバッジ! いいねぇ、いいねぇ!」

 

「……」

 

「あっ、ちょっ、待って! 行かないで!」

 

「チッ……なんすか」

怪しすぎるおっさんをスルーしようとしたが、追いすがった来たので仕方なく止まって話を聞く事にしていた。

 

「ポケモンセンターで元気にしてあげた後、ミアレのポケモン研究所に行ってみるといいんじゃない? 君にポケモンを託した博士も驚くだろうな!」

 

「あんたに言わなくてもこれから行くよ! あんたはいったい何なんだ!?」

無駄な時間を使わされて思わずキレ、ジムに挑みに来た挑戦者は何事かと見ていた。

 

………

……

 

そして一度ポケモンセンターに寄り、予定通りミアレに行こうとすると途中で女性に声をかけられている。

 

「あら貴方! プラターヌ博士からポケモンを貰った子供達の一人でしょ! 一人だけ大人みたいな子がいるって写真を貰っていてよかったわ!」

 

「は、はぁ……」

 

「ああ! バグバッジ! ビオラに勝つなんて貴方凄いじゃない!」

 

「ど、どうも……」

 

「あっ! ごめんなさい、挨拶が遅れたわね。私、パンジーと言います。ジムリーダービオラは妹で私はジャーナリストなの! これはお近づきの印ね」

そう言うと鞄から何か機械を取り出しツカサに手渡してくる。

 

「学習装置?」

 

「あら知ってるのね。私はミアレシティの出版社に居るから、よければ遊びに来てね!」

そう言うと返事も聞かずに行ってしまった。

 

「……一方的に話すだけ話して行っちゃうとか、カロスの人達はフリーダムすぎるわ。関係ないけど、レッドさんがシロガネ山に山籠りし始めた理由がナツメさんにエスパーストーカーされない場所がそこしかなかったからってマジなのかな」

急に気になり始め、グリーンに真偽の程はどうなのかメールで尋ねている。

 

 

 

そのまま返信が来る前に四番道路のパルテール街道に入り、綺麗な庭園をうろついている。

 

エネコ、レディバ、ミツハニー、フラベベ、スボミーが出てきたが捕まえずに倒していた。

すると

 

「ケロマツ……?」

 

「ケロッ!」

何度目かの戦闘を終えるとケロマツの様子がおかしくなり、いきなりその体が輝きを放ち始めた。

 

「そうか、進化するのか」

 

「ゲコゲコッ!」

光が収まるとケロマツは進化を終えており、その姿はケロマツの時の倍の大きさになっている。

 

「ケロマツ……じゃなくてゲコガシラ、コンゴトモヨロシク」

ツカサはそう言うとゲコガシラに手を差し出した。

 

「ゲコッ!」

完全に意思の疎通が出来ており、差し出された手を握っている。

 

「よし、じゃあ戻れ」

握手を終えるとゲコガシラをボールに戻し、再び庭園を徘徊し始めた。

 

 

庭園の中心にはぺルルの噴水という物があった。

 

真ん中にはパールルの像があり、それを中心に左右の縁にはタッツーの像が設置されている。

 

二体のタッツー像が水を吐いてそれをパールルが受け入れているが、これが受け入れ調和を生み出すという事なのか?と考えながら写真を撮っていた。

 

それから何人かのトレーナーとバトルをしながら進んでいると、あるバトルが終わった時にヤヤコマの様子がおかしくなった。

 

そしてケロマツの時と同じように光輝き始め、その光が収まると倍近く大きくなりキリッとした顔になっている。

 

「ピピピピピピピ!」

 

「おー、進化したからかピが増えてテンション高いな。ヒノヤコマ、ヤヤコマのノーマル・飛行の複合から炎・飛行の複合タイプになったのか。ひのこも覚えたし、これからもよろしく。……重さが1.7kgから16kgって凄いな」

肩には乗せない事を心に誓いながらボールに戻し、そろそろ三体目を手に入れたいなと考えながら先を急ぎ始めた。

 

 

 

 

ミアレへの入り口にいる博士に関係している二人の男女のトレーナーにフェアリータイプの説明を受けている。

 

「フェアリータイプと言うのは最近分類されたばかりのポケモンのタイプです」

 

「タイプの相性を見直す切っ掛けになりましたのよ! で、あたくし達プラターヌ博士に頼まれてフェアリータイプと他のタイプのポケモンと戦わせていましたの。麗しいあたくしの麗しい名前はジーナ!」

 

「僕はデクシオ。二年前プラターヌ博士からポケモンと図鑑を託された……言うなれば君達の先輩です」

 

「よろしければあたくしがポケモン研究所に案内いたしますわ!」

「あ、お願いします」

黙って二人の話を聞いていたが案内してくれるというのでお願いしていた。

 

「レッツゴーですわ!」

 

 

 

研究所に向かう道中のゲートで技マシン27のおんがえしを貰い、ジーナ達に案内されてポケモン研究所に到着していた。

 

イッシュのヒウン並に広いミアレは後で見て回ろうと決め、ジーナと共に研究所の中に入った。

 

「アサメタウンからここまで遠い道のりでしたわね! 博士は三階でお待ちかねでしてよ。さあ、エレベータにお乗りなさいな」

 

「ジーナさん、案内ありがとうございました」

下心八割で礼を言いながら握手を求めている。

 

 

「まあ、紳士ですのね」

 

「それでは」

握手をしてからすぐに三階に向かっていった。

 

 

キョロキョロしながら降りるとやたらイケメンな中年の男性が居り、さわやかな笑顔でツカサを出迎えている。

 

「やぁ、ようやく会えたね」

 

「初めまして、プラターヌ博士」

 

「初めまして、ツカサ君。よーし、こっちにおいで」

そう言うと軽快な足取りで奥に向かっていった。

 

 

「マサラタウンから遠路遙々こんにちは! 改めて自己紹介をするよ、ボクがプラターヌ! ポケモンとの久々の旅は楽しいかい? 色んなポケモンに出会った?」

 

「一応色々見て回りましたが」

 

「よーし、それなら早速ツカサ君の図鑑をチェックしちゃうよー。……セントラルカロスで見つけたポケモンは32匹だね。おお! そこそこ埋まってきていい感じになってるねー! 他の博士が言うように君にはキラメキがある! とにかくいい感じー! 本当はポケモンを託すメンバーを選ぶにあたって一つの町から一人のトレーナーにする予定だったんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん、アサメタウンなら知り合いのベテラントレーナーさんのお子さん。その時に知ったサキさんの息子さんの引っ越し。 そう! 君はカロス地方を知らない……それがグッときた、つまりグッドポイントなわけ! それにナナカマド先生とボクの妹弟子、オーキド博士から君の事をよろしくってお願いの電話やメールが来ていたのもあるよ」

 

ツカサの母親はサキという名前らしく、プラターヌとも知り合いのようだった。

 

「なるほどなー」

 

そんな会話をしているとエレベータが下がり、再び上がってくる音が聞こえてくる。

 

「博士ー、サナです♪」

 

「お待たせしました」

サナとセレナが乗ってきたようで、一緒に旅立った三人がこの場に揃っていた。

 

「よーし! みんなでポケモン勝負だよ! ツカサ君の相手はこのプラターヌがするよー」

 

「よろしくお願いします!」

 

「言っておくけどボク強くないからねー! フシギダネ!」

 

「何かしまらないというか……行け、ヒノヤコマ!」

 

ヒノヤコマとフシギダネが現れ、互いのトレーナーの指示を待っていた。

 

ヒノヤコマは進化してからの初バトルで、気合いが入っているのが伝わってくる。

 

 

「ヒノヤコマ、ひのこ!」

 

先制攻撃だとフシギダネの弱点で覚えたばかりのひのこを使うように指示を出すと、そのクチバシからひのこを勢いよく放ちフシギダネを一撃でダウンさせた。

 

ひのこの直撃でフシギダネは後ろにひっくり返り、目を回してダウンしている。

 

 

「まさかこんな簡単にやられちゃうとは思わなかったよ。さぁ、次はゼニガメだよ!」

プラターヌはひっくり返ったフシギダネをボールに戻すと、次はとゼニガメを繰り出してきた。

 

 

「ヒノヤコマお疲れ。次はお前だ、ゲコガシラ!」

ツカサもヒノヤコマをボールに戻し、同じ水タイプのゲコガシラを繰り出した。

 

「へぇ! ケロマツをもう進化させたのかい!? やっぱりツカサ君を選んだのは正解だったね!」

 

「そいつはどうも。ゲコガシラ、みずのはどう!」

 

ゲコガシラがゼニガメに放った水の振動は綺麗に決まったらしく、ゼニガメは目を回しながらゲコガシラの方を向いている。

 

 

「まさか混乱!? ゼニガメ、しっぽをふるんだ!」

 

プラターヌの指示を理解しているのかしていないのか、目を回したまましっぽをふった。

ゲコガシラの防御力は下がったが特に影響はないとツカサは判断している。

 

 

「でんこうせっか!」

 

「ゼニガメ……ああっ!」

 

ゲコガシラは高速でゼニガメに突っ込み、すれ違い様に一撃を与えて元の位置に戻った。

 

ゼニガメは起き上がったと思ったら勢いよく転び、自身にダメージを与えている。

 

 

「よし、トドメのでんこうせっかだ!」

ゲコガシラはフラついているゼニガメに高速で接近、そのまま張り倒して完全にダウンを取っている。

 

 

「戻れ、ゼニガメ。最後はヒトカゲだよ!」

ボールにゼニガメを戻すと最後の手持ちであるヒトカゲを繰り出してきた。

 

 

「タイプ相性的に間違いなく勝てるな。ゲコガシラ、みずのはどう!」

 

「やっぱり速い……!」

 

水の振動はヒトカゲを一撃でダウンさせた。

プラターヌは指示を出す間もなく倒れたヒトカゲを戻し、感心したような目で見ている。

 

 

「いやー、まいったなー。凄いじゃないか! ……大体わかった! 」

 

「何がですか?」

セレナとバトルをしていたサナが不思議そうに尋ねた。

 

「ツカサ! 君は面白いポケモントレーナーだね! よし! もう一匹ポケモンを連れていくといいよー! ほら、選んじゃってよー!」

 

そう言うとケースに入った三つのモンスターボールを見せてきて、中にはフシギダネ、ヒトカゲ、ゼニガメが入ったボールがある。

 

 

 

「じゃあ……ヒトカゲで」

 

「ヒトカゲかー! なるほどいいねーいいよー! ヒトカゲを選んだのならこのメガストーンも渡しておくよ」

ポケットからリザードナイトXを取り出して手渡してくる。

 

「ほらほら! 君たちも仲良く選ぶといいよー!」

サナとセレナにも選ぶように言いながら残り二つを見せていた。

 

「えー迷うー」

 

「これから長い間一緒にいるのだから、ゆっくり決めればいいわ」

セレナは最初のようにサナに先を譲り、自分は後からにするつもりのようだった。

 

 

「さてとボクの読みではそろそろみんなが揃うね!」

 

「プラターヌ博士」

 

「あれ、みなさんもういらしてたんですか?」

ティエルノとトロバが集まった事で始まりの五人が揃っている。

 

「ねっ。よーし! みんなそろったね! それでは改めてみんなに! 最高のトレーナー目指しポケモンとの旅を楽しんでよ! そしてカロス地方のポケモン最大の謎! 新たな進化の可能性! メガシンカの秘密を解き明かそう。そう! 先程渡したメガストーンは戦いでの新たな姿! メガシンカの秘密の手がかりなんだよ!」

 

「なるほど……」

ツカサはメガシンカという言葉の響きに心を動かされ、他の者達もそれぞれ自身の目的を再確認していた。

 

 

そしてプラターヌの話が終わるとツカサは真っ先に研究所から出て、気になって仕方のなかったミアレの観光を始めようとしていた。

 

しかし入り口に凄い髪型の男がおり、ジーナと何かを話していてツカサに来るように言っている。

 

「ほう! 君が博士からポケモン図鑑を……素晴らしい! 実に素晴らしい事だよ、選ばれし者だね。私はフラダリ」

 

「どうも」

 

「輝かしい未来の為、ポケモンの事を究めようとプラターヌ博士から色々教わっています。おお! 君が持っているそれはホロキャスター! 情報は大事ですからね、君も活用してください」

 

「はい」

家電を購入した時に貰った物であまり使っていなかったりする。

 

「いいかね! この世界はもっとよくならないといけない。その為に選ばれた人間とポケモンは世界をより良くする為に努力せねばならないのです」

 

「はぁ……」

目の前の男に何か嫌な感じがしており、曖昧に返事をしている。

 

「ではプラターヌ博士によろしく伝えておいてください。我は求めん! さらなる美しい世界を!」

そう言うと男は研究所から出ていってしまった。

 

「それにしても……フラダリさんの望む美しい世界ってどんな世界かしら?」

 

「さぁ……」

色々な組織と戦ってきた経験からか、世界を云々言う奴は信じられなくなっている。

 

「この広いカロス地方には色々なポケモンがいますわ。ポケモン図鑑がそれを知る為の切っ掛けになると嬉しいですわね」

 

「はい、それでは失礼します」

ジーナに礼をし去ろうとして……

 

 

「あ、ツカっちゃん。サナ、気になる所があるの! というわけでまた後でね♪」

サナはそう言うとさっさと研究所から出ていってしまった。

 

「話したい事があるの。カフェ・ソレイユで待っているわ、ツカサ!」

そう言うとセレナもさっさと出ていってしまった。

 

「セレナさんの話っていったいなんでしょう。ホロキャスターではダメなんでしょうか……?」

 

「秘密っぽいけどなんだろうね……? 気になるけれど知らないふりをしておいた方がよさそうだねえ」

 

二人が話し合っている内にそっと研究所から出て、今度こそミアレの観光に繰り出していた。

 

 

「貰ったヒトカゲは♂、無邪気で食べるのが大好きか。とりあえずリザードナイトXを持たせておこう」

一度ボールから出し、プラターヌから渡された石を渡してから戻している。

 

「……今気がついたけどこの図鑑の機能にあるポケパルレとかって何なんだろう。まぁ、今晩ポケモンセンターで試してみるか。ここはヒウンより迷いやすいと思うわ……あ、返信来てる『お前、カロスに永住するんだろ? 今度レッドと遊び行くわ。それとさっきのメールの件はマジだぜ』。マジかよ」

軽く本当だと言われて本気で驚いていた。

 

「そういやカントーとジョウトのジム回りしてる時に知り合ったトウコちゃんは探してる人見つけられたのかな。……シロナさんは教えてないのに俺の実家に居た時は心臓止まるかと思ったなぁ。下に降りたら母さんと仲良くなっててお茶してたとか超怖い」

 

トウコとは気が合いしばらく一緒に旅をしていたが最近は連絡もなく、何をしているか気になっているようだった。

 

初めて遭遇してから目をつけていた存在が自身の理想通りに育ち、そろそろ刈り取るかとシロナは確実に外堀を埋めにかかっている。

 

そんな人脈が凄いツカサのせいで一年前の正月のマサラタウンは物凄い事になっていたりする。

 

新年初の元・現チャンピオンによるトリプルバトルを観戦出来たのはツカサとオーキド博士のみなのが贅沢だった。

 

 

「……シロナさんの事は気にしてもしょうがない、そろそろセレナんとこ行くか」

掌の上で空のモンスターボールをどうやっているのかは謎だが、勝手に回転させながら歩いていく。


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