ずっと探していた嫁さんの1人が見つかった。
ねねちゃんだ。
スパロボには出てないけど、バブルガムクライシスのネネ・ロマノーヴァなんて怪しいと思っていたのに違ったようだ。
まさかQボスとは。あのQって覆面のオバQみたいな唇からだよね、絶対。
それを教えてくれた
「どういうことかしら?」
「なにが?」
「エージェントと言っていたわ」
ああ、あまりのショックに思わず口に出しちゃっていたか。
ヘタなことを言ったら今にも撃たれそうな雰囲気だ。
「実はね、俺は」
言いかけたところで僅かに振動するビニフォン。
今度はメール着信だ。銀鈴ちゃんにばれないように孔明ちゃんとやり取りするために音は出さないように設定していた。
でも、気づかれちゃったみたい。
「メールだよ」
「……見て」
許可をくれる銀鈴ちゃん、そのかわりだろう、銃を抜いて俺に向けてきた。
メールを確認すると当たり前だが、孔明ちゃんからだった。
そして、その内容は探し人が見つかったという待ち望んだもの。……残念ながら見つかったのは俺の嫁さんではなかったが。
「エマニュエル・フォン・フォーグラーが見つかった」
「……え?」
「フランケン・フォン・フォーグラー博士も一緒だ。かなり衰弱してはいるが生きているらしい」
銀鈴ちゃんの銃を持つ手が震えている。
メールを銀鈴ちゃんにも視えるように思念操作で設定変更し、ビニフォンの画面を見せた。
彼女は銃をこっちに向けたまま片手でひったくる。
「嘘……」
「確かめる気はあるかい?」
「あなたは何者なの?」
「それもついてくればわかるよ」
震えながらも銃を構えたまま深呼吸する銀鈴ちゃん。
震えがおさまり、そして。
「お父様に……フォーグラー博士に会わせて」
銃を下ろし、ビニフォンを返してくれた。
BF団の医療施設に到着した俺と銀鈴ちゃん。
本部ではない。場所を知られないように銀鈴ちゃんはガルーダの口の中に入ってもらいながらの移動だけど、いくらなんでもいきなり本部に連れて行くことはできないでしょ。
メールで指定された場所は南国のリゾート地のような保養所だった。世界各地で戦争中なんだけどここはそんなことを感じさせない。くつろいでいたのが覆面をした連中ってのは異様だけど。
彼らもガルーダに驚いているね。
「ついたよ」
「ここは? ……やはりBF団!」
覆面連中を見てとっさに身構える銀鈴ちゃん。だけど構えた銃は地面からシュルっと出てきた黒い液体に奪われ、さらに拘束されてしまう。
「だいじょうぶ。心配はいらないから。ロデ……アキレス」
俺の言葉で液体は銀鈴ちゃんを解放し、黒豹の姿をとった。銃は口にくわえている。
「すぐに会わせられると思うからおとなしくしててね」
「……わかったわ」
銃を取られてもそんなに動揺したように見えないのは小さくても国際警察機構のエキスパートといったところか。
「おかえりなさいませ、ビッグ・ファイアさま」
俺を出迎えてくれる孔明ちゃんとちっちゃいマスクドエージェント。ねねちゃんだろう。C級以下のエージェントなので覆面着用は義務だ。
「ビッグ・ファイア?」
「なんかそうらしい」
さすがに今度は驚いた銀鈴ちゃん。
それを気にしないようにして、俺はちっこいエージェントを見る。
「Qちゃんはあとでね」
「早くするのですぞ!」
両手を振り上げるポーズはまさしくねねちゃんだ。やばい、嬉しさのあまりに泣きそう。早く素顔が見たい。
「フォーグラー博士は?」
「かなり衰弱しております」
「そんな……」
ジャイアントロボのフォーグラー博士は孔明がエマニュエルと会った時には既に亡くなっていた。だが、俺が孔明ちゃんに情報を与えてバシュタールの廃墟の下を探してもらっため、死亡する前に保護できたのだ。
「危険な状態です」
「そうか。エマニュエルは?」
「フォーグラー博士の病室に。こちらです」
孔明ちゃんの案内で病室に向かう。
歩いてる途中、俺と銀鈴ちゃんとの間に覆面ねねちゃんが割り込んできた。
焼きもちだろうか? ちょっと嬉しい。
「護衛ですぞ!」
「彼に危害を加えたりしないわ」
病室ではベッドで点滴を受けて眠っている白髪の老人と、その横に座っている青年がいた。
俺たちが病室に入ると青年は立ち上がり、銀鈴を見つける。
「まさか……ファルメール……本当にファルメールなのか?」
「兄……さん?」
感動の再開だけど、俺は別の方で驚いていた。
幻夜の声が違う!
……幻夜ことエマニュエル・フォン・フォーグラーって若い頃は中の人が違ったんだっけ。思わずアルベルトに弟子入りするよう勧めたくなる声だ。
俺がショックを受けているうちに2人はお互いを本人だと納得したのか抱き合って泣いていた。
「シズマを……シズマを止めろ……」
「お父様……」
うなされるフォーグラー博士に涙ぐむ銀鈴ちゃん。
一方、エマニュエルは握り締めた拳に力をこめる。
「父さんはシズマ博士を許さない」
「そんな……」
「いや、そんなことはないからね」
まったく、まぎらわしい寝言だよ。OVAだと遺言か。
使用後にやっと見れるチュートリアルなんか撮ってないで、先にちゃんと事情を説明しておけばOVAにおける悲劇はおきなかったのに。はた迷惑な爺さんである。
「キミになにがわかる!」
「シズマドライブの欠陥。フォーグラー博士もそれに気づいて研究を続けているのだろう」
息子にもそれぐらい教えておいてあげてほしい。
「な……キミはいったい誰だ?」
「頭が高い! このお方こそ、我らがビッグ・ファイやであらせられる!」
白羽扇を俺に向けて紹介する孔明ちゃん。それやめて、なんか恥ずかしい。
しかもビッグ・ファイアをかんじゃマズイでしょ。まあパチモンくさくて今の俺には合っているのかもしれないけどさ。
って、エマニュエルひれ伏さないで! すっごい気まずいから!
……もしかして言わないと駄目なの?
「
華琳ならともかく、俺にこんなことを言わせないでくれ。恥ずかしすぎる!
なんか別の話題をふらないと。
「そ、それでフォーグラー博士の容態はどうなんだ?」
「保護時にかなり暴れましてエージェントが少々乱暴な方法をとってしまい負傷しています。しかもその治療を受けている最中も実験を続けると騒ぎ、その後倒れました」
精神状態も普通じゃないのかもしれないな。
「あとは本人の回復力次第です」
「そうか……」
まずいな。サンプルができる前っぽい。だからフォーグラー博士が生きているんだろうけど、このままじゃサンプル完成前に亡くなってしまうかもしれない。
銀鈴ちゃんも悲しむだろう。
フォーグラー博士に回復魔法を使用すれば怪我の治療はできる。融合したこの身体でも魔法の使用は可能だ。
ただし、俺の回復魔法だと体力までは回復しない。
「これをフォーグラー博士に」
スタッシュからエリクサーを取り出してエマニュエルに渡す。某ドリンクをベースに
ゲーム仕様なので不老不死になったりはしないが、体力を全快、全ての状態異常も治療するチートアイテムだ。当然万病にも効く。
もちろんMPによる成現。時間が切れれば元のドリンクに戻るが、薬の効果で治った身体はそのまま。少なくとも病気の猫に与えた時はそうだった。
ちなみに仙豆も作った。そっちは病気は治らない。
「これは?」
「エマにょエルさん」
渡されたエリクサーを眺めている彼を孔明ちゃんが促した。……もしかして幻夜って正体を隠すだけじゃなくて名前が言いにくかったから変えたんだろうか?
「は、はいっ!」
孔明ちゃんに素直に従うエマニュエル。さっきからなんだろう、びびっているようにも見えるのは。
眠ったままの博士の口に注がれるエリクサー。いや、無理に飲ませないでもかけるだけで効果はあるはずなんだけど。
「おおっ!」
エリクサーの薬効に病室のみんなが驚く。死人のようだったフォーグラー博士の顔色がよくなり、髪まで黒くなったからだ。
あれ? フォーグラー博士って元気なときも白髪じゃなかったっけ。若返りの効果はないはずなんだけどなあ。
「お父様!」
銀鈴ちゃんの声が届いたのか、フォーグラー博士の目がゆっくりと開いていく。
「……ファルメール……」
「はい、お父様!」
「父さん!」
親子3人抱き合って再会を喜ぶ。
俺たちは気をきかせて病室を後にした。
「さすがビッグ・ファイアさまです」
「薬が効いてよかったよ」
ちょっと強すぎるな、これ。あっぱれ対魔忍世界でも人に使わなかったのは正解だろう。
擬態獣のインサニアウイルスによるラビッドシンドロームにも効果はあるだろうけど、一般に出回らせていい薬じゃあないね。
……まだ何人かには使う予定があるんだけどさ。
「彼らはこの後、どうしますか?」
「孔明ちゃんならわかるだろう?」
「はわわっ……先ほどのビッグ・ファイアさまの発言ですとシズマドライブの欠陥を研究させた方がよろしいかと」
「うん。手伝ってやってくれ」
シズマドライブはこれから必要なアイテムだ。
スパロボKがまじってくるとなると、ガンダムSEEDのニュートロンジャマーも存在する可能性が高い。
核分裂を抑制するというニュートロンジャマーは、
それを避けるためにも梅サワー……シズマドライブがほしい。今の欠陥品じゃなくて完全なのがね。
「了解しました」
「あとね、表の方で都合のいい会社を立ち上げたいんだ」
「ふむ。完全版のシズマドライブの普及に使うのですね」
いや、一刀君に頼まれたシーマ様たちの受け入れ先を用意したいだけなんだけど。
BF団という悪の秘密結社の世話になるのを嫌がる嫁さんもいるだろう。
「できるかぎりBF団とは関わらないようにしてほしい」
「フォーグラードライブが完成すればスポンサーもつくと思います」
スポンサーか。必要だろうな。
1年戦争は年末には終わる。……いや、αだからマクロスの落下でもっと早く終結するんだった。それまでに形を作っておきたい。今は10月だからあと2ヶ月か。
資本が必要だ。Fドライブが間に合いそうになかったら、俺のアイテムを売るしかないかもしれない。
会社作って、みんなを探して、インサニアウイルスの治療のためにもゲヒルンにも行かなきゃいけないし……他にもやりたいことが多すぎる。
分身ができなくなったのが辛すぎる!
「とにかく、まかせていいかな?」
「はいっ! おまかせ下さい」
ふう。これで俺が考えるよりは安心……なのかな?
あとでどうするかは確認しよう。バベルの塔やGR計画のこともね。契約空間に入れば密談もできるだろうしさ。
「じゃ、俺はこの子とちょっと話があるから」
「はわわっ、ご、ごゆっくりー」
なにを真っ赤になって。もしかして勘違いしちゃったんだろうか?
……いや、勘違いでもないか。
「さ、ねねちゃん行こうか」
せっかくの南国リゾートな保養所、ちょっとだけでも楽しませてもらわないと。
「ねねは融合のせいで初めてに戻ってしまったというのに……壊す気ですか!」
「ごめん。たまってて……」
南国リゾートを楽しむどころか、部屋でずっとねねちゃんを楽しんでしまいました。半日ぐらい。
素顔のねねちゃんを見たら我慢できなくて、つい。
「はわわやさっきのファルメルがいて、さらにたまるとはどんだけなのですか!」
「いや、2人とはなんにもないし。俺がこんなことするのは嫁さんだけだってば!」
ねねちゃん、ファルメルはシャア専用ムサイですから。
あんな美少女と数週間一緒にいたから、そりゃムラムラきたこともあったけど、俺がなにかできるわけないでしょ。泊まってるとこにはあまり会わなかったけど他の職員もいたしさ。むしろセルフバーニングもできなくてつらかったのよ。
「それなら恋殿に浮気の報告は止めておくです」
「ありがとう」
「でも、あっちのお前がきても2人いっぺんには絶対にお断りなのですぞ!」
「いや、それはないから。
ポータルであっちの地球からこれるかも確認してないし。
人手がほしいのにさ。
「本当ですね? 今だって両方同時はたいへんだったです!」
「それは……ごめん」
「謝るなです! ねねがいいと言ったのです!」
いいって言ってくれたから俺のツインズが両方お世話になっちゃったんだけど、やっぱりちっこいねねちゃんには相当きつかったようだ。もっと手加減するんだった、反省。
「でも、人手はほしいんだよなあ。練習したら分身できるようにならないかな?」
「バカですねお前は。あっちのお前に分身してもらえばいいのです」
「あ」
そうだった。あっちの俺は誰とも融合してないプレーンな状態。分身ができるはずだ。
「さすがねねちゃん。俺はいい嫁さんもらったなあ!」
抱きしめて頬に口付け。
「や、やめるです! ねねは早く恋殿に会いたいだけなのです!」
照れちゃってもう、可愛いね。
「あとさっきスポンサーとか言ったです。ねねに心当たりがあるです」
「心当たり?」
「BF団のエージェントをしている間に気になる企業を見つけたのですよ」
資金や技術に目をつけていたってこと?
「その名もマオウ・インダストリー!」
「え? マオ・インダストリーじゃなくて?」
「最近名前が変わったです」
マオ・インダストリーってスパロボだと主役ロボを開発している会社なんだけど、それが改名? しかもマオウって……。
こりゃ可能性が高いな。
でも本社は月だし、一年戦争中に連絡が取れるだろうか?
フォーグラー親子は俺たちに協力してくれることになった。
博士もエリクサーのおかげで精神状態もよくなっていて、冷静さを取り戻した。名前を隠してシズマドライブの欠陥の暴露と、同時にその改良型も発表する予定だ。
銀鈴ちゃんは国際警察機構を退職してくれることになってしまった。エマニュエルも一緒にこれからできる予定の会社で働いてくれるつもりらしい。
まあ、戦うことになるよりはいいけどさ。スパロボαで出てくる銀鈴ロボはどうしよう?
分身の方は、無事にポータルでこっちにやってきた。
MPの消費は大きかったがポータルで移動できるということは、あっちの地球も遠いけど異世界ではないようだ。
分身のコールサインは当然、
たださ……。
「本当に白髪になっているのね」
どうやら俺のBF団首領というラスボスポジションが気になったらしい。
「キングの方も能力が6分の1になっちゃったからファミリアについていてほしかったのに」
「ザンリュウジンがついているから平気よ」
俺オリジナルの3分の1だったキングは、分身を作ってさらに半分、6分の1の能力になってしまったから心配だ。一緒にいるスパロボJヒロインズが。
「さあ、世界征服を始めましょう」
「違うから!」
BF団、華琳ちゃんにのっとられやしないだろうな……。
オリ主の魔顔の呪いは祝福なので状態異常扱いにはならず、エリクサーでは治らなかったり