俺の分身は、アイナ・サハリンと融合してしまった凛子と無事に合流できたらしい。
といってもコロニーは広いし住民も多い。何千万という人間が住んでいるのだ。
戦火を逃れて避難してきた者も多い。
俺と華琳ちゃんもそんな設定で紛れ込んでいるんだけどね。
その中から探すのは大変だ。
探知スキルでも見つからなかった。
俺が6分の1の分身でスキルレベルも下がってるせいだろう。
「19日に襲撃されるガンダムの場所はわかってるんだけどさ」
「U.N.メディカルセンターだったわね。
華琳ちゃんもポケ戦を視聴済みだから話は早い。
って。
「手に入れるってアレックスを?」
「ええ」
「マジ?」
「大マジよ」
むう。アレックスか。
スパロボだと火力不足で序盤以外役に立たず、クリスはリ・ガズィあたりに乗ってることが多いんだけどさ。
たしかに現時点ではかなりの高性能MSだ。
「ほしいんなら
「ええ。サイクロプス隊が失敗したらこのコロニーは核攻撃を受ける。まあ、そっちは失敗するでしょうけど」
「ポケ戦ではそうだったね」
「朱里とも相談したのだけれど、連邦の新型機をBF団が奪取する。その作戦指揮の実績がいるの」
ああ、華琳ちゃんがBF団でいきなりB級以上のエージェントになるにはそれぐらい必要か。
「季衣ちゃんたちを確保って方法はあるの?」
「それも作戦があるわ」
華琳ちゃんはスタッシュからキッチンカーを取り出した。
彼女はファミリアになったばかりだが、スタッシュエリアの大きさはそこそこある。夢で、契約空間もどきで会う時にいろいろ渡していた物が華琳ちゃんのスタッシュに入っていた。それで熟練度が貯まっていた扱いなんだろう。さすがにMSが入るほどの大きさではないけれど。
「いいにおーい、美味しそうだねー! 肉まん30個! あと焼売と……」
華琳ちゃん作の点心の移動販売を始めて数時間。もう季衣ちゃんがかかってしまった。
さすが華琳ちゃんというべきか、季衣ちゃんがちょろすぎるというべきか……。
次々と注文するのに夢中で俺の顔を見ても気づいてくれないのは悲しい。
「はい、よく食べるわね。これはサービスよ」
「わあ! ありがとうお姉さん! ……あれ?」
華琳ちゃんから大量のサービス品を受け取る時に季衣ちゃんが首を捻る。なにか思い出したのだろうか?
「大変そうね。煌一クン、運んであげなさい」
「え、でも……」
「だいじょうぶだよ。ちょうど今ので出来てるのが在庫切れになっちゃったから」
そのために両手では抱えきれないほどのサービス品を渡してるんだしね。
季衣ちゃんを送ってサイクロプス隊の隠れ家を知った。アニメと同じくGKモーターサービス。名前はわかってたけど、場所がわからなかったんだよね。
念のために季衣ちゃんにもマーキング。スキルレベルも上がってるから持続時間はそれなりにある。
あ、でも俺、6分の1の能力になってるから2、3日ってとこか。
「すっごく美味しいからまた行くねー、兄ちゃん」
「うん。またねー」
……肉まんを食べながらぶんぶんと元気よく手をふる季衣ちゃんの左手薬指には指輪がなかった。
「あれは俺の季衣ちゃんじゃないみたいだ。無印恋姫の、華琳ちゃんの許緒ちゃんだろう」
「そう。ならばホワイトを呼んでテレパシーで覚醒させる手は使えない。私の口づけの出番ね」
華琳ちゃんのバックに散が見えた気がした。
燃える口づけを受けて思い出さずにはいられなくなったのだ!
「でも華琳ちゃん、許緒ちゃんにはそんなことしてなかったんだろ?」
無印許緒ちゃんはエロシーンがない。プレイしてわかった時はショックだったなー。
「……我慢しないで手を出しておくべきだったわ」
「春蘭がいたら思い出してくれたかな?」
それはそれで悔しいけど。……俺嫁の季衣ちゃんならきっとすぐに俺を思い出してくれるから悔しがる必要はないか。
「あ……」
「どうしたの?」
「許緒ちゃんが近づいてくる」
ビニフォンのマップには接近してくるマーカーが表示されていた。
「ごめんね、まだ新しいのは出来てないんだよ」
駆け込んできた許緒ちゃんにキッチンカーにかけられた準備中の看板を指差す俺。
彼女は俺のことは目に入ってないのか、車中を覗き込む。
「華琳さま!」
「やっと思い出したようね、季衣」
「は、はい! あの点心、どこかで食べた気がして……全部食べたら思い出したんです!」
なるほど。点心は許緒ちゃんの釣り餌だけじゃなくて、思いでのキーアイテムでもあったワケか。
でも思い出すのが全部食べてからってのは許緒ちゃんらしい。
許緒ちゃんの案内でサイクロプス隊を確保する。
暴れられると困るのでスリープの魔法を使って眠らせ、捕縛した。いくら6分の1の俺でも、魔法のない世界の人間に簡単にレジストされたりはしない。
……スパロボ世界だから魔法はあるかもしれないか。
「ミーシャ? これはいったいどういうことだ?」
「ごめんなさい。ボク、みんなを死なせたくなくて……」
縛られたままのサイクロプス隊の面々に頭を下げる許緒ちゃん。
「ミーシャ……」
許緒ちゃんの目が潤んで今にも泣きそうに感じられては、彼らも責め立てることができない。
「彼女は悪くないわ。あなたたちこそ、そんな少数でガンダムをどうにかできるつもり? 仮に作戦が上手くいったとしてジオンが勝てるとでも思っているのかしら?」
「はぁ? なんのことだかわからんですよ」
ああ、隊長のシュタイナーは演技も上手かったんだっけ。
「惚けても無駄よ。アンディ・ストロースはこちらで保護している」
「保護? 生きてるってのか?」
頭にバンダナを巻いている男、ガブリエル・ラミレス・ガルシアが思わず反応する。
「ええ。できればあなた達にも協力してほしいのだけど」
無言のシュタイナーに追随するようにガルシアもバーニィも黙ったままだ。
「そう。無理にとは言わないし、安全も保障する。あなた達になにかあったら彼女が泣くもの」
「ミ、ミーシャになにをしたの?」
そう問うのは、サイクロプス隊といっしょにいたのでついでに捕まえてしまった少年、アルフレッド・イズルハ。ポケ戦の主人公である。
「記憶を取り戻してもらったのよ。おかしいとは思わない? 補充された新兵よりも古参の彼女の方が幼いなんて」
「む?」
「な?」
「……俺もそう思った」
「うん」
バーニィとアルは頷き、付き合いの深いシュタイナーとガルシアが悩む。
やはり、
「簡単に説明するわ。あなたたちのミーシャと私の季衣が融合してしまった」
「融合?」
「そう。彼女はミハイル・カミンスキー本来の姿ではない」
本当はロシア系の酒好きのおっさんだもんなあ。
「彼女に起こった現象は世界中で起きてるわ。ジオンと連邦で争ってなんている場合ではない」
華琳ちゃんに説明を任せて行っていた組み立て中のケンプファーのスキャンがおわった。
「許緒ちゃん、これもらっていいかな?」
「え?」
「レンタルでもいいよ」
「う、うん?」
よし。疑問系気味ながらも頷いてくれたのでスタッシュに収納する。人の物は収納できない仕様だからね。借りたら収納できるのは助かる。
「これならアレックスもなんとかなるね。……って、あれ?」
驚愕の表情のサイクロプス隊と0080主人公。目の前でのスキルの使用は衝撃的すぎたか。
ともあれ、これで俺たちが只者じゃないと感じたのか、仲間になることも考えてくれるらしい。
アル少年には帰宅してもらって深夜。
メディカルセンターに侵入する俺。隠形はカメラやセンサーに映らないってのは助かるなー。見つかってもいいようにBF団エージェントの証、Qマスクはしてるけどさ。
探知を使ってサクサクと
「許緒ちゃん、出てきて」
ヌルリと俺の影からQマスク仕様の許緒ちゃんが生えてくる。ついでに俺の影が黒豹になった。
ロデムである。……アキレスだった。
普段は孔明ちゃんの護衛をしているのだが、今回の任務のためにきてもらった。
ポータルを使えたところから考えると、使徒かファミリアなんだろうか?
ビッグ・ファイアってスパロボだと「神であって神でなく、人であって人でない存在」だそうだから使徒ってのはありえるかもしれない。
思い出せないけどビッグ・ファイアが使徒で護衛団がファミリアってとこかな。
そうなるとバベルの塔が拠点っぽい。
「真っ暗で怖かったぁ……」
震える許緒ちゃんで任務に思考を戻す。コクピット内もわずかな明かりしかないんだけど、あっちは本当に暗闇だったのかな。
「できる?」
「うん!」
シートに座った俺の膝の上の許緒ちゃんがアレックスを起動させる。パスワードは俺が魔法で解錠した。
コクピットの壁に外の映像が映し出される。360度スクリーンなんだよね。
「これでボクのものになったのかな? これ、兄ちゃんにあげるね!」
「ありがとう」
「へへー」
許緒ちゃんをなでてから、2人でコクピットを出てアレックスをスタッシュに収納する。
許緒ちゃんが強奪したガンダムを俺が貰ったので、盗んだわけではない。こんな屁理屈だが、ちゃんと収納できてしまった。なんだかなー。
駄目だったらアキレスにしまってもらう予定だったのに。
警備員が騒いで無線機で連絡を取り始めるがもう遅い。
「さ、許緒ちゃん、気をつけて帰ってね」
「ううーっ、またあれぇ? ……兄ちゃんも気をつけてね」
現れたときとは逆に黒豹アキレスが影になって許緒ちゃんを包んで、影のまま移動していく。
無事に帰ってくれよ。
爆弾のスイッチを手につい呟いてしまう俺。
「いいや限界だ! 押すね!」
「ハハハハハハ! 新型ガンダムは我々BF団が頂戴した!」
高らかに宣言すると、壁の側をルパン走りで脱出しようとする
大量の銃弾が
人影が格納庫からほとんどなくなると俺はポータルでGKモーターサービスへと移動する。
さっきの
「上手くいったようね」
「うん。そっちは?」
「まだ信じられないようね。というより信じたくないのかしら、宇宙人の存在なんて。マクロスの落下と一年戦争の終結が実際に起これば入社するわ」
華琳ちゃんはサイクロプス隊が暴走しないように見張りと、彼らの説得を続けていた。
「そうか。じゃあ後でVIPカリバー回してもらおう」
使徒かファミリアじゃないとポータル使えないからね。
「きょっちーはよかったの? ファミリアになっちゃって」
「うん。ボクは華琳さまといっしょがいい!」
真名を教えてもらったけど、俺嫁の季衣ちゃんと紛らわしいので許緒ちゃんのことはきょっちーと呼ぶことにした。彼女もファミリアになってくれたので一足先に島へポータル移動。
サイクロプス隊はBF団に奪われたNT-1の捜索ということでリボーコロニーに残っていてもジオン軍からはなにも言われてないらしい。彼らを回収している余裕もないのかもしれない。
「シーマも説得できたよ」
「説得、ね。どんな説得だったのかしら」
華琳ちゃんの目線は一刀君の首筋。キスマークがついている。
他の女の存在をシーマ様が感じ取ったのかね。
「大型Fドライブ及び、ミノフスキークラフト、電磁ネットワイヤー発生装置も完成しています」
さすがスパロボ世界、技術者たちが有能すぎる。
バリュートシステムは耐熱素材のエアクッションだけが間に合わず、俺が成現した。
俺は機材を月面のマオウ社で受け取って、シーマに会いに行く。
「へえ、あんたがかい?」
「天井煌一。一刀君の友人で同僚だよ。よろしく」
これがシーマ・ガラハウ……若いな。シワもない。あれは一年戦争後のつらい生活で刻まれたものだったんだね。
「なんだい、ジロジロ見るんじゃないよ」
「いや、一刀君が惚れたのもわかるなと」
「ふん、お世辞はいいよ。それより、今後の保障は本当なんだろうね?」
「ああ。これが作戦と、我が社の資料だ」
孔明ちゃんがまとめてくれた資料を渡す。
かわりに副官らしきおっさんがシーマ艦隊の戦力を教えてくれた。
ザンジバルII級機動巡洋艦リリー・マルレーン、ムサイ級軽巡洋艦最後期型7隻とパプア級輸送艦。
モビルスーツは海兵仕様のMS-14Fゲルググ
あれれ、補給に関しては厚遇されてね? 最新設備だよね。
もしかしてキシリアはそれなりにシーマ様たちを大事にしてた?
キシリアがシャアに殺されなかったら、ジオン敗戦後もシーマをアクシズに受け入れたんだろうか?
これは艦隊司令のアサクラ大佐が悪いのか。やつはギレン派だし。
まあ、どっちにしろ我が社がもらうから関係ないか。
アサクラが代理司令官に任命したシーマに汚れ仕事の全責任を押し付ける前に、ジオンとやつの行為を発表してシーマ様たちを保護しよう。
クリスマスに落ちてきたマクロスは無事に受け止めることができてしまった。
いろいろ無理があったと思うけどさすがスパロボ世界といったところなんだろう。
地上に被害をほとんど与えずに南アタリア島にマクロスを置くことに成功。
所有していても危険なだけだし、会社の資金を得るためにマクロスは連邦政府に売ろうと思う。
いくらで売れるかな?