今回はファイヤー視点
「なんでこんなことに……」
orzな俺の前には桃色の髪の少女。
しかも裸!
眠ってはいるがスヤスヤなどとはとてもいえない苦しげな表情で目の下には涙のあとがクッキリ。さらに下半身の方はとても描写できない状態。
つまり事後!!
どうしてこうなった……。
▼ ▼ ▼
バトル・エロースの
グランゾンがあまりにも粘るのでバトル・エロースも戦闘に参加。変形してマクロスキャノンで
気づけばそこにいた。
どこをどう見ても戦艦のブリッジではないどころか一緒にいたはずの嫁さんたちの姿はなく、かわりに周囲には少年少女と
俺を指差してなんか言ってやがる。
「あの変な衣装、平民の大道芸人?」
失礼な。これは簡易宇宙服も兼ねたパイロットスーツだ。月面で戦っていたのだから万が一を考えて着ているのは当然だろう。
そう言う彼らの服装は統一されていて、しかもどこかで見たような……。
椅子がなくなって腰をついた形のまま状況を把握しようとする俺の前にやはり見覚えのある美少女が現れる。
その低い背。薄い胸。そしてピンク髪。
はい、どっからどう見てもルイズです。
なに? スパロボだったはずなのにゼロ魔の世界だったの!?
まさかゴーレムがロボ扱い?
そりゃ主人公の能力的にスパロボだったら超強いだろうけど!
俺が混乱してる間に彼女は詠唱を済ませ、そして俺の唇を奪った。
げっ、まさかこれ、使い魔の契約?
嘘だろ……。
なぜ回避できなかったかと言えば、俺が主人公のかわりに召喚されたなんて考えはこれっぽっちも浮かばなかったからだ。
どう考えてもありえないでしょ!!
ワケがわからん状況にヤケになっていたのかもしれない。
反射的に少女を抱きしめた俺は華琳仕込の舌技で彼女の口内を蹂躙する。ルーンが刻まれる熱さを誤魔化すためにも舌に集中してじっくりと。
俺の唇の貞操を奪った相手はジタバタともがくがガッチリとホールドされているので逃げることはできずに数分後、ビクっとしてそれきりおとなしくなった。
失神した少女を横抱きにして周囲を見回せば真っ赤になった少年少女たちと中年の男。
「見ていたのか? 気の利かない人たちだ」
「い、いや、その……」
まだ顔の赤い中年が近づいてくる。禿だ。たしか……ツルベールだっけ?
ゼロ魔はフィギュアは持ってるけど、アニメと二次創作――主にエロ同人――しか知らんのよ。原作小説は序盤しか読んでない。
「状況がわからない。詳しい話を聞かせてくれ」
ツルベールに使い魔召喚の説明を受けた。
なお、パイスーは簡単に脱ぐことはできないし、男に肌を見せるのも嫌だとルーンの確認は断った。才人のルーンだったら面倒だし。ガンダ・ルヴだっけ、重機動メカっぽいよな。
目覚めたルイズに部屋につれていかれ、たぶんゼロ魔と同じ説明をまた受ける。
もう聞いた内容だったので適当に聞き流し、さらに適当に自身の話をしながらもルイズ可愛い。貧乳最高! などと俺は萌えていた。
嫁さんたちの状況確認や連絡を取ろうなんて頭にはなかった。情けない。
今なら原因がわかる。使い魔関係の魔法か俺に刻まれたルーンだかによって精神操作を受けて俺の心がおかしくなっていたのだ。
結婚指輪にもその手のものに耐性を追加する能力が付与されているが、ルーンにはプラス効果もあるので攻撃扱いにならずにすり抜けたらしい。
せめてチョーカーを装備していれば……。
とにかくそのルーンが精神操作を始め、俺の持つ〈精神防壁〉スキルと戦闘開始。精神防壁を突破するためにルーンが力を強めたおかげで、俺の心は
そんな俺の前で着替えを始めるルイズ。下着を渡された瞬間に俺に植えつけられた愛が暴走してしまう。
これってどう考えてもOKサインだよね、って。
▲ ▲ ▲
んで現在。つまり冒頭の状態。
最中に〈精神防壁〉スキルがレベルアップしてルーンの干渉を上回ったらしく、精神操作から逃れた俺は自分の仕出かしてしまったことに絶賛後悔中。
ルイズが暴れたり、下手したら平民に汚されたと自殺するかもしれないと不安になったのでスリープで熟睡させていた。
暴走中ながらも部屋に結界符を張って音もれを防いでたので、外にはバレていないと思う。
自宅以外でのプレイの癖がついていたのでよかったぜ。
「どーすんべ?」
嫁さんたちにバレたら嫌われるだろうな……。
ってそうだ、嫁さんたち!
慌ててビニフォンを取り出し連絡を取ろうとするも誰とも連絡できず。付近にファミリアの表示もなし。
ポータルも開けなくなっていた。マーキングされている場所が1つもないようだ。ここはやはりゼロ魔の世界っぽいけど本当に俺が召喚されたのだろうか?
みんなは無事だといいだが。
心配だが他の俺もいるので大丈夫だと信じるしかない。
「とはいえ、今はまずこっちか……」
ヒロインを陵辱してしまうなんて俺にはありえないことをやらかしてしまった。
平行世界の俺はそこの華琳にやったらしいが、それを聞いた時は俺とは違う酷いやつだと軽蔑してたのに、まさか自分まで……。
朝が怖い。だがいつまでも眠らせておくわけにもいかない。彼女が目覚めた時になんて言いわけをすればいいんだ。
必死に誤魔化す方法を考える。素直にルーンに操られたと説明……しても駄目だろうな。
ええい、こうなったら夢オチってことにしてやる!
仮設シャワーをスタッシュから出して裸のルイズとともに入り、起こさないように注意しながら彼女の身体を綺麗にする。
……ルーンの支配から逃れたのになんで興奮するかな?
全身くまなく、そして中まで丹念に綺麗にした後は“特製エリクサー”で治療。
この薬はつい酔った勢いで〈成現〉してしまった、処女膜すら再生する設定の逸品だ。
さすがにテストもできず、まだ使ったことはなかったのだが見事に成功。
うん。しっかりと復活してくれた。綺麗な……だから確認しただけで興奮してはいかんぞ、俺。
エリクサーの効果で後ろの方の出血も止まっているので一安心だ。
汚れたシーツ類は汚れてない状態に〈成現〉。ルイズにネグリジェを着せてベッドに寝かせれば証拠隠滅完了。
ふう。これで明日の朝、「そんなことはしてない、夢だった」と言い聞かせて信じてくれれば俺の勝ちだ!
物的証拠もないのだしきっとうまくいく。……といいな。
こんな姑息な手段しか思いつかない我が脳に酷く自己嫌悪に陥りながら俺は床で眠りについた。
◇
真っ白い空間。
見覚えのあるここは。
「契約空間!」
やばい。ルイズはファミリア候補だったのか。
接触での契約空間入りをOFFにしていても夢では擬似契約空間に入れるんだったけか。
おそるおそる首を動かして彼女を探すと、へたり込んで震えながらそれでも俺から逃げるようにずりずりと後ずさりする少女がいた。
やべえ。確実に怯えている。
美少女にこんな目で見られるなんてショックだ。
女性に汚物を見るような目で見られることはしょっちゅうだったけど、これもツライ。
「あー、そんなに怯えなくていい。これ夢だから」
「……ゆ、め?」
お、反応した。
これはいけるか?
ここで誤魔化せれば目覚めた時も夢だったと思ってくれるはず!
「そう、夢。こんな変な空間、あるはずないでしょ? これは夢なんだよ」
「夢……」
夢だといいなあ。
俺が嫁さん以外に手を出しちゃったことなんて。
鍛えていて精神値であるEPがそれなりにあるから耐えられているけど、以前だったら後悔のあまり俺の方もおかしくなっていたかもしれない。
「うんうん。さっき俺としちゃったこともみーんな夢だから、起きたら忘れてしまう」
「う、嘘よ! そう言ってわたしを油断させようとしてるのね! またわたしを汚すつもりなのよ!」
「い、いや、よく自分の身体を見てみてくれ。そんなことをしたように見えるかい?」
「……汚れていない……痛くない……本当に夢?」
やっぱり痛かったのか。ごめんね。
せめてもう1人いれば後ろは使わないで済んだし、もう片方からのフィードバックで痛みもやわらいだだろうに……。
「うん。夢だから忘れようね」
「あ、あんなにツラかったのが夢だなんて……」
「けっこう悦んでいたじゃないか」
さすがに嫁さんの相手で俺も慣れてきてるんだから、いくら処女相手とはいえそれなりに感じてくれてたはずだ。操作された俺の心が彼女を愛していたんだから、無理矢理とはいえちゃんと気を使って丁寧にやさしく……おや、ルイズがジト目でこっちを見ているな。
「だ、誰が悦んでなんて! ……やっぱり夢じゃないんじゃないの!」
へたり込んだまま泣きながら腕を振り上げている。
ミスった。経験を積んで慢心してたのか、ついこぼしてしまった反論のせいで誤魔化しそこねてしまったようだ。
こんな時はあれしかあるまい。
「ゴメンナサイ」
土下座して謝罪する俺。
もう他にできることはない。
「謝ったって赦さないんだから! わたしにあんなこと……死ねっ! 死んでわびなさいよっ!」
「わかった。死のう」
「え」
「俺が死んでも代わりがいるから」
……ここで死んだらどうなるのかな?
「だが君はいいのか? たった1日で使い魔を死なせてしまってはメイジとして評判が悪くなるのでは」
「うっ」
「だいたいだな、君のような魅力的な美少女にあんなことをされたら誘っていると勘違いするのも当然だ。俺の死後、また人間の使い魔を召喚してしまったらその時は用心しなさい」
なんか偉そうに説教?
襲ってしまったやつの言い分じゃないよね。
彼女もそう思ったらしく顔を真っ赤にして抗議してきた。
「なっ、なによなによ、わたしが悪いとでも言うの!」
「ええと……たとえば命を残り1年に縮める毒薬があったとしよう。だがこの毒薬は命を縮めるのと引き換えに絶対に魔法が使えるようになる。君ならこの毒をどうする?」
「あるの!?」
「いや、たとえだから」
そんなにも魔法が使いたいんだろうか?
……だろうなあ。ちょっと違うけど、俺の呪いも自分ではどんなにがんばってもどうしようもないという点は同じか。だからルーンにあっさり操られてルイズを愛しく思っちゃったのかもしれない。
「まぎらわしいこと言うなっ! 誤魔化されないわよっ! ……で、でもたしかに使い魔をすぐに死なせてしまうのは……」
「どうだろうここは一つ、悪い夢を見たと思ってお互い忘れるというのは?」
「忘れられるかっ! 初めてだったのよ! 貴族の純潔なのよっ!」
「いやいやいや。見てのとおり、君の身体は綺麗になってるだろう。処女も復活しているから」
残念ながら〈鑑定〉スキルだと処女扱いにはなってないけどさ。
どうやら膜が復活しただけでは処女とは判定してくれないらしい。
でも紫苑たちはちゃんと処女に戻ってたよな? ……ああ、俺の〈成現〉の時に処女って設定してたからか。
まあ、ここでは〈鑑定〉なんてないだろうから処女に戻ったと言って差し支えあるまい。
「……あんた何者よ?」
「異世界から召喚されたってさっき言ったじゃないか」
「そんな、本当なの?」
「ああ。異世界から召喚された使徒。それが俺」
使徒だってばらしちゃったけど、いいか。
もし本当にゼロ魔の世界なら剣士神の評判なんて気にする必要ないだろうし。
それともここが俺の担当世界なんだろうか?
いや、きっとグランゾンの爆発とエクサランスの暴走で関係ない世界に跳ばされただけだと俺は予想している。みんなもいなしマーキングもないからね。
「なんでそんなのがわたしの使い魔に……召喚に失敗しなかったからやっとメイジになれたと思ったのに!」
「俺だってわからん……んん? 1回も失敗しなかったのか?」
「そうよ! ちょっと爆発はしちゃったけどちゃんと成功したんだから!」
むう。たしか召喚に何回も失敗してからやっと主人公の才人の召喚に成功するんじゃなかったっけ? だけどその前に俺が召喚されてしまったってことだな。
俺が契約破棄に成功してまた召喚をやり直せば才人が召喚されるかもしれん。
「あんた、使徒とか言ったわね。なにができるの?」
「世界の救済」
「は?」
「それが俺の任務。担当は多分この世界じゃないけど」
「胡散臭いわね」
まったくだ。
柔志郎の担当世界みたいにゾンビだらけになっていてしかも現地人が倒せない魔物を倒すとかの実績がなければとても信じられはしないだろう。
「今説明できるのはこの空間。ここは
正確にはその偽物だがそこまで言う必要もないだろう。
「契約?」
「使い魔の契約と違ってキスなんかじゃない」
そう言ったら怯えた表情で距離を取ろうとアタフタし始めた。
いったいどんな方法だと思ったんだか。
「勘違いするな。契約は書類に記入するだけだから。あと別に契約してくれなくていい。ファミリアならまにあっている」
「そうなの?」
「ああ。だから俺が担当の世界に行けるようになったらお別れだ」
この世界でモタモタしてるワケにもいかん。
本当はすぐにお別れしてもいいのだがヤっちゃった手前、彼女が困ることはしにくい。
「あ、あんたはわたしの使い魔なのよっ!」
「なんとか契約解除する。そうしたらまた新しく使い魔を呼んでくれ。もうすぐルーンも消せそうだし」
一時的にとはいえ、俺の精神防壁を突破するなんてかなり強力なシステムみたいだけどさっき〈復号魔法〉で解析してだいたい構造はわかった。解除することもできそうだ。
ルーンによって付与される力は魅力的ではあるが、どうせ世界の固有原理だろうから俺の担当世界では使えないだろう。力が欲しいならルーンを〈成現〉すればよさそうだ。
「そんなすぐに使い魔をかえるなんて……」
「困るのは魔法使い的に? それとも貴族の体面ってやつ?」
「どっちもよ!」
むう。いい案だと思ったんだがなあ。
仕方ない。みんなとの連絡がつくか、状況がはっきりとわかるまではルイズの使い魔でいるか。
「わかった。しばらくはキミの使い魔でいよう。ええと……主の身を護って、キミの望む素材を探し出せばいいんだろ」
「え、ええ。……できるの?」
「こう見えてそこそこ強いのよ、俺」
剣、というか刀は十兵衛に鍛えられてそれなりに実戦もこなした。
こっちでは魔法使いと戦うことの方が多そうだが、それこそ問題ない。
俺には〈大魔法使い〉スキルがある。このスキルは俺が人形から戻る時に設定改竄でレーティアが追加してくれたスキルなんだけど、元の〈魔法使い〉スキルより強力な部分もあったりする。
レーティアはイメージする時にセラヴィーを参考にしたのだろう、彼に近い能力が俺にはあるのだ。レーティアにもチャチャを読んでもらっててよかったよ。
〈魔法使い〉スキルでもかなり魔法関係のラーニング力が高かった俺だが、今はさらにカウンターも追加されているのだ。そう、まさしくセラヴィーのように!
ギャグ漫画出身のあいつほど無敵ではないだろうけどさ。
「……本当に?」
「うたぐり深いなあ。どうすれば信用してくれるんだ?」
「そうね……あんた、なにができるのよ?」
「わりと色々とできるけど。あ、子供はまだ作れない」
使徒とそのファミリアは担当世界の救済が済むまで子供はできない。
まあ、〈成現〉を使えば作れないこともないけど。でも嫁さんとの子供はまだできないんだよなあ。
◇ ◇
翌朝。寝ぼけたルイズを着替えさせて、自分はスワップアプリで早着替え。
着ているのは大江戸学園の制服。子供状態以外でも着れるように買っていたものだ。俺のも改造してあって見た目からはわかりにくいがチャックがついていたり、ガンベルトみたいに刀を固定しやすくなっていたりするのだ。
もちろん刀も装備しておく。ここも物騒だろうし。
左手のルーンは見られるとまずいかもしれないのでレンズを上から貼って隠すことにした。
まだ形だけで〈成現〉していないので特殊機能はないが、簡単には剥がれないようになっている。
部屋を出るとキュルケと火トカゲに遭遇した。
これがサラマンダーか。ずっと速いされちゃうのか。
「おはよう、ルイズ……あなた、どこか変わった?」
「おはよう、キュルケ。どういう意味よ?」
「いつもよりも女を感じるんだけど……まさかそいつと?」
げぇっ。なんか鋭すぎるぞこの褐色おっぱい。
そしてルイズ、そこで真っ赤になるんじゃない。
「こ、こいつがなによ!? わたしが平民となんてどうにかなるわけがないじゃないっ!」
「ふーん」
疑わしそうに、というよりニンマリと楽しそうな目でこっちを見る褐色おっぱい。たぶんわかってるんだろうなぁ。
「あまりルイズ嬢をからかわないでやってくれ。俺は天井煌一。彼女の使い魔になった男だ。お嬢さんは?」
「お嬢さん?」
お嬢さん呼びがおかしかったのか、笑いを堪えるようにしばらく震えてから名乗ってくれた。やはり俺には似合わなかったのか。
◇
キュルケと別れ、食堂へ。
どうせ俺はまともに食べられないんだろうな。まあ、一応マナーも知ってるけど完璧じゃない自信しかないのでそれはかまわない。
やはり粗末な食事しか出なかったので床にどかっと座り、懐から出すように見せかけてスタッシュから弁当を取り出す。
「それは?」
「愛妻弁当。これだけじゃ足りない。昨晩、ちょっとがんばりすぎたもんでな」
思わぬ反撃にルイズがまた真っ赤になって俺を怒鳴ろうとしたが食堂にいることを思い出したのか、おとなしくなった。「おぼえてなさいよ」と呟いていたのは聞かなかったことにする。
ああ、月ちゃんの弁当は美味いなあ。
その後、教室で錬金魔法を見せてもらった。ふむ。ああやるのか。後で試してみよう。
〈成現〉と違って時間制限もないようだしロボに使えれば便利すぎる。ガンダリウム合金とか超合金Zが錬金できないものだろうか。
ルイズも指名されたがもちろん爆発させた。
教室の片づけをしている彼女は一見堪えていないように見えたが、そうでないことはわかる。どう声をかければいいんだか。
「……なにか言いなさいよ」
「キミは悪くない」
「あんたに何がわかるのよ」
いや色々と知っているけどね。
虚無であることをばらせば少しは機嫌がよくなるか?
ルイズが虚無を使いこなしてワールドドアだっけ、あの魔法が使えればみんなを探しやすくなるはずだ。
だけどそれ以上に面倒が増える。
聖戦だっけ? 勘弁してもらいたい。
ルイズが虚無だということは周囲から隠しておいた方が無難だろう。
「そんなに魔法が使いたいか?」
「いつか成功させるわ」
「そうか……」
ルイズから大きな魔力を〈感知・魔力〉スキルが感じている。ファミリアになってくれれば魔法は使えるようになるだろう。
さっきの〈鑑定〉では〈魔法〉スキルは持っていなかったが、こっちの魔法と使徒やファミリアの魔法が違うということだと思う。〈魔法〉スキルを習得できれば、使徒の魔法は爆発させずに使えるはず。
「なによ、そんな顔して。……まさかあんたが使えるようにできるとでも?」
「方法がないわけじゃないが……君はこっちの、杖を使う魔法がいいんだろう? 俺のファミリアになることで使えるようになるのは別系統だから、下手したら異端てことにされるかも知れない」
「……本当に魔法が使えるようになるの? 爆発しないで!」
ルイズを刺激しないようにゆっくりと頷き、補足を続ける。
「だけど、ファミリアになったら俺がこの世界を出る時は一緒にきてもらうことになる。別のアプローチを考えよう」
「魔法が使えるならそれでもかまわない!」
「もっとよく考えて、ね。あとで後悔するから」
無駄かな。俺だって呪いが解けるって言われたらすぐに誘いにのっただろう。
ルイズを虚無じゃなくなるように〈成現〉する方がいいか?
虚無じゃないと困ることって……ないわけじゃないか。
ええと、この先おこることってたしか……決闘してロケラン回収して王女の依頼とゼロ戦……あんまり詳しく覚えていないな。ビニフォンに小説版、入ってたっけ、あとで確認しないと。
ゼロ戦は見たい。俺のスタッシュにロボは入っているし、俺単身でも飛べるけどそれでもゼロ戦は気になる。日本男児としては当然だろう。
あ、喋る剣もあったな。どこで入手だっけ。
◇
片づけをおえるといい時間になっていたので昼食。ルイズはずっと考えていて反応が薄い。
ゼロ戦のためにもメイドさんと会いたいのだが、こんな様子の主を一人残すのも使い魔としてはまずいかもしれない。
たしかギーシュとの決闘イベがあるはずなんだけど……スルーしてもいいかな。土系統の魔法使いとは知り合いになっておきたい気もするが。
ゴーレムができれば〈成現〉のベースに役立つだろうし、錬金だけじゃなくて固定化もほしい。
ん?
ギーシュ……なにか引っかかる。
決闘イベントはたしか彼の落し物を拾うことで二股がばれて……モンモランシーと下級生の二股……あ!
「思い出した! ルイズ!」
「な、なによ? やっぱり使えないみたいって言うの?」
「いや、これを見てくれ。彼女に見覚えはあるか?」
ビニフォンを取り出して、モンモランシーの立体映像を見せる。以前に撮影したものだ。
「なにこれ、マジックアイテム? ……モンモランシーじゃない。えっ? まさかこれに封印されているの?」
「違う、写真だ。そんな物騒なアイテム、こっちにあるのか? そうじゃなくて……こうやって」
ビニフォンでルイズを撮影して立体表示。
「画像を記録してるだけだ。それで、彼女を知ってるのか?」
「知ってるもなにも同級生よ。数日前から行方不明になっているけど」
「数日前?」
おかしい。彼女はその金髪くるくるのせいでセラヴィーにさらわれて人形にされ、もう何年も経ったと言っていた。
こっちとじゃ時間の流れが違う?
……あ! まさかエクサランスの暴走に巻き込まれて、ここは過去なんじゃ?
だからみんなと連絡が取れないし、マーキングもないのか。
「おい君、彼女がどこにいるのか知っているのかね?」
「俺の師匠のとこだよ。半ば強引に弟子入りして薬作りを学んでいる」
人形から元の姿には戻っているんだけど、セラヴィーがどこからさらったか思い出せないのでまだサンダル城にいるはずだ。慰謝料だとセラヴィーから魔法薬のことを教えてもらっている。
ただ、俺の憶測が正しければ
「そこへ案内しろ!」
「無理だ。俺だって行き方を知りたい。……ってあんた誰」
ギーシュでした。この後、どーしても連れて行けだの、モンモランシーの立体表示ができるビニフォンを賭けて決闘だ、なんてことになって。
「僕が勝ったらそれを貰おう」
「平民の大事な物を取り上げる貴族様とか」
「対価は払うと言っているじゃないか」
「そういうモンじゃないんだよ。これは」
嫁のデータが入っているこれを渡せるわけがない。バックアップは取っているけどさ。
「……始めるか」
青銅のゴーレムが出現した。問答無用か。
恋人が行方不明になっておかしくなっているのかね。
仕方なく俺も刀を抜く。
「そんな細い剣で僕の『ワルキューレ』の相手をするつもりか」
「ワルキューレを名乗るんなら5人揃えて歌って踊れっての」
恋! ハレイションTHE WARを脳内で流しながら青銅ゴーレムを袈裟斬りに真っ二つ。この刀は大江戸学園じゃ使えない真剣で剣魂はないけど、剣魂や魔物も斬れる〈成現〉で強化したアイテムだったりする。
刃こぼれもなくここまで綺麗に斬れたのはルーンのおかげだろうけど、俺だって強くなってるのよ。分身してなきゃ
……ルーンがある今なら使えるかな?
刀を片手で持ったままの俺に「ま、まだだ!」とゴーレムを追加しようとするギーシュ。彼に向かって素早く素手の方の腕を振る。
超音速を超えた動きによって発生した衝撃によってギーシュは吹き飛び、杖を落とした。
「これで勝ち。だったな」
「……ああ。君はメイジだったのか?」
「今のは魔法じゃない。騎士の技だ。ほらルイズ、心配はいらなかったろ?」
「あんたのことなんて心配してない!」
ルーンいいな。利点だけ〈成現〉してみるのもいいかもしれない。俺の担当世界が本当にスパロボならかなり役に立つだろう。
◇ ◇ ◇
あれから数日。
あんなことがあったのに俺はルイズと同じ部屋で寝ている。
さすがに藁で寝る気もしなかったので寝袋を使っている。これなら寝ぼけてルイズを襲うこともあるまい。
ちょっと悶々とするが耐えるしかない。早く嫁さんに会いたい。図書館で歴史や地理も調べているがまだ手がかりはない。
そばで寝ているので擬似契約空間入りしてしまうが、俺のむこうでのことを話したり、すぐに擬似契約空間を解除したりして契約はしないことにしている。
ルイズは「今度わたしに変なことをしたら魔法を使えるようにしなさい!」とまた誘っているんじゃないかと誤解しそうなことを言っている。……そこまでして魔法を手に入れたいのか?
俺が襲うのが前提なのは、前科があるから仕方がないのだが悔しい。
キュルケに俺が誘惑された時なんて彼女の部屋に乗り込んできて、俺の無事じゃなくキュルケの無事を喜んでいたし。
「あれはいくらキュルケでも耐えられないわよ」
「そんなにスゴイの?」
無言で頷かれてしまった。「あんなに悦んでいた」とは今回は言えない。でもキュルケの瞳がさっき以上に輝いているのは気にしない方がいいのか?
学院長にも呼び出され、行方不明のモンモランシーのことを聞かれたが俺も帰るすべがないのでどうしようもない、としか答えられなかった。
コルベールにはルーンのことを聞かれたので「レンズの下で今は確認できない」と言っておいた。別のルーンを偽装しておいた方がよかったかな?
貴族を倒したということでメイドさん、シエスタと仲良くなりタルブの村のことを聞くことに成功している。
ゼロ戦が見たくなったのでタルブ村に行くことにした。
虚無の曜日なのでルイズも行くと言う。
「あんたはわたしの使い魔なの。ご主人様をおいて行ってどうするのよ」
「まあいいか」
スタッシュからヘルメットとライダースーツを出して着てもらう。俺はすでに着用済みだ。
「馬で3日ぐらいの距離をかっとばすからな。それ着てないと危ない」
「きょう1日で行くつもり?」
「うん」
帰りはポータルを使えばいい。ファミリアじゃなくてもポータルが使えるようになるアイテムを〈成現〉したら成功したのでルイズを連れて行ってもいいだろう。寮の部屋や学院各所にマーキングも済んでいる。
「まさかワイバーンがいるとでも」
「いや、こいつだ」
スタッシュから出したのは俺の愛車の1つであるプロトガーランド。性能は E=Xガーランドの方がいいんだけど、こっちの方が好きなので。
もちろん俺が〈成現〉した品であり、MPで動くマジックアイテムでもある。
飛行可能なので道が悪くてもなんとかなるだろう。
「なにこれ?」
「ゴーレムみたいな乗り物かな。俺の後ろに乗ってしっかりつかまってくれ」
「こんなのがどう動くのよ」
そう言いながらもちゃんと後ろに乗ったのでもう一度「しっかりつかまれ」と言ってから発進させる。
ふむ。ルーンはまだ効果が出ないみたいだな。俺には〈操縦〉スキルがあるから問題ないけどさ。
◇
途中で適当に休憩、マーキング、マップの確認をする。こんな時にも仮設トイレは便利だ。ルイズもお気に入りみたいだが、あまり自慢されても困る。
トイレを巡って決闘なんてしたくない。
後ろから悲鳴が上がるくらいに速度を出したおかげで明るい内にタルブにつくことができた。
で、村の近くの寺院に竜の羽衣があったわけだ。
だがそれは零式艦上戦闘機などではなく。
「ゴーレム?」
「武御雷……それも紫だと!?」
そりゃたしかに00式戦術歩行戦闘機、通称“零式”だけど!
武御雷がType-00で零戦もゼロゼロって呼ばれたこともあったみたいだから間違ってないのかもしれんけども!
だけどよりにもよって将軍専用機って……。
こんなんもらっても生体認証システムがあるから動かせないっつの!
中にあった刀は
え? まさかシエスタの曽祖父って……。
ここがバーナード星系ってのはないだろうけど。
……ないと思いたい。
19話もちょこちょこと修正、追加
活動報告にちょっとしたまとめ他があります