エクサランスはスタッシュに収納、フィオナとミズホは金を渡して宿に泊まってもらい、俺たちは学園に戻った。
ロングビルがフーケなのは捜索参加者には黙ってもらうことにする。あとで埋め合わせは必要だろうけど、まあなんとかなるだろう。
破壊の杖も無事に取り戻しているから、学院側もそんなに追求しないだろうし。
学院長室での報告。
フーケの正体も巨大ロボの出現も話さない。
破壊の杖を取り戻した、フーケはいなかった、でおしまい。
「すみません。フーケの捕縛よりも生徒の安全を考慮しました」
「よい。ミス・ロングビルの判断は間違っておらん」
そりゃそうだろ。生徒になにかあった方が問題だっての。
フーケを捕まえてないからかシュヴァリエの爵位申請もないようだ。どうせ貴族ではない俺には関係ないし。
その後、一人学院長室に残された俺は破壊の杖のことを聞かれ、小説どおりに答えた。学院長に看取られた兵士は「BETAと戦っていた」とも言っていたそうだからマブラヴ世界からきたと見て間違いはあるまい。
柔志郎の担当世界があっぱれ対魔忍な世界だったように、こっちはマブラヴゼロ魔世界なのかも。
テニスの点数っぽくMuv-
◇ ◇
今夜は小説どおりにブリッグの舞踏会。
特訓されたので踊れないこともないがそんな気分にもならず、才人の行動をなぞる様にバルコニーにてシエスタのくれた料理で一杯やっているのであった。
違うことといえば、そばにはルイズ、タバサ、キュルケ、モンモランシーがいるということか。
タバサも料理を持ち込んでいる。ハシバミ好きね。かなり癖のある食材だけど流琉ちゃんなら美味しく料理してくれそうだな。
仕事中だがシエスタもチラチラとこちらを気にしている。
彼女が誰に似ているかずっと気にしていたのだが、
で、シエスタだが彼女は白蓮に似ているのだ。
連絡があった唯ちゃんだけではなく、白蓮もあっちで見つかった。しかも白銀武と融合しているらしい。
ついでに忍者戦士やヘビーメタルも出てきている。
Muv-0魔世界かと思ったら当初の予定どおりスパロボ世界なのかね?
他の嫁さんもこっちよりあっちに現れそうだな。
唯ちゃんと白蓮はあっちの人間と融合していてその相手は名前繋がりっぽい。白蓮はやや強引な気もするが、タイムスリップする前の華琳ちゃんの言葉「名は体を表す」とはこのことではないのだろうか?
そうなると、ある程度予想できるかもしれん。
マブラヴのヒロインの御剣冥夜が冥琳と、鑑純夏は夏侯姉妹のどちらかってのもありそう。彩峰慧は文、月詠の2人は月ちゃんでも詠でもありえる。もしくは詠美?
涼宮茜は朱金か? 社霞の霞はちょっと考えたくない。
あとは……ゆきかぜちゃんの母親、不知火と同じ名前の戦術機があるけど、これはちょっと無理があるだろう。
とっさに思いつくのはこんな感じか。
中の人で考えればもっといるかな?
あっちの俺が感じている他の俺の気配も気になる。俺ならばテレパシーが繋がるはずなのだが……。
まさか、あっちの世界の俺、なのだろうか。
マブラヴ世界の俺って普通に考えたら死んでいそうだけど、やっぱり名前で?
嫁さんの華琳は華琳ちゃんとは別の世界で自分と会い、そして俺と同じ存在もいると確信したけれど、あっちにいるんだろうか?
華琳、なにしているかな。早く会いたいなあ。
彼女と融合してそうな相手はいない、よな?
……あ!
あっちじゃなくて、このゼロ魔世界に名前で考えるとやばいのがいるじゃないか!
烈風の騎士姫、カリン・ド・マイヤール。
つまりはルイズの母親カリーヌだ。
年齢もかなり違うし、人妻だなんて……頼む、違ってくれ!
「コーイチどうしたの? 顔色が悪いけど」
「ルイズの母親のことで……」
「母さま?」
もし、もしも、ルイズママと融合なんかしちゃってたら俺はルイズパパを許すことなどできないかもしれない。
「あ、ああ。ルイズのお母さんって……ルイズと同じ髪の色なんだよな?」
「そうよ。この髪は母さまゆずりなんだから」
とりあえず、ルイズが知る限りは融合してないか。
あっちの俺の情報だと融合しちゃっても外見は俺の嫁さんのままっぽいもんな。
俺の華琳がルイズを出産したということはないのだろう。
「ダーリン、まさかヴァリエールの家が気になるの?」
「誰がダーリンだっつの。すごい魔法使いだっていうからちょっと気になっただけだよ。貴族に興味はない」
「わたしも気になる。あなたはどんな話を聞いたの?」
む。タバサちゃんがくいついてしまったか。
この子の二つ名は『雪風のタバサ』だけどゆきかぜちゃんではないよな。どっちもちっちゃいけどさ。
さて、どう誤魔化したものか。
「ヴァリエール夫人はまだ喋らないくらい幼いルイズの前に玩具と杖を並べて、どちらかを選ばせた。ルイズは杖を選んで無事だったけれど、その時に玩具を選んでいたらルイズはこの世にいなかっただろう、って噂されるぐらいの厳しい魔法使い」
「母さまはそんなことしないわ! ……たぶん」
「たぶんなの? さすがね」
「コーイチ、母さまに挨拶に行きたいって言うなら……」
誤魔化すどころか藪を突っついてしまったようだ。
慌てて否定する。
「言わない。平民の俺が行ってどうするよ」
「そうよ。ヴァリエールよりもうちにくるといいわ、ダーリン」
「ツェルプストーも貴族でしょ! コーイチは絶対に渡さないわよ!」
キュルケは俺のことをダーリンって呼んでくるけど、ルイズの使い魔だからってのが大きいのかね。
「ちょっとぐらいいいじゃない。口止め料と思えば」
「あのゴーレムのことも聞きたい」
「欲張りね、あなたたち。コーイチ、私ができることなら協力するわ」
むう。
モンモランシーの協力は嬉しいけど、キュルケとタバサの口止め料はどうしたもんだろう?
タバサが一番喜ぶのは母親の治療なのはわかっているんだけどさ。キュルケのはわからん。
「ありがとうモンモランシー。秘密のお礼はなんか考えておくよ」
「もちろん、わたしにもよね!」
ルイズは魔法を使えるようにするしかないだろうな。
それとも俺の代わりの使い魔?
才人がいたとしてマブラヴ世界出身だとどんなヤツになるんだろ。
む!
夏侯妙才……秋蘭の字が妙
むこうの俺に確認してもらった方がいいかも。
使い魔召喚はそれまではやめておくか。
そうなるとやはり杖だよなあ。
◇ ◇
「これはなに?」
「アニメっていって絵を高速で切り替えて動いているように見せているんだ」
擬似契約空間内。ビニフォンで動画を見せながらルイズに説明する。
今夜もベッドに誘われて、酔っていたせいか押し切られてしまった。……泣くのはズルイですよ。
ネグリジェで密着してくるルイズ。唯ちゃんの声を聞いていなければ屈していたかもしれない。こっそりとスリープの魔法をかまして寝かしつけ、誘惑に耐えながらもやっと眠りについたら、擬似契約空間のご主人様はご立腹だった。
なので適当に誤魔化す……いや、杖の参考意見を求めることにする。
「なに言ってるかわからないんだけど」
「ああ、俺が説明するしかないか」
時間があればハルケギニア語バージョンのディスクを
「魔法少女?」
「そう。こっちとは違う架空の魔法使いの話だよ」
見せてるのはリリカルなのはだ。
杖の参考になるでしょ。
台詞を通訳するのはちょっと恥ずかしいけどさ。
ルイズは思ってた以上に真剣に見てくれて、目覚めた頃には彼女の杖をなんにするかが決まっていた。
あとで〈成現〉してあげなくては。
今日はそのためのEP籠め作業かな。俺よりもルイズがやった方が希望どおりになりそう。
でもフィオナたちの方が先か。
そんなことを考えながら朝食を取っていたら、ルイズに来客。
その人物の名はエレオノール。
そう、ルイズの姉である。貧乳の方の。
彼女によって浚われるように俺はヴァリエールさんのお宅にお邪魔することになってしまった。
……行きたくないなぁ。