今回はカライ視点
地球では日本がBETAの攻撃に曝されているが、俺は自分のいる工場衛星の安全確保を最優先。木星の衛星にいるBETA調査に力を入れていた。
「やっぱBETAがいまくるのか」
「太陽系は危機的状況よ。だから神様もあなたたちに大盤振る舞いしたのね」
やっぱり転生特典10コなんてそうでもなきゃなさそうだよなあ。
衛星のほとんどにBETAがいるので早くなんとかしたい。
アダムがいればインパクトって手段もとれるんだが。
「箒型構造だっけ、他の衛星と繋がっているかはわからないけど規模が大きいところを先に潰そう」
「アクエリアを出すの?」
「それはネオ・ディーバ指令室みたいな設備が整ってからにしたい」
テレポートチェンジって緊急脱出にも使えたよね?
BETAを相手に戦うのはいくらスーパーロボットであろうと万全の状態でなければならないだろう。
「また使徒に頼むのですね」
「それしか今はできないよクレアちゃん」
できれば使徒のATフィールドは対策されないようにここぞって時までBETAには見せないでおきたいので、どうすればいいかが悩む。
「イロウルとバルディエル、アルミサエルにこっそりと侵入してもらうのがよかろう」
「クランちゃん?」
「ちゃんではなーい!
ふむ。アルミサエルはともかく、イロウルは細菌でバルディエルが粘菌だっけ?
たしかにむこうの情報を得るのにもいいかもしれん。
えっと、イロウルはシャロンと使徒との通訳をしているみたいだから……。
「目立って気づかれそうなアルミサエルは防衛用に回ってもらうとして、逆に防衛時には活躍できそうにないからいいかもしれないか。シャロン、一番規模の大きいハイヴにバルディエル、行ってもらえるか?」
「わかったわカライ。行けるようよ」
「頼む」
シャロンは意思疎通しているけど使徒も喋るんだろうかね?
みんな綾波声だったりするんだろうか。
◇ ◇
「ここのこれも悪くないですね」
クレアちゃんは工場衛星のドーナツに満足してくれたようだ。
他の転生者たちはなにを食っているのかな。悟空は仙豆だろうけど。
うちの食事は機械が作ってくれたものだったが味に不満はない。これなら最悪の場合、フォールドして太陽系から脱出しても生きていける。
日本だとマズイと噂の合成食品だったのだから俺は恵まれているのだろう。
美少女たちに囲まれて一緒に食事なんて緊張しまくって、味なんてよくわからないけどな!
普段は食事のマナーなんてそう気にしない俺だが今はやたらに気になる。
ええと、迷い箸は駄目で……味噌汁は音を立てていいんだっけ?
「カライ、お酒はいいのかしら?」
「あ、ああ。今日はそんな気分じゃない。まだ安心して飲める状況でもなさそうだし」
本当ならアルコールに逃げたいところだが、万が一BETAからの攻撃があった場合に備えたい。
それに、俺にできるとも思えないが酔って女の子たちに変なことをして嫌われるのもマズイ。
「こんなことをしている間にも地球ではたくさんの人がBETAに殺されているんですよね」
そのことを思ったのか、あまり食欲を見せない少女たちもいる。
たしかに俺も気にならないでもないが、きっと他の転生者たちがなんとかしてくれるはずだ!
「……俺たちはまだ直接戦える状況じゃない。サポートできることをするだけだよ」
俺だって〈死者復活(条件アリ)〉を思った以上に使用しているのだし。このスキルは俺自身には使えないんだから、自分の身を守ることが他の転生者の戦線復帰を助けることになるのだ。
「サポート、ね。それならあたしは歌うわ」
「シェリルさん!」
「こんな時だって、慰霊でも激励でも歌うことに意味はあるでしょう? そのためにカライはあたしを選んだのだから」
いや、マクロスシリーズが大好きだからなんだけどね。そんな深い意味は全然考えていなかったという。
「シェリル、身体の調子は大丈夫なのか?」
「問題ないわ。もしあたしが死んだってその時はカライ、あなたがなんとかしてくれるのでしょう? でもお願い、あたしから歌だけは奪わないでね」
球神のところでの転生時は気づかなかったが、シェリル・ノームは2058年だとまだV型感染症が治ってない。この工場衛星の設備でも完治はできないだろう。
シェリルの言うように死亡して蘇生させれば治るだろうが、できれば死なせたくはない。
「その前にポイントをためてそれを使って治療するか、ランカちゃんに覚醒してもらってシェリルの脳にいるV型ウイルスに腸に行ってもらう」
マクロス30のシェリルは劇場版ではなくTV版っぽいからそれでいけるはずだ。
「わ、私が覚醒!?」
「ランカちゃんもお腹にV型ウイルス、ヴァジュラのフォールド細菌がいるから、それと話しができるようになるんだ」
「私のお腹に……」
「アイモがたしかヴァジュラの恋の歌だったはず」
マクロスFを見せることができれば説明しやすいのだけどな。
でも、あい君なしでは難しいか?
「ええと、とにかく歌ってりゃなんとかなる、かも?」
「決まりね。ランカちゃんも歌いましょう」
「あ、ミーナもね。シェリル、シャロン、鍛えてやってくれ」
ミーナ・フォルテはマクロス30のヒロインの1人で、バルキリーの操縦もするけど歌姫でもある。歌を聴きたいのは当然だろう。
「わかったわ。私も歌う。あらゆる人に感動を与えるわ」
「洗脳は無しで頼む」
シャロンはマジでなにを考えているかわからん。もしかしてBETAも歌で洗脳できそうでちょっと怖い。
でも洗脳能力がなければ歌はいいんで止めたくはない。
◇ ◇
2人の歌は俺の特典である[地球の全放送及び全通信をリアルタイムで送受信できる設備]によって地球に届けることになった。
「今は日本は深夜か。今回は音声のみでいこう」
「ずいぶんと原始的なのね」
「電波ジャックもいいけれど、まずは空きチャンネルの有効利用でいきましょう。気づいた人へのご褒美」
慰霊や激励はどこいった?
そうツッコミたかったがシェリルの歌うダイアモンドクレバスで
俺だけじゃない。クランも泣いている。このクランはミシェルが生きている時間のはずだけど、違うのだろうか。
「私の番、……と言いたいところだけど、カライ、ここに急速接近する機影があるわ」
「なっ!? BETAか?」
も、もう発見されたのか?
まさか今の放送のせい?
「違うわ。転位かしら? デフォールド反応もないのに急に出現して、消えた」
「消えた?」
「そう。BETAとは全く違う謎の存在」
転生者の誰かだろうか?
転位って……まさか悟空? いやでも宇宙空間じゃ生きられないはずだよな?
ああっ!
気を探って瞬間移動してくる悟空からは隠れられない!
こっそり安全な場所から微力サポートがばれるじゃないか!
「なんだいここは?」
突然、背後から声が聞こえた。こんな声、うちの子にいたっけ?
振り向いたら小さな少女がいた。だがクレアちゃんではない。
「ここがお前の基地かい、コーイチ?」
「な、なぜ俺の名前を!?」
目の前の少女はピンクの髪で10歳前後といったところか。
……見覚えがあるな。
「まさかティスちゃん?」
彼女はスーパーロボット大戦に登場したティスによく似ている。誰かが特典で仲間にしたのだろうか?
剛田じゃないよな? シロガネクルーにいるはずがない。ポイント支払って追加した?
「なに、もうあたいの可愛い顔を忘れちまったんじゃないだろーね、コーイチ!」
「ちょっと待って!」
ずいっとゼシカとアイシャが割り込んでくる。俺の腕に抱きつくように左右から挟まれてしまった。
「カライ、なんでこの子があなたの名前を呼んでいるの?」
「あたしたちには恥ずかしいから名字で頼むって、名前で呼ばせてくれない癖に!」
そんなに顔を寄せないでくれ!
ああ、なんかいいにほひがする。そして、なんという
「ん? カライ? アマイじゃなくて?」
「あまい? 俺はカライ。空っぽの井戸で
あれ、もしかして人違いされてしまったのだろうか?
そう首を捻ったら、シャロンから追加情報が入ってきた。
「天井と言えば、カライが気にしていた篁唯依の婚約者ね」
「はい?」
そんなやついたっけ?
もっと地球側の情報を集めないといけないようだ。