大有双   作:生甘蕉

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49話 二つ名

 ルイズは無事に婚約者候補を全員殺さずに倒すことができていた。非殺傷設定をバルディッシュのおかげで入手できていて本当によかったよ。

 烈火さんの無双見てきた後だけに余計にそう思う。

 今のルイズなら非殺傷設定じゃなければ確実に何人か殺して(やって)しまったことだろう。

 

「ルイズの二つ名?」

 

「そうよ。母様の烈風みたいの。未だにゼロのルイズなんて呼ばれることが多いから」

 

 タバサが雪風でキュルケが微熱だっけ。最近のルイズはバルディッシュと練習したフェイトの魔法を使うことを好んでいるんだから彼女の「心優しき金の閃光」か? でも金髪じゃないから「桃色の閃光」とか?

 

「閃光はワルドの二つ名だったよな?」

 

「ええ。まったくもう。あいつに使われてなければ!」

 

 ルイズも同じ事を考えていたらしい。杖にバルディッシュを欲しがるぐらい、フェイトちゃん大好きなルイズだもんなあ。でも「閃光の」だと、銃殺されそうな気もしてくるので避けたいかもと俺は思ってしまう。

 だとすると他の魔法使いみたいに属性からか。光を避けるとなると雷か電気だよな。

 

「轟雷……いや」

 

 ルイズママの烈風ってゼロ戦の後継機からきてるのかな?

 だとするとみんな大好きなあれがいいかもしれない。

 

「震電ってのはどうだ? 雷が光って稲妻が鳴るって意味だったはず」

 

 日本軍の試作局地戦闘機震電。創作ではよく登場する人気機体だもんな。

 そういや、あっちの戦術機って日本軍の軍艦の名前からが多かったっけ。開発する新型機の名前どうするんだろうね?

 

「震電のルイズ……悪くないわね」

 

「そうね。九割殺しのルイズよりはいいわね」

 

「非殺のルイズでしょ、そこは!」

 

 非殺(ゼロ)のルイズってこと?

 睡眠時の疑似契約空間でビニフォンその他からあっちのサブカルチャーに触れさせたのが影響してるのかな。

 

「コーイチには二つ名、ないの?」

 

「うっ……使徒天井ってのが多かったような?」

 

 こっちにくる前の、同僚である他の使徒を助けるために出張してた世界でついたのもないワケではないがろくなのがない。

 むこうでは俺の嫁さんたちが人気になってて、それを独り占めしている俺はやっかみの対象だったから。「ハーレム天使」「UMA天使」などはまだいい方さ。エゴサなんてするもんじゃないね。

 華琳から聞いた異世界の俺の「双頭竜」ってのは、意味を知らなければかっこいいのに。

 

 現在、ヴァリエール領の地下深く、風石の鉱脈があった場所。一括破壊ツルハシで広範囲の風石だけを綺麗にキューブ化させ、回収。できた空洞を土魔法によって強化して、崩壊、地盤沈下を防ぐ作業中である。最初は緊張したがワリと単調な作業なので会話しながらのんびりとやっているワケよ。

 地下で鉱石集めってマイクラのブランチマイニング寄りなのに広すぎてブラマイっぽさがないよ。むしろ整地。俺、整地厨じゃなかったんだけどなあ。

 

 回収した風石は成現(リアライズ)したマイクラ作業台によってブロック化されて安定し、作業台によってクラフトされた宝箱(チェスト)へと収納されていっている。

 

「この作業台って凄いですね。私でも使えるマジックアイテムなんて。さすが煌一さんです」

 

「極秘事項だからね、シエスタ」

 

 作業にあたっているのはヴァリエールの家族に信用できる使用人、それにシエスタである。俺が彼女を信用できるっていうか、裏がないのがわかっているので手伝ってもらっている。

 どうやらマジに白蓮の親戚となっているみたいだし。

 

「コーイチの妻の弟が曾祖父って本当なの?」

 

「そうらしい。どうやって過去に送られるかはわからないが。シエスタの顔も彼女によく似ているよ」

 

「大伯母様にですか?」

 

 微妙に不満そうなシエスタ。大伯母……合ってるのかな? 俺から見たらシエスタも曾孫みたいな扱い? どう呼称する関係なんだろうね?

 

「そのうち会えるかもね。会いたい?」

 

「どんな方なんですか?」

 

「えっと……普通の可愛い子だよ」

 

 本人けっこう気にしてるし、普通といっても武将の普通なんでタケルちゃんと融合する前から普通じゃなかったような気もするけど。

 酒癖が似ているというのは言わないでおこう。

 

「作業台でできるのは妙に四角いアイテムばかりだけど性能はすごいわね。このチェストも見た目以上に収納できる。コーイチが世間にあまり出したがらないのも納得できるわ」

 

 宝箱な外見のチェストを使いながらエレオノールがしきりに感心してる。

 このチェストは1メートルの立方体であるブロックが1スロットに64個までスタックできて、27スロットもあるからね。ただ、一度固定すると移動させるためには専用ツールを使って破壊してキューブ化させないと動かせないマイクラそのままの仕様となっている。

 違うのは鍵もかけられるようになっていること。盗難もしづらいはずだ。

 

「でも、薬の調合はできないのね」

 

 やっぱり若返りの薬欲しいのかな?

 でも醸造台は成現(リアライズ)するつもりはないんだ。作ったとしても素材面で大変じゃないかなだし。……セラヴィーのとこで修行したモンモランシーなら作れそうか?

 

「問題はこんなに風石あってどうしようかってことだけど、必要な分以外は俺が処分するってことでいい?」

 

 キューブ化したアイテムは放置したら消えるけど、それじゃ時間かかるし安心できないでしょ。

 

「そうね。市場に流したら相場が崩れて産業としてる某国が困るし、フネも増えて軍事バランスもおかしくなる」

 

 アルビオン王国はレコン・キスタのせいでボロボロなのに、風石が値下りしたら立ちゆかなくなりそう。トリステイン王国の方でも援助するって話が出てるらしいけど、アンリエッタ王女はどうするんだろ?

 

「アルビオン王国の経済が立ち行かなくなってウェールズ王子が婿入りして併合するってのがアンリエッタ王女には一番の形なのかな?」

 

「王女にとってはそうでしょうけれど、面倒ごとは逆に増えるわね」

 

 ガリア王も邪魔してくることは確実、か。タバサも大変だろう。

 まあ、俺がなにかできるワケでもないし、政治の方は気にしない。嫁さんとの合流の方が重要だ。

 

「コーイチは風石、どう使うの? 空中庭園でも建てる?」

 

「余裕があったらそれも面白そうだけど、とりあえずは封印かな。指輪を返しにいかなきゃいけないからそっちが先」

 

「ロマリア教皇への報告は?」

 

「あっちもレコン・キスタがあっさり潰えたからそれ関係で動いてるでしょ。余計な手出しされても面倒だからヴァリエール領の風石ほとんど回収してから教えればいいんじゃない?」

 

 ルイズに目をつけられても困るから、とは口に出さないでおく。俺が使徒だってばれると異端扱いされる可能性が高すぎるし。

 まあ、教皇が虚無の魔法で地球の様子を見て知っているなら、あっちに侵攻しようなんて思ってないかもしれない。むしろ、現状でいえば地球の方がこっちに避難民が押し寄せそうなぐらいにピンチなワケだしさ。

 教皇には天変地異が起きないって知って安心してもらって、面倒なガリア王を説得してもらいたいとこである。

 

「まずはトリステイン王国の上の方に極秘で風石の鉱脈とそれによって起こる大災害、防ぐための採掘方法を報告。他領の地下なんて勝手に掘れないでしょ? その時には回収時の風石の損失率を上げるべきか。今の百分の一、いや千分の一ぐらい? もっと低くする?」

 

「そんなことできるの?」

 

「一括破壊ツルハシを作れる作業台をそう設定しておこうか。ツルハシの仕様に気づいた領主はそれを使わずに別の方法で掘ろうとするかもしれないから、それを禁じるように国に法を整備してもらって」

 

 ああでも、風石で荒稼ぎしようと、危険だと知ってても無茶して手を出そうとする奴も出そうか。自領だけならともかく、地下の風石層は繋がっている。大陸の崩壊に繋がるかもだから国を超えた連携が必要かな?

 

「下手に刺激したら活性化して大変だって、周りを徹底的に削って隔離した一部で通常の堀り方で公開実験するのもいいかもしれない。他国の重鎮も呼んで」

 

「それこそ各国の上層部に悩んで貰わなければいけないわね」

 

「地下の風石層を発表する前に国境地下の風石層は処理が必要ね。それこそアルビオンから風石の採掘師に出稼ぎにきて貰うのが双方にとってもいいかもしれない」

 

 なるほど。採掘のノウハウは持ってるし外貨の獲得もできるか。専門家の意見を聞くのも必要だろう。国境地下を処理できていれば他国が無茶やってもトリステインの影響はない、と。

 処理班は厳選しないと、下手に欲をかいて事故を起こしそうで怖すぎるけどね。

 楽なのは風石を処理する存在を成現(リアライズ)することなんだけど、BETAっぽくなりそうなのでイメージできないんだよなあ。

 

「でもそろそろ水の精霊に指輪の返却をしたいし、ルイズも魔法が使えるようになったことだからもう俺は必要ないだろ? 俺は本格的に嫁さんたちを探して合流したい」

 

「……」

 

 あ、ルイズが泣きそうな瞳でこっちを睨んでいる。

 うん。かわいい。思わずなでなで。

 

「もう! ここは抱きしめるとこでしょ! 絶対に私もついて行くんだから!」

 

「え?」

 

「かわりの使い魔なんかじゃ誤魔化されないもん!」

 

 フェイトちゃん大好きルイズだからアルフあたり用意すれば納得してくれると思ったのに。……どうしてもルイズが離してくれないようならこっそりと分身して探しに行ってもらうしかないかな?

 

 地球に行った分身とはタイミングを合わせて合流、1人に戻ってからまた分身した。これからも定期的にすることにしている。

 俺が欲求不満になってるから合流できた嫁さんたちとシているあっちの満足感が必要だし、双方が独自に新しいスキルや魔法を入手しているから、能力の統合、再分配って感じだ。ポータルでもまだ自由に行き来できているし。

 

 ハルケギニアと地球にいるかもしれない嫁さんたちをまずしっかり探して、それでも見つからなかったら別の世界の情報を入手、移動を考えている。ここは俺の救済担当世界じゃないっぽいからね。

 こんな時のためにと用意していた結婚指輪のプシュケーハートも合流できた嫁さん以外のはいまだ反応無しだけど、もし反応があったらすぐに動けるようにはしておきたいんだ。

 

 ルイズママと行った浮遊大陸でも〈探知〉を使って探していたけど、嫁さんたちは見つからなかった。だから今度は精霊に指輪を返すついでにそのまましばらく動き回って〈探知〉しまくる予定。

 嫁さんたちがもし融合しちゃって記憶が混乱してても俺のことを思い出してくれるように、移動にはVF-29改でも使おうかな。ドラゴンにだって負けはしないはず。

 

「マジで危険なんだ」

 

「問題ないわ!」

 

 元から強きだったけど、バルディッシュを得たのと、婚約者候補たちに全勝したので余計に変に自信がついちゃってるな。

 

「俺にはたくさんの嫁さんがいる。ついてこられてもあまり構ってやれなくなるよ」

 

「……そ、それでもいい!」

 

 うーん、どうしよう?

 ルイズの両親がこっちを睨んでいるからあまり強く断ることができない。いや、強く断った方がいいのだろうか?

 

「悪い男を引いてしまったわね」

 

「やはり始末するか?」

 

 おーいそこ、聞こえてますよー。わざとらしいため息しないでくださーい。

 襲われたら俺、すぐに逃げるからね。ルイズママのような化け物と戦うつもりはない。レヴァンティンまだ返してくれてないし。まずいもん渡しちゃったなあ。

 

「こっちが問題なさそうなら一端、学院に戻らないか? 指輪の返却のためにモンモランシーと話をしておかないと」

 

「コーイチはあいつの方がいいの?」

 

「どういう意味かな? 彼女、もうギーシュと仲直りしてないかな?」

 

 モンモランシーは大魔王サンダルことセラヴィーに誘拐されていたせいで、助けに来てくれなかったギーシュの評価が下がりまくっているんだよね。

 

「あんたの妻たちのことを知ってるから、自分もコーイチの妻の一人になるとか言ってるんじゃない。なんか人形にされて何年もたくさんの子と一緒にいたから、一人よりも大勢と一緒にいるのに慣れてるって」

 

 自分一人だけを選んでくれなくてもいいってこと? ギーシュの浮気でこじれるような子じゃなかったっけ?

 人形生活のせいでキャラ変わっちゃったか。

 

「だからって本気で俺の嫁さんになりたいってのじゃなくて、からかってるんだろう、きっと。俺はこんなおっさんなんだし」

 

「おっさんって……母さまのように薬で若返っているの?」

 

「まあ、そんなとこ。師匠の薬のせいで、ね」

 

 時々忘れるけど俺の外見って若返ってるなそういえば。

 ちなみに、赤ずきんチャチャに出てきた魔法薬はあとでよく読んだら、子供の姿に固定する薬だったっぽい。俺、嫁さんたちの想いで今の姿にならなかったら、ずっと子供の姿だったかも? いや、解除薬もあったんだった。

 

「若返りだったりカトレアの病を治したり、相当な腕前なのね、コーイチの師は」

 

「世界一を名乗れるほどだよ。一時期は大魔王もやってたぐらいだし。たぶん魔法使いではよほど隙をつかない限り勝てない。それ以上に変態なんだけどね」

 

 なんか変態も含めて俺の上位互換らしい。俺が勝てるのって嫁さんの数ぐらい?

 

 

 ◇ ◇

 

 

 非常時、それにもし嫁さんたちが見つかった時に連絡してもらうため用に予備のビニフォンをルイズの家族に渡してから、シエスタも連れて学院に帰還。といってもポータルを使うだけですぐに帰れたのだけどね。

 

「ちょっと香水と話をつけてくるわ。ついてこないでいい」

 

 指輪の説明しようと俺もモンモランシーに会いにいくのに同行しようとしたら拒絶された。やはりおっさんが一緒だと嫌になったのかな?

 なのでミス・ロングビルこと土くれのフーケと打ち合わせ。

 

「落ちこぼれだったゼロを覚醒させたそうね」

 

「そこまでじゃないさ。まだやっと歩き出したレベルだ」

 

「あのお嬢ちゃんをどれだけ評価してるの? 婚約者候補を決闘で全て完膚なきまでに叩きのめしたって噂されてるんだけど。烈風の再来とも」

 

 噂になってるのか。だかえら二つ名とか気にしてたのね。

 

「烈風の再来といえば、アルビオンにも現われたわね。烈火とかいうのが。あっちでは救国の騎士と呼ばれ出して英雄扱いの謎のメイジ」

 

「そんなことになっているのか? よく知ってるな」

 

 あっちに養い子がいるんだっけ。ハーフエルフの。彼女もなんとかしてあげたいけど、こっちじゃ人間とエルフの仲が悪い。簡単にはいかないよな。

 本人さえその気ならいっそのことカライのとこで保護してもらった方がいいのかも?

 

「私に手を貸して欲しいというのは?」

 

「土メイジの手がいくらあっても足りそうになくて、ね」

 

 風石掘りとその後の処置を相談、証拠として大きめの風石をいくつか渡して別れた。ゴーレムに使ったら強くなるかな?

 

 ルイズとモンモランシーの話はまだ終わってないようで、部屋にはまだ戻っていなかった。地球の俺と話をしようかと考えていたら、扉がノックされる。

 

「どちら様、ってタバサ?」

 

「そう。いい?」

 

 俺と会う時はいつもセットのキュルケがいない。タバサ一人と会うのは珍しい。

 彼女なら留守中に入れてもルイズに怒られはしないだろうと判断し、部屋に入れてお茶を出す。

 

「どうぞ」

 

「……緑色?」

 

「緑茶だ。俺の故郷のお茶」

 

 仕入れは十兵衛の弟、八雲の伝手から。彼は「あっぱれ!天下御免」と同じくお茶に詳しくて、出したお茶も彼のお勧めの銘柄。

 八雲堂の手伝いにいった時に煎れ方をおぼえた月ちゃんが煎れてくれたお茶はとてもうまかったなあ。

 タバサはそれを一口、音を立てずに飲んでしばらく無言。やっと口を開いた時はお茶の感想ではなかった。

 

「あなたの主の姉の不治の病を治したと聞いた。秘薬を使って」

 

「ああ、それか」

 

「……その秘薬は他の病に効く?」

 

 ああ、それか。今度は口に出さない。

 タバサの母親はエルフの毒でおかしくなってるんだっけ。精神的におかしくなっちゃってるんだよな。

 EPの減少にもエリクサーは効くから、たぶん治療は可能だろう。でも治療したら母親は余計に危険になる立場じゃない?

 

「なにやら事情がありそうだな。ちょっと待ってくれ」

 

 部屋の隅に結界符を貼って音漏れと覗き、侵入者を防ぐ。これで魔法による監視もできないはずだ。

 

「話し声が部屋の外に漏れないようにするマジックアイテムだから安心していい」

 

「そう。それで、さっきの答え」

 

「使ったのは万能の霊薬。あらゆる病と傷に効く。もちろん、毒の治療にも。心の病さえも治すが、精神の場合は原因を解消しない限り、再び患いやすい」

 

 俺の言葉を聞いた時に僅かにビクッと反応するタバサ。毒だの心だのピンポイントすぎるからね。俺から視線を外さずにお茶の入ったカップに口をつけて。

 

「まだ持ってる?」

 

「ある。この前のことの口止め料として譲ってもいいが、強い薬だ。詳しい話を聞かせてもらえないと渡すことはできない」

 

 すぐにエリクサーを渡して、治療された母親が再び害されては意味がない。俺が協力できやすい状況にしないと。

 だってタバサ、嫁さんと融合する可能性があるから。

 中の人が月ちゃんと一緒だから!

 あっちの俺からの情報だと、なんか名前だけじゃなくて中の人でも融合する場合があるみたいなんだよね。

 

 中の人以外でも、タバサの二つ名は雪風。ゆきかぜちゃんとの可能性もありえる?

 そう考えると余計にタバサはほっておけないワケで。

 

 緑茶を出したのもその一環。もしも融合していたら記憶を取り戻すのに役立つかもしれないとの期待からだ。

 緊張のためかタバサに渡したカップはいつのまにか空になっていたので私物の急須からお茶を注ぐ。この香りでも反応は無しか。融合はしていないみたいだな。

 タバサを視線を俺からカップに移して無言。話すべきか迷っているようだ。タバサとはそんなに過ごしていないから、俺を信用するとまではいってないんだろう。

 

「どんな症状なんだ? それによって投薬の仕方もある。状況によっては一度、こちらで保護してから様子を診た方がいいのか?」

 

「保護?」

 

「外的要因による症状だったら、もう一度、同じ症状にならないとも限らない。渡すのは貴重な薬だから無駄にはしたくないんだ」

 

 そう言って俺もお茶を飲む。……やはり月ちゃんの煎れてくれた方がうまいな。

 早くまた飲みたい。

 

「話すとあなたに迷惑がかかる」

 

「それは気にするな。美少女にかけられる迷惑を嫌がっていたら、嫁さんに怒られる」

 

 華琳はきっと怒るだろう。怒られるだけならまだしも、嫌われるのは嫌だ。絶対に避けねばならない。

 早く会いたい。

 このお茶の駄目出しでもいいから、華琳の声が聞きたい。

 

 




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