【原作沿い】次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚 作:冷やかし中華
俺の意識がハッキリと戻ってきたとき、一番最初にされたことはキルアに胸倉を捕まれて殴られたことだった。何が起こった??
「ホント、いい加減にしろよ、お前!」
お、おう?
理由は分からないが、とりあえずブチギレである。それをゴンとクラピカ、そして3人の知り合いとみられる長身の青年が宥めるも、あまり効果は無いようだ。はて、どうしたことだろう?
そして、今いる自分の立ち位置を良く見まわしてみると凄く顔色を悪くしているカナタが見て取れた。姫さんも心なしかグロッキーである。この2人が、こんな状態になるの何て……… あ!?
「うん、なんとなく状況は察した。ごめんごめん、俺が悪かったよ」
そういって立ち上がり、ポンポンとキルアの頭を撫でるものの「うるせえ」と切って捨てられ、その手を払われてしまった。いやいや、アレは俺の所為じゃなくね? いや、俺の所為、なのか??
「カナタと姫さんも大丈夫?」
「…………………………………………………これが、大丈夫に、見えるんですか?」
「いや、全然。でも、大丈夫でしょ?」
そうカナタへ向けて言うと今度こそ「意味が分からねえ! 少しくらい真面目に反省しろ!!」と思いっきりキルアに脛を蹴られたが、その結果、痛がっているキルア。普段であれば避けるところだけど、そうすると余計に油を注ぐことになりそうだと直感したので甘んじて受けたわけだが………
「悪いな。キルアじゃ、まだ俺にダメージを入れるには早かったようだ。今度、アメちゃんあげるから許せ」
と痛がってぴょんぴょん跳ねまわっているキルアへ告げる。だが、それにも「子ども扱いするな!」と逆効果となり、キルアは俺に構っていても仕方がないとばかりにカナタの方へ移動した。その様子を傍目に捉えつつも、俺は姫さんに近づいて此度の騒動を謝罪する。
「その、姫さんも、ごめん」
「…………………よい、気にするな。だが、この穴埋めは必ずしてもらうぞ」
「具体的には?」
「それを考えるのが、
「あー、はい………」
うん、手を出さないだけ姫さんは状況が良く見えていると判断するが、同時に、これはアカンやつだともハッキリと伝わってきた。でも、アレは本当に俺だけの所為じゃねえ。というか「俺は、悪く、ぬぇ!」と声を大にして叫びたい。とりあえず、二次試験に『料理』などという内容を用意したメンチには小言の1つでも懇々と語りたいところであるが、よそう。過ぎたことを蒸し返しても誰も得などしないのだし。
そこまで考えて、まだダメージ?が残っているのか、かなり動きが怪しいことになっているカナタを目線を1つ向けて「襲うなよ?」と念話の様なもので意思疎通を図ると「お、襲いませんよ!?」と元気な返事が返ってきたので、うん、やはり見た目以上に無事なんだと確認が取れたことに安堵しながら姫さんの手を引いて俺は、この場所を後にした。どうやら、今は、三次試験の会場へ向かっている最中のようだ。とりあえず、食堂にでも行こう。まずは旨い飯でも用意してご機嫌とりだな、それが俺の考えた現状を打開する第一歩だった。
* * *
「八尋たち、行っちゃったね………」
「あぁ、行ってしまったな。まぁ、あとは当人同士で何とかするだろう。とりあえず、私は早く休みたいな」
「それは言えてんな。もう身体中が、しんどくて堪らないぜ。今は、とにかくぐっすり眠たいぜ」
「まったくだ。恐ろしく長い1日だった」
ゴンの声に応える形で、今日1日にあったことをそれぞれの感想として漏らしたのはクラピカとレオリオ。私は、マラソンは走っていないので分かりませんでしたし、仮に走っていたとしても然程も苦に感じなかったでしょうが、この2人には相当重かったのか、その言葉から疲れが滲み出ているのが良く分かる。
「そっか、じゃあ俺は飛行船の中を探検してくるよ!」
「ったく、元気なやっちゃな~」
「うん!」
それに対してゴンは、まだまだ元気とばかりに飛行船が珍しいのか中を探検しようとし、それに待ったを掛けたのがキルアだった。
「ゴン、ちょっと待って」
「どうしたの? キルア?」
それら、目の前で繰り広げられる会話にぼんやりとした思考のまま何とかついていく。先程まで、ご主人に噛みついていたキルアは私の傍まで移動してきてたあと、少しだけ悔しそうに歯噛みしながら私の隣にストンと腰を下ろし、手を取ってきた。それに少しだけ目を見開き、視線を合わせてキルアが何故怒っていたのかを考えて礼をすることにした。
「キルア君も、私の為に怒ってくれたんですね? ありがとうございます。
でも、今回の事は、ご主人も被害者という側面もあるので、あまり当たらないで上げてください」
「カナタは、
まるで、私が『私』として、今、此処に存在していることが、さも当たり前のように口を開くキルアの姿に私は胸がキュッと締め付けられるような感覚を覚える。こうして逢ったのは、二次試験の始まる直前、たったの数時間前のことだというのに。どうして、そんな言葉が出てくるのだろう? とも思いながら、そっぽを向きながら答えるキルアの手を握り返した。ふと、周りに目を向ければ近くにはクラピカとレオリオが腰を下ろし、休み支度を整えていたので「寝る前にシャワーくらい浴びた方が良いですよ。出来るなら湯船に10分以上は使って、よくストレッチしてから休むべきです」と伝えると、クラピカから予想外の反撃をされて赤面することになる。
曰く「カナタは、まるで母親みたいなことを言うのだな」っと。
「い、いえ。そ、その。そんな、つもりは無くて、ですね………」
それについて、私はしどろもどろになりながらも答えを返したのだが、それは普段の調子を取り戻したらしいキルアの「でも、カナタは本当に母親みたいなこというよなー」と
「もう、キルア君やゴン君まで。わ、私は、そ、そんなんじゃ(ないですから)………」
「? 分かってんよ。それで、どうする? まだ休むのか? 俺もゴンと一緒に探検に行きたいんだけど」
余りの恥ずかしさに語尾は掠れてしまったが、それについては特に言及されなかったので良かったと胸を撫で下ろす。そして、キルアの新しいことに興味を惹かれる実に純粋な振る舞いを見てホッ息を漏らし、頭を軽く撫でてあげると、ご主人がしたときの様に跳ね除けられることは無かったけれど、どこか気まずそうにしたままされるがままになった。
一重に飛行船と言っても、それを建造するメーカーや機体の型番によって内部の構造は異なっている。当たり前だが。なので同じ飛行船といっても、
それに、こういう100・200の単位で人を輸送できる船、所為『大型の飛行船』というのが珍しいということもあるのかもしれない。さすがに、私は、ご主人と巡ってきた世界で、これよりも高性能な乗り物は幾度も
そう思っているとクラピカが不意に、この後に続くハンター試験の数は幾つあるのだろうかと疑問を口にし、レオリオが相槌を打っていると近づいてくる影が1つ。名前を何と言ったか思い出せないが、下剤入りのジュースのヒトということだけは何とか情報として拾い上げることに成功する。
「その年によって違うよ。
試験の数は審査委員会が、その年の試験官と試験内容を考慮して加減しているそうだが、大体平均すると5つ、多くて6つというのが常道になっているな」
ふむ。その情報が本当であれば、あと3つか、4つになるわけですが……… これは残っている受験生(52名)のことも考慮すれば、おおよそ真実と捉えても良さそうですねと判断する。
その後、余計なことを言わなければ株も上がるというのに、こちらを精神的に疲弊させようというのがミエミエの脅しにも劣る内容を延々と口にして小太りの男は姿を消した。
「今の話、如何思う?」
「前半は残りの受験生の数を考えれば妥当だと思いますが、後半は嘘でしょうね。やはり自分は安全圏から他者が足掻いたり苦しんだりするのが見たいという歪んだ思想に囚われている、実に小物らしい発想といいますか、やはり信頼どころか、信用にたる人物でもなさそうです」
私の出した結論にクラピカとレオリオの2人は「そうだな」と頷き、今後、彼に対する扱いについての注意を引き締めるという点で経験として扱えることに落ち着いた。
* * *
――試験官、専用のエリアにて
私は、それぞれが担当だった試験を終えたブハラとサトツさんと食事をしながら、今日のこと話題にして2人へ話しかけた。「今年は何人くらい残るかしら?」と。
それに対して、ブハラは「これからの試験の内容次第じゃない?」と面白みのないことを答え、私は「一度、全員落とした自分が言えた義理ではないけど………」と、いくらなんでもピリピリしていたとはいえ、あの時に自分がしたあの対応は無かったと思い出しただけで今にも死にたくなるほど反省する。
(あの恥ずかしいところを、あの人に見られたとか思い出しただけで……… あー、もう、私のばかばか!)
そう自分の対応の稚拙さを苛みながら、一度頭を振って深呼吸、そしてサトツさんへの意見を求めた。
「サトツさんはどう?」
「ふむ。そうですね……… 今年は
「あ、やっぱりー!?」
そう、今年はサトツさんも今言ったように本当に新人の活きが良い。会長の言葉を借りるなら、十年くらいにバッと盛り上がる豊作の年というヤツなのだろう。そして、私は私の思うままを語るのだった。
「でも、あの人も相変わらず素敵よね。なんか途中で出された、どうしたら、そうなるのか不思議でならない見ただけで背筋を冷たいものが流れる『スシ』? なんて初めて見たわよ、私。まぁ、その得体のしれない『スシ』を食べた辺りで気も虚ろで碌に挨拶できなかったけど」
そう一息つくと、サトツさんは、あの状況を見ていなかったのか頭に疑問符を浮かべ、ブハラは「嗚呼………」と何処か遠くを見るような声を上げていた。
「まぁ、あの人は一応、ハンター試験経験者という単位で見れば『新人』だけど、『新人』の枠に括れるほど無名でもないから対象外ね。それ以外だと……… 294番かな。ハゲだけど」
(あの人たちを除けば、唯一、スシを知っていたしね)
「何、ブハラ?」
私の言葉に何か物言いたげな気配を醸しだしたブハラに問えば「何でもない」とはぐらかされたけど、大方、見てくれで選んでいるとでも思っているのだろう。失礼しちゃうわ。私、そんなに面食いかしら………?
そんな私とブハラのやり取りを遮るように苦笑いを浮かべたサトツさんが自分の推す新人について意見したのに耳を傾けた。
「悩ましいかぎりですが……… 彼の関連でなさそうな人物からの推挙となれば、99番ですな。彼は非常に良い」
「えーっ! 99番って、あの銀髪の
あいつきっとワガママでナマイキよ。絶対B型! 一緒に住めないわ!」
「まぁ、彼はゾルディックですからな。その血縁者が、もう一方、受験されているようですが、こちらは変装なのか、全然、受験票に示されたものと姿かたちが違いますな」
「99番と391番が、あのゾルディックー!? もう、やだ。絶対、絶対、絶対 一緒に住める気がしなくなったわ!」
そういってマーメンから借りていた残った受験者の一覧と簡単にまとめられた履歴を見ると、確かにそこには2人のゾルディックが載っていた。うん、391番って、あのカタカタいってた針男よね? 全然、違うじゃない。こうして素顔で並べると目の辺りとかは確かに兄弟・血縁者だなっとは思うけれど。そう考えながら今度は黙って聞いていたブハラに話を振ると「新人ではないけど」と前置きしたうえで自分の意見を口にした。
「うーん、76番?と88番?かな。あと44番」
「どうして、そこで疑問形なのよ?」
「だって、メンチ、このリストを良く見てみなよ。全然、別人だろ? 76番と88番はさ」
「あ、本当だ。この2人、一体何者なの? こっちも391番なみに受験票に添付された顔写真と別人じゃない! これも変装してるってわけ?」
ブハラの指摘にハッとして、もう一度、残った受験者リストを覗き込むと、そこには確かに、私の見た2人とは違う顔写真(どちらも厳つい男性)が載せられていた。
「それは私も気になっていました。何時の間に入れ替わったのか。
だとするならば、一体、いつ入れ替わったのか。タイミングとしては私の試験が始まる前か、サトツさんの試験中、ヌメーレ湿原で先頭集団と離れた後であることは間違いないのだが、何故?
この場にいる3人が表情を硬くし押し黙っていると、その沈黙を破って会話に割り込んできた人物がいた。
「
「「「か、会長!?」」」
その声に驚いて振り向けば、そこにはハンター協会の会長であるアイザック=ネテロが普段通りの雰囲気を身に纏い、そこにいた。その口調から、彼女たちが怪しいものではないと言っているようにも聞こえるが、どういうことかを聞く前に会長から茶々を入れられてしまった。
「ほっほっほ、何をそんなに驚いておる。お主らが面白いことを話とったから混ざろうとしてみたというのに、この扱い。酷いのぅ………」
「知っているのですか?」
「(見事にスルーされたの……)ふむ、こっちの88番は、
その余りにもわざとらしい泣き真似をした仕草を無視して私は話しかけると、しれっと無かったことにして答えを返してくれた。しかも、俄かには信じられない驚きの
「「「はぁぁぁ!?」」」
「何をそんなに驚く。ちなみに、あ奴らとは長い付き合いでの。暇を見つけては年に 2, 3度、かれこれ200戦ちかく闘っとるが、時間切れ引き分け以外は基本的に儂の全敗じゃな。年を取るってのは酷なもんじゃわい」
ハンター協会に所属するプロだけでなく、世界中に散らばる念能力者を見渡しても未だに現役最強とも噂されるネテロ会長をして、その実、たったの一度も勝ったことが無い相手がいるということにも驚きだったが、その中にサラッとくわえられた情報に瞠目した。
その言葉に全員が息を呑む。というか、年に3回と計算しても既に200戦……… え?
それって一体……… あの人たち、一体何歳なの??
「う、嘘ですよね?」
「大マジじゃ」
私は声を掠らせて確認するが、ネテロ会長の言葉は普段の飄々としたものではなく、実に真面目なものだったことに、その言葉が真実であることを悟る。普段はポーカーフェイスを崩すことの無いサトツさんですら、その情報に目を見張り息を呑んでいるのが分かった。
「それで、この2名の受験を認めるのですか?」
「それとこれとは話が別じゃからな。無論、退場扱いが適正じゃろ。というか別人なわけじゃし」
それを口にしたのはサトツさん。まぁ、当然の疑問なわけだが、それについてネテロ会長は髭を少し弄ったあと、審査委員会としての至極真っ当な切り返しだった。
「まぁ、それが妥当でしょうな。問題は、そのことを誰が伝えるのかですが………」
「それは現場の人間に任せたぞよ!(八つ当たりされたら堪らんからの)」
「あ、逃げるな! 会長のばかー! あほー!! おにー!!」
この時ばかりは、普段のサトツさんやブハラであれば私の文句の1つも紳士的に窘めたであろうに、それを全くしなかったということは、やはり似たような感想をもっていたからなのか。しかし、その私の苦言も何処吹く風と言わんばかりに会長の立ち去った出入り口を食い入るように私たち3人は、しばらく見続けていた。その沈黙を破ったのはサトツさん。
「これは、参りましたな………
まさか現役のハンターにして、世界でも最強の念能力者と謳われるネテロ会長にすら、彼もしくは彼女が土を付け続けるという話が本当であれば、この件は私たちでは手に余る。普段であっても無理難題を振ることに定評はありましたが、よりにもよって、このタイミングとは………」
そう言葉を漏らしてサトツさんは飲みかけの珈琲とは別の物をキッチンに備え付けられた冷蔵庫から取り出し、注ぐと一息で煽った。普段は砂糖とミルクを入れるのに、それをブラックで煽ったというところに無茶ぶりの困難さがうかがえ、それでもアルコールに逃げなかったことに内心で拍手を送る。けれど、うん、改めて思ってけれど、やっぱりネテロ会長はクレイジーだ。そこが良いという反面で、その無茶振りされる側の当事者にはなりたくなかったと頭を抱えたくなる。これ、難易度は文句なしの "A" よね……?
そう考えているとネテロ会長が「難易度は "S" じゃな。ま、死にはせんじゃろ」と出て行ったはずの扉から顔を出して口にしたかと思うと今度こそ本当に専用スペースから立ち去って言った。
「びっくりしたー。って、難易度が "S" って、そんなわけないじゃない!?」
「ですが、ネテロ会長の言葉が本当であれば、実は私たちが見落としているところに何か解決の糸口になる答えがある? ということでしょうね」
「それは、やっぱり件の
そう思い思いの言葉を口にして、また沈黙が、この場を支配する。
――難易度 "S"
それは、ハンター協会において会長直々に発せられる勅命をランク付けした場合にある最高ランク、最高難易度に見せかけて、その実体は『
「ところでさ、メンチが試験中にピリピr「あー、もう、それは言わないでよ。今、死ぬほど後悔してるんだから!」」
会長から出された直々の難題に対する解決方法を思案していると、その重たくなった空気を入れ替えようとでもしたのか、話題を変えようとしたブハラの言葉を私は遮る。もう、思い出したくもない自分の恥部なのにっと思いつつも、やってしまったものは仕方がないと開き直ろうにも、やっぱり自分の憧れの相手なのだ、そうもいかない。そう悶々としているとブハラは「いや、原因は44番の殺気かなと思ってたんだけど」と続きの言葉を口にした。
「そう、それよ!」
「あー、やっぱりね。途中から彼に巻き込まれてグロッキーになっているようだったけど、あれは辛いね」
行儀悪くフォークを振るブハラを咎めつつも、私は「そうね。あれ、本当にやんなっちゃう………」と言葉少なに返すとサトツさんからも「一次試験中も、ずっとあんな感じでしたよ」と口を開いた。やはり、試験に突入する前に審査委員で連絡(と言っても本当に軽く、ではあったが)の通り『ヒソカ=モロウ』、ヤツは要注意人物ね。まぁ、その注意喚起の本命は『あの人』の存在だったのが、なんとも言えない微妙な気持ちにもなったりしたのだけれど………。
そんな感じで突如降って湧いた無理難題に頭を抱えつつ、1日の愚痴を零しながら私たちの夜が更けていくことになった。
* * *
「いっきし………」
「なんだ、風邪か?」
「そんなわけないでしょ。あと、やっぱり姫さんとカナタは受験資格ないってさ」
キッチンにある食材は自由に扱っても良い(と言っても既に他の受験者が根こそぎ漁った後なのか、既に何もないに等しかったが)ということだったので、軽く覗いてから、溜息1つ零して "
「むぅ………」
「そんな顔しないでよ。
まぁ、試験官も姫さんとカナタの扱いについて悩んでるみたいだから、そこは逆に愉しんでみたら?」
その審査委員会の決定に不満気な表情を浮かべる姫さんを宥めながら、クツリと笑って1つの提案を出す。それにパッと面白いことを思いついた、とでも言わんばかりの意地悪い笑みを浮かべた姫さんに1つ頷き、それでも
「はい、今日は、"フグクジラ" の刺身だよ。お好みに合わせて乾燥毒袋のスパイスと、20年ものの "醤油バッタ" から取れた濃厚醤油でどうぞ」
「うむ。イタダキマス」
「はい、いただきます」
とお互いに手を合わせて、ちびりと嗜む。一気にガッツリ行かずに少しずつ楽しんでいると何か視線を感じたので振り向くとカナタとマチがいた。
「やぁ。珍しい組合せだね?」
「まぁ、その、悪かったよ………」
そう箸を休めて口を開くと、どこか歯切れ悪そうにマチが口を開いた。たぶん例の『
「まぁまぁ、マチさんも元気出してください。あそこにあるのは、ご主人が捌いたと思われるフグクジラと呼ばれる刺身だと思いますから、それを食べて元気を出してくださいな」
「そういってくれるなら、嬉しいよ……… って、アンタ誰だい?」
あれ? なんだ2人は道中を一緒に来たのではなくて、たまたま入口でかち合っただけなのか? という疑問が浮かぶものの、それは特に気にしないことにして席に着くように促したのだった。
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