【原作沿い】次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚 作:冷やかし中華
八尋と幻影旅団メンバー(マチ)たちとの邂逅について。過去話がメインになっていますが、時系列的には4人で食事を終えて散会した後の話です。
1次試験でヌメーレ湿原に到達した後、マチが独白したところの伏線回収も兼ねて此処に置くことにしました。けど、新しい伏線が、、、畳んだ先から新しい風呂敷が広がっていくとか悪夢か!?(自業自得)
凄まじい物量の廃棄物と、それらが出す汚臭、不衛生な環境、そして流星街を仕切る議会の
この情景を見た私は「あぁ、今、夢を視ているな」と考えて、でも、その懐かしさに身を委ねることにした。それが悪夢の終わりに繋がっているとは知らないままに。
* * *
特に何か目的があって着たのではない。そこに辿り着いたのは本当に単なる
その様に考えて、俺の裡にいるヒトたちに代わって俺は、俺の脚で立ち上がり、一際高く積まれたゴミの山へ移動して辺り一帯を睥睨した。
『キナ臭い………』
『この場合、不衛生による汚臭だと思うのですが。は、鼻が曲がりそうです………』
『さっさと、この場所から移動せよ。臭くてかなわん』
『いやいや、気持ちは分かるけどね?
でも、このタイミングで俺が、こんなところまで唐突に流されてきたことにも、きっと意味があってのことだから我慢して。無理に俺と同調なんかしなくても良いからさ。あとは俺がやるよ。それに、この程度の汚臭であれば、完熟した "ドドリアンボム" の放つ臭いに比べたら全然マシでしょ?』
そういうと神妙な頷きとともに黙りこくる裡に在るヒトたち。まぁ、あれも大概酷いことになるが、それはそれ、これはこれっとでも言いたげな何とも言えない表情に俺はプッと吹き出し、意識を切り戻した。
(どこか、誰とは断定できないし、思い出すことも難しいけれど、それでも懐かしいと感じる俺の
この場所に立ち、再び、辺りを見回して僅かに香った気配が既にないことに首を傾げる。まぁ、俺自身が自分の天敵と思えるようなヤツが、この世界に同居しているのならば、(お互いに当時と比べれば使える
(油断は出来ないけど、忘れない程度にメモしておくか)
そう考えて、ふと目を向ければ小さい女の子?が、逃げ、隠れるようにしてゴミの山の中を移動していた。
(その先は、あまり良くないね……… 仕方がない、これも何かの縁だ。助けるか)
そう思ったが吉日。俺は、その場から掻き消えるようにして、走っている子供の行く先に降り立った。
* * *
マフィアと思われる人間の手から逃げている間にクロロたちから離れ離れになってしまったことで、どうしようもない不安が私を押し潰そうとする。今、此処で誰か、変なヒトに出くわしたら一貫の終わりだ。助けてくれる人手は皆無。だから、早く安全な場所に逃げないと。そう思いながら必死になって掛け続けた先にゆらりとヒトが現れた。
「この先は危ないよ?」
その耳を打つ言葉にビクッと全身が震え、足が止まる。終わった……… それが私の、この瞬間に懐いた確かな感想だった。
「う、うるさい! どうせ私たちを攫いに来たくせに!!」
そう今にも動かなくなりそうな自分の身体を一喝する勢いで、目の前に立った端正な顔立ちを持つ人間に精一杯の気合を込めて気勢を上げた。
「?」
そして、目の前の人間が何の事かと隙だらけに見える装いで首を傾けたところに活路を見出して私は一気に駆けだした。本来なら、そのポケットに入って良そうな小物の1つでも掏っていくところだが、今はそれどころではない。そんなことをして反撃などされたら堪らないから間合いに入ると同時に近くにあった空缶もろとも砂埃を上げるように蹴って目くらまし。
「わ ちょっと……… ぺっぺ………」
過去の経験から、その無駄とも言える足掻きが通用するだなんて微塵も思わなかったけれど、それでも目の前に立っていた人間は私の蹴り上げた空缶こそ弾いたものの砂埃はどうしようもなく、それが口にでも入ったのか、1人もがいている?
(なんだ、他愛ない。これなら財布の1つでも盗ればよかった)
そう甘い考えが脳裏を過ったところで腰の辺りに手を回されて持ち上げられる。両足が中空に浮いてしまったことでバタバタと足を動かしても身動き1つ取れない。
「あ 痛い痛い。ちょっと動かないでってば」
とはいえ抵抗する私の脚がバシバシと当たっているらしく何か妙な声を出しながら私を抱え上げていた人間はくるっと抱え直すと今度こそ、私は抵抗することができなくなってしまう。そう、あとになって冷静に思い返せば、この時の私は完全に目の前の人間にお姫様抱っこをされている状態だったのだ。まぁ、両手を後ろ手に組まされるような窮屈な形ではあったが。
直後、私が走り抜けようとしていた場所に堆く積まれていた塵山が少し前に降った大雨にでもやられたのか、突如として塵山が崩落しはじめた。
「あ、マズ………」
その実に呑気とも感じる声を上げるヒトの顔を改めて見つめる。端正な顔立ちだった。それでも私たちがいる場所でさえも塵の崩落の範囲に収まっているのだから万事休す、あまりのことに一周回って自分が置かれている状況などを鑑みた結果、危機感が薄らいでしまったのか「私も、ここまでかぁ。でも、人攫いに遭って何処とも知らないところに連れて行かれるよりかはマシかも?」なんてことを考えられるだけの余裕があった。
「ちょっと移動するから舌噛むなよ?」
「え? え?」
そういうと今にも崩れてくる塵の山が、まるでスローモーションになったかのように非常にゆっくりとした動きに代わっていく中で、風を切るように、否、風よりも早く私を抱き上げていた男の人は、凡そ安全と思える場所まで一気に走り抜けた。
* * *
塵山の頂上から見つけた子どもが放っておけば崩落に巻き込まれることを察した俺は、偶々、目についた子どもだけでも助けるべく、その子の前に移動してみたものの、警戒心MAXだった子どもからは思わぬ反撃に遭い、口の中に入った異物を吐きだしていた。すると何とも間の悪いことに、そのタイミングで塵山の崩落が始まったのを察し、すぐ傍を走り抜けていった子どもをキャッチ。ちょっと抵抗されたけど、それは後回しにして抱え直す。そして、俺は、その場から移動した。
「おい、喋れるか?」
移動した先に子供をおろして出来るだけ優しい声音で語りかけてみる。ただ、若干、話し方がぶっきら棒になってしまった所為か、それとも、この場にそぐわない恰好をしていた所為か、或いはその両方か。どちらにせよ見ず知らずの俺に対して素直に反応できるものでもなし。挙句、言葉にならない言葉で狼狽えられて、どうしたものかと思って俺まで黙り込んでしまう。
(こんな場所に親なんてものも期待できないし、どうしたものか)
「あ、あの………」
「ん?」
「えっと。こ、こんにちわ」
こんな場所が場所であるだけに、そう話しかけられて少しだけ驚いてしまった。同時に名も知らぬ幼子の対応に関心すると同時に、自分の不明を内心で恥じつつ、その言葉に応じるのだった。
「ん。そうだな。ヒトとヒトとの関わりは、まず挨拶からという格言もあるくらいだ、失礼した。改めてまして、こんにちわ」
そういって子供の手を取って軽く握手して、良くできましたと頭を撫でてやる。そして、挨拶の次は自己紹介だなと自らの名前を謳いあげた。
「俺は
そう自身の名を子供(少女?)に伝えたものの、子供は俺の言葉にポカンとした表情を浮かべ俺の言葉を復唱した。
「か、かきん?」
「いや、忘れてくれ。俺も意味は分からん。なんとなく勢い余って口から出てしまっただけなんだ、すまない」
「かきんである!」
忘れてくれと言ったのに何が面白かったのか、年相応にクスクスと相好を崩しながらおどけて言うその愛らしい姿に、やっぱり子供っていうのは心の清涼剤だな等と身勝手なことを思いながらも、冗談だ、と一旦会話を切り、挨拶の次にすべきことは自己紹介だろう? と改めて伝えて俺は自らの名前を伝えた。
「私の名前?」
たどたどしい口調ながらも、きちんとした受け答えが出来る様子に改めて今いるこの環境から考えるに碌な教育らしいものも受けていないだろうに、この子供の在り様に舌を巻いた。
「そう、キミの名前だよ。何て呼ばれているのかな?」
「えっと、私は、マチ」
「うん。じゃあ、マチ。キミにはお父さんやお母さん、もしくは一緒に生活している大人のヒトは居るのかな?」
こんな場所であっても、マチの俺に対する対応1つ見れば、かなり出来た親なり親戚なりが近くにいるのだろうと思って勝手に安心していたのだが、返ってきた言葉は想像とはかけ離れたものだった。
「………いない」
少しだけ言い淀んだ後、マチは「親はいない」と、「自分は独りだと」ハッキリと口にした。
「悪い……… 傷つけるつもりはなかったんだが」
「大丈夫」
そう首を振って答える姿に余計なことを聞いてしまったなと申し訳ない気持ちになった。それと同時に幾らなんでも幼少期を脱しきっていない少女(名前から推測)が、こんな場所で独りで生活の全てを賄えているとは到底思えなかったので、普段は一緒にいないだけで、食事のタイミングなどで、それを世話する者か、他に生活を供にする『誰か』いるのだろうと考えつつ、俺は気持ちを切り替えて、この場所が何処なのかを聞くことにした。
「じゃあ、もう1つだけ。ここは何処だろう? 俺もイマイチ事情が分かっていないんだ、マチは何か知ってる?」
「え? 此処のこと?」
俺の問いに若干驚いた表情を浮かべ、その後で「流星街」と答えてくれた。
――流星街
その回答の意味するところで思い当ったのは1つだけ。俺が
世間話程度には聞いていたが来るのは初めてだなっと何処か他人事のように考えていた。
「ま、何とかなるだろ。しかし臭いところだな………」
鼻が曲がりそうだっと摘まんでみせるとマチは、その様子が可笑しかったのか「クスッ」と笑ってくれた。ま、此処よりもヤバいところなんて幾らでも経験してきたから、どうってことないんだけどね。でも、それは言わないお約束。
「どうしたの?」
「ん? 何でもないよ。唯、随分と遠くまでやってきてしまったと、そう思っただけ」
そうマチへ答えながら俺は頭の中で
①直ぐに王都へ戻る
②唐突ではあるが暇を貰ったと思って暇つぶしをしてから戻る
③とりあえず、様子を見る
という3つの選択肢から出した答えは――
「とりあえず、今日の寝床でも確保するか………」
というものだった。
本来であれば、こんな不衛生極まりない場所になど特段の理由も無ければ1秒たりとも居たくはないのだが、生憎と今は人目がある。それもすぐ傍に。さらに言えば、その正体は幼子(少女)もの。それが故に、俺の中から
「それなら、こっち」
「ん。それじゃあ、お言葉に甘えてようかな。案内よろしくね?」
そう言ってマチの手を取ると顔を赤らめて「プイッ」とそっぽを向かれてしまった。でも律儀に手は握ってくれたままだから嫌われてはいないのだろう。そう思うことにした。
* * *
「それなら、こっち………」
塵山の中で出逢った得体のしれない不思議な人。けれど、塵山の崩落から私を助けてくれた恩人。これまで一緒に行動することの多かった同年代くらいの仲間以外では初めて信じられそうなヒトが「とりあえず、今日の寝床でも確保するか」と溜息交じりに呟く声を拾って気づいたら私は彼の手を取って歩み始めていた。
どうして、そんな行動に出たのかは分からなかったけれど、たぶん握り返された手が温かかったことと、抱き上げられて気持ち良かったこと、風よりも早く動くことのできる信じられない人を手放したくなかっただけかもしれない。
けれど、私が当時案内した先にあったものはお世辞にも人の住む場所ではない粗末な荒ら屋だった。まぁ、ギリギリ雨風は凌げるかという程度の酷いものだったが、そこに案内された彼は嫌な顔1つせず、呑気に「とりあえず、隙間風だけでも何とかするか」などと言って笑っていた。
「直すの?」
「そ。今夜は少し冷えそうだからね」
そういって何処からか取り出した何かの種子の様なものを手に取って握ると、それは瞬く間に蔓を生やし、蔦を伸ばして今にも落ちそうだった屋根を支えていく。私は混乱したままで、素っ頓狂な声を上げていたような気がするけれど、ここにきて彼は「あっ………」と酷く間の抜けた声を漏らしていた。
それが、当時私たちの誰も知らなかった "念能力" と呼ばれるものだと知ったのは、もう少し後の話。
ただ、よくよく考えてみると彼の持つ多種多様なチカラの多くを観たことで『
「邪魔するぞ」
彼の不思議なチカラに魅入ってしまっていて警戒を怠っていた所に、いつか何処かで見たチンピラの様な風体の男が3人、入口から入ってきた。今までの荒ら屋だったなら、壁でも突き破って逃げられたかもしれないが、それは彼によって生み出された不思議な植物によって補強されてしまい、そっとやちょっとじゃ抜くことも出来そうにないほどになっている。なんて間の悪い、どうしよう、そんな不安が私を苛む中で彼が私を庇うように前に出た。
「何か用か?」
その声は淡々としていて自分たちの今置かれている状況が見えていないのではないかと思う程、落ち着いている。むしろ、こんな状況など
「あ゛ぁ!? んで、見ねえ顔が居んだよ!! どうなってるんだ、ガキ!!」
3人の中ではリーダー格っぽい男が喚きたてたのを見て、私はビクッと肩を震わせる。その不安に押しつぶされそうになっている私をそっと撫でて彼は言った。
「煩えよ。少し黙れ、雑種」
「あん? この俺様に黙れとは良い度胸じゃねえか兄ちゃん。どっから来たのか知らねぇぷf這うywyはbづf7ぺぎ」
「黙れと、そう言ったつもりだったんだが聞こえなかったか? それともゴミらしくヒトの言葉が伝わらないのか? どっちだ?」
もはや涙目になりながら事の成り行きを見守る当時の私、おっかない熊の様な図体に脂汗の様なものを滴らせながら私たちとの間にある距離を詰めてきた男は、しかし、彼の発声と供に仲間たちの元へ吹き飛んで転がって行った。そして、彼はツカツカと男に歩み寄ると、その醜い顔を掴んで片手で吊り上げて何事か囁いている様だった。
「ひ、ひぃぃぃ……… 勘弁してくれぇ」
そういって悲鳴を上げた男は、掴まれていた顔を離され床にドサッと落とされると一緒に居た仲間とともに入口から飛び出していった。その際に吐き出された捨て台詞は今にして思えば実に『小物らしい』ものだったが、当時、まだ幼かった私には怖くて怖くて堪らないものだった。
「ぐ、ぐぅ。お、覚えてろ!!
テメーは絶対にぶっ殺してやる。このガキどもは、俺たちの所有ぶt ぺぎゃ」
「あのさぁ。俺は消えるか、死ぬか、選べと言ったつもりだけど?
やはりゴミにはヒトの言葉が通じないらしいな。なら掃除するしか無いよね?」
男が何か言っていたのに被せて彼は何かを放ち、男の顔を弾く。殺してはいなかったようだが、そこから鼻血やら何やらを溢れさせて、また醜い悲鳴を上げ続ける男に、先ほど耳打ちしたときに言ったのであろう言葉を獰猛な笑みとセットにして口にしていた。その雰囲気に完全に呑まれて後退し、遂には仲間の男たちと供に悲鳴を上げて去って行った。その姿が完全に消えるのを待ってから彼は、また頭を撫でて怯える私を落ち着かせるように話しかけてくれた。
「大丈夫か、マチ? チンピラなら追い払ったぞ?」
「…………………」
そこからのことは、よく覚えていない。いや、たぶん恥ずかしくて思い出したくないだけかもしれない。そう、私は彼にしがみついて丁度年頃の娘が親に泣きつくようにして、わんわんと声を上げて泣いたのだ。それに彼は、たぶん困ったような何時も通りの笑みを浮かべながら「うんうん、怖かったね。良く頑張ったね」なんて言って私を抱きしめて泣き疲れて眠りに落ちるまで一緒に居てくれたのだ。
翌日、目を覚ました私を待っていたのは、それまで見たことも聞いたことも、当然にして味わったことも無かった『
「どうしたの? ほら、食べていいよ。大丈夫、毒なんか入ってないから、それは俺が保証する」
そう不思議そうな顔をして私を見る瞳に、まだ寝ぼけているのかななんて当時の私は考えて目を擦りそうになったところで、その手を取られて、またビクッと肩を震わせたのを良く覚えている。
「うん、ダメダメ。気持ちは分かるし、今までがそうだったのだから、いきなり生活習慣など変えられないのは良く分かってるけど、汚れたままの手で眼なんてデリケートな部分を擦ったりしたら感染症とかになっちゃうでしょ?
って言っても分からないか? まぁ、でも次からはコレで食事をする前とかは、きちんと消毒をしてからにしなさい」
そういって、また何処からか出された湿った布の詰まったケースから取り出した一枚の布で汚れたままだった私の手や顔を優しく拭ってくれる彼。
「うん、これで大丈夫。さ、ご飯にしよう」
その言葉に私自身よりも、私の身体の方が素直に反応してグギュルルルとお腹が鳴った。そういえば、昨日は何も食べてなかったっけ。そんな気恥ずかしさに、また顔を赤面させて私は出された『パン』と呼ばれるものと、ミルクたっぷりの『珈琲』と呼ばれるものに舌鼓を打って、また涙を流してしまったことを良く覚えている。そして、その後に、この喜びを伝えたくて彼をクロロたちに紹介したのだ。
「うわ、生意気なガキどもだな。よし、こうなったら、これも何かの縁だ。片っ端からとっちめてマトモな教育を施してやるから覚悟しろ!」
そういって、まずは当時既に一緒に行動することのあった短気な2人組(フィン、フェイ)を片手でボコボコにしたと思ったら、一際、生意気だと彼が断じた私たちのリーダー、クロロと副官を務めるシャルナークが泣いて詫びるまで弄り倒していた。それに掛かった所要時間は、わずか10分足らず。当時は力不足だったとはいえ(まぁ、彼にしたら今でも大差ないのかもしれないが)、僅かな間にこれでもかというほど尋常ではない実力差というものを教え込まれて、たっぷりと SEKKYO された流星街の悪ガキどもたちは、その日を境に、パッタリと
そして、彼が率いる組織から派遣された人たち、その中に混ざっていた同い年くらいの子どもたちと一緒になって切磋琢磨して生活していくことになる。その間に彼がしたことと言えば、議会側と何がしかの交渉事をして私たちや他にも彼が流星街というゴミ溜めの中で拾ってきた子どもたちも巻き込んで本当に、本当に涙があふれ出てくるような陽だまりの中を生きているような感じがしていたのだ。
それは彼と彼が連れてきた組織に属する子どもたち、組織の人たちが此処から去り、私たちが独り立ちして当時は名もない義賊的な活動を個々・集団の別なく活動していたある日に起こった事件が私たちグループの全員を襲う、その時まで……… その凄惨な記憶、憎悪と怨嗟の声に侵され、血と悔恨に滲む両手、抗えない絶望。血渋きに沈む赤く染まった瞳。それを笑いながら抉りとる私、仲間、泣き叫ぶ子どもや大人。
許して、許して、許して、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。助けて、助けて、助けて。い、いやぁぁぁ…………………。
* * *
身体が揺すられる。それにビクッと反応して私は目を開けた。
「マチ? マチ!?」
「あぅ……… わた、し??」
「良かった。目を覚ましたんだね?」
そこにあったのは大好きなヒトの心配そうな顔だった。ううん、私はこの想いを伝えられない。私は、私は幸せになってはいけない。先程、視たユメの内容が漠然としていて
「ほら、バナナペーストとミルクを足したホットココアを作っておいたから、これでも飲んで少し落ち着くといいよ」
暫く黙ったままだった私を心配したのか、八尋は神妙そうな表情をしながら、飲み物を用意してくれる。それを微かに震える手で受け取って少しずつ、ゆっくりと喉を潤した。それは涙が零れそうなほど落ち着く味がした。
(あたたかい………)
そうカップを両手でギュッと握って俯いていると、また「大丈夫?」と声を掛けられる。それに合わせて顔を上げて私は答えた「だいじょうぶ」と。
けれど、そんな強がりは八尋には全く通じない。すぐに額に手を当てられて「熱は、無いみたいだね」と声を掛けられ、そして「無理はしないように。マチは強くなったけど、俺にとっては、まだまだ手の掛かる娘みたいなものだからね」などと勝手なことを言ったかと思うと朗らかに笑って、その場を後にしようと立ち上がった。
「どうしたの?」
そう声を掛けられるまで、私は、自分で自分が何をしているのか分かっていなかった。声を掛けられた先にある八尋の顔を見て、そしてズズッと視線を下ろしていくと、彼のズボンの裾を何時の間にか握っている自分の手があることに気付いた。
「あ、うん。なんでもない。
「? どういたしまして?
まだ三次試験の会場に着くまでは時間があるみたいだから、もう暫くゆっくり身体を休めておくといいよ。暇があるならシャワーを浴びるとかね」
その思いは言葉にならず、小首を傾げつつ、またアドバイスをくれる彼の背中を私は静かに見送った。
なんで、今日、此処で、このタイミングで、あんなユメを視たのか。その答えが分かるのは、8ヶ月後に控えたヨークシン・シティでの催しごとで明らかになる。だから、今の私には、その未来を知るすべは無かったのだ。
ちなみに微妙な伏線的なもの(なんで八尋に関わっているのに幻影旅団が、原作どおりの非道集団に堕ちて行ったのか)は、既に投稿済みのXXXシリーズでクロロ視点が明かすことになります(ネタバレ)
たぶん、後々、多少の書き換えはしますが。