【原作沿い】次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚 作:冷やかし中華
身体を休めるついでにシャワーを浴びに行ったクラピカとレオリオを待ったあと、私はパタパタとご主人と姫さんの気配を手繰りながら食堂まで向かっていた。その入り口で私が『私』として逢うのは初めてだけれど、これまで何度か、会話を重ねたことがある女性が食堂の中をおっかなびっくり入ろうとしては躊躇って、でも、また足を延ばしてなんて繰り返している姿を視界に捉えた。
「どうしたんですか?」
「!」
私の声にビクッと肩を震わせた彼女は、数年前にちょこっとだけ見かけた姿と殆ど変らない(というと失礼だが)、姿をした着物の良く似合う人、まぁ、つまるところマチだった。しばし、無言で互いの顔を見るような形で向き合っていると食堂の中から声が聞こえた。
「やぁ。珍しい組合せだね?」
その声に釣られるようにして振り向けば、ご主人と姫さんが夕食にしては少し遅めの、けれども私としては見過ごすことのできない豪華なディナーを摂っている最中だった。え? ふ、2人とも、なにをたべてるんです??
そう私の
「まぁ、その、悪かったよ………」
一体、何の謝罪だろう? などと考える方が野暮だろう。マチが、このタイミングで謝るなんて例の『
「まぁまぁ、マチさんも元気出してください。あそこにあるのは、ご主人が捌いたと思われるフグクジラと呼ばれる刺身だと思いますから、それを食べて元気を出してくださいな」
「そういってくれるなら、嬉しいよ……… って、アンタ誰だい?」
私の言葉に緊張を解いたらしいマチは、ススっと隙のない足取りでご主人の隣へ。私は姫さんの隣に腰を落ち着かせた。
「えっと。そういえば、挨拶がまだでしたね。私は『
そういうと「え!?」という驚きの声を上げるマチ。まぁ、うん、その反応は正しい。そして、マチは "念能力者" だから別にチカラを隠す必要もない(まぁ、カモフラージュすることくらいは必要だが。私たちのチカラは "念" ではないですからね)ので、あれこれと隠すところは隠し、話すべきところは要点を抑えて語った。
「つ、つまり、カナタと姫さん?は、八尋の、その……… 念獣みたいな、もの………? という理解で良いのかい?」
混乱しながらも何とか私たちの説明を上手く汲み取ったらしいマチに私は、私もご主人も微笑みながら肯定する。姫さんだけは、素知らぬ顔で我関せずとフグクジラの刺身にありついていて、うん、これはマズいと脳内で警鐘がなるものの、私にはどうすることも出来ず。どんどん無くなっていく刺身に人知れず涙を流していた。
「まぁ、その理解で問題ないですよ。さ、早く食べましょう。じゃないと全部食べられてしまいます!」
そういって少しどころか、かなり行儀が悪いなと理解しつつも姫さんの箸を牽制しながら少しずつ分け前にありついていく。それを苦笑いを零すご主人に窘められ、新しいフグクジラを用意して貰って今度は私が捌いて皆さんへ提供することで事なきを得た。
「試験中は、あまりゆっくりと話せなかったけど、マチも久しぶりだね。うん、凄く美人になった」
そう何の躊躇もなく口説き文句を口にするのは、ご主人こと八尋。マチは完全な不意打ちで顔だけじゃなく、耳まで朱に染めている。それを見てニヤニヤする姫さん。気持ちは分かりますけどね、そういうの良くないと思うんです、私。
「あ、うん。褒め言葉として、受け取っておくよ………」
そう所在なさげに声も小さく答えるマチを見ながら何やら姫さんが酌を勧めると気持ちよさそうに呑む彼女。って、それ『
慌てる私の雰囲気に気づいたご主人も表情を僅かに一遍させて頬をヒクつかせる。だが、それも後の祭。一体、何時の間に取り出したのかと言いたげな視線を姫さんに向けるものの、当人はと言えば実のところ、既に酒に中てられているのか完全に出来上がっていて素知らぬ顔。あ、ダメだ、これは絶対に不味いパターンだと、ご主人にアイコンタクトで意思疎通を図り、私はマチさんの様子を見ながら、ご主人は姫さんの対応をする。もちろん、どんな酒豪でも酔わせると言われる度数にして実に83度を誇る
さて、それでは、マチさんはというと……… うん、ダメだ。完全に眼の焦点が合って無い。まぁ、暴れないところを見ると早晩落ちる様な気もするが。とりあえず、目の前の用意されていた食材を全て綺麗に片付けていると、ご主人から念話にて『試験、ダメだってさ……』と告げられる。しかし、それは初めから半ば承知していた事なので『そうですか、残念です』と返して会話を終える。
その後、2人を落とさないように器用に抱えて移動し始めたご主人の背中を見送って、私はキルアとゴンでも探しましょうかと気配を巡らせるのだった。
* * *
きっかけは唐突だった。同い年での受験だというゴンと、このハンター試験の会場で出逢い、俺はカナタ(当時の見た目は "八尋" とウリ二つの別人という体だったけど)と出逢った時と同じくらいの言葉では言い表すことのできない衝撃を受けて、心の底から思ったのだ――
『ゴンと友達になりたい』
――と。
そして、俺はゴンとお互いの身の上というには深くもない話と、このハンター試験を受験した動機などを話しあった際に、自分が殺し屋の一族であることを告げた。それをするにあたって怖くなかったと言えば、嘘になるだろう。嫌われるかもしれない、そうでなくとも恐れられて距離を取られるかもしれない。でも、それでも俺の背中をそっと押してくれたのが、此処には居ないカナタの存在だった。だから、俺は、一歩を踏み出して俺の真実を告げたんだ。
「うちの実家、暗殺業なんだよねー」
「家族の人、全員?」
「そうそう。執事から何から全員」
「凄い家族だね」
このやり取りを俺自身が取ったリアクション以上に信じられないものを見たという顔で俺はゴンのことを凝視した。
「普通、そんな反応しねえよ。ゴンは俺が怖くないのか?」
「そうかな? でも、怖くないよ。だってキルアは、キルアじゃん」
「ばーか。それは俺が猫被ってるからだよ」
「え? キルアって猫だったの?」
もう、言葉を交わす度に、それが狙ってやってるのかと言いたくなるほど、もの凄いド天然な切り返しに真剣に考えていた俺の方がバカらしくなって、その時ばかりは久々に声を上げて笑ってしまった。そういえば、カナタたちと一緒の居る時以外に『笑う』なんてことは、あまり無かったなと、ふと思い出して何だかんだ言っても俺は八尋たちに絆されているんだと気づいて「ハァ」と溜息を吐いた。
――そして現在
「ってぇ……… 何もんだよ、あの爺さん。八尋の脚を蹴った時よりも固ぇ」
俺は、ハンター協会の会長を名乗る人物に挑発されてゴンと共にネテロから出されたボール取りに挑んでいた。そこから、どこまで全力でぶつかってもボールに掠りもしないやりとりを何度も繰り広げているときに声を掛けられた。
「あ、いたいた。ゴン君も、キルア君もネテロ会長に遊んでもらっていたんですね?」
「カナタ!」
「違ぇよ。俺たちが爺さんが暇を持て余してるっていうから遊んでやってたの!」
「それにしてはキルア君たちだけが汗だくの様ですが?」
ゴンの挨拶に身振りで答え、俺の言葉には的確な指摘を返されたことで図星を突かれた俺は「うぐ………」と言葉を飲み込み何も言い返すことが出来なかった。その後、ゴンの「カナタさんもやる?」という誘いは、何故か「
『遊びじゃすまなくなるので辞退しておきますね』
そのカナタの何かを含むような言葉が喉奥に引っかかった小骨の様な違和感を憶えさせたが、たしかにカナタが、カナタとしての実力をフルに発揮させてしまえば俺なんかよりも遥かに強いのだから、その言い回しは妥当かと、それが少し悔しい思いを抱きながらも、小休止を挟んで俺とゴン、そしてネテロとのボール捕りゲームは再開された。
――2時間後
「ふむ、努力賞っと言ったところじゃな」
ゴンの靴を半分脱いだことで行われた奇襲から連携して見事ネテロからボールを奪えるかに見えたそれは、その実、ネテロがほんの少し踏み込んで駆けたことで俺たちの手に納まりそうだったボールを奪い返すことで露と消えた。
その床に残った足跡を見て俺の中で何かが切れた。
この
「やーめた、やめた。ギブ、俺の負けだよ」
「え? なんで?? あと少しだったじゃん」
俺のギブアップ宣言にゴンはキョトンとした表情をして聞いてくるが、そうか、ゴンは未だに気づいてないんだなと思い、俺は答え合わせするかのようにネテロが勝手に負っていたハンデについて明かすことにした。カナタに目を向ければ実にイイ笑顔を浮かべている……… ということは、カナタは何時の時点からかは知らないが最初から気づいていた、ということになるのだが………。
そういう思いを込めて普段は絶対にすることのない睨みつける様にしてカナタを見ると、ゴンとは違った意味でキョトンとした表情を浮かべたことに俺の不覚にもドキっとしてしまって、まともに顔が見ることが出来なかったけれども。
「さすが、キルア君ですね。ネテロさんも非常に巧妙に誤魔化していたので気づかないかなっとも思っていたんですけど、お見事です」
そういって床に腰かけていたカナタは立ち上がり、汗だくの俺やゴンを労ってタオルのようなもので拭ってくれた。こんなことしてくるから母親かって言いたくなるっていうのに……… なんていう気恥ずかしさや、こうして気兼ねなく甘えることが出来る存在に俺は依存しつつあるのを自覚して顔が熱を持つの感じた。
「でも、ここで止めてしまうのは勿体ないと思いますよ?」
「え?」
「だって、意味ねえじゃん。まだ使ってない手足もあるんだぜ?
それなのに、こんな調子じゃ、このままなら1年中、この爺さん追っかけまわしたってボールなんか捕れっこねえじゃん…… 意味が分からねえよ」
「だからこそ
「「え??」」
その言葉に俺は絶句して、次いで出てきたのは驚きの声だった。ゴンと声が重なって広いイベントホールほどもある室内に音が響いた。
「どういう意味だよ?」
カナタの言った意味がわからなくて、それが何だか悔しくて俺は詰め寄る。カナタはそれに微笑んで言った。
「こんな格上のヒトを相手に無償で遊んでもらえるなんて、そうそう無いですよ?
ご主人と同じゲームをしようものなら、一度、挑んだが最後、泣いて謝ったって許してもらえないどころか、諦めて逃げ出そうと考えた時点でご主人が飽きるまで逆に追いかけられそうなものですけど。でも、ネテロさんなら、そんなことしないでしょうから、そこは安心して良いですしね。
だから、キルア君とゴン君が、もう体力の限界、明日以降の試験に支障が出ると思ったところでキリ上げればいいんですよ」
その言葉にゴンは頭にたくさん "?" を浮かべている様だったが、それよりは
そう、たぶん俺の知る限りでは、ゾルディックに於いて
『ミルキちゃんのあのぽっちゃりとした体形も良かったけれど、八尋さんに扱かれたおかげでイルミと同じくらいスッキリしたミルキちゃんも素敵ね!』
『だからって俺を着せ替え人形にするなよ、ママ!!』
『あら? だってミルキちゃんは、お部屋にあるお人形の着せ替えは好きだったでしょう?
それなら、こうしてママに付き合って着せ替えさせられる方も楽しんでみれば、少しはお人形さんの気持ちが分かるんじゃないかしらと思っての事なんだけれど、ダメだったかしら?』
『だ、ダメに決まってるよ!!』
『あら、そうなの?
でも、こういう経験を積むことで、お洒落にも磨きが掛かって、よりお部屋のお人形さんも輝くと思うのだけれど?
それに、ほら。八尋さんなんて、もうあそこで微動だにせず座ってらっしゃってよ?』
『ママ、それは違うよ!!
っていうか、八尋がいるなら俺じゃなくても、ぐぇ………』
『あらあら、まったく2人は仲がいいことね。これは私自身のセンスを磨くにも役立って一石三鳥ね!
それにしても、八尋さんもミルキちゃんも顔の造形から良いから
これなら、次はカルトちゃんも交えて4Pも面白いかもしれないわね!』
『ママ、それはおかしいよ!! っていうか、その表現は誰得だよ!!』
『あら、そうかしら?
まぁ、いいわ。ほらほら、ミルキちゃんも無駄口を叩いてないで次に逝くわよ!!』
『た、助けてパパ~』
『『あきらめろ、ミルキ…………………』』
――そんな実家で何度も目撃したやり取りを思い出した。
「どうしたの? キルア??」
「あ、いや、ちょっと昔に実家であったことを思い出してた………」
ネテロとのボール捕りゲームとは違った意味で疲れた溜息を出して俺はゴンの疑問に答える。そしてゲームは続行して、本当に明日以降の試験に差し支えが出始める前に切り上げることを提案してきたカナタに「具体的には、どうするんだよ?」と俺自身の疑問を投げかけたのだった。
「まずはボールを狙うよりも、殆ど『
なので、ネテロさんからボールを捕ることそのものは『あわよくば』という皮算用に留めつつ、当面の新しい目標に挑戦することが、このゲームを楽しむコツかもしれませんね」
カナタが笑顔と共に提示してくれた内容を俺は胸の内で考えて「でも………」っと負けず嫌いな自分がいることを自覚しながら口を挟もうとした時、ゴンが「うん、それがいいね! やろうよ、キルア!!」と手を取ってきたことで、ある意味、その負けん気が霧散したようにも感じた。
「それに、こう言ってしまうとキルア君は怒るかもしれませんけど……… 例え、今のキルアくんが全力でネテロさんを殺すつもりで挑んでも、きっとネテロさんは、ご主人と一緒で笑って貴方を受け止めてくれます。だから思う様、今のキミの全力で高い壁に挑戦してください」
その言葉がダメ押しとなって俺の中で膨らんでいた苛立ちが薄れていく。代わりに、やる気が満ち溢れてきた。目の前にいる爺は、
「わーったよ。もう、ゴンが飽きるまで付き合ってやるよ。だけどな、ゴン。俺が全力を出す以上、お前も今以上に全力を出して付いて来なかったら、唯の足手まといにしかならねえんだから気張れよな?」
「もちろんだよ!」
「どうやら話は纏まった様じゃな。それじゃ、ゲームの続きと行こうかの?」
「しかたねえなぁ。やってやんよ!」
その言葉を合図に、俺は口調こそ不満気なものの、内心は闘志に溢れていた。先程まで心の内で燻っていた『
* * *
ゴンとキルアの頑張りの甲斐もあり、夜も更けつつある頃にはネテロは、これまで使っていなかった右手を使うようになっていた。狙いがボールから使っている手足や基本的には逃げない胴体に集中し、私の言った通りにあわよくばボールも、という算段、何よりも、この時でさえ目覚ましく成長し続ける2人に私もネテロも舌を巻いていた。
(一目見て才能はあると思っとったが、よもや此処までとはのう。末恐ろしい子どもたちじゃ)
そうボソボソとネテロが漏らした声を拾い、私はクツリと笑みを深める。本当に良い教材になっているのだと。もちろん、ネテロが本気を出すわけもなく、むしろ大人気ないと思えるのは彼らには使えない、ネテロにだけ使える技法をフル活用している点だろう。たしか "纏" と "堅" と "凝"、そして "流" という名前だったと思うが、それらを巧みに、本当に、視ている此方がそら恐ろしくなるレベルで行っている。そして、それをさせている非能力者である2人は、彼にとっても実に良い教材なのだと一種の相互関係が成立していることに羨ましくもあった。
今は、唯でさえ最大でも1/3しか出せないのだし、少しくらいなら………?
そう考えてしまった自分が少し怖くなった。なぜなら、その程度のチカラしか出せなくとも、今、私たちを乗せている飛行船を唯の "うっかり" で真っ二つにするなんてことは、先ほど捌いた特殊調理食材のフグクジラを
先ほどのご主人との会話だと、どうやら試験はダメみたいですし、ご主人の裡側に戻ったあとの暇な時間は姫さんに運動に付き合ってもらおうかなぁなどと考えていると、また状況が動いたようだった。
「「よっしゃー!!」」
その声に考え事から顔を上げると、子ども組2人の歓声が上がりハイタッチを交わしている姿が見て取れる。
「むぅ。参ったのう。まさか本当に、この短期間で儂の四肢全部を使わされるとは………」
「最後の方は、意地でも右足だけは使ってやるものか……… っていうのが滲み出てましたからね?」
「まったくじゃ。なかなかどうして、本当に末恐ろしい子たちじゃのう」
完全に当初のゲームの主旨とは内容が入れ替わっているものの、それでも1つの目標を達成した2人には褒美を取らせるのが王の務めでしょう。なーんて、私には余り関係ないことを考えながら、ご主人や姫さんが扱う様な「魔術」や「魔法」などを使えない私が唯一、私たちの間で共通して使える "鞄" の中からシュワシュワと泡立つシャーベットをカクテルグラス2つ分に分けて取り出し、キルアとゴンへ差し出した。
「はい。良く頑張りましたね、2人とも。これは頑張った2人に対する私からのご褒美です」
そういって出されたモノに目を丸くしながらもキルアとゴンは、それを受け取り、一口啜る様にして口に含むと――
「う、うめえ!!」
「あ、すごく甘いね! カナタ、これなーに?」
「それはですね。私が昔、ご主人たちと取ってきたシャーベットですよ。美味しいですか?」
「「うん。とっても!」」
――すごく喜んでくれたことに、私はホッと息を吐いた。
「うーむ。儂にも何か無いのかのう?」
「あら? ネテロさんは何かしましたっけ?」
「いやいや、儂、ちゃんとボール守ったじゃろ?」
そう口にするネテロの顔をまじまじと見つめて一言呟いた。
「たしかにボールは取られませんけど、それは、まだこの子たち2人には無理筋な相談だったわけですからノーカウントですよね?
その後に出たお題の四肢を使わないについては、見事に守りきれず使わされてしまったわけですから、ご褒美ないのが当然じゃないですか?」
「むむ……… そんな釣れないこと言わんで、老人には少し優しくするべきじゃよ」
「じゃあ、同じ条件でご主人に勝てたら何か考えますよ」
「いや、それ無理じゃろ………」
「じゃあ、諦めてください」
そうキッパリというとトホホと器用に頭にボールを乗せたままガックリと肩を落として隙だらけになったところを私はスラッと手を伸ばし――
「ところで、このボールをネテロさんから捕ると一体何があったんですか?」
――と手に取ったものをしげしげと見つめながら3人に向かって聞いたのだった。
「はぁ!?」「えぇ!?」
「む。これは油断したわい……… そうか、やはりお主は八尋と縁あるものということじゃったな」
あ、いえ。あ、はい。
なにやら凄い驚きようのキルアとゴンを見やり、それとは別に完全にしてやられたという顔を崩さないネテロ。
え? 何々? ネテロと遊んでいたボール捕りって達成すると何か凄いことが起こる、そんなに重要な案件だったんです?
そんな風に頭の上に疑問符を浮かべているとキルアとゴンから「今、どうやったの?」だとか、「何やってんだよカナタ、わけわからねえよ」と捲し立てている中で暫く黙っていたネテロが口を開いた。
「まぁ、ゲームは終わっておったからの。今のはノーカンじゃ。ノーカン」
そう言われて仕草でボールの返却を求められたので私は少し混乱しながらも、その要請に応えてボールを手渡した。
「え? あ、はい。まぁ、良いですけど………」
その私が出した呟きに今度こそネテロは明らかに窮地に立たされた人間が「あっぶねー」という時に浮かべるような表情をして安堵し、次いで「今、言質とったぞい?」と宣ったのだった。話の経緯を良く分かっていない私は相変わらず頭の上に疑問符を浮かべていたが、キルアから「何やってんだよ、もう!」と怒られて、その理由に耳を傾けると「なんで、こんなに簡単に釣られてしまったのか」と今度は私の方がガックリと肩を落としたのだった。
―――第287期ハンター試験 エクストラ(ネテロと遊ぶボール捕り)通過者:0名
実際のところ、星の触覚である真祖は酒に酔わないのかもしれないけど(公式には、そんな設定は無い?)、本作の姫さんこと朱い月のブリュンスタッドは、グルメ細胞の悪魔的な存在、かつ、ほかの話の中でそこはかとなく漂わせているとおり、実態は、それとも別な異質なものであるので、主人格である八尋が平時はアルコールに弱いことに影響されてか、えらくしおらしくなっているという感じで。
あと如何にしてキルアに390番と391番を殺害させないかを考えた結果、こんな話になりました。