【原作沿い】次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚 作:冷やかし中華
「だから言ってるだろ。俺は善人じゃねえって。滅ぼされる悪というのがいるのなら、俺自身が真っ先に、その対象に選ばれなければいけない超ド級の危険生物に一体、何を求めてるんだか」
八尋が対戦相手となっていたレオリオという長身老け顔の受験者から受けた詰問に対して答えた言葉に不覚にも俺の心臓がドクンと跳ねた。
八尋が真っ先に滅ぼされるべき悪だと……!?
……そんなわけがあるか!!
何故、
むしろ滅ぼされるべき、復讐されるべき悪というのは俺たちの様な道を外れてしまった外道だろう。そうでなければ、八尋を含めた人類は
そう俺は声を大にして叫びだしそうになったのは寸でのところで堪え、表情筋を引き締め何でもないように装う。だが、傍に控えていたシャルナークは一瞬だが怯えた表情を見せたのが見て取れた。幸いなことに八尋や他の受験者、立会人たちがそれに気づいた様子はなかったのは、まさしく不幸中の幸いと言っても過言ではない隙だったとも言えるだろうが。
約4年前の胸糞悪くなる仕事を思い出す。
表向きに流星街の議会を取り仕切る長老など歯牙にもかけぬ、まさしく『最悪』というものを余すことなく具現化したような存在。悪魔的な狡猾さと、それを支える積み重ねた
残虐に……、無惨に……、無慈悲に……。
それは今でも思い出すだけで全身が粟立つような恐怖だった。それを実行させた本人は欠片も自らの手を汚すことなく、俺たちを利用することで、それを成し遂げた。
それを俺たちに実行させた理由?
それは分からない。ただ何かの報復活動であることはだけは分かっているが、その真意までは当時の、そして
ただ、ただ、その場で同席した、いや、させられたメンバーの全員は聞いただろう。その老爺を模るオニが確かに漏らした呟きを。
「絶望は与えれば、与えるほど良い。それが旨みを増し、いずれ満ち足りたとき、我を座へ導くだろう。
その日から俺たちの中にある何かが狂った。メンバーのいずれも何処か壊れた。元々、流星街という治安などあるはずもない場所で暮らした俺たちに、そういった気質がなかったといえば嘘になるだろうが、そうでなくとも薄氷の上を渡るような危うさを秘めていた俺たちの持つ "本質" が、その老爺によって強制させられた
それを機に、俺も、メンバーの多くも他者を害することに躊躇など無くなった。
『俺に言えたことではないが、なるべくヒトを害するな。
特にクロロ。キミは地頭は、この中でも抜きん出ているし、この場を預かるリーダーなんだから、それくらい俺に言われなくても分かっているだろう?』
そう言われて初期のメンバーを八尋から託されたときのことを思い出す。八尋と袂を別つことになったあの時は、八尋からメンバーのことを代表して託されたことそのものが何かこそばゆくて皮肉で返したものだったが、今ではそれが懐かしい。もう後戻りは出来ない。あのことがキッカケとなって俺たちは世界に "悪逆非道を厭わぬA級首" と認知されたのだから。
「あ、それで俺が何で極悪人かって話だったっけ?」
どうやら俺が1人思考に耽っている間に多少なりとも時間が過ぎていたようである。気がつけば八尋とボドロの試合が始まっており、どうやら周りの空気を察するに、この試合はボドロが『まいった』という流れになっているらしい。
「どういうことだ?」
「え…… クロロ、今のやり取り見て無かったの?」
「あぁ、少し考え事をしていた。それで、どういう状況だ?」
立っていた位置から一歩半下がり、シャルに声を掛ける。どうやら大方の予想は当たっていたようだが、それがどうして、ボドロには八尋に質問する権利が与えられていたようである。そこで明かされた真実をシャルから端折って聞いたことで俺は息を呑んだ。
「よく分からないけど八尋って不老不死だったみたいだよ?」
シャル、お前は一体何を言ってるんだ? 寝言なら寝て言え、からかっているつもりならいい加減にしろ!
そう喉から言葉が出掛かった言葉を先程とは違う意味で堪えられたのは、まさしく奇跡と言っていいのかもしれない。
「どういう意味だ?」
「そのままだよ。八尋って自分自身では数えるのを止めたみたいだけど、少なく見積もって紀元前から生きてるっぽい。あと間違いなく
その掻い摘んだシャルの予測に今度こそ俺は絶句した。これは、もう本格的に、この試験が終わったら八尋を問い詰めなければならないだろう。八尋は、きっと――
「えー、やだよ面倒くさい! それじゃ、代替案。俺は此処から逃げるから問い詰めたいヤツ等全員がオニになって捕まえに来てごらん!
見事、捕まえられたら俺に答えられることなら何でも教えてあげよう!! わー、俺ってイイヒトすぎじゃね? だから、ガンバレー!! ばきゅん」
――などと盛大にふざけたことを抜かしながら会場を後にする八尋の図がありありと脳裏に浮かんだ。
そして、八尋が本気になって逃げたら間違いなく俺たちどころか、此処にいる全員の力を結集しても(ソウイチの組織をフルに使っても)、恐らく捕まえることなんか夢のまた夢だろう。
あ、いや。その場合は八尋が逃げる前にマチに『お願い』を行使してもらえば良いか?
『団長の命令は絶対』
こんなことで公私を混同するのも憚られるが、これは仕方が無いとマチには割り切ってもらうしかないだろう。そう考えていると――
ズゥゥゥゥゥン
――耳を劈くような大音量とともに会場の隅に玉座が出現した……
何を言っているか分からない?
ならば分かるまで繰り返してやろう。
気づいたら耳を劈くような大音量とともに会場の隅に玉座が出現した
もちろん下手人は八尋である。ハンター協会会長を務めるアイザック=ネテロも額に盛大に血管を浮き出させており、他の立会人たちは当然として、念能力など知りもしないであろう受験生も顎が外れんばかりに口を開け絶句している。それはそうだろうなと俺だって思う。なんたって八尋が
「お前、いい加減にしろ!!」
「うーん。まぁ、どうしてそうなったのかという経過を説明すると長くなるから結論しか言わないけどさ。
俺が極悪人を自称するのは、その過程に関わらず、最終的に俺がこの手に掛けた世界の数は軽く両手の指の数じゃ数え切れないほどあるからだよ」
八尋の発したその言葉に、今度こそ、この場にいる全員が息を呑んだ。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「「は? なに言ってんだオマエ??」」
暫くの沈黙の後、その衝撃から回復し、口を開くことのできた全員が声を揃えてそう言った。だが、そんな小ばかにするような言葉にも八尋は表情に険を帯びることなく、むしろ、いっそ清々しいほどに答えた。
「うん。予想通りの反応で結構。誰だって、そう思うだろうさ。だから、ここにいるのは狂人の戯言だとでも思って聞き流してくれたら良いんじゃないかな?
もちろん最初に言ったとおり、どうして俺が今までに幾度も世界を滅ぼしたことがあるのか、その理由が何なのかは説明すると長くなるから省略ね。別に話つもりも無いし?」
そう明言すると今度は、先程まで浮かべていた清々しい表情とは一転した憂いを帯びた表情で八尋は、これまた何時の間にか手に持っていた空のグラスに血のように赤い、否、
「あ、この際だから先に言っておくね?
もし、俺が "敵" だと定めているものが、この地に降り立っていたとするなら、俺は、嘗ての俺がそうしてきたように、此度も遠慮なく世界を滅ぼすつもりだから、そのつもりで今ある生を謳歌しなさい。
それを止めるというなら、その挑戦は何時でも、何処でも、誰からでも受けよう。俺は逃げも隠れもしない。その『資格』を持つ者達であれば喜んで相手をしよう」
「それは、今、この瞬間も含まれると取って良いのかな?」
八尋の挑発とも取れる言葉に真っ先に食いついたのは案の定ヒソカだった。そして、その言葉に八尋は1つ頷いたが続けて俺たちにとっては衝撃とも取れる言葉を発した。
「ヒソカの挑戦を『許可』したいところではあるけれどね。残念ながら先程も言ったように、
そんな『資格』を持たぬ者達が、どうして俺に触れられると思えるのか、俺にはそれが分からないよ。あぁ、ちなみに、これは挑発でも何でもない。純然たる事実だよ。だって、今、この瞬間にお前たち全員が挑みかかってきたとしても、この
この
そういって八尋は暫く黙り込んだ後、俺やシャルにとっては衝撃以外の何者でないことを平然と言ってのけた。
「流星街って聞いたことがあるかな?」
それに頷くヒソカを観る。ドクリと心臓が脈打つ。八尋、お前は一体、何を知っている?
「それは重畳。その最奥にね、俺と遥か昔に幾度も殺し合いをしたヤツに良く似たナニカがいる。俺も直接確認したことは無いけど…… たぶん、この胸のざわつきが確かなら、そこに潜み自らを『凶皇』だなんて名乗るソイツは、きっと俺が嘗て好敵手だと認めざる得なかった『龍師範』とも呼ばれたヤツの魂の複写みたいなものだろう。もちろん、俺と同様、遠い昔のチカラの多くを殺がれたとはいえ、その本体が持っていたチカラと比べたら『凶皇』が持つチカラなんていうのは
あ、アレを前にして…… 本体の複写?でしかない『凶皇』を挙げて、その本体と比べたら
八尋の何でもない言葉が、本人がそれと意識したわけではないにせよ胸に突き刺さる。視界が滲みそうになって堪えた。八尋は続ける。
「うん。その『凶皇』を前にして
そういって八尋は玉座に腰掛けたまま朗らかに言ってのけた。その様子に、この場に居る全員が毒気を抜かれ苦笑いを浮かべるしかなく、また、八尋が自分たちの "敵" ではないと、少なくとも
「はい。俺の話はコレで終わり。さっさと次に進んでくれ。もう疲れた。
そういって八尋は玉座に持たれかかったままスゥスゥと寝息を立てて眠り始めてしまった。なんだか、その様子が妙に可笑しくて何処からとも無く忍び笑いが零れる。そして何故か立会人を務めていたハンター協会の副会長を務めるパリストン=ヒルという同年代と思わしき青年によって高らかと勝ち名乗りが告げられた――
「勝者、100番:八尋」
――が、その名乗りに眠っていたはずの男はハッと起きたかと思うと戦闘狂の側面を覗かせる面々に釘を刺す言葉を告げるのだった。
「あ、でも、お前たち程度の実力じゃ先にも言ったとおり、今のままじゃ間違いなく
なんだかな。なんというか、本当に八尋は何処まで言っても八尋らしいなと俺は隠しきれない忍び笑いを漏らす。
「シャル、メンバーを全員集めろ。受けてやろうじゃないか、その『手段』とやらを」
「合点。っていうか、もうヒソカも含めて全員、この周辺に集まってるじゃないか」
そういって俺たちは医務室に下がってしまった
Q.八尋のいる世界線でも幻影旅団はクルタ族を滅ぼしている?
A.はい。ただ、あのときに八尋がクロロへ釘を刺した伏線を活かす様に(作者にとって)都合のいいストーリーを頑張って考えました。
Q.龍師範って、ちょっとマテ……
A.全盛期の八尋と殺し合いを演じて、なお、お互いに死なない(決着がつかない)くらいの凄いヒト?って、もう彼くらいしか思い浮かびませんでした。
ただ、この『凶皇』は相当弱体化はしてます。運命再編でイロイロあって消された『彼』の残滓みたいな感じだと考えてください。
Q.八尋が世界を滅ぼすくらいじゃないと解決できない敵って……
A.ホント、暗黒次元っていうのは厄介ですわ。滅ぼしたと思ったら気づいたら再興してるし、あんなん多元宇宙の全てから掃除しきるなんてマジ無理ゲーですから!!
Q.八尋の用意する『手段』って、どんなもの?
A.原作にも『欲望の島』なんて名前のゲームがあるじゃろ?
あれは、今回、八尋の所為で原作以上にベリー・ハードなんよ。あ、裏ステージ的な意味でね。表向きは頑張れば原作通り、普通にクリアできますよ。じゃないとゴンがカイトに逢えず、原作が進まないからね!(目を逸らし)
Q.ちなみに『凶皇』って、この後のストーリーに出てくるの?
A.わかりません。上手く出せなかったら、その、ごめんなさい。
Q.凶皇や八尋の使う能力って念能力
A.いいえ、お察しの通りだと思いますが違います。ただ、この辺りは少しベースを考えているので、その内、書きます。
Q.王食晩餐と玉座って何か関係あるの
A.いえ、実は余り関係ないです…… ただ突っ立って話しているのが疲れた八尋が「これは念能力じゃないから使っても問題ないよね!」と開き直って見せびらかしただけです。