【原作沿い】次元跳躍者の往く、異世界放浪奇譚   作:冷やかし中華

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『魔術の触手はあっという間に夢の弱点を見つけ出す。』

 八尋の設定というか、なんというかの回。HUNTER要素は最後の少しだけ。ちょっとだけハーレム要素を頑張って取り込もうとしたら、こんなことに。どうしてこうなった。。(汗


XXX⑥:Dream Leash

 小鳥たちの囀りと風の流れる音、そして呼びかける声に誘われるようにして意識が浮上する。

 

「――きて。 ――起きてってば……」

 

 何事か呼ばれた気がして閉じていた眼を開けると何故か至近距離に()()()()()()()()()()の顔があった。

 その姿を未だ微睡から覚醒しきらない意識でぼんやりと眺めながら、伸ばした手で距離を取りながら辺りの様子を確認する。少し離れたところに、その様子を微笑ましげに見る淡い金髪が特徴的なハーフエルフの女性と、森の貴婦人といった風格を持った女性、そして何が面白くないのか仏頂面した男性がいるのが見えた。それを確認して――

 

 あぁ、俺は今、遠い昔に過ぎ去った日々を夢に見ているな……

 

 ――と何処か他人事のように考えてしまった自分が酷く醜いもののように感じた。

 

「おはよう、マチ…… あの宝石(ラスピラズリ)を思わせる淡い紫がかった髪色も素敵だったけれど、その烏の濡れ羽色も素晴らしいね」

 

 そう寝起きの挨拶をする。

 

「うん? ■■■ってば、まだ寝ぼけてるの? それとも何? また貴方に言い寄ってきた別な女の話?」

 

 そういって目の前にいる少女は僅かに肩を震わせて表情に険を帯びる。これは少し拙いかもしれない。とりあえず、まずは謝罪しよう。言訳するなら、その後だ。

 

「ごめん、ごめん。そんなに睨まないでくれ■■■。まだ、ちょっと微睡から醒めきって無くてね。いろいろ混ざってしまったみたいだ。キミの名を呼び間違えてしまったことは謝罪するよ。この通り、許してほしい」

 

 そういって謝罪の言葉を告げながら、魔力変を用いて作り出した手のひらサイズの宝石を少女に手渡す。

 

「もう、■■■ってば調子がいいんだから…… まぁ、いいわ。

 ほら、早く起きて。そろそろ "虚月の頂上会談" に向かわないと」

 

 そう告げられて、これが本当に夢であることを確信することになったが、この久々に見たものに未だ身を委ねていたいとも考えて思考を放棄する。

 

「あぁ、そうだね。それで、もう何度目になるかも分からない会談だけど、今度は一体何を話すのかな?」

 

「さぁ?

 どうせ■■■■■・■■■の悪巧みでしょう。貴方がいて、養母(おかあさん)養父(おとうさん)、それに叔母様(■■■■■■■)も揃っているのだし、きっと何が仕掛けられていたとしても問題なんか起こるはずもないと思うけれど」

 

「要するに()()()()()()()()()()()()()()()が暇を持て余しているから手慰み程度に出席だけでもしておくか、という話だよね。それ」

 

「そうとも言うわね」

 

 俺を起こしに来た少女に代わって、そう微笑ましげに答えたのは近くに控えて此方の様子を伺っていた■■■■■■■だ。というか、みんな大人だよな。■■■■■・■■■とは少なくない因縁があるはずなのに、わざわざ出向くなんて。

 

「その■■■■■・■■■が企む悪巧みで余計な混乱を招きたくないだけよ」

 

 俺の思考を読んだかのように答えるのは■■■の養母である■■■■■■だ。まぁ、確かに。俺個人としては『全ての愚か者どもの破滅』を自称する■■■■■・■■■は別に嫌いじゃないんだが…… ま、お近づきにはなりたくないけど。

 

(それに■■■■■・■■■よりも間違いなく万倍は酷いやつも世の中には多いしな。例えば全知全能を目指すためならば、あらゆる犠牲を厭わない世界の暴君とか、龍師範とかよりはマシだし…… って、それは同一人物だな)

 

 まぁ、たしかに■■■■■■の言うとおり、 "虚月の頂上会談" に出席しなかったばっかりに■■■■■・■■■や■■■■■に好き勝手された挙句、責任を擦られても困る。というよりも、その2人に限らず俺たちのような定命からは切り離されて久しく、気が狂いそうになるほど永劫の年月を生き続ける輩にマトモな感性を持つヤツの方が少ないってことだろう。

 

「■■■■だって今よりも若いころは、もっとはっちゃけてたもんな?」

 

 そうからかい半分に眉間に皺を寄せたままの男に声を掛ければ、相槌を打つようにして「これでも私と付き合い始めたばかりの頃よりは、だいぶ落ち着いた方よ?」と微笑む■■■■■■と、そんな養父(おとうさん)の過去を知らないばかりに興味津々とばかりに食いついていく■■■。

 

「貴様、口を開けば余計なことを……」

 

 ようやく仏頂面を止めて口を開いたかと思えば刺すような視線とともに投げかけられる言葉に背筋がぞくりと震えた。おお、怖い怖い。

 

「さて、それじゃあ向かうとするか。そういえば、今回の議題はなんだっけ?」

 

「議題の内容なんて変わらないわ。もう、この不毛な諍いに終止符を打ちたいのと、これからどんどん広がっていく世界について少なくとも会談に集うもの達の間では不可侵の協定を結ぶってことくらいかしらね」

 

 それは難しいんじゃないかなぁ…… だって、そんな協定を結んだところで真っ先に破るのがニコル・■■■■だし。

 

 ■■■■■■の言葉に懸案を想起し、まっさきに出てきたのが先に挙げた『世界の暴君』と綽名される、俺の経歴の中でも最も相手をするのがしんどい彼の王の事を考えて、その名前が完全に出てこないことに驚いた。

 

「ごめん、1つ確認なんだけど…… 今回の会談にはニ■■・■ーラ■は出てくるのかな?」

 

「はぁ? あんなのが出てきたら会談どころじゃなくなるでしょ。

 さすがの■■■■■・■■■だって声を掛けに行くどころか、近づくことすらしないと思うわよ?」

 

 そこまで聞いて、それもそうかと納得した。

 

「それは重畳。たしかに■■ル・ボ■■■来ちゃうと会談どころじゃないしなぁ。あんにゃろう、会談そっちのけで真っ先に全開で魔力ブッパしてきそうだし…… そうなったら全力で逃げも良いよね?」

 

「気持ちは分かるけど、諦めなさい。というか、逃げ出したい気持ちは分かるけど、間違いなく残された者たちが全滅するから逃げずに立ち向かいなさいよ。今までもそうだったんだから、せめて私たちが退避する時間くらいは稼いで貰いたいものだわ」

 

 そう疲れたようにいう■■■■■■■の言葉に内心で『orz』の姿勢を取る。もう■■■・■■■スが何の気まぐれも起こさずに会談の場へ出てこないことを全力で祈るしか俺には出来なかった。

 

「まぁ、それは半ば冗談としてもね。あんなのと互角に渡り合ってきた貴方の方がおかしいのよ?

 そこにいる■■■■を遥かに凌ぐ最古の次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)にして、全ドラゴンの神王にして父。偉大なるドラゴンの名は伊達ではないわ。きっと巨竜戦争を生き残った■■■■■等が存命だったとしても、私と同じことを言うわね」

 

 フォローになっているのか、いないのか。よく分からないことを言いながら■■■■■■■は笑った。その笑顔に■■■の持つものとは別種の癒しを憶えて、俺も笑った。だが、かつての好敵手と書いて天敵と読む彼の王の名前も思い出せなくなったことに俺は哀愁を感ぜずにはいられなかった。

 

 ――何故?

 

 決まっている。これは様々な時間軸が繋ぎ合わせられただけの俺にとって都合の良いユメでしかないから。そも "虚月の頂上会談" は、()()()()()()()()()()()。そして、その初回にして最後となった会談においてさえ、最終的には事前に予期していた通りに次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)同士の殺し合いの場となった。

 

 ハーフエルフの次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)■■■■■■■や、森の■■■■■■と讃えられる()()()次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)たちと初めて出会ったのは、この頃だっただろうか?

 

 結局、会談そのものがご破算になり、集まった者達も地理尻となってから、また幾星霜もの時間が流れ、その場で縁を結んでいたものたちと次に逢ったのは………… その面影すら忘れかけていた頃。会談が開かれるよりも遥か昔、もうそれがいつの話だったかも分からないころから他の全てを犠牲にしたとしても討ち滅ぼすと決めた、俺にとっての唯一 "敵" として定めたもの――

 

 ()()()()『ファイレクシア』

 

 ――金属と死と悪意が渦巻く地獄のような世界。

 

 それは、時に『暗黒次元』、時に『諸悪の根源』と呼ばれ。すべての悪意、あるゆる混沌の具現であり、最早、その存在そのものが "病理" 、"災害" と概念付けても、まだ温いといえる『この世の全ての悪』を内包した全てが人工的に作られた球状の世界。

 

 その世界(ファイレクシア)には()()()()。というのも、殆ど全ての次元(せかい)に於いて、これだけは共通して言える太陽や月、星といった時の流れを感じさせる手立てが何ひとつ存在しないかったからだ。代わりに、ただ黄昏時の灰色をした(もの)が広がっている。世界(ファイレクシア)大気は油と火薬の匂い、硝煙と金属粉に満ちている。例えば今いる世界で何の取柄もないような一般人でさえ、ごく僅かな時間であれば生身の人間が活動することも不可能ではない。特殊な技法(念能力)を身に付けた者であれば、それが尽きるくらいまでなら、ある程度の時間は生活もできるかもしれない。しかし、次元(せかい)の中心に向かうほどにそれらの風景は醜悪さをさらに増していく。

 

 曰く、休みなくススを吐き出し続ける煙突群

 曰く、嗅いだだけで吐き気を催す悪臭を放つ塔の数々

 曰く、光を放つほどに溶けた金属や高温の油によって形成された河や滝、或いは、湖や海のような溜まり。

 

 ごく普通の人間が生活するのに必要な食物や飲料などは一切存在しない。それは、十数年前にクロロやマチたちを拾った流星街(ゴミ捨て場)など比較にならない悪辣な環境だった。そして、そんな場所を跋扈するのは醜悪に変質した文字通りの化物(クリーチャー)たちだった。否、何度もファイレクシアに侵攻された次元(せかい)、侵攻されつつある次元(せかい)、侵攻の予兆がある次元(せかい)は屠ってきた後だったから、その当時の俺にとっては見慣れたくなくとも見慣れてしまったものではあったが……。

 

 屠ってきた次元(せかい)

 

 今にして思えば、前者の2つの例はともかく、何故、まだ手の打ちようがある後者の例でも、例外なく滅ぼす方法しか思い至らなかったのか不明だが、ともかく、俺は、まだ次元(せかい)そのものが平穏無事な部分を9割9分を占めるような場所(せかい)にあってさえ、()()()()()というただそれだけの理由で次元(せかい)を殺していた。機械的に、何の慈悲も無く。そこにある悲哀を、怨嗟を、絶望を、向けられる憎悪と呪詛の全てを飲み下して。それが、俺の罪。絶対に忘れるものかと誓い、魂に刻んだ(記憶)

 

 予兆を見分けるもっとも簡単な方法は、その次元(せかい)にファイレクシアに存在する生物がいるか、いないかである。ファイレクシアに存在する生物、あるいはファイレクシアから侵攻してきた生物は、血の代わりに油と粘液が流れる、肉と機械の融合生命体であり、その誤魔化しようのない臭いや内包する魔力(マナ)の色合いから俺にとっては特別何かする必要もなく判別が可能であった。

 

 そういえば、全てを終えて、何もかもを失って、独りで流れに流れ続けた後の世界で、それと似たような特性を持つ生命体(ターミネーター)というものと遭遇したときは、危うく勘違いで、その世界を滅ぼしかけたが、あれは本当に危なかったと思ったのも記憶に残っている。あれ、どういう仕組みだったのか、今思うと非常に興味深い。まさに人間の持つ科学()が、神秘を凌駕した瞬間に立ち会ったような気さえしたものだ。

 

 

 閑話休題

 

 

 ファイレクシア人たちが機械の肉体をしている理由は、何も戦闘用のためだけではない。本命(ファイレクシア)に至る前にも見た完全に侵攻されきってしまった次元(せかい)もそうだったが、致死性を増していく過酷な環境(ファイレクシア)では、肉体の交換、修復、修繕、再生、そして補強や改造が容易に可能な、頑丈で強靭な機械製の肉体や内臓でないと生存が不可能だからに他ならない。

 

 そういう環境下ではない場所(せかい)にいるヒューマノイド系住人(※人間のように知的で社会性のある文化的な暮らしをしている、人間ではない種族。例えばエルフやレオニン、フェアリーなど)たちと比べると不自然に加速した進化、歪んだ進化を遂げている。まっとうな人型をしているファイレクシア人ですら表皮がなく、骨や筋肉がむき出しになっている者もいれば、機械化に特化しすぎて訳の分からない外見をしている者もいる。 口や手などの体の一部分が極端に肥大化した者や、複数の四肢を持つ者がいる一方で、逆に最低限の粗末な体しか持たぬ者もいる。

 

 だが、こんな誰にでも見分けのつく異形の姿をしたものの存在は序の口で、本当に厄介なものは、所謂「潜伏工作員」のように中身は肉と機械の融合生命体だが、外見のみ完全に生身の人間と同じ見た目、同じ生活習慣を身に付けているファイレクシア人という存在である。ファイレクシア人たちの外見的特徴の統一性は、ほとんど無いと言ってよいが、だからこそ、密かに忍び寄る脅威に気づけるものは少ない。血の代わりに『ファイレクシアの油』が流れていることが、ファイレクシア人達の数少ない身体的特徴の共通点の一つである。(これのおかげ?で俺は前述のように、それが発する『臭い』と、内包する魔力(マナ)の流れで簡単に見分けることが出来ていたのかもしれないが。)

 

 また、多くのファイレクシア人たちにとって基本的に寿命という概念は存在しない。よほどのダメージでも負わぬ限り半永久的に死ぬことのない、不老の融合生命体というのは、業の深い生命体(※人間に限らないが)であれば、誰しも一度は夢見るものだろう。奴らは、そういった些細な切っ掛けから次元(せかい)の侵攻を開始する。

 

 そして、遂に辿り着いた次元(ファイレクシア)の中心、その第九層にて捧げた俺の持つ権能『■■■■■■■■■、(消失の時きたれり、)■■■■■■■■■■■■(其は全てを融かすもの)』。またの名を『■■■■■■■■■■(全てを無に融かす消失)』により、次元(ファイレクシア)を構成する中心から『 』を内包する『 』と言っても過言ではない "無" そのものへ落とし、融かし、完全に消し去ろうとした。否、消し去るはず、だった。

 

 無そのものに解けていく世界の中心に立ち、ひとり感慨深げに長く過ごしてきた(その時点においてさえ)30,000年もの時を思い出す。身体の末端から解けていくような感覚に目を瞑り「これで終わり……」と呟いた時に――

 

 掴まれた手……

 

 ――伝わってくる温もり。

 

 見上げた先に泣きそうな顔をした()()()()()()()()()■■■■■■■がいた。

 

「何故、キミが此処に?」

 

 そう、俺が問うたのも無理からぬことだろう。それに対して彼女は怒り、消えかけていた俺を叱咤した。

 

「私たちが折角何千年も掛けて準備を進めて、ようやっと反撃の狼煙を挙げたというのに、それを全部無視して独りで片を付けようとしたバカを助けに来たにきまってるでしょ!!」

 

「そうなの? それは、ごめんね? ちょっと、やりすぎたよ…………(後悔なんか微塵もしてないけど)」

 

 そうして掴まれた手を解き、俺の手を掴んでいた彼女を残された魔力で包む。次元跳躍(プレインズ・ウォーク)、その任意対象バージョン。普通、ごく僅かな例外を除けば次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)本人にしか適用できない。(入念な事前準備などをすれば別みたいだが。)

 それを、この当時の俺は、その気になれば他者に対しても、さほど労力を割くことなく楽に扱うことが出来た。もちろん、先に滅ぼした幾つもの次元(せかい)では使った時と、使わなかった時と、状況によって対応は異なったが。まぁ、それは置いておく。

 

「こんなところまで、よく来たね。でも、もう時間が無い。だから、ここでキミともお別れだ」

 

 そういって俺が望む限り、一番、平穏な世界を思考し、彼女を飛ばそうとしたとき、その僅かな逡巡の隙を突いて彼女は俺を抱擁し、きつく抱きしめられた。

 

「勝手なこと言わないで!」

 

 悲哀とも、怨嗟とも違う声。顔の見えない声に胸の奥がズクリと痛み、どうにかして消える前に彼女を引き離す方法を考えたところで、彼女、■■■■■■■の方が、先に自身の魔法を発動させる方が早かった。

 

 まるで虚空穴(ブラック・ホール)の様な超引力によって内部から崩壊していた次元(せかい)から一足飛びに脱出するようにして行われた瞬間移動(まほう)。「へぇ、こんなことも出来たんだね」という俺の場違いな関心を余所に彼女と供に参じた8人の仲間たちの下へ俺たちは移動した。

 

「■■■■■■■! 無事だったか!!」

 

「えぇ。早く、此処から脱出するわよ。もう、この次元(せかい)は崩壊するわ」

 

「何!? どういうことだ!!」

 

 そう声を荒げたのは■■■と呼ばれた初老の男。なんでも、こんな場所まで遥々やってきた物好きらしい。いや、壮大な使命を帯びてやってきたのか、俺が先に滅ぼしてしまったけど。

 

「そういうことだ。悪いがさっさと来た道から帰れ。俺の使った『■■■■■■■■■■(全てを無に融かす消失)』は、文字通り、どれほど高位な次元(せかい)であったとしても、その全てを完全に崩壊させ、消し去るには余りある必滅を約束するモノだ。もう、この次元(せかい)の中心は殆ど 『 』 に食われて融けている」

 

 俺の言葉を裏付けするように大地と呼ばれる部分が鳴動し、大きな亀裂を走らせ、内部へ向かって崩壊していく様を見て■■■たちナイン・タイタンズと呼ばれていた英雄?たちは驚愕を示し、同時に来た道を戻るためのルートを協力して確保しようとする。

 

「■■■、逢いたかった!!」

 

 そういって俺の腕を掴んで離そうとしなかった■■■■■■■の代わりに寄ってきたのは、森の■■■■■■と呼ばれる美人と古参にして最強の一角とも数えられた旧き仲の■■■■、その義娘の■■■だった。はて、この時点では、そこまで仲睦まじくなるような親しさは無かった筈だが………… などという無粋は考えない。なんたって、これは俺にとって都合の良いユメでしかないのだから。だから、俺も務めて明るく返事をし、■■■■■■■に指先まで絡んで掴まれていた腕を解いて■■■に抱擁を返して、同時に寄っていた3人を■■■たち次元の門を開いた他のメンバーの下へ押しやった。

 

 同時に鳴り響く一際大きい地響きとともに俺と、9人との間に深い、深い、溝が出来上がる。

 叫びとともに自らの魔力を練り上げ、こちらに飛ぼうとする■■■■■■■を手で制した。

 

「そんな顔をするな。なに、すぐに追いつくさ。俺の不死性、俺の異名を知らない訳じゃないだろう?」

 

 そういって俺は■■■■■■■たちへ最後の言葉を告げる。

 

「■■■!! 貴様だけは逃がさん!!!」

 

「奇遇だな。俺も、お前だけは此処で殺すと決めていた!

 さぁ、決着をつけるか、荒廃の王!!」

 

 振り返った先には数刻前に俺の放った一撃によって完全に身体の格となる部分を崩壊させ死に瀕していた男の姿。否、それは既に人型ではなく、不定形の怪物を模った黒雲そのものだった。

 

 荒廃の王、機械の始祖の異名を取るようになった■■■■■、正確には、■■■■■という元人間だったもののなれの果て。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

 

 支離滅裂、理解不能な叫び声とともに俺に攻撃を叩きこもうとする様子を冷ややかに見つめ、俺は、背後にて、こちらの様子を開いた門の内側から伺っているだろう4()()へ本当に最後となる言葉を投げた。

 

「それじゃあ、今度こそ、本当にお別れだ。また、いつか逢おう!!」

 

「■■■~~~~~!!!」

 

 ――ガチャン。

 

 門が閉じ、彼女たちの姿が見えなくなったの同時に迫る■■■■■の攻撃を避け、それに呼応するようにしてトドメの一撃となる攻撃を■■■■■ごと崩壊の続く次元(ファイレクシア)に向けて放つ。

 

 それにより完全に霧散した■■■■■だったものの姿を認め、崩壊する世界に今度こそ身を委ねた。

 

「悪かったな…… すべての不始末を押し付けて……」

 

 意識することなく紡がれた俺の言葉が誰に対して贈られた言葉だったのかは分からない。でも、おそらく、これはユメの中ではなく、本当に俺が紡いだものなんだろう。どこか、そんな気がしていた。

 

 

 * * *

 

 

 ファイレクシア、その暗黒次元と呼ばれる世界の興りには諸説ある。曰く、遥か遠い遠い昔、龍の姿を好んだ人間の邪悪な次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)によって、この次元(ファイレクシア)は創造された。ただし、その創造主自らが、その次元の名前を『ファイレクシア』と名付けたワケではない。この世界を『ファイレクシア』と名付けたのはヨーグモスと呼ばれる一人の人間である。

 

 そして、後にファイレクシアと名付けられる次元(せかい)の元が創造された年代は、推定で紀元前AR5,000年~紀元前AR4,000年の間、もしくは()()()()()()()()()()()()とされているが定かではない。諸説あるとしたのは、その為だが何よりも不可解なのは、ファイレクシアの基盤(そんなもの)を作り出しておきながら、それを創造した次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)は、一体何処へ行ったのか、というものである。

 

 今日、最も支持されている説では、ファイレクシアの基盤を創り上げた創造主自らが、その環境に適応できず死に至ったといわれるもの。

 

 しかし、本当に、その創造主は死んだのか?

 

 という疑問の証明は現在に至るまで誰にも行われていない。まるで禁忌に蓋をするように、漠然と「創造主は、その昔に滅び、それが引き継がれて発生したのがファイレクシアだ」というのが定説となり、それに異が唱えられたことは無い。

 

 だが、もし、その基盤を創生したものが、まだ何処か別な次元(せかい)で人知れず生きているとしたら?

 

 まぁ、そんな「たら・れば」の話をしても仕方がない部分ではあるが、いずれにせよ主を失って長い間放置されていたところを別な次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)によって発見されるまで、優に数千年以上の時を経ていたのは語るまでもなく、ファイレクシアが、ファイレクシアになる以前に、そこに息づく生命体はヨーグモスに呼応する以前よりも他の次元(せかい)に悪意を振り撒いていたことが観測されている。

 

 また、何故『八尋』と名乗る次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)が、ウルザを筆頭としたナイン・タイタンズの面々と供にファイレクシアを滅ぼそうと入念な準備に入る以前から 独り? 或いは 複数人? によってファイレクシア(と呼ばれる以前から)に侵攻されていた次元(せかい)を滅ぼして回っていた事実に変わりはなく、その理由も不明なままである。

 

 今日、もっとも信仰されている言い伝えでは、彼が嘗て揮った権能により創世された次元(せかい)が、ファイレクシアにより侵攻され、汚され、穢されたための報復だと言われている。しかし、本人も、その辺りの記憶が曖昧なため「そうだと周りに言われているから、きっとそうなんだろう」と思い込んでいる節すらある。もしかしたら別な世界にいる元人間、現死徒の魔法使い(キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ)が、かつて真祖の王(朱い月のブリュンシュタッド)に喧嘩を売ったように「単に気に入らない」というのが対峙する理由だったかもしれないし、実は他にも何か理由があるのかもしれない。いずれにせよ真相は闇の中であることには変わりがないので、この話題は此処で打ち切りにするのが良いだろう。

 

 なお、彼によって滅ぼされたファイレクシアであるが、その後、紆余曲折を経て別な次元(せかい)を乗っ取る形で再興を果たしている。それを意図せずに自らが原因となって起こしてしまった銀のゴーレムは、人知れず、多元宇宙の何処か(久遠の闇)へと消えた。

 

 その新たなるファイレクシアと呼ばれる勢力の復活を彼が知り、再び対峙する日は、そう遠い未来の話ではない。と言っても、彼の場合、既に次元跳躍者(プレインズ・ウォーカー)でありながら自由に次元跳躍(プレインズ・ウォーク)するチカラを失っているため、その巡り合せが数年後になるのか、それとも数千年、下手をすれば数万年後の話になるのか、それは誰にも、本人でさえ判らないのだが……

 

 

 ファイレクシア病の段階

 

 ・第一段階:発疹と吐き気。

 

 ・第二段階:高熱と高い感染性。

 

 ・第三段階:筋肉痛とひどい咳。

 

 ・第四段階:うわごと、ひきつけ、そして死。 

 

 ……一度罹ったら助からない。

 

 

 * * *

 

 

 暖かい日差しを受け、ひと肌の温もりを感じながら俺は目を開けた。どうやら寝ていたらしい。

 

「ん………… んん!?」

 

 隣で俺に抱きまくらにされていたのはマチ。顔を赤くさせて今にも泣きそうな表情とも、怒っている表情とも言えそうな様々な感情が綯交ぜになった表情を浮かべて当惑していた。もちろん、俺も当惑している。

 

 ――バッ

 

「悪い……!!」

 

 一気に意識が覚醒して開口一番マチに向けて平伏するように謝罪する。もちろん意識の話だけで身体は動かしていないが。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「お、怒ってるよね……… うん、本当に悪かった。どうして、こんな状況になってるのか全く思い出せないんだ」

 

 無言の沈黙に耐えきれず、俺は言葉を紡ぐが、マチは何も言わずに俺を見ているばかり。やばい、これは本当にやばいかもしれない。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「どうして、八尋が泣いてるのさ?」

 

「え?」

 

 また暫くの沈黙を経て、唐突にマチに問われて俺は自らの頬に手を触れる。確かに涙が伝ったような濡れた後がある。何時の間に? けれど、次第にそれは止まらずに、ぽたり、ぽたりっと溢れ出た。

 

「あ、あれ? おかしいな? なんだ、これ?」

 

「だ、大丈夫なのかい?」

 

「あ、うん。大丈夫だよ。たぶん、久々に視たユメの影響なんだろうと思う」

 

 赤らめていた顔を真剣な面持ちに戻し、俺のことを心配し始めたマチには申し訳ないと思いつつ、いろいろと考えてみるものの心当たりは他になく、視ていたはずのユメの内容も思い出せなかった。何か、何か、とても大切なものを無くしてしまったかのような喪失感だけが残り、涙が自然と流れることは、これまでも数えきれないほどあったから。

 

「うん。心配させてごめんね?

 それと、お前ら、盗み見とは頂けないな。久々に逢ったことだし、今からどれくらい強くなったのか確認する意味も込めて片っ端からブッ飛ばしてやるから覚悟しろ」

 

「それ、単なる八つ当たりじゃねえか!!」

 

「ウヴォー煩い!!」

 

 そういって一気に複数の気配が離れて行く様子に苦笑いを零しながら俺は改めてマチに謝った。

 

「ホント、ごめんね?

 いや、あの玉座で寝ていたはずだったんだけど…… 何があったのかな? とっくに試験は終わってると思うんだけど??」

 

「そうね。ハンター試験なら、もう2時間も前に終わってるわ」

 

 そう横合いから口を挟んできたのはパクノダ。振り向いて笑みを浮かべて「ずっといたの?」と確認をすれば、「貴方が乗り込んでマチを抱き枕にし始めたときから、ずっといたわ」と返された。

 

「え……!? マジで??」

 

「えぇ、嘘を言ってどうするの?」

 

 眼が全然笑っていない微笑みを浮かべながらパクノダが答え、俺は絶句する。年頃の女子が眠っているベッドに乗り込んだ?? 俺が??

 

「私も混ぜてほしかったわ? ねえ、八尋?」

 

 などという言葉は聞こえない。どういう意味だとも聞かない。聞いたら今度こそ、本当に、詰む。そんな未来(ヴィジョン)しか見えない。そして、俺がマチのベッドに無意識ながら乗り込んだという証言については状況証拠は揃っている。目撃証言もある。

 

 ぐっ…… それは…… もしかしなくても、俺は犯罪者じゃないのか? 今更かもしれないが、なんか超えちゃいけない一線を跨いでしまったような感覚が、あれ?

 

「まぁ、アタシは役得? だったから良いけどさ。でも、きっちり落とし前だけは付けてもらうよ?」

 

「アッハイ」

 

 少なくとも俺に選択肢は無い。そう思いながら即答して平伏した。気持ちは腹を仰向けにして寝そべる犬だ。降伏宣言ともいう。さて、本当にどうしたものかと考えながら、俺はパクノダから残りの試験について問いかけるのだった。

 

「それで試験はどうなったの?」

 

「そうね、どこから話しましょうか」

 

 陽は僅かに傾きを見せはじめていた。




Q.伏字ばっかで読みづらいわ!
A.申し開きも無し。気になる人は MtG wiki のプレインズ・ウォーカーを見てね!(余所任せ)

Q.ソロモン感が滲み出る!
A.かっこいいよね。あの宝具。どうしたら、あんなにカッコイイ名前が思いつくのか分からん!
 なお、別名の方は、セイヴァーの『一に還る転生』を捩ったものです。

Q.『 』を内包する『 』って?
A.幾つもある銀河の中には、それらを集合して呼称する大銀河っていうものがあるらしいぜ。
 なら、『 』を内包する『 』があってもおかしくないだろ的な。

Q.次元跳躍者って、やっぱりMtGかよ
A.はい。やっと書けました。ほとんどの設定は MtG Wiki にあるところからの借り物ですが……

Q.ユメの続きはどうなった?
A.いろいろ考えていますが、概ね、原作どおり。最後は紆余曲折の果てにみんな死んだ。
 ただし、そこに八尋が絡むことは無かったし、話を考えるのは原作のストーリーが壮大過ぎて無理っす。。

Q.八尋って実は女癖悪いの?
A.本人、無自覚ですが、相当悪いんじゃないでしょうか(白目)
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