捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
超特大サプライズライブが終わって数日後、俺は無事大学合格し、家族に報告してから、花丸に直接報告することにした。
彼女も彼女で俺に報告する事があるらしい。一体なんだろうか?
待ち合わせ場所に指定されたAqoursがたまに利用する喫茶店へと到着すると、入り口の近くに花丸がちょこんと立っていた。
こちらに気づくと、ぴょこぴょこと手を振ってきた。何だ、あれ。可愛すぎか。
「悪い、待たせた」
「今来たところだから大丈夫ずらよ」
「⋯⋯今のもう一回言ってくれないか?」
「な、何でずらっ?」
花丸はびっくりし、小首をかしげた。おっと春の朗らかな陽気にあてられて、つい変な事を言ってしまった。まあ言われたい台詞トップテンに入るやつだったから仕方ない。
俺は気を取り直して、花丸と一緒に店内に入った。
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店内は一組の老夫婦以外に客はなく、穏やかなジャズのスタンダードナンバーが控えめだがしっかり聞こえてくる。
花丸と隅っこの小さなテーブルに落ち着くと、すぐにお冷やが運ばれてきた。
女性店員はこちらに頭を下げてから、花丸に意味ありげな目配せをしてから再び奥へと引っ込んだ。まあ、花丸とは何度も顔を合わせているだろうからな。メンバー以外の、しかも男子と来たらああいう反応をされるのも無理はないかもしれない。
花丸は照れたような笑みで応じてから、こちらに向き直った。
「えっと⋯⋯じゃあ八幡さんからどうぞ、ずら」
「いや、そっちから」
「いえいえ⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「…………」
譲り合い合戦が始まりそうだったので、とりあえずは俺から離すことにした。
「あー、大学受かった」
「ずら?」
「だから、その大学受験合格した」
「…………」
花丸は口をぽかんと開けたまま固まっている。
あれ?あんま興味ない!?と内心オロオロしかけていると、花丸は口元を綻ばせ、俺の両手を握りしめた。
「おめでとうございますずら〜!!」
「あ、ありがとう……でも、ここ店の中だからな」
「はっ……す、すいません、ずらぁ」
周りにぺこぺこ頭を下げる花丸を店員も老夫婦も優しい笑顔を見せる。俺も頭を下げると、花丸はもじもじしながら座った。ちなみに手は繋いだままだ。
花丸はそのまま小さな手に力を込め、ぎゅっと握りしめてくる。
「本当に、おめでとうございます」
「……ありがとう。ずら付いてないのなんか新鮮だな」
「それは言わない約束ずらぁ〜」
「悪い悪い。それで、そっちは?」
名残惜しく思いながら手を離すと、花丸は幾分か真面目な表情を作った。
「実は……Aqoursは、今後6人でも活動を続けることにしたずら」