捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
試験に向かう当日。
他のクラスメイト達と一緒にバスに詰め込まれ、さあ試験に向かおうという時間帯になり、緊張感やら何やらで車内の空気はあまり居心地がよくない。まあ、楽しいイベントとは違うので、いつも賑やかなクラスメイトも無理に明るく振る舞う理由はないだろう。
外には見送りの生徒たちが集まって、仲の良い生徒達にでかい声援を送っている。
そんな様子を眺めていると、学校の敷地外に一人の女子が現れ、こちらにぶんぶん手を振っている。
「八幡さ〜ん!がんばるずら〜!!」
俺はその様子に小さく手を振り返す。あいつがあんな大声を出すのは本当に珍しい、というか初めてじゃなかろうか?少なくとも俺が見る限りでは。
その様子に車内がざわめき始めた。
「えっ、誰あの子?」
「浦の星女学院の制服じゃない?」
「あの子、どこかで見たことあるんだけど⋯⋯」
「それよか⋯⋯八幡って誰だ?」
「そんな人、この学校にいたっけ?」
「もしかして俺達のためにわざわざ?」
「天使ね」
「女神だ」
「ちっ、ボッチの癖に」
花丸がスクールアイドルグループ・Aqoursのメンバーだと気づきかけてる奴がいたり、クラスメイトなのに俺のことを知らない奴がいたり、花丸が皆に応援メッセージを送っていると思い込んでる奴がいたり⋯⋯最後の奴だけ明らかに俺に物申してるだろ。そうなんだろ?
念の為立ち上がり、周囲を確認すると、それっぽい奴はいない。まあ、わかるわけもないか。
俺はまだこちらに向かって手を振る花丸に小さく手を振り返した。
すると、それを合図にしたかのようにバスは動き始めた。
それを見た花丸は、さらに
「ヒキタニ君、良い彼女じゃん」
「⋯⋯⋯⋯」
ちゃらいクラスメイトの発言はスルーしたが、まあ俺も表情に出てしまっているのだろう。
俺は彼女が見えなくなるまで手を振り続けた。
********
「あー、もしもし比企谷という者ですが、花丸さんはご在宅でしょうか?」
「あ、もしもし八幡さん?マルずら」
「そっか、あー、今日はありがとな。おかげでうまくやれたわ」
「い、いえいえ、マルは何もしてないずらよ!うまくいったのは八幡さんが頑張ったからずら」
「いや、お前が見送りに来てくれなかったら、緊張で問題解けないどころか、手が震えてペンが持てなかったまである」
「ふふっ、大げさずらよ。でも、八幡さんの力になれてよかったずら」
「⋯⋯帰ったら、何かうまいもの食べに行くか」
「っ!⋯⋯はい、ずらっ♪」
「じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」