捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「おお⋯⋯」
思わず感嘆の息が漏れる。まさか本当にイタリアの地に立つ事ができるとは⋯⋯こうやって到着してみると、心の奥底から異国の地に立ったと実感した。
周りも観光客が多く、風景を写真に収めたり、携帯を使って自撮りをしている二人組がいたり、日本でいえば京都に似た賑わい方をしている。
ちなみに、俺達は今ヴェネツィアにいる。とりあえず小町に写真でも送っておくか。飛行機に乗る前に電話しておいたのだが、まったく信じてくれなかったからな。何なら病院行くよう勧められたくらいだ。
小町に写真を送ると、俺はすぐ目についたジェラート店に入り、ピスタチオとヘーゼルナッツのジェラートを手に、花丸の元へと急いだ。
すると、花丸は既にジェラートを手に持っていた。
目が合うと、お互いに「あっ」と口を開き、固まってしまう。
とはいえ、そのまま黙っているわけにもいかない。
「あー、その、あれだ⋯⋯ジェラート食うかなと思ったんだが、もう買ってたか」
「え、そうだったずらか?」
「?」
「じ、実はマルも八幡さんとジェラート食べようと思って二人分買ったずら」
「⋯⋯そっか、ありがとな。じゃあ、せっかくだから交換するか」
「ずらぁ♪」
喜び半分と今さらながらこのタイミングでこんな事してていいのかという気持ち半分でいると、渡辺月が俺達の肩をぽんぽん叩いた
「三年生から送られてきた写真の場所に行く最適ルート考えるから、二人は少しだけイチャついてていいよ」
「「っ!?」」
いや、なんでこの子してやったりみたいな顔してんの?ありがたいけれども!
Aqoursのメンバーの苦笑いに見送られ、俺と花丸は少し離れた場所に行った。
交換したジェラートを頬張ると、爽やかな甘みが舌の上でとろけ、口の中に広がり始めた。花丸も幸せそうな笑みを浮かべている。
「おいしいずら〜♪」
「花丸」
「ずら?」
「その、俺が何かお前の機嫌を損ねる真似をしたなら、しっかり謝りたいと思ってる。ただ、それが何か思い当たる節がないから教えてほしいんだが」
花丸はイタリアの街並みに目をやり、ぽつりぽつりと話し始めた。
「⋯⋯謝るのはマルのほうずら。八幡さんは何も悪くないずらよ」
黙ったまま目線で続きを促すと、花丸は俺の手を握りしめた。
「その⋯⋯マルはとってもヤキモチを妬いちゃったずら。八幡さんが聖良さんや月ちゃんと仲良くしてるのを見て⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
いや、可愛すぎか。
頬が熱くなるのを感じながら、俺は空いた方の手で花丸の頭を撫でた。
「⋯⋯悪い。そんなつもりはなかったんだが、次からは気をつける」
「あ、いえ、気にしないでほしいずら!でも⋯⋯浮気しちゃダメ、ずらよ」
「⋯⋯はい」
人前じゃなければ思いきり抱きしめていたことだろう。
この後、何故かジェラートの味をあんまり感じなかった。