捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
w渡辺を引き揚げた後、あっという間に姿を消した三年生を追いかけようとしたが、桜内に引き留められた。
「どこに向かったかわからないでしょ?見失った以上闇雲に動いても見つからないわ。それに……」
桜内はまだ仰向けに寝そべっている花丸に目をやった。
まだ体力が回復しきってないうえに、今からこの階段を下りなければならない。確かにこのまま追いかけて見つかる可能性はかなり低いだろう。さて、どうしたものか……もしかしたら向こうが母親を撒いて連絡してくるかもしれないし。
「あっ、これ見て」
渡辺の声に反応すると、カードのようなものを掲げていた。小原が投げた制服のポケットに仕込んでいたらしい。
中身を皆で確認してみると……イタリア語で書かれていた。
渡辺月は待ってましたと言わんばかりにカードを受け取り、ふむふむと眺めた。
「ヨハネが守護する地を見下ろす時、妖精の導きが行く先を示すであろう」
『…………』
突然の言葉につい息を呑むが、決して渡辺月が中二病に目覚めたわけではないだろう。
「善子ちゃんに関係あるの?」
「ヨハネ!」
「守護聖人ジョバンニ、ヨハネの地の事じゃないかな」
「じゃあ、そこに向かいましょう。あっ、比企谷先輩。花丸ちゃんをお願いします」
「……了解」
花丸は今から階段を下りる事を考え、何とも言えない笑みを見せた。
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電車でフィレンツェに到着すると、もう日が傾き始めていた。とりあえず小町からは「は?は?マジで?」と返信が来たので良しとしよう。
「とりあえず何か食べるずらぁ〜⋯⋯」
「⋯⋯確かに」
さすがに腹が減ってきたし、この辺りで休憩を入れたほうがよさそうだ。他のメンバーも空腹と疲労で、さっきから津島が「ヨハネの地⋯⋯」などとぶつぶつ呟いてもツッコむ気力がおきないようだ。
「じゃあご飯にしよっか」
素晴らしいタイミングで渡辺月が提案する。うん、マジで頼りになりすぎる。
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フィレンツェ中央広場のフードコートで少し散り散りになりながらも席を確保すると、各々注文したものを食べ始めた。
隣に座った花丸のトレーには選りすぐりのイタリア料理が盛られている。真似してみたが、果たして俺の胃袋はついていけるだろうか。
「八幡さん、今日は食いしん坊ずらね」
「お前が言うな。てか、相変わらずうまそうに食うなぁ」
ふと周囲に目を配ると、何やら大きな皿を運ぼうとしてる渡辺月がいた。
「⋯⋯手伝う。すげえボリュームだな、これ」
「ありがとう!皆を元気づけようかと思ってね」
「そっか、お前良いやつだな」
「そっちこそ」
渡辺月はパチンとウインクしてから、すたすたとテーブルにでかいステーキを運んだ。
「わああ、すごい!」
「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ!ここの名物だよ!」
「おいしそうだね、花丸ちゃん♪」
「ずらぁ♪善子ちゃんも、もちろん食べるずら!?⋯⋯あれ?」
花丸はきょろきょろと視線をさまよわせ、ぽつりと呟いた。
「⋯⋯善子ちゃんは?」