捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 #103

 

 w渡辺を引き揚げた後、あっという間に姿を消した三年生を追いかけようとしたが、桜内に引き留められた。

 

「どこに向かったかわからないでしょ?見失った以上闇雲に動いても見つからないわ。それに……」

 

 桜内はまだ仰向けに寝そべっている花丸に目をやった。

 まだ体力が回復しきってないうえに、今からこの階段を下りなければならない。確かにこのまま追いかけて見つかる可能性はかなり低いだろう。さて、どうしたものか……もしかしたら向こうが母親を撒いて連絡してくるかもしれないし。

 

「あっ、これ見て」

 

 渡辺の声に反応すると、カードのようなものを掲げていた。小原が投げた制服のポケットに仕込んでいたらしい。

 中身を皆で確認してみると……イタリア語で書かれていた。

 渡辺月は待ってましたと言わんばかりにカードを受け取り、ふむふむと眺めた。

 

「ヨハネが守護する地を見下ろす時、妖精の導きが行く先を示すであろう」

『…………』

 

 突然の言葉につい息を呑むが、決して渡辺月が中二病に目覚めたわけではないだろう。

 

「善子ちゃんに関係あるの?」

「ヨハネ!」

「守護聖人ジョバンニ、ヨハネの地の事じゃないかな」

「じゃあ、そこに向かいましょう。あっ、比企谷先輩。花丸ちゃんをお願いします」

「……了解」

 

 花丸は今から階段を下りる事を考え、何とも言えない笑みを見せた。

 

 ********

 

 電車でフィレンツェに到着すると、もう日が傾き始めていた。とりあえず小町からは「は?は?マジで?」と返信が来たので良しとしよう。

 

「とりあえず何か食べるずらぁ〜⋯⋯」

「⋯⋯確かに」

 

 さすがに腹が減ってきたし、この辺りで休憩を入れたほうがよさそうだ。他のメンバーも空腹と疲労で、さっきから津島が「ヨハネの地⋯⋯」などとぶつぶつ呟いてもツッコむ気力がおきないようだ。

 

「じゃあご飯にしよっか」

 

 素晴らしいタイミングで渡辺月が提案する。うん、マジで頼りになりすぎる。

 

 ********

 

 フィレンツェ中央広場のフードコートで少し散り散りになりながらも席を確保すると、各々注文したものを食べ始めた。

 隣に座った花丸のトレーには選りすぐりのイタリア料理が盛られている。真似してみたが、果たして俺の胃袋はついていけるだろうか。

 

「八幡さん、今日は食いしん坊ずらね」

「お前が言うな。てか、相変わらずうまそうに食うなぁ」

 

 ふと周囲に目を配ると、何やら大きな皿を運ぼうとしてる渡辺月がいた。

 

「⋯⋯手伝う。すげえボリュームだな、これ」

「ありがとう!皆を元気づけようかと思ってね」

「そっか、お前良いやつだな」

「そっちこそ」

 

 渡辺月はパチンとウインクしてから、すたすたとテーブルにでかいステーキを運んだ。

 

「わああ、すごい!」

「ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ!ここの名物だよ!」

「おいしそうだね、花丸ちゃん♪」

「ずらぁ♪善子ちゃんも、もちろん食べるずら!?⋯⋯あれ?」

 

 花丸はきょろきょろと視線をさまよわせ、ぽつりと呟いた。

 

「⋯⋯善子ちゃんは?」

 

 

 

 

 

 

 

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