捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 #109

 

 曲が終わると、一瞬しんと静まり返ってから、何かが弾けたように拍手の音がメンバーをつつみ込んだ。拍手を贈る観客の中には小原母も混じっている。その口元には笑みを称えいて、Aqoursのパフォーマンスから何かを受け取ったことは疑いようがなかった。

 小原は母親に向き合い、まっすぐな瞳で想いを告げた。

 

「パパとママが私を育ててくれたように、Aqoursの皆が⋯⋯スクールアイドルとの出会いも私を育ててくれたの!全部あってこその私なの!失くすことなんて⋯⋯できないよ」

「⋯⋯⋯⋯」

 

 小原母は黙って聞いていたが、やがて再び笑みを見せ、何も言わずにその場をあとにした。

 その背中を見送った松浦が小原の肩をぽんぽん叩いた。

 

「⋯⋯認めてくれたのかな?」

「さあ?でも、私の気持ちは伝わったはずだから」

 

 小原は晴れやかな表情で皆を振り返った。

 その様子を見て、他の皆も笑顔になる。

 この瞬間だけでもイタリアに来てよかったと思えた。まあ、そもそもタダで来てるわけなんだが。

 

「八幡さん。最後のは余計ずら」

「心読まないでね」

 

 ********

 

「ヨハネ⋯⋯帰還!!!」

 

「あ〜疲れた〜」

「むっちゃん達、学校で待ってるって」

「なんだろね?」

「ちょっと待ちなさいよ!!」

「マル達はこれから学校に用事ありますけど、八幡さんはこれからどうするずらか?」

「とりあえず一旦家に帰るわ。小町にお土産渡さないと」

「わかったずら。じゃあまた後で」

「おう、それじゃ」

 

 俺は荷物を持ち直して帰路についた。

 何故か見慣れた帰り道を一歩一歩確かめるように歩いていると、ようやく沼津に帰り着いたという実感が沸いた。

 

 ********

 

 バスを降り、しばらく歩き、自宅が見えてきたかと思うと、ポケットの携帯が震えた。

 花丸か?とすぐに画面を確認すると、そこには意外な名前が表示されている。

 

「はい、もしもし」

「やあ、久しぶりだな。元気にしてるかね」

「お久しぶりです。こっちは変わりなく。そっちはどうですか、平塚先生」

「まだ一年目だから覚えることが多くて大変だよ。まだ一年目だから」

 

 大事なことなんで二回言いましたね。

 

「君が大学に受かったのは連絡をもらったから知ってるが、今はどうしてる?もう住む所は決めたのか?」

「それは少し前に決めましたよ。今色々あってイタリアから帰ってきたところです」

「そうか。イタリアか⋯⋯ん?イタリア!?ああ、まあ卒業旅行と考えれば⋯⋯」

「いや、そういうわけじゃないんですが⋯⋯」

 

 俺は唐突に発生したイタリア行きのイベントについて、かいつまんで説明した。

 

「⋯⋯そうか。まあ、君もそっちで奉仕部活動していたのなら何よりだ」

「いや、別にそんなんじゃ⋯⋯」

「じゃあ、そろそろそっちに着くから色々聞かせてくれたまえ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

 

 

 

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