捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 #114

 

「まさかまた比企谷先輩と撮影班をするなんて思わなかったよ」

「⋯⋯本当にまさかだな。まあ、いつものメンバーが忙しいみたいだな」

 

 こっちでライブをする時は有能な三人組が音響、照明、撮影を担当してくれるので、もう俺がやることはないと思っていた。だが今回急遽決まったライブのため、手が離せない三人組に代わり、俺と渡辺月が撮影を担当する運びとなった。

 この9人でやる最後のライブ。それは前回のライブ同様、唐突に決まったものらしい。

 昨晩、鹿角姉から小原に連絡が来て、妹をAqoursに入れてくれないかと相談があったそうだ。あまり新しいスクールアイドル活動がうまくいっておらず、環境を変えてみた方がいいんじゃないかと考えたらしい。そして、この春に転校すれば今年のラブライブに間に合うらしい。

 だが、黒澤妹は納得しなかった。そういうことじゃない、と。

 確かに環境を変えることで変わることもあれば、先送りにしかならないこともある。鹿角妹の場合、後者だったということだろう。

 細かい事情までは知る由もないが、今回鹿角妹に大事な何かを伝えるために選んだのがAqoursとSaint Snow、二組のライブだった。

 鹿角妹に大事な何かを伝えるため、そしていつかの約束を果たすために、本当に最後の9人のライブ。一ファンとしてはこういう形で関われるのを嬉しく思う。

 

「八幡さん、お願いしますずら」

「おう、行ってこい」

 

 先にパフォーマンスをするのはSaint Snowなので俺はまだ出番はないが、彼女達はスタンバイしなくてはならない。

 俺と渡辺月もカメラの調子を確かめ、特別に設置された巨大モニターの向こうのSaint Snowのパフォーマンスに視線を向けた。

 まるで戦闘服のような威厳のある衣装に袖を通した二人からは、もし彼女らがラブライブ決勝に出場できていたら優勝もあり得たのではないかと思わせる覇気が出ていた。

 スタンバイしているAqoursのメンバーも、視線がスクリーンに釘付けだった。

 携帯で確認してみると視聴者数が右肩上がりに増えていて勢いが凄まじい。ちなみに千葉組のメンバーにも頼んで、情報は拡散してもらっている。

 スピーカーから聴こえる重低音に、体の奥まで揺さぶられながらパフォーマンスを見届けていると、鹿角妹の表情はこれまでにないくらい生き生きとしていた。

 きっとこれが皆の見たかった彼女の表情なのだろう。

 吹っ切れた笑顔で歌う彼女と彼女に何かを伝えきった彼女のパフォーマンスは、北海道の夜を鮮やかに照らしていた。

 

 

 

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