捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
「ごめんなさい、ずら……」
「お、おう……」
申し訳なさそうに頭を下げる国木田は、小さい体をさらに小さくしているように見える。
『未来ずら!未来ずらよ~!』という国木田の叫び声は店内の視線を集め、俺達は逃げるようにその場を去った。
ショッピングモールに来て数分で、俺達は本屋という居場所……ホームグラウンドとも呼べる場所を失った。
「マル……ああいう物にあんまり触れた事がなくて……」
「ああ……」
まあ、俺もリア充っぽい事をやったら、うっかりテンパっちゃいそうだ。何もしてなくても挙動不審な時もあるが。悲しすぎる。
「比企谷先輩は……やっぱり都会から来た人だから、ああいう物には慣れてるずら……ですか?」
「…………」
お前が慣れてなさすぎでは……というツッコミは飲み込んだ。
「……そこそこな」
「やっぱり千葉は都会なんですね」
お、千葉の評価が高い。これは千葉について色々と教えてやらねば。
「ああ、実は日本の首都といっても過言じゃないくらいだ」
「そ、そうずらか!オ、オラやっぱり千葉に行ってみたいずら!」
国木田は目をキラキラ輝かせ、俺の顔を見上げてくる。あれ?胸の辺りがチクチクする。病気かな?決して罪悪感じゃない……はず……。
「先輩!千葉の話色々聞きたいずら……です!」
「あ、ああ、いつか……その内な……てか喋り方……」
「え?あ!……やっぱり、『ずら』が出ちゃうずら」
「いや、別に直さなくても……」
「きょ、今日は人が多い場所だから……」
「そっか」
本人が気にして直そうとしているなら、無理に止める必要もない。材木座の奴がこういう所を見習えばいいと思う。あいつは直すべき箇所が多すぎるがな!人の事は言えないが。
どこで時間を潰そうか考えていると、いきなりチラシを差し出された。
「ただいま、カップル限定のキャンペーンを行っています!いかがですか~!」
「?」
「ずら?」
俺達が不思議そうにしていると、従業員のお姉さんがハキハキ喋る。
「現在、そちらのチラシに記載されている店舗がカップル限定のメニューを特別価格で提供していますので、お二人で行けば……」
「「っ!?」」
俺達の驚き声に、店員さんが驚く。
「い、いや……」
「マ、マル達は……」
つい隣に目をやってしまう。
国木田は向こうを向いていて、顔色は窺えない。
店員さんは俺達を見て、なるほど!という感じで手を叩いた。
「お付き合いを始める前でも大丈夫ですよ!」
「「は?」」
いかん。この店員さん、このまま押し切る気だ。
「今なら、スペシャルドリンクとラブラブのっぽパンもついてきますよ!」
のっぽパンという聞き慣れない単語を聞こえないふりして立ち去ろうとすると……
「わあ……」
国木田はまたまた目を輝かせていた。
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