捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯9

 

「……ふぅ……」

「す、凄かったずら……」

 ラブラブのっぽパン……想像以上の破壊力だったぜ……。どのくらいかといえば、ギャラクティカファントムぐらいの威力。ぱないの。

 店を出て、近くのソファで休憩していると、国木田が、心配そうに顔を覗き込んでくる。

「せ、先輩、その……オラのせいで……」

「いや、気にすんな。あの名前からして、何となく想像がついてた」

「甘すぎて、オラでもびっくりしたずら」

「俺は甘さより量がな……ありゃ、カップルサイズどころじゃねえだろ」

「先輩、さりげなく沢山わけてくれて……まるは感激ですっ!」

 実際のところ、量が多すぎて、国木田食べてくれないかなぁ、なんて考えて分けただけである。いや、ほら……国木田小さいし、成長の為でもあるんだよ?

 そして、国木田は小柄な割に、無駄にでかいのっぽパンをパクパクと平らげてしまった。

「でも、いいずらか?奢って貰っちゃって……」

「ああ……別に言う程高いもんでもないしな」

「じゃ、じゃあ、お礼に……」

「?」

 国木田は目を閉じ、頭の中から何かを引っ張り出そうとしている。何といういじらしさ。奢ってもらって当たり前、などという態度は微塵も見せない。天使かよ。

 やがて、国木田は顔を上げた。ややドヤ顔をしている。

「お礼に……今度のっぽパンをあげるずら」

「……お、おう」

 

「やっほー!お兄ちゃん、お待たせ~」

「お、お待たせしました……」

 しばらくしてから、小町と黒澤妹と合流する。黒澤妹のこちらを窺う瞳に、まだ超えられない壁を感じるが、小町とはもうそこそこ仲良くなったようだ。

「二人は何してたの?」

 小町が問いかけると、黒澤妹もうんうんと頷く。親友の動向が気になったのだろうか。

 国木田はすかさず答える。

「カップル限定のラブラブのっぽパンを食べてきたずら」

「「へ?」」

 状況説明にしばしの時間を必要とした。

 

 帰りのバスの窓から、行く時と比べ、何の変化もない景色を眺めていると、小町が小声で話しかけてくる。

「どう、少しは仲良くなれた?」

「……さあな。まあ、俺のコミュ力は知ってんだろ?」

「うぅ、そうだよね……ゴミぃちゃんだもんね。でも、お兄ちゃん学校でまだ誰とも碌に話してなさそうだし」

「……おい、お前、いつうちの学校に忍び込んだんだよ」

「うわ……当たっちゃってるし……ま、まあ、それは置いといて……花丸ちゃん、いい子でしょ?」

「……あ、虹」

「ご、ごまかした……」

 

「先輩……友達が、いない……?じゃあ、お、オラが……」

 





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