捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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「ふう…………」
一軒家に、荷物を詰め込み、あらかた片づけてしまう。一家総出の頑張りで掃除もあっという間に終わった。あとは蕎麦でも食うだけか。
ふと気づく。そういや、駅で色々あって本を買い忘れていた。少し疲れはあるが、まだ日も沈んでいないし、本屋の場所を確かめておくのもいいかもしれん。
それと、自販機にMAXコーヒーがあるかを確かめておかないとね!
Amazonさんで注文はできるが、自販機でいつでも買える安心感というのは、やっぱりありがたいもんな。
「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」
「ああ」
「じゃあ、小町も行こーっと♪」
「車に気をつけるんだよ-!」
母ちゃんの言葉を背に受け、小町と二人乗りで出発した。
「へー、さっきはあまり見れなかったけど、駅の周辺は割と都会なんだねー」
「ま、家の周りはあれだからな」
新居の周りは、2、3軒家があるだけて、あとは結構な自然に囲まれている。
ここに来る途中、最初は車もほとんど通らなかった。
改めて引っ越したんだなぁ、としみじみ思う。
「そういや、お前、総武…………」
「お兄ちゃん」
強めのトーンに発言を遮られる。
「私さ、雪乃さんも結衣さんも好きだよ。でもね…………」
小町が手を握ってくる。
「家族が世界でいっちばん大事」
「…………俺もだよ」
寂しさはある。多分数日、数カ月と時間が経つと共に、千葉との違いを見つけ、そして適応していくんだろう。
けれど、家族の為なら何て事はない。
「いらっしゃいませー」
本屋の中に入ると、人の数はまばらで、J-POPだけが騒がしく響いていた。
とりあえず、一般小説のコーナーへ行く。
「ここを曲がって…………」
案内図に従い、突き当たりを右へ曲がると、何かを踏んだ。
「って!?」
踏んだものにローラーが付いていたのか、ずるっと滑り、尻餅をつく。
「ずらっ!?」
女の子の声が聞こえた。…………今なんて言ったんだ?
「ご、ごめんなさいずら!オ、オラ…………」
「いや、大丈夫だ」
少し尻が痛いだけで、特にケガはしていない。それよりさっきから気になる事が…………。
「ほ、本当に大丈夫ずらか?」
「…………ずら?」
「ずらっ!」
その少し長めの茶色い髪が特徴の、小柄な女の子は口元を押さえ、自分の言葉を飲み込もうとしていた。
「ち、違っ、オ、オラ…………」
この辺りはこういう方言なのだろうか。まあ、いい。
少し離れた所へ転がっていった台車を彼女の前へと移動させる。
「あ、ありがとうず…………ございます」
方言を隠しながらのお礼を言われる。多分、年齢は小町くらいか。
「あ、ああ…………そっちはケガはないか?」
まあ、俺が一人で転んだだけだが。
「あ、はい大丈夫…………です」
「お兄ちゃーん!」
小町から呼ばれたので、俺は軽く会釈をして、その場を去った。
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