捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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プロローグ2

「ふう…………」

 一軒家に、荷物を詰め込み、あらかた片づけてしまう。一家総出の頑張りで掃除もあっという間に終わった。あとは蕎麦でも食うだけか。

 ふと気づく。そういや、駅で色々あって本を買い忘れていた。少し疲れはあるが、まだ日も沈んでいないし、本屋の場所を確かめておくのもいいかもしれん。

 それと、自販機にMAXコーヒーがあるかを確かめておかないとね!

 Amazonさんで注文はできるが、自販機でいつでも買える安心感というのは、やっぱりありがたいもんな。

「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」

「ああ」

「じゃあ、小町も行こーっと♪」

「車に気をつけるんだよ-!」

 母ちゃんの言葉を背に受け、小町と二人乗りで出発した。

 

「へー、さっきはあまり見れなかったけど、駅の周辺は割と都会なんだねー」

「ま、家の周りはあれだからな」

 新居の周りは、2、3軒家があるだけて、あとは結構な自然に囲まれている。

 ここに来る途中、最初は車もほとんど通らなかった。

 改めて引っ越したんだなぁ、としみじみ思う。

「そういや、お前、総武…………」

「お兄ちゃん」

 強めのトーンに発言を遮られる。

「私さ、雪乃さんも結衣さんも好きだよ。でもね…………」

 小町が手を握ってくる。

「家族が世界でいっちばん大事」

「…………俺もだよ」

 寂しさはある。多分数日、数カ月と時間が経つと共に、千葉との違いを見つけ、そして適応していくんだろう。

 けれど、家族の為なら何て事はない。

 

「いらっしゃいませー」

 本屋の中に入ると、人の数はまばらで、J-POPだけが騒がしく響いていた。

 とりあえず、一般小説のコーナーへ行く。

「ここを曲がって…………」

 案内図に従い、突き当たりを右へ曲がると、何かを踏んだ。

「って!?」

 踏んだものにローラーが付いていたのか、ずるっと滑り、尻餅をつく。

「ずらっ!?」

 女の子の声が聞こえた。…………今なんて言ったんだ?

「ご、ごめんなさいずら!オ、オラ…………」

「いや、大丈夫だ」

 少し尻が痛いだけで、特にケガはしていない。それよりさっきから気になる事が…………。

「ほ、本当に大丈夫ずらか?」

「…………ずら?」

「ずらっ!」

 その少し長めの茶色い髪が特徴の、小柄な女の子は口元を押さえ、自分の言葉を飲み込もうとしていた。

「ち、違っ、オ、オラ…………」

 この辺りはこういう方言なのだろうか。まあ、いい。

 少し離れた所へ転がっていった台車を彼女の前へと移動させる。

「あ、ありがとうず…………ございます」

 方言を隠しながらのお礼を言われる。多分、年齢は小町くらいか。

「あ、ああ…………そっちはケガはないか?」

 まあ、俺が一人で転んだだけだが。

「あ、はい大丈夫…………です」

「お兄ちゃーん!」

 小町から呼ばれたので、俺は軽く会釈をして、その場を去った。





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