捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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青春の影 ♯13

 

「スクールアイドル?」

「ずら。ルビィちゃんと一緒にスクールアイドルのライブを観に行くから、それで先輩も……」

「黒澤妹も……」

「ピギィッ!」

 俺が茂みの方に目をやると、さっきまで少し顔を出していた黒澤妹は、あっという間に引っ込んでしまった。まだ慣れてない奴に対してはこうなるらしい。他人事ながら心配だ。

 ちなみにスクールアイドルとはテレビまあ普通にアイドル部だ。ラブライブという甲子園みたいなものを目指す部活で、5年くらい前に人気が沸騰した。きっかけは確か、μ’sとA-RISEだったか。

「高海千歌さんっていう先輩方が、最近作った部活……といっても、まだ承認はされていないみたいですけど」

「高海?」

「知ってるずらか?」

「ああ、知ってるっつーか、ダイビングショップで1回会ったことがあるだけだ」

「そうずらか。じゃあ、お知り合い同士ということで、先輩も一緒に行くずら!ね、ルビィちゃん?」

「う、うん!」

「悪い。その日は用事が……」

「じゃあ、大丈夫ずらね」

「……ちょっと待て。なんか色々おかしい」

 納得している国木田に抗議の声を上げると、彼女と黒澤妹は悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「小町ちゃんが言ってたずら」

「せ、先輩が……」

「用事があるって即答する時は、用事なんてない時だって」

「ぐっ……」

 小町ちゃん。お兄ちゃんの癖を人に話すのは止めようね。

「嫌……でしたか?」

「うゆ……」

 いかにスクールアイドルに興味がなかろうと、この二人のこんな切ない視線(片方は茂みの影から)を浴びたら、大抵の日本男子は頼みを聞いてしまいそうな気がする。

 まあ、『大抵の』だがな……俺はそこから余裕ではみ出すことのできるボッチ力を持っている。

「悪い。俺はあまり……」

「ずら……」

「うゆ……」

「はぁ…………わかった。行くっての」

 

「くっ……ずら丸以外にもう一人!私のサタン……私と赤い糸で結ばれた彼にまとわりついてるなんて……」

 

 ライブ当日。

 生憎の雨で客足が遠のく心配はあるが、体育館での開催なので、ライブそのものに影響はない。

 国木田と黒澤妹は先に到着していた。

「あ、比企谷先輩!おはようございます」

「……お、お、おはようございます」

「おう……」

 俺は黒澤妹が国木田の背後に隠れるだけなのに感動しながら、体育館へと向かったところで……

「あ、あのあの!」

 いきなり背後から声をかけられ、振り向くとそこには、サングラスにマスク着用のあからさまに怪しい奴がいた。





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