捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「は、花丸⋯⋯久しぶり」
「そんな久しぶりでもないずら。まだこっちに来て5日しか経ってないずら。しかも昨日会ったばかりずら」
「⋯⋯はい」
花丸はじとーっとした視線をこちらに向け、今気づいたかのように、目を丸くして周りにいるAqoursのメンバーを見た。
「み、皆も来ていたずらか?」
「あ、うん、えーと、そうだよ!あははっ!」
どうやら黒澤以外はサプライズだったらしい。えー、もうグダグダになってるじゃん⋯⋯いや、今はそれより⋯⋯
「これは、エマージェンシーデース⋯⋯」
「どう言い訳したものか⋯⋯まあ、やましいところは特にないんだけどね」
「⋯⋯⋯⋯」
とりあえず離れてくれませんかね。もうご褒美は十分に堪能⋯⋯いや、花丸が見ている前でそういうのは⋯⋯いや、見ていなくてもやめていただきたい。
「⋯⋯それで、果南ちゃん、鞠莉ちゃんはどうして八幡さんにしがみついてるずらか?」
二人はそれでようやく気づいたようで、慌てて俺から距離を取った。べ、別に名残惜しいとか思ってないんだからね!
「こ、これは今から比企谷くんにお礼をしようと⋯⋯」
「そうデース!やましところなどありまセーン!」
二人があたふたと説明していると、花丸がかつてないスピードで距離を詰めてきて、俺の左腕にしがみついた。
「八幡さんが頑張ったお礼はマルがするので大丈夫ずら。皆はルビィちゃん達にバレないようにするずら」
「う、うん⋯⋯」
「了解デース⋯⋯」
そのまま俺は花丸に引きずられるようにその場を後にした。
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Aqoursメンバーの姿が見えなくなるまで歩くと、近くの公園へと俺達は足を踏み入れた。
「花丸⋯⋯誤解してるかもしれんがあれは⋯⋯」
「わかってるずら。わかってるずらよ。でも、マルも嫉妬くらいするずら」
「⋯⋯悪い」
つい良い気分になりかけてた自分に喝を入れて、花丸の頭をそっと撫でてやる。
さらさらと優しい感触と猫のように目を細める表情に、北海道の寒さすら頭の中から消えてしまっていた。
「てか、そろそろ戻らなくていいのか?」
「その前に、さっき言ったお礼ずら。八幡さん、少ししゃがんでくださいずら」
「あ、ああ⋯⋯んっ」
「ん⋯⋯⋯⋯」
自分の唇に花丸の唇が強く押しつけられる。
甘さとかそういうものはなく、ただ気持ちをぶつけ合うだけのキス。
雪が頬をたまに冷やしてくれなかったら、溶けてしまいそうな気分だった。
離れてもその熱は冷めずに、花丸は真っ赤な顔を見せた。多分俺も同じだろう。
「じゃあ、マルはもう戻るずら。八幡さん、ありがとうございます。でも、浮気はだめずらよ」
「⋯⋯肝に銘じておく」
とことこと歩きながら、彼女は何度も振り返り、手を小さく振る。
俺は彼女が見えなくなってもしばらくその場で佇んでいた。