捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

84 / 98
青春の影 #77

 

「は、花丸⋯⋯久しぶり」

「そんな久しぶりでもないずら。まだこっちに来て5日しか経ってないずら。しかも昨日会ったばかりずら」

「⋯⋯はい」

 

 花丸はじとーっとした視線をこちらに向け、今気づいたかのように、目を丸くして周りにいるAqoursのメンバーを見た。

 

「み、皆も来ていたずらか?」

「あ、うん、えーと、そうだよ!あははっ!」

 

 どうやら黒澤以外はサプライズだったらしい。えー、もうグダグダになってるじゃん⋯⋯いや、今はそれより⋯⋯

 

「これは、エマージェンシーデース⋯⋯」

「どう言い訳したものか⋯⋯まあ、やましいところは特にないんだけどね」

「⋯⋯⋯⋯」

 

 とりあえず離れてくれませんかね。もうご褒美は十分に堪能⋯⋯いや、花丸が見ている前でそういうのは⋯⋯いや、見ていなくてもやめていただきたい。

 

「⋯⋯それで、果南ちゃん、鞠莉ちゃんはどうして八幡さんにしがみついてるずらか?」

 

 二人はそれでようやく気づいたようで、慌てて俺から距離を取った。べ、別に名残惜しいとか思ってないんだからね!

 

「こ、これは今から比企谷くんにお礼をしようと⋯⋯」

「そうデース!やましところなどありまセーン!」

 

 二人があたふたと説明していると、花丸がかつてないスピードで距離を詰めてきて、俺の左腕にしがみついた。

 

「八幡さんが頑張ったお礼はマルがするので大丈夫ずら。皆はルビィちゃん達にバレないようにするずら」

「う、うん⋯⋯」

「了解デース⋯⋯」

 

 そのまま俺は花丸に引きずられるようにその場を後にした。

 

 ********

 

 Aqoursメンバーの姿が見えなくなるまで歩くと、近くの公園へと俺達は足を踏み入れた。

 

「花丸⋯⋯誤解してるかもしれんがあれは⋯⋯」

「わかってるずら。わかってるずらよ。でも、マルも嫉妬くらいするずら」

「⋯⋯悪い」

 

 つい良い気分になりかけてた自分に喝を入れて、花丸の頭をそっと撫でてやる。

 さらさらと優しい感触と猫のように目を細める表情に、北海道の寒さすら頭の中から消えてしまっていた。

 

「てか、そろそろ戻らなくていいのか?」

「その前に、さっき言ったお礼ずら。八幡さん、少ししゃがんでくださいずら」

「あ、ああ⋯⋯んっ」

「ん⋯⋯⋯⋯」

 

 自分の唇に花丸の唇が強く押しつけられる。

 甘さとかそういうものはなく、ただ気持ちをぶつけ合うだけのキス。

 雪が頬をたまに冷やしてくれなかったら、溶けてしまいそうな気分だった。

 離れてもその熱は冷めずに、花丸は真っ赤な顔を見せた。多分俺も同じだろう。

 

「じゃあ、マルはもう戻るずら。八幡さん、ありがとうございます。でも、浮気はだめずらよ」

「⋯⋯肝に銘じておく」

 

 とことこと歩きながら、彼女は何度も振り返り、手を小さく振る。

 俺は彼女が見えなくなってもしばらくその場で佇んでいた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。