捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
ライブ当日。函館の街は俺が函館に来てから一番活気に満ちていた。
ステージの周辺には屋台がかなり出店していて、ソースの匂いや甘い匂いやらが、絶え間なく鼻腔をくすぐり、食欲を刺激してくる。
AqoursとSaint SnowがスペシャルユニットSaint Aqours Snowの出番は夜なので、まだだいぶ時間はあるが、小町に連行された俺は人混みに揉まれていた。
「お兄ちゃん、花丸ちゃんとは本番まで会えないの?」
「まあ、打ち合わせとかリハーサルとかあるからな。時間がないだろうし邪魔したくない」
「そっか。あ、そろそろ最初の出し物が始まるみたいだよ」
小町の言葉に反応してステージに目を向けると、スタンドマイクの前で男女2人組が何やら話し始めた。どうやら漫才らしい。
軽快なトークを聴きながら、周りの賑わいを確かめていると、肩をとんとんと叩かれた。
「どした、小町」
「ずら」
なんと花丸がそこに立っていた。
彼女は大きめのコートを羽織っていたが、裾からは少しだけアイドル衣装がはみ出している。
彼女はイタズラが成功した子供みたいな笑顔を見せていた。
「⋯⋯びっくりしたぁ。お前、準備とかはいいのか?」
「リハーサルする場所がまだ空かないので、少しの間自由時間ずら。それで小町ちゃんに連絡したらここにいるって」
いつの間にそんな連絡をしていたのだろうか。まあ、さっきスマホをかちゃかちゃやってた時だろうな。
まあ、それは置いといて、せっかく時間ができたのなら⋯⋯
「⋯⋯じゃあ、少し見て回るか?」
「はいっ、すら♪」
今日はスクールアイドルとしてイベントに参加するので、距離感には気をつけようと思っていたら、左手にひんやりとした感触が触れた。
「⋯⋯マジか」と思い見てみると、花丸の小さな手がしっかりと握られていた。
「少しの間だけですが、函館デートずら♪」
⋯⋯やばい、可愛すぎる。
俺はさっきの距離感という言葉をすっかり頭から消去していた。
********
数分後⋯⋯。
「おいしいずら〜♪」
「⋯⋯すげえな」
花丸は満面の笑みでいか焼きを頬張っていた。
さらに両手には綿あめや焼きそばや焼きとうもろこしやら、屋台の定番メニューが抱えられている。これからライブをするとは思えないくらいの食事量だ。マジでどこに吸収されてんだ⋯⋯あそこか。いや、考えるな。
「八幡さん、これおいしいずらよ」
「あ、ああ」
いか焼きを差し出され、自分も少し食べる。味は濃ゆめだが確かにうまい。
すると、花丸は頬を少し赤らめた。口元は少し緩んでいる。
「あっ、これ⋯⋯間接キスずらね。えへへ」
「⋯⋯⋯⋯」
いや、俺らもう普通にキスしてるからね?
あとそんな感じで言われちゃうとこっちもドキドキしちゃうからやめようね。