捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編   作:ローリング・ビートル

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君想い #4

 日曜日、いつものように店に行くと、その日は珍しく開店前から客が待っていた。

 そして、それは見覚えのある人物だった。

 彼女は親しげな笑みをこちらに向けた。

 

「あっ、この前の……」

「……おう」

 

 少し茶色がかった髪を揺らしながら……確か高海だったか……彼女もこちらの名前を思い出したようで、「あっ」と声を漏らした。

 

「えっと……ヒキタニさん、ですよねっ!」

「…………」

 

 あれー?おかしいなー?名前の漢字は知らないはずなのに、ヒキタニ君とか呼んでるよー?もしかしてこの子、戸部ってんのかなー?テンション高めだし……。

 とはいえ面倒なので、そのままにそのままにしておこうかと考えていると、建物の陰から、もう一人の女子が姿を現した。

 

「えっと、ヒキタニさんじゃなくて、たしかヒキガヤさんだよ、千歌ちゃん」

「あっ、すいません!ヒキガヤさん!」

「……まあ、気にすんな」

 

 この暗めの茶髪の女子も以前見たはずだ。名前は……渡辺だったか。訂正ご苦労。あとで八万ポイント進呈しよう。

 なんて考えていると、その背後から、さらにもう一人顔を出した。

 

「あの、二人の……知り合い?」

「うん。この前ここで初めて会ったんだぁ。あっ、そういえば比企谷さんも最近千葉から引っ越してきたんだよ!」

「へえ、そうなんですか。あっ、初めまして。私、桜内梨子っていいます。この前、東京から引っ越してきました」

「……あ、ああ、どうも」

 

 腰くらいまでの長い髪を、朝の爽やかな風に揺らしながら、桜内はぺこりとお辞儀した。その立ち振舞いからは、どことなく気品が感じられ、彼女の育ちの良さが窺えた。

 ……ていうさ、朝から美少女3人とか、割と心臓に悪いんだが……よし、さっさと仕事するか。

 しかし、そうはさせないと言わんばかりに……思ってもないだろうが……高海は話を続けた。

 

「比企谷さんもダイビングしに来たんですか?」

「……いや、ここの仕事を手伝いにきただけだ」

「手伝い、ですか?」

 

 高海が俺の言葉に首をかしげたところで、松浦が店内からひょっこり顔を出した。

 

「おはよう~。あれ?千歌達も来てたんだ」

「うんっ、それよりびっくりだよ~。まさか比企谷さんがここで働いてるなんて」

「うん、私もびっくりだよ。まさか手伝ってくれるなんて思わなかったもん」

 

 いかん、俺の話題になりそうだ。さっきから、渡辺もこっち見てるし……。

 とりあえずこの場から離脱しよう。

 

「……じゃあ、俺はその辺片付けてくるわ」

「あ、うんっ。今日もよろしくね。」

 

 俺は女子4人に背を向け、事務室へと向かった。

 

 *******

 

 やる事を終え、外に出ると、女子4人はいつの間にかウェットスーツに着替えていた。ラッキースケベを期待していた読者の皆さん、すまんな。

 ……だが、これはこれでいいものだ。

 そんな思春期なら当たり前の感情を押し殺し、俺は至って冷静に、松浦に声をかけた。

 

「……片付け終わったぞ」

「あ、うん。ありがと。私、今から千歌達についてあげるから」

「そっか。まあ、雨は降らないらしいけど、曇ってるから、一応……気をつけてな」

「…………」

「……何だよ」

 

 本当になんだよ。ツチノコでも発見したかのような驚き顔見せやがって。

 すると、彼女はクスリと笑みを雫した。

 

「ふふっ、何でもない。じゃ、行ってくるね」

「……おう」

 

 何だったんだ、一体……。

 

 *******

 

 しばらくしてから、彼女達は戻ってきた。そして、その間は予定調和のように誰も来なかった。おかげで受験勉強がはかどったぜ……。

 ボートからぞろぞろと降りてくる彼女達を出迎えると、その表情は満ち足りて見えた。

 

「ただいま~」

「……おかえり」

「あははっ、何だか新婚さんみたいだね」

「はっ?」

「……千歌、いきなり何言ってんの?」

「か、果南ちゃん?」

 

 こちらからはよく見えないが、松浦の顔を見た高海がビクッと肩を跳ねさせた。えっ、そんなに嫌だった?

 

「それにしても、途中から晴れてきてよかったね」

「うんっ、きっと普段の行いがいいからだよ!」

「高海さんが?いい行い?」

「え~っ、どういう意味~!?」

「ふぅ……まったく千歌は」

 

 ブツブツ呟きながら、松浦がウェットスーツをはだけさせ、水着だけを着用した上半身を露にする。

 程よく鍛えられながらも、柔らかな曲線を残したそのスタイルは、思わず目を吸い寄せられてしまう。ていうかこいつ意外と……

 

「はぁ~楽しかった」

「できれば毎日来たいよね!」

「ふふっ、今日はありがとう。二人のおかげで、しっかり海の音が聴けたよ」

 

 松浦に倣い、他の3人も同じように上半身を露にする。

 ……あの、男子がここにいる事を忘れないでね。

 俺は建前のように、心の中で呟いた。

 ちなみに順番は……松浦、渡辺、高海、桜内といったところだろうか。何がとは言わないけど。

 

 *******

 

「…………」

 

 ……比企谷君、いやらしい目をしてる。

 これだから男子は……まあ、仕方ないかもしれないけど、なんかこう……うん。

 私は立ち上がり、比企谷君の手首を掴んだ。

 

「さ、そろそろ仕事に戻ろっか」

「おう……てか、その、手……」

「いいの。さ、仕事仕事」

 

 ふと視線を感じ、振り向くと、千歌達がポカンとこっちを見ていた。 

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