捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
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小町の提案で、俺達はこの前の喫茶店に行く事にした。正直、『男一人だから気まずいな~』とか『はやくお家に帰りたいな~』なんて考えてしまったが、小町の視線が怖かったので、黙って従っておいた。
1メートル程先を行く小柄な三人は、楽しそうにお喋りしながらてくてく歩いている。小町が入学初日から学校に馴染んでいるようで何よりだ。まあ俺とは違い、コミュ力高いからあまり心配してなかったけど。
…………改めて見ると三人共小っちぇな。平均的な身長の俺から見てもかなり小柄だと思う。ドラクエのパーティーだとしたら…………天使や妖精なんて職業はあったっけ?
「…………あの」
「…………」
「…………あのあの!」
「っ!びっくりしたぁ……」
いつの間にか隣りに並んでいた国木田に声をかけられ、体が跳ね上がってしまう。こやつ、出来る……。
「あ、ごめんなさい……」
「い、いや、こっちもぼーっとしてた」
「あの……先輩が住んでた千葉ってどんな所ず……ですか?」
おお。小町にも聞ける事をわざわざ聞いてくるあたり、俺が会話から外れていたのを気にかけてくれたのだろうか。中々の神対応である。いや、今風に言うなら神ってるというべきか、どうでもいいか。とりあえず天使だ。
俺は軽く伸びをして、千葉の素晴らしさを語る事にした。
「千葉は日本の首都と言っても過言はない都市でな……」
「す、すごいずら!未来ずら!デスティニーランド行ってみたいずら!」
喫茶店に入ってからも続いた『比企谷八幡の千葉語り』は続いたが、国木田は意外な程に聴き入っていた。
ちなみに小町と黒澤妹は引いている。
しかし、今気になったのは…………
「……ずら?」
「はっ!…………すごいです!オラ、千葉に行ってみたいです!」
「オラ……」
今度は小町が反応した。
「はっ!あう…………」
「花丸ちゃん、そんなに隠さなくてもいいんじゃないかな?」
何やら落ち込んでいる国木田の頭を、黒澤妹がよしよしと撫でながら慰めている。それを見て、俺と小町は目を見合わせた。
「あの……花丸ちゃん、方言で喋るんですけど、それを気にしすぎてて……」
「うう……だって、恥ずかしいずら」
国木田はこちらを窺うようにチラリと見た。
「…………別に気にしない」
実際に気にならない。なんせ、材木座や玉縄と話した事があるんだから。あの二人のインパクトの強い……むしろインパクトしかない喋りに比べたら、方言など気にもならない。むしろ微笑ましいまである。
「ほ、本当ずらか?」
にぱぁっと花が咲いたような笑顔を向けられ、つい目を逸らしてしまう。
「花丸ちゃん、全然恥ずかしくないよ!むしろ毎週プリキュア見てるお兄ちゃんの方が恥ずかしいよ!」
「おい」
「あはは……」
何でそんな事言っちゃうの?ほら、黒澤妹引いてるじゃん。
しかし、そこで聞き逃せない一言が聞こえた。
「……プリキュアって何ずら?」
「あれ?花丸ちゃん知らないの?」
「テ、テレビ見ないから……ずら」
「しゃあねえな」
俺はこの後、一時間かけてプリキュアの素晴らしさを存分に語ったが、その場のスマイルは小さくなり、ハートキャッチは出来なかった。
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