捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
「おお⋯⋯意外としっかり作り込んでるな」
「そりゃあもう、全力を出しきったずら」
得意げな顔を見せる花丸に笑いかけると、奥から「くっ、くっ、くっ⋯⋯」と怪しげな笑い声が聞こえてくる。
嫌な予感⋯⋯というか、ある確信めいたものを感じながら視線を向けると、無駄にダークな装飾が施された椅子に座り、目の前の机にある水晶玉に手をかざしながら、黒い儀式を始めようとしている津島善子がいた。
「さぁ、サタン。何も恐れることはありません。どうぞこちらへ」
「お、おう⋯⋯」
恐れる要素しかない。色んな意味で。
俺はゆっくりと移動し、彼女の前に腰を下ろした。
花丸にちらりと目を向けると、少し離れた場所からこちらを窺っている。
「さぁ、私がどんな悩みもズキュンッと解決してあげましょう」
「⋯⋯⋯⋯」
ズキュンッと解決とは?ズバッとサマータイムみたいなやつだろうかと考えていると、どこからともなく暗い雰囲気だが威厳のある音楽が流れてきた。
だいぶ本格的になってきたな、と思いながら音のする方向に視線を向けると、なんと桜内がピアノを弾いていた。「まったく、なんで私が⋯⋯」と言いながらも、案外ノリノリに見えるのは気のせいだろうか。
BGMを纏い、自信満々な笑みを見せた津島は再び口を開いた。
「貴方は⋯⋯恋に悩んでますね」
「⋯⋯いや」
確かに両思いだからといって油断していてはいけないし、たまに頭の中埋め尽くすし、色んな意味で大きな存在になっているが、悩んでるとは違う気がする。
花丸の方をチラ見すると、こちらに向けてうんうんと頷いていた。
「善子ちゃん、素直に聞いたほうが良いんじゃない?」
桜内から言われて、津島はばつが悪そうな表情を見せたが、すぐに気を取り直し、こちらを向いた。
「あなたの悩みはなんですか?」
「あー⋯⋯まあ、この時期だからどうしても受験は意識してしまうな」
俺の悩みのようなものを聞いた津島は再び「くっ、くっ、くっ⋯⋯」と笑いだし、今度はこちらを安心させるような優しい笑みを見せた。
「それなら心配いりません。あなたには⋯⋯おせっかいで優しい勝利の女神がついていますから。これからも彼女を大事にすることを誓えば、素敵な結果が待ち受けているでしょう」
「善子ちゃん⋯⋯」
「ヨハネ!」
せっかくの良い雰囲気をぶち壊す切り返しに、つい口元が緩んでしまうが、まあこの方がこの二人らしい。
俺はこちらをこっそり見る花丸に、なるべく力強く頷いた。
頷き返す彼女は本当に勝利の女神に見えてきた。