捻くれた少年と海色に輝く少女達 AZALEA 編 作:ローリング・ビートル
ライブを終えた後、会場近くで待っててずらと花丸から連絡があった。
しばらく時間がかかりそうだと思っていたら、意外とはやく花丸は出てきた。
制服の上に大きめのコートを羽織り、大きめの黒い帽子を目深にかぶってはいるが、その走り方ですぐに気づいた。
彼女は俺の前で立ち止まり、息を整えると、周囲をキョロキョロと確認してから、そっと帽子の角度を上げた。
「あの、八幡さん⋯⋯」
「あー、とりあえずもう少しここを離れるか。まだ人が多い」
「そ、そうずらね」
幸い誰も気づいてないようだが、念の為移動することにした。
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駅の反対側へと少し歩くと、だいぶ人の数も減り、落ち着いて会話できる空気になってきた。
そこで俺は真っ先に言うべきことを口にした。
「優勝おめでとう」
「あ、ありがとうございます、ずら!」
花丸は頬を染め、口元に微笑みを添えて、控えめながらも大きな喜びを見せた。
だが、すぐに何かに気づいたように俺の顔を覗き込んでくる。
「そういえば八幡さんはどうしてここにいるずらか!?今日受験のはずじゃ⋯⋯まさか⋯⋯」
「いや、心配すんな試験はちゃんと受けた。小原家がヘリだしてくれたんだよ。おかげでギリギリ間に合った」
「やっぱりそうだったずらか⋯⋯さっき鞠莉ちゃんに聞いたら、八幡さんに聞いてみたらって」
「まあ、アイツには後で礼を言わなきゃな」
「そうずらね。二人でオススメの小説渡すずら」
「ああ、いいかもな。読書好きの二人からって事で趣味じゃない本でも納得してくれるかもしれん」
「ふふっ、面白そうずら」
さっきまで圧巻のパフォーマンスをしていたグループのメンバーとは思えないくらいほんわかな笑みを浮かべる彼女は、距離を詰め、腕にしがみついてきた。
ふわふわした感触と温もりが腕を温めると同時に、冷たい風が頬を撫でていき、高まる熱を少し冷ましていった。
この不思議な心地よさにいつまでも身を委ねていたい気分だ。
「マル、スクリーンにおばあちゃんと八幡さんが映った時、胸の奥から力が湧いてくる気分がしたずら⋯⋯ありがとうございます」
「それ言ったら、お前がくれたお守りめっちゃ効果あったわ。丁度いい問題多めだった⋯⋯ありがとな」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
二人してしばらく見つめ合う。
やがて、花丸は目を閉じた。
それを合図に俺は彼女の肩に手を置き、ゆっくり距離を詰める。
距離が零になるころには花丸の腕が腰に回されていた。
いつしか降り始めた雪の冷たさが互いの体温をより鮮明にしてくれた。