武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

100 / 109
第百話 本編最終回


終 双星龍虎乱舞

五胡を退けてから数日後、三国による和平調印式が執り行われた。

 

魏の曹操様、呉は雪蓮、蜀より劉備ちゃん。

それぞれ国の代表者が歩み寄り、固い握手を交わす。

 

これにて天下三分、事成れり。

 

宣誓の瞬間、ワァァァーッ!!と拍手喝采。

乱世を乗り切った英雄たち、それに兵士たちは互いに讃え合い、恒久的な平和が維持されることを強く願うのだった。

 

 

後は宴となり、其処彼処で真名の交換や挨拶・雑談が行われている。

そんな中、俺は真っ先に魏軍の方へ歩み寄り、目当ての彼に声を掛けた。

 

「やあ、北郷君。元気かい?」

 

「あ!呂羽さん。…ええ、元気ですよ」

 

「そっか、それは何より」

 

うむ、無事に目標達成。

以前見た通りの、北郷君の優しげな姿に胸がいっぱいになった。

 

 

「ところで呂羽さん。聞きたいことがあるんですが」

 

「何だい?」

 

「赤壁の戦いで、何か特別な火計を成したって…本当ですか?」

 

ああ、極限流星群(油付)のことか。

本当です。

どこから漏れたのやら。

 

「まあ、ちょっとな」

 

だが、アレは空手天狗の仕業。

詳細を言うのは憚られたので、適当にごまかそう。

 

おっと、せっかくなんで俺からも。

 

「時に北郷君。魏の種馬と称される君に、是非とも女性関係での助言を頼みたいのだが…」

 

「……呂羽さんまで、そんな……」

 

北郷君は悲しそうに顔を伏せ、動かなくなってしまった。

どうやら本人的には不名誉な称号だったらしい。

仕方ないので、しばらくそっとしておこう。

 

 

* * *

 

 

「あ、リョウ。ちょっとこっちにいらっしゃい」

 

改めて挨拶回りに出向こうとしたら、雪蓮から呼び止められた。

 

招かれた先には三国の王たちと、軍師たち数名の姿が。

せっかくなので一部を除いた数名と真名の交換を行い、挨拶を交わす。

 

これからは彼女たちが、三国の平和を取り仕切って行くんだなぁ。

感慨深くしみじみとしていると、何やら懸案事項があるらしい。

 

「さて、議題については皆も分かってるわね?」

 

「はい!和平調印式は無事に終わりましたし」

 

「ええ。当事者も来たことだしね」

 

皆が一斉に振りかえる、その先には…。

 

「…なんだ?」

 

俺が居た。

いや、特に議題に上がるような事はないと思うんだけど。

 

「大いにあるわ!貴方の、帰属問題よ!」

 

「華雄さんの夫になるんですよね?あと紫苑さんも……」

 

「凪とくっつくんでしょ?だったら魏に住むべきよね」

 

な、なんだってー?(棒)

 

魏と対決するまでは呉に属して動く。

その約束は果たされ、五胡との戦いではフリーとなった。

だからまあ、今後どこに属するのかって問題は確かにあるけども。

 

「そんなに大事か?」

 

「当たり前でしょ!?」

 

雪蓮の凄い権幕に思わず仰け反る。

 

「五胡の大軍に単身立ち向かい、実質半分ほどを撃滅するような武人よ?」

 

「ええ。今後のことを鑑みても、欲しがらない国はないわ」

 

「蜀の皆も、呂羽さんが戻って来るのを待ってますよ!」

 

随分と評価してくれたもんだが、ありがたいような迷惑なような。

だって流石に半分は撃滅してない。

過大評価だぞ。

 

「それにしても華琳。貴方、既に天の御使いが居るのだから遠慮したら?」

 

「そうですよ華琳さん!あれだけ発展したのは、北郷さんのお陰なんですよね?」

 

「あら、優れた臣は優れた王の下に集まるべきじゃなくて?」

 

呉蜀と魏の間で火花が散る。

おいおい、和平調印も終わって真名も交換しておいて早速喧嘩するなよ。

 

「だからリョウ、今ここで宣言しなさい。呉に来るって!」

 

「どうやら貴方の旅も終わったようだし、最初の居場所に戻って来るべきだわ」

 

「愛紗ちゃんと約束した仕事も、まだ沢山残ってますよ!」

 

三者三様で矛先が変わっただけだった。

そういや、この中で真名を交換した人数は圧倒的に呉が多いな。

 

「そうよ!何だったら私と冥琳を貰って頂戴!!」

 

「呂羽、貴方にとって凪は特別なんでしょ?魏に来なさいな」

 

「むぅ~!呂羽さん、華雄さんたちを裏切る真似はしないで下さいね?」

 

カオス。

恐らく決着はつくまい。

仕方ないので、俺の希望を言うとしよう。

 

「俺はな…──」

 

 

* * *

 

 

「……呂羽」

 

帰属問題にケリをつけて、ようやく解放された。

さて、ちゃんと挨拶回りをしよう。

 

そう思って散策していると、呂布ちんに捕まった。

おや、珍しく一人だな。

 

「おお呂布ちん。五胡戦では大活躍だったな!お疲れ様」

 

一騎当千を地で行く呂布ちんは、隊を率いて凄い数を薙ぎ倒していった。

俺も頑張ったけどね、大部分はビームだからな。

やっぱ敵わないって思ったわ。

 

「……呂羽も凄かった」

 

おお、天下の呂布ちんに認めて貰えて光栄だぜ。

そんな彼女は、おもむろに切り出した。

 

「…仮面、まだ?」

 

「……あ、ああ。そうだったな……」

 

正直、二個目を手に入れる当てはない。

だったらもう、使わないであろうコイツを手放してもいいんだが……。

 

「はやく頂戴」

 

「えっと、だな…」

 

見えない力が働いて、手放すことを躊躇してしまう自分が居る。

すると、何やら呂布ちんがピリピリし出したぞ!

一体どうした?

 

「……くれないの?」

 

「も、もうちょっと待てないか?」

 

「待てない」

 

なんだってーっ!!

呂布ちんらしからぬ反応、全俺に激震が走る。

しかも、かなり鋭く睨まれてる気がする。

 

「あ、リョウ殿!…それに、呂布?」

 

妙な緊張感漂う現場に、凪参入。

呂布ちんは凪をチラッと見るも、興味を示さず視線を俺に固定。

 

「……くれないなら……」

 

光の加減で呂布ちんの眼元が影になって見えなくなった。

さらにどこからか、ゴゴゴゴ!という謎の音が響いてくる。

とても嫌な予感。

 

「──してでも、奪い──」

 

「戦略的撤退ぃぃーー!!」

 

呂布ちんが何かを言いかけた時、直感に従い凪を横抱きにして思い切り跳躍。

まさかこの場で、全力を出すとは思いもしなかった。

 

 

しばらく空を駆けて、振り返る。

呂布ちんは追って来なかった。

よかった…。

 

「あ、あの……リョウ殿?」

 

ひょっとして、白昼夢か?

なんて思い唸っていると、胸元から上擦った凪の声が。

そういや抱えてたんだったね、軽くて気にならなかったよ。

 

「ところで凪」

 

「な、なんでしょうっ」

 

「敬語は要らないよ。あと呼び捨てで良い」

 

「い、いえ!しかしそれはっ」

 

抱えたまま会話を続ける。

とても恥ずかしそうにする凪だが、大丈夫、周囲には誰も居ない。

これ、結構良いかも。

 

「うん。まあ、追々な」

 

「はいぃ…」

 

すぐには無理そうだ。

仕方ないね。

 

 

ちなみに由莉は、今のところ一度だけリョウと呼んでくれた。

先頃お姫様抱っこして帰還した時な。

休憩所の寝台に降ろそうとしたら押し倒されたんよ。

 

もちろん全力で手は出してない。

ただ、母性が物凄かったなぁって…。

 

 

* * *

 

 

凪を降ろし、落ち着くのを見計らって挨拶回りを再開。

…しようとしたところで、シュバッと周泰登場。

 

「呂羽さん、大変です!」

 

「どうした周泰。あ、色々お疲れ様」

 

「お疲れ様でした!それと、私のことは明命とお呼び下さい!」

 

元気にハキハキと答えてくれる明命。

当初、ガッツリ警戒されてたのがまるで嘘のよう。

真名まで交換出来て、嬉しい限りだ。

 

「あの、周泰殿。何かリョウ…殿にお話が…」

 

「そうでした!それより楽進さん、私は明命で結構です!」

 

「ああ、私は凪。宜しく頼む」

 

話が進まんね。

 

「はい!…それでですね。皆さんが、リョウさんを倒すと言う話になりました!」

 

「……ん?」

 

「な、何故?」

 

聞き間違いかと思ったが、凪も疑問を呈する辺り間違って無いらしい。

明命が経緯を説明してくれるが…。

 

「雪蓮様や春蘭さん、愛紗さんたちが最強について口論となって…」

 

会場全体を巻き込み、俺を倒せば最強なんじゃね?

って話になったとか。

 

「いや、最強は呂布ちんだろ」

 

間違いないと思う。

そこに俺が入り込む隙間は無いはずだ。

 

「その恋さんも、リョウさんを倒す側ですよ?」

 

「あの呂布にさえ一目置かれる。流石はリョウ……殿です!」

 

惜しかったな。

いやいや待て待て、そうじゃないだろ。

 

「呂布ちんが俺を?……なんでさ」

 

「存じません。ともあれ、会場に行きましょう!」

 

そう言って腕をガシリと掴み、ずりずりと引っ張り始める明命。

随分と積極的だな!?

 

「実は、リョウさんを倒せば優先的に確保権が得られるのです!」

 

確保権って何だ?

って、絶対そっちがメインだろ!

最強とか別に関係な……くもない奴もいるだろうけどさ。

 

「明命は呉の為か?」

 

「はい!」

 

とても良い笑顔だった。

なら仕方ない。

 

「凪は俺の味方だよな?」

 

「えっ…と、はい。勿論です」

 

今少し考えたな?

そんなん無くても、凪のお願いなら何でも聞いてやるのに。

 

仕方ないので明命に引っ張られながら、凪と一緒に会場まで歩いて行った。

傍から見れば親子みたいに…流石にないか。

 

 

「あ、来たわね」

 

「雪蓮。何事だ?」

 

「あれ。明命から聞いてない?」

 

聞いたけど、あれで理解出来る訳ないだろ。

詳細希望。

 

「帰属問題は解決したハズだろ?」

 

「それとこれは別問題よ」

 

どう違うと言うのだろう。

そんなことをしてる間に、戦意に満ち溢れた将たちが周囲に…。

 

「まあいい。ならば、俺と凪のペア…っ…組に勝てたら、どんな願いでも一つだけ聞いてやろう!」

 

聞くだけな。

 

「え?呂羽さん…今、ペアって言ったような…」

 

ワァァァァーッッ!!

 

北郷君が呟くのを、周囲の大歓声が掻き消した。

おっと危ない、つい漏れてしまった。

 

「…良いのですか?」

 

はっはっは、こうなりゃ自棄じゃ。

なぁに、勝てばよかろうなのだぁ!!

 

「……じゃあ恋がやる」

 

「え゛?」

 

唐突に姿を現す呂布ちん。

そんなに仮面が欲しいのか?

だったらもう、あげちゃっても…

 

「……恋が勝ったら、呂羽を貰う」

 

なんて思ってたら爆弾発言。

そして、凪が瞬間沸騰。

 

「ッ!……リョウ、全力で倒しますよ」

 

「アッハイ」

 

まるでスーパー野菜人のように立ち昇るオーラ。

おお、これならいけそうだ。

 

とりあえず戦国最強、呂布ちんに勝てば皆黙るだろう。

黙らない奴も数名思い浮かぶが、努めて無視する。

 

 

* * *

 

 

段取りを凪と確認し、いざ尋常に勝負。

二対一を尋常と言って良いのかはさて置き。

 

「……行く」

 

「来い!」

 

何時になくやる気十分な呂布ちんと、滾る凪。

 

たぎるなぎって語呂が良い、いやむしろ悪い?

どうでもいいことが気になるのは何時ものこと。

うん、大丈夫だ問題ない。

 

しかし補正が付いたとはいえ、凪で呂布ちんに勝つのは難しい。

もちろん俺でも。

だからこそ、初めての共同作業に勤しむとしましょう。

 

 

結果は辛くも勝利。

まさか、あんなに粘られるとは。

 

俺が正面から、背後から凪が攻めた。

暫烈拳に幻影脚。

トドメは同時に覇王翔吼拳。

 

これぞ一人では決して成しえない、極限流究極奥義・双星龍虎乱舞!

 

これを放てたことに満足してしまったため、最後の詰めを誤った。

二発の覇王翔吼拳を食らってもなお、耐え切って凪に向かって突進した呂布ちん。

 

まだまだ気力が足りない凪では、その一撃を耐えることは叶わない。

そう見切り、必死に足に気を込めて虎閃脚で割り込み。

ギリギリのジャストディフェンスから、真・天地覇煌拳で勝利をもぎ取ることに成功したのだ。

 

 

加減出来なかった最後の一撃により、呂布ちんの上半身から布が弾け飛んだ。

そして、美しいお胸様が露わに。

すぐさま陳宮が駆け寄って来て事無きを得たが、……俺は死んだ。

 

戦闘終了後、周囲の目がとても痛い中で真名を交換。

もう少し待ってくれるそうな。

 

 

* * *

 

 

「うむ、流石だな呂羽。よし、では次は私と勝負だ!」

 

「いやいや姉さん。さっき言った通り、俺と凪は一緒に…」

 

「なに構わん。こちらも韓忠と共にやるからな」

 

「!?」

 

慌てて視線を向けると、確かに由莉の姿。

鉈を構えてヤル気満々だ。

微笑が怖い。

 

これに凪も反応。

ボルテージが急上昇している。

 

呂布ちん…恋に勝っても、黙らない奴が圧倒的に多かった。

想定外デース。

 

「その次は私たちがやるわよ!」

 

「はい姉様!」

 

「うん!正妻の座は、シャオのものだからねっ」

 

孫呉の姉妹とか。

 

「姉者。季衣と流琉、四人で掛るぞ。何としても魏に勝利を」

 

「ああ!そして華琳様に褒めてもらうのだ!」

 

曹魏の四人衆とか。

 

「星。組むか?」

 

「そうですな。白蓮殿となら、心強い」

 

「あ、私も混ぜてくれ」

 

「ならうちもー」

 

白蓮、星、馬超、張遼の神速衆とか。

 

先程真名を交換した愛紗や鈴々と言った蜀の義姉妹。

それに紫苑、桔梗、祭のアダルト組に魏延と蒲公英、沙和に真桜。

さらには甘寧と明命に呂蒙まで。

 

軍師や君主以外、ほぼ全てじゃねえか……。

 

ふ……、いいだろう。

その挑戦、全て受けてやる。

 

「極限流は天下無敵。今ここで、それを証明してやろうじゃないか!!」

 

 

乱世は終わり、世は安寧の時へ。

平和を維持するために、三国は共同して努力し続けて行くだろう。

 

 

それはそれ、これはこれ。

俺の平穏は遥かに遠い。

 

差し当たり、正妻戦争に勝利したのは……俺の隣で戦う彼女だった。

 

 




これにて終幕。
長きに渡りお付き合い頂き、誠にありがとうございました。

回収してない伏線、畳み切れない大風呂敷。
詰め込み切れなかった小話、忘れてたイベントなど。
その辺り、いつか番外編や後日談等を投稿できたらいいなと思います。


・双星龍虎乱舞
NBCアナザーダブルアサルト。
使用者は例の二人。
その源流は、某漫画のオリジナル技にあるとも言われていますが俗説でしょう。
よって覇王翔吼圧挟拳ではありません。ええ、断じて。

・エイプリルフール終了のお知らせ
最後の脱衣KOは呂布ちん
主人公の運命は見ての通り
今回、普通に最終話!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。