武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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遂にパk


12 龍斬翔

曹操様に集められた諸将の一人として、軍議の間に参集する俺。

場違い感が半端ねぇ。

 

「リョウ殿」

 

「お、警備隊の方はいいのか?」

 

「はい、真桜と沙和に任せてます。かなり不安は残りますが…」

 

軍議が始まるまで少しありそうだったので、既に来ていた凪と雑談などを少々。

 

北郷君も当然いるし、現場は大丈夫なのかと尋ねたところそんな回答が。

確かにサボり魔の二人だし、心配になるのも分かる。

流石に大丈夫だとは思うがな。

 

「そう言えば龍斬翔ですが、なんとかなりそうです」

 

「おお、そうか!流石だなぁ」

 

「い、いえ!リョウ殿の教え方が上手なだけかと…」

 

照れながら謙遜する凪の様子を眺める。

うむ、眼福なり。

 

俺は未だに覇王翔吼拳の調整が終わらず、約束を果たせないでいた。

そこで、代替的に凪に合いそうな技を見繕って教えてみたのだ。

 

それが龍斬翔。

いわばサマーソルトキックだが、蹴りを得意とする凪ならば合っているのではないかと思ってな。

 

もちろん概略を教えると同時に手本も見せたよ?

本来リョウの技じゃないけど、同じ極限流だし判り易い方だから普通に出来た。

この調子なら全技再現も夢じゃない。

 

 

「皆、揃ったようね」

 

そんな話をしていると、上座に曹操様が現れて軍議が始まった。

 

 

軍議の主な内容は次の出征について。

黄巾党の主力を一網打尽にするという作戦らしい。

 

荀彧が説明してた。

コイツとの接点、今のところ全くないんだよね。

 

ま、男嫌いの相手にわざわざ話しかけるなんて嫌がらせ、する必要もない。

必要が生じれば接点も出来ることだろう。

そもそも暫定客将(仮称)だし、軍師と接する機会なんてほぼないわな。

 

しかしそっか、もう黄巾党討滅の季節か。

となると、そろそろ潮時かねぇ。

 

今回の出征には、ほぼ全ての将が出陣する。

それには俺も含まれる。

曹操様たち、首脳陣のかける思いが分かるってもんだ。

 

「さて、ここまで質問はあるかしら?」

 

曹操様が言うが、特にないかな。

俺は基本、言われるがまま突貫するのみだ。

 

「それじゃ、呂羽はもういいわよ」

 

「ん?了解です」

 

大まかな方針が語られ、首脳陣を残して退室を促される。

 

これから秘密の作戦が披露されるわけですね。

具体的には三姉妹捕獲作戦の。

そして、正式に仕官してない俺に漏らす訳にはいかないと。

 

承知しておりますとも。

特に不満もないので、さっさと退室しよう。

 

「呂羽!」

 

と、夏侯淵に呼び止められた。

 

「後で詳しく打ち合わせる。待機しておいてくれ」

 

「承知した」

 

改めて退室し、とりあえず練兵場で待機することにしよう。

いろいろと考えることがあるし、丁度いいな。

 

 

その後、やや間をおいて夏侯淵と典韋と打ち合わせを行った。

待ってる間に今後の方針についても考えを重ね、概ね固まったかな。

ま、それも全ては黄巾党を駆逐してからだが。

 

 

* * *

 

 

さて、やってきました賊退治。

しかもただの賊ではありません。

なんと黄巾党、黄巾党の本隊なのです!

 

 

その首魁が居るこの地域に諸侯が終結している。

なお、諸侯には頑なに独力で頑張ってきた義勇軍も含む。

 

彼らは各地で黄巾党の分隊を蹴散らし、敗軍を追い立てて本隊がいるここに集まってきた。

そして奴らの首をあげ、名声を得ようというのが諸侯の目論みだろう。

 

 

諸侯の思惑はいろいろあれど、俺のやることは変わらない。

覇王翔吼拳の調整だ!

 

いや、それも大事だが今は違う。

諸侯のチェックだな。

まだ誰にも言ってないが、黄巾党を駆逐し終えたら旅に出るつもりなのだ。

先のことを考えるに、自分で見聞きした情報は宝となるだろう。

 

そんな訳で、まずは曹操様が目を付けた義勇軍。

率いるのは天然ボインの劉備ちゃん。

彼女を支える関羽や張飛、そして軍師たち。

罠で有名な諸葛孔明もいる筈だ。

 

曹操様が劉備軍に兵糧やらを分けてあげてる。

だめだ劉備ちゃん、それは孔明の罠だ!

孔明ちゃん味方だけどね。

曹操軍の軍師は猫耳だけどね。

 

 

「兄ちゃん、なにぶつぶつ言っとんのや?」

 

「おう李典!いや、曹操様は流石だと思ってなぁ」

 

危ない危ない、一人芝居を聞かれかけてた。

 

「どういうことですか?」

 

凪もいたのか。

ということは于禁もいるのだろう。

ますますもって危ういところだった。

 

「曹操様が劉備軍に兵糧を渡したことで、恩を売った訳だ。そして、受けた恩ってのは借りと同義」

 

「なるほどな。借りなんてもん、なるべく持ちたないもんなー」

 

「そう。そこを突いて良いように用いることが出来る、かも知れない」

 

曹操軍は兵糧と引き換えに、ある程度自由にできる壁を手に入れたってことだね。

えぐい。

 

「うわぁ、えっぐいの~」

 

うむ、やはりいたか于禁。

 

「だけど有効な策だ。自軍の消耗は、なるだけ避けたいからね」

 

「隊長」

 

北郷君も来てた。

曹操様のとこにいなくていいのかい?

 

「そうだ呂羽さん、華琳が呼んでましたよ」

 

え、なして?

 

 

* * *

 

 

「来たわね呂羽」

 

北郷君に促され、本陣にやってきた。

迎えてくれたのは曹操様と、軍の首脳部たち。

 

猫耳もいるよ!

 

「お呼びとか」

 

「ええ。早速だけど、秋蘭?」

 

「はっ。呂羽、お前は凪とともに劉備軍への援軍として前線に行って欲しい」

 

「ふむ、承知した」

 

「御意!」

 

劉備軍の援軍とは、願ったり叶ったりだ。

しかし凪が付いてくるなら、あまり無茶は出来んな。

 

「ちなみに、一刀の護衛は真桜と沙和に任せるわ」

 

「了解や!」

 

「了解なの~」

 

ふと、北郷君の腕に抱きつく李典と于禁が視界に入る。

俺はスルーしたが、真面目な凪はやはり無視出来ない。

 

凪が怒り、李典らが北郷君の後ろに回り込み、北郷君が凪を宥める。

よくある光景がそこにある。

とても戦場と思えない、和やかな雰囲気に包まれていた。

 

何とも居心地が良い。

お陰で決心が鈍ってしまいそうだな。

 

「じゃあ、ちょっくら行ってきます」

 

「頼んだわよ」

 

曹操様に見送られ、俺たちは劉備軍の下へ急ぐのだった。

 

 

* * *

 

 

そしてやってきました、劉備軍。

 

「たのもー!」

 

「む、何者!?」

 

ざっと躍り出て、睨みつつ誰何してきたのは美しい黒髪の、おそらく関羽さん。

ふーむ、なかなか強そうだ。

 

「曹操様より、劉備殿への援軍として参った。案内を頼みたい」

 

つい関羽をじろじろ眺めていると、ぐいっと凪が前へ出て高圧的に言い放った。

真面目な凪にしては珍しい。

何か言い含められてるのだろうか。

 

案の定、関羽はカチンと来たような顔をしている。

しかし場を弁えたのか、硬い声ながら案内をしてくれた。

おいおい、今後の連携に不備が出たら……まあ、それでも別にいいか。

 

「どうしたんだ、らしくないぞ?」

 

「……は、すみません」

 

でも一応、関羽の後を追いつつ小声で凪を嗜める。

緊張してるのか、ちょっと表情が硬いな?

 

 

案内された先には劉備ちゃんたち、首脳陣が揃っていた。

 

「曹操様より派遣された呂羽だ。こちらは楽進」

 

「はじめまして、劉備です。よろしくお願いします!」

 

代表して俺と劉備が挨拶を交わすが、場の空気は重い。

あまり離れてなかったし、さっきのやり取りが聞こえてたのかな。

何人かは完全に睨んでる。

 

「あまり歓迎されてないようだ。不要ならそう言ってくれ」

 

融和を目指して下手に出るのもどうかと思うので、敢えて突き放すように言ってみる。

すると案の定、劉備ちゃんとはわわ軍師が慌てて引き止めてくれた。

曹操様の援軍と諍い起こしちゃ不味いもんね。

 

但し、空気はよりいっそう沈下した。

あれ、やっちまったか?

 

 

とりあえず簡単な打合せを経て、陣の隅に移動。

相手がどう思おうと、俺は曹操軍の将として前線に居ればそれでいいはず。

 

そんなことを考えていると、誰かが近寄ってきた。

 

「失礼。お主が呂羽殿か?」

 

 

 




・龍斬翔
リョウのライバル、ロバート・ガルシアが使うサマーソルトキック。
龍虎外伝が初出展ですが、コンビネーションのフィニッシュ専用技でした。
単体技としてはKOF97から。
使い勝手はともかく、中々カッコいいと思います。

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