武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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30 覇王至高拳

幽州は公孫賛の下に寄宿することになった俺たち。

そこで任せられた仕事は色々あった。

 

まずは賊退治に治安維持。

これは華雄姉さんのリハビリにも役立った。

 

あとは、主に俺と韓忠で事務処理の手伝いなどなど。

陳留や洛陽での経験が生かされた。

 

そして、諸侯の動きをチェックするため細作を多数放った。

中でも袁紹について詳しく探るよう指示して。

 

これを公孫賛は訝ったが、

 

「袁紹が動いた結果と、洛陽で現実を見たでしょう?」

 

そんな袁紹が、次に何を仕出かすのか…。

動きを知らないと大惨事になりかねない。

 

そう主張し、押し通した。

 

「そんな、いくら麗羽でも…。いやしかし……」

 

公孫賛は暫くぶつぶつ言ってたが、承諾は取った。

あまりに煮え切らないと、最悪勝手に人を遣ることも考えていたが…まあ良かった。

 

 

俺は原作で反董卓連合の後、袁紹が電撃的に公孫賛を攻め落としたらしいことは知ってる。

でもその理由、正確な時期、対応など詳しくは知らない。

だから少しでも詳しいことを知り、素早く対処することが肝要だと思うんだよね。

 

 

そして、この行動が実を結ぶことになる。

 

「報告します!袁紹軍に遠征の動きあり!」

 

「追加報告!袁紹軍の標的は、この幽州かと思われます!」

 

時期などはともかく、結局理由はよく解らんかった。

袁紹だから、でいいのかも知れない。

 

 

* * *

 

 

動きを掴んだのなら、対処方法は色々ある。

機先を制して、覇王翔吼拳ぶっぱとかな!

 

それはともかく、公孫賛だけだと袁紹の大軍に抗する術はなかったはず。

奇襲であれば尚更。

しかし今は華雄隊と呂羽隊がいる。

ある程度、良い勝負が出来るんじゃないかな。

 

特に俺と華雄姉さんは、袁紹に含むところが多々ある。

俄然張り切っちゃうぜ。

 

そんな訳で、華雄隊と呂羽隊が先陣として国境まで出張って来たのだ。

のこのこやって来た袁紹軍を、ここで迎え撃つって寸法よ。

 

俺としては、目に痛い金色の群れは薙ぎ払い甲斐がある。

連合戦の時、特に手強いと思える武将は居なかった。

今回も居ないとは限らないが、実地訓練の体で臨ませて貰おう。

 

「呂羽。合図は任せるが、良いか?」

 

「ああ、任された」

 

華雄姉さんが猪じゃない、だと?

前の時の開幕ぶっぱがお気に召したらしい。

旗を折ったこともな。

 

期待には応えなければならない。

だから俺は、ここで袁紹軍(の旗)にとっての死神となろう。

 

「報告!まもなく現れます!」

 

物見からの報告で、開戦が近いことが知れる。

 

未だ事前通知とかはないが、袁紹軍は明確にこちらに向かって来ている。

敵性行為と断じて良いよな?

 

「一応、詰問の使者を派遣すべきかと思われますが…」

 

常識的な進言をしてくる韓忠だが、分ってるんだろう。

もう遅いって。

 

ほら。

俺の目にも、少し遠くに袁紹の旗が見えている。

 

「無駄だろう。あちらが国境前で止まるなら、考えてもいいがなぁ」

 

「そう、ですね」

 

止まる気配はない。

そもそも、向こうは公孫賛軍に奇襲をかけるために来てるのだ。

止まる筈もない、な。

 

言いつつ、気を循環させ全身に纏って行く。

この流れもかなり楽に出来るようになってきた。

それでいて、気力切れになるようなことも減って来たのではないかと思う。

 

そろそろ、覇王翔吼拳の上を目指せるのではなかろうか。

 

即ち、覇王至高拳。

 

開幕ぶっぱはこれで行こう。

 

「報告、接敵しますっ!」

 

やはり、舌戦も何もないな。

止まる様子はない。

 

ならば、こちらもそれなりの対応をするだけだ。

 

「ちょっと行ってくる。姉さん、華雄隊は任せた」

 

「うむ、行って来い!」

 

俺は華雄姉さんと別れ、韓忠と呂羽隊を連れて前進。

ちょっと小高い丘になってる場所あるので、そこに陣取った。

 

金色が勢いよく近付いてくる。

迎撃部隊が居るってことくらい、向こうも解ってるだろう。

 

つまり、覚悟完了ってことだよな?

 

行くぞ!

 

 

両腕を眼前で交差させ、すぐさま腰元へ引く。

瞬間的に気力を高めたのち、両手を突き出して大型の気弾を撃ち出した。

 

「覇王至高拳ッ!」

 

 

敵勢の先鋒は覇王至高拳に薙ぎ倒され、至高拳はそのまま袁紹の牙門旗に吸い込まれていった。

そして高さの問題もあろうが、旗を吹っ飛ばすどころか丸ごと粉砕してやったぜ。

いやぁ、実に清々しい。

 

並行して突撃してきた奴らも、華雄隊と呂羽隊が迎撃している。

俺も至高拳を放った直後、追いかけるように飛燕疾風脚で突入した。

 

袁紹軍の先陣は、乱れに乱れた。

大小さまざまな旗があるが、とりあえず可能な限り潰してる。

死神だからね。

 

と、そこに有象無象とは毛色の違う武将が現れた。

連合の時も見かけたような気がするな。

 

「お前かー、あたいらの軍旗をめちゃくちゃにしてる奴はー!?」

 

「だとすれば、どうする?」

 

「斬るっ!」

 

武器を向けて来る奴が相手なら、使わざるを得ない。

とは言え、覇王翔吼拳を使うほどでもないかな。

 

その趣味が悪い金色も、全て粉砕してやる!

 

 

「虎煌拳!」

 

「ウボァッ」

 

ズバンッと練り込んだ虎煌拳を叩き込む。

 

相対したコイツ、確か文醜とか言ったか。

連合の時は分からなかったが、なかなかの技量を持っていた。

だが夏候惇や華雄姉さん、凪などに比べるとまだまだ全然。

 

ちょっと呼吸を読んで踏み込めば、簡単に懐に潜り込めた。

至近距離から虎煌拳を打ち込んだが、何とまだ立っている。

評価を改めなくてはならないかな?

 

では、容赦なく追撃と行こう。

 

「暫烈拳!」

 

目に余る金色を砕いてやる。

その想いを勢に乗せ、気を練り込んだ拳の連打を繰り出す。

 

一撃の重さが故に文醜の身体が浮き、落ちる前に次の一撃を続けて浮かし続ける。

ある程度の高さに到達すると、右正拳突きを叩き込みフィニッシュ!

 

虎煌拳で気を通して脆くなった金色の鎧は、暫烈拳の連撃に耐え切れず破砕。

勢い余って衣類も少し破けてしまったな。

……水色か。

 

「文ちゃん!?」

 

もう一人、見たことある奴が慌てて駆けつけて来た。

 

「絶対無比の空手、それが極限流だ!覚えておく事だな」

 

文醜はいい感じに吹っ飛び、恐らくKOしてしまった。

だから今来た奴に向かって煽り文句を放つ。

 

こちらを睨みながら文醜を介抱する、…誰だっけ。

見たことあるんだけど。

 

かかって来るなら粉砕するだけだが、介抱するだけなら後回しにするか。

 

「……ご愁傷様です」

 

背後で韓忠が何かを呟いた。

それを聞き流し、周囲をぐるっと確認する。

 

遠くに華雄隊の動きが目に入った。

姉さんも、以前の鬱憤を晴らすが如く暴れてる。

俺も負けては居られないな。

 

近辺、見渡す限り金色の群れ。

よーし、このまま他の金色を破砕し続けてやるぜ!

 

 




・覇王至高拳
設定上、覇王翔吼拳の上位版。
最初の頃はダメージや硬直等、幾つか優遇処置もあったのですが…。

毎日一話の自転車操業。
色んなフラグに迷いが生まれますが、一応まだ初志貫徹の心積もりです。
とりあえず、三十話記念に脱衣KOしてみました。

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