武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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04 覇王翔吼拳

俺は李典を連れて、楽進たちのもとに戻った。

そこには、陳留からの援軍を率いた将たちがいた。

まずは互いの自己紹介からかな。

 

「私が援軍の将、夏侯淵。こっちが許緒だ」

 

「どうも、呂羽です」

 

クールビューティの夏侯淵と元気いっぱいな許緒。

実際目にすると、特に夏侯淵はかなり圧があるなあ。

 

……腕も立ちそうだ。

 

おっと。

思わずワクワクしてしまったのを自制する。

そんな場面じゃないからな。

 

ところで、楽進たちは何故に俺の後ろに並ぶのか。

 

「なんで後ろに?」

 

「兄ちゃんが仕切ってたんやから、当然やん?」

 

「うむ、楽進からもそう聞いている。そろそろ話を詰めたいのでな、こちらへ」

 

李典から言われて思い返したが、確かに俺が仕切ってた。

しかし、何時の間に意思統一が図られたのだろうか。

 

まあ蒸し返しても仕方ないので、大人しく夏侯淵に連れられて軍議の場へ向かったけどな。

 

 

 

そして、簡単な軍議で確認されたことは次の通り。

 

賊の数は三千から四千。

村には門が三つあり、それぞれに攻めかかってくると予想される。

対する防備は各門のそれぞれに柵と土塁、空堀を巡らせたと言う報告。

その発案は俺だと于禁が付け加えた。

いや、その情報は別に要らんだろ。

 

「ほほう、呂羽は武略にも通じるのだな」

 

お陰で、夏侯淵の何やら不穏な呟きに繋がってしまったじゃないか。

俺は格闘家であって武将じゃないんだが。

 

更にどうすれば良いかと問われ、仕方なく適当にばら撒いた回答をしたら採用された。

なんでやねん。

 

「では東門は我々が。西門は呂羽と李典。南門は楽進と于禁、頼むぞ!」

 

「「「応!!!」」」

 

ま、なってしまったものは仕方ない。

それに、遂に機会が巡って来たのだ。

集中するべきだな。

 

 

* * *

 

 

「兄ちゃん凄いな。夏侯淵様にあんな堂々と、普通は言えへんで」

 

「いや、別に普通だろう?」

 

三つの門にそれぞれ配分しただけだし。

なんで三人とも、そんなキラキラした目をしてるんだ。

 

「そんなことは有りません!流石、だと思います」

 

「凪ちゃん、何か顔が赤いの~」

 

「なっ!沙和なにを言って……ええい、早く持ち場に行くぞ!」

 

「あ、凪ちゃん待ってなの!それじゃお兄さん、真桜ちゃん、頑張ってなの~」

 

「おう、まったなー」

 

二人を見送り、俺たちも持ち場へ向かう。

さて、正念場だ。

 

「それで兄ちゃん、どうするんや?」

 

ふーむ。

 

「賊は武器を持ってるよな?」

 

「ん?そりゃな、弓は少ないやろうと思うけど」

 

うむっ。

ならば……。

 

「武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない!」

 

「……は?」

 

ふっ、決まった。

 

「兄ちゃん、何言うとんの?」

 

「まあ、任せておけ」

 

良く分ってない様子の李典をスルーしつつ、俺のボルテージはぐんぐん上昇している。

なにせ覇王翔吼拳。

これが遂に、日の目を見る日が来たのだ。

 

そう、俺が求めて止まなかった。

あの覇王翔吼拳がな。

 

 

* * *

 

 

「敵襲ーーーっ!!」

 

カンカンカーンッ

 

朝日が昇る頃、賊の接近を認める鐘の音が村全体に鳴り響く。

遂に来たか!

 

俺は跳ね起き、門前に出る。

すぐ隣には李典もやってきた。

 

「まもなく接敵やな。じゃあ、まずは弓で牽制してから……」

 

「待て李典。まずは俺に任せろ!」

 

「へっ?」

 

「初っ端からぶちかます。それを合図と考えてくれ」

 

戸惑う李典を尻目に、土塁の上に一人立ちはだかる。

 

おおう。

千人を下らない黄巾党の群れ。

蠢く悪意。

実際に見ると、中々ショッキングな光景だな。

 

さて、相手は賊だ。

舌戦なんて存在しない。

問答無用、先手必勝で良いだろう。

 

 

軽く息を吐き、全身を弛緩させつつ気を巡らせる。

 

ふっと意識して、両腕に気を集めながら眼前で一旦交差させ、軽く拳を握り、更に深く溜める。

 

そして大きく息を吸いながら両手を腰元へ引き絞り、掌に気を集積し……。

 

両手を前に突出し、一気に解き放つ!

 

 

「覇王翔吼拳!!」

 

 

身の丈も有ろうかと言う、巨大な気弾が前方へ撃ち出された。

 

 




ようやく次話装填の方法が判りました。

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