武器を持った奴が相手なら、覇王翔吼拳を使わざるを得ない   作:桜井信親

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83 鉄拳・風林火山

昨夜、部屋の前で何かしらの出来事があったらしい。

でも翌朝、誰も何も言わないので流すことにした。

夜討ちが云々と頭を過ったが、藪蛇は御免だしねー。

 

それと結局、黄忠のことは真名で呼ぶことになった。

何故ならそう呼ばないと反応しないんだ。

さらには呼び捨てを強要されると言う、謎の事態に!

 

 

「ところで紫苑さん。次の遠征は」

 

「呂羽さん、私のことは紫苑とお呼び下さい」

 

「っと、そうは言ってもな」

 

「紫苑、と」

 

「いやでも」

 

「紫苑」

 

「えっと…」

 

「紫苑」

 

「……分かった。じゃあ、紫苑」

 

「はい、何でしょう?」

 

「……とりあえず、俺のことはリョウと呼んでくれ」

 

こんな感じ。

ずっと笑顔なんだが、言葉を発するたびに高まっていく圧が中々に凄かった。

一方通行は余り宜しくない気がしたので、相互通行にしておいたのだが。

 

「これで両想いですわね」

 

なんて意味不明なことを仰り、近くに居た仲間たちが激おこ状態になったのには参ったぜ。

 

偶々呂布ちんも近くに居て、何やら興味深そうに見ていたのが印象に残っている。

あれから仮面については何も言って来てないが、まだ少し警戒してるのは仕方がないと自己弁護。

ほとぼとりが冷めるのを待つしかないだろうなぁ。

 

 

* * *

 

 

嫌な事件から数日後、俺は呂羽隊を率いて北の国境警備隊のもとへ向かった。

随行するのは黄忠、もとい紫苑と馬岱。

 

まずは長らく警備の任に当たっていた華雄隊と、詠っちに合流する。

細かいことはそこで決める予定だ。

 

ちなみに他の蜀軍は、南蛮を警戒して南下。

呂布ちんや馬超が主力として軍を率いている。

 

五胡に動きが無くて助かったと孔明ちゃんが言ってた気がする。

ただ、それはそれで不気味なので、馬休を主将に兵も多めに配置してるらしい。

 

騎馬隊を持つ馬一族は重宝するようで、各方面に配置されてる。

それはいいのだが、みんな揃って眉が濃いよな。

今思えば馬騰もそうだったような気がするし、血筋なのか。

 

そう言えば、風の便りで袁紹御一行が蜀に居ると聞いたのだが…。

まあ無理に会うこともないな。

俺は気袁斬らしいし。

 

「おお呂羽、久しぶりだな!」

 

ぼんやりとあれこれ考えていると、華雄姉さんが出迎えてくれた。

宿営地までもうちょっとあるんだけど、わざわざ済まないな。

 

「なに、此処は至って平和でな。対戦相手に飢えていたところだ」

 

手合せ希望ですね分かります。

俺としても、姉さんとの対戦は楽しいから望むところだが。

 

「よう大将!こっちも手合せして欲しいんだけどさ、まずは軍師殿に会って下さいよ」

 

「お、牛輔。元気そうで何よりだ」

 

「そうよ華雄。リョウさんが恋しいのは分かったけど、私事は後にしなさい」

 

「む、黄忠。…それに馬岱か。韓忠たちも良く来たな。では案内しよう」

 

紫苑の言葉に若干引っ掛かりを覚えたが、姉さんは何も言わなかった。

そして何事も無かったかのように案内してくれる。

何だ?

普段通りの姉さんだが、どこか違和感がある。

具体的に何がどうとはないので、大人しく付いて行くのだが。

 

 

「あらリョウ、いらっしゃい。紫苑に蒲公英も、お疲れ様」

 

宿営地に着くと、詠っちが迎えてくれた。

思ったより安穏としているな。

まだ何も起こって無いのか。

 

「詠さんもお疲れ様です」

 

「やっほー、久しぶりーっ」

 

馬岱はシャオと通じるところがあるな。

主に言動が。

 

「あ、リョウ!今何か変なこと考えたでしょっ?」

 

「ちょっとシャオのことをな…」

 

「え?…やだもーっ、リョウったらぁー!」

 

微妙に勘が良いシャオだが、すぐに自分の世界に入ってしまうのが困りものだな。

ばしばしと腕を叩いてくるシャオを往なしつつ、詠っちに確認。

 

「で。これからどう動けばいいんだ?」

 

「ん…。リョウたちは、好きにしてて頂戴。紫苑と蒲公英には近々、定軍山に行ってもらう」

 

「あら、呂羽さんたちとは別行動ですの?」

 

「うん。リョウには華雄と一緒に動いてもらうわ」

 

そう言って詠っちはチラッと姉さんを見た。

つられて見てみると……あ、姉さんの目が輝いてる。

 

「華雄の鬱憤を解消させつつ、交代で定軍山の見張りに立ってもらうから」

 

姉さんのストレスを解消させる役目ってどういうことなの。

いや、否はないが。

それと、定軍山っていうとイベントが起こるポイントだよな。

時期が不明確だが、どうにか上手く参加したいところだ。

まあ、どうにかなるだろう。

 

「それで、たんぽぽたちは何を見張りに行くの?」

 

「ああ、伝えてなかったわね。成都には既に伝えてあるんだけど、少し前に斥候が戻って来てね…」

 

詠っちが話すところによると、魏が蜀に向けて偵察部隊を出すらしい。

それも間者などではなく、少数ながらも将が率いる精鋭部隊とか。

 

そして、経路は恐らく定軍山を通るはず。

だから待ち伏せして、奇襲・殲滅を計るというのだ。

立地条件から考えて、弓持ちや局地戦闘に慣れた者が良いと考えれらた。

 

「そこで白羽の矢が立ったのが、紫苑とリョウよ」

 

紫苑が弓で、俺は気弾ってことか。

あとは馬術を良くする馬岱と、白蓮がそれぞれセットになる。

華雄姉さんは抱き合わせ商法かな。

 

「とりあえず、明後日くらいに出立して頂戴。それから一週間後を目途に、交代要員を送るわ」

 

時期なども大体の予測は立てているそうだが、不確定要素が多いので早めに送り出すとのこと。

基本は待ち伏せになるから、仕方ないのか。

 

まあその辺りは、優秀な軍師に戻った詠っちに任せておけば大丈夫だろう。

 

「それにしても……」

 

話が一段落したところで、詠っちがチラリとこちらを見る。

 

「紫苑と随分仲良くなったようね」

 

「あー、まあそうかもな」

 

俺が真名で呼び合う奴は多くない。

特に蜀では、月ちゃんと詠っちを除けばこれまで居なかったのだが。

 

「リョウさんは恩人ですから」

 

まあ、不幸な事故の結果って奴だね。

璃々ちゃんを助けられたのは良かったけど、まさかそこから身バレするなんてなぁ。

 

「へえ…。またリョウがやらかしたわけね」

 

詠っちは俺をどんな目で見ているのか。

しかし俺の背後、白蓮たちが深く頷いているので何も言えない。

一度、風評含めて省みる必要が有るかも知れないな。

由莉に聞けば教えてくれるかな?

 

 

「さて、話は終わったな?」

 

「ん。ええそうね、あとは自由にして頂戴」

 

姉さんが確認し、詠っちが応える。

時折頷く以外、反応が無かった姉さんが動き始めた。

その目は爛々と輝いている。

 

「よし呂羽、手合せするぞ!」

 

「あー、はいよ。副長、隊の手配りを頼む」

 

「承知しました」

 

さてさて、行軍の疲労も何のその。

久々の姉さんとの手合せは、どのようなものになるだろうか。

楽しみだ。

 

 

* * *

 

 

「では呂羽、行くぞっ」

 

「いつでも来い!」

 

そうやって始まった姉さんとの組手。

いくらか打ち合ってようやく、違和感の正体に気付いた。

 

気。

 

これまで姉さんが扱う気は、ほぼ内側にあるものだった。

大体の人がそうであるように、あまり意識しないで使っている。

 

それが今は、若干だが外側に滲み出ている。

しかもどうやら、意識して使っているようなんだ。

だから聞いてみたんだが…。

 

「姉さん、その気功術は?」

 

「少し前にな、武力向上について考えていたんだ。そこでちょっと真似してみたらな、出来た」

 

「出来たって…」

 

俺が由莉はじめ、隊員たちに指導している時は姉さんも傍らに居ることが多かった。

だからやり方とかはある程度覚えていたのだろう。

 

「だがこうして打ち合ってみて分かった。やはりお前には全く及ばない。今後も精進あるのみだ」

 

「……驚いたな」

 

マジで。

いくらやり方を知っていたとしても、そう簡単に出来るものじゃないはずだ。

かなりの時間、研究に費やしたんだろうなぁ。

 

「ふむ。そう考えると、私も呂羽の弟子と言う事になるのかな?」

 

「え、そうなる……のか?」

 

「師匠とか呼んだ方がいいか?」

 

「止めてくれ」

 

笑いながら言ってくるが、マジで止めて欲しい。

流石に冗談だろうけど。

 

しかしそうか、姉さんが気を意識して使える人材に。

さらに若干ながら、外気功も…。

 

「じゃあ姉さん、どれだけ出来てるか試してみよう」

 

「ふっ、いいだろう。来い!」

 

冗談を飛ばす余裕もありながら、やはり戦いこそが至上。

そんな思いが透けて見える。

やっぱ、直接打ち合ってみないた方が分かることも多ししな。

 

 

「はああぁぁぁーーーっっ」

 

構えを取って気を高める姉さん。

立ち昇るそれが見える程で、これは中々。

 

ならば、まずは小手調べ。

 

「ふんっ」

 

力強く踏み込み、鳩尾目掛けて気で固めた拳を打ち込む。

 

鉄拳・風林火山。

 

一見ただの拳だが、何も対策をしないと吹き飛される程の勢いを持った打ち込みだ。

しかし…

 

「ふっ」

 

カキャッと軽い音を立てて耐えられる。

斧で防いだ訳でなく、肘でガードをしただけだ。

さらにノックバックもない。

 

これは、本物かっ

 

「どうだ!次はこちらから行くぞっ」

 

思わず笑みがこぼれる。

俄然、楽しくなってきたぜ!

 

 

 




・鉄拳 風林火山
KOF96でお目見えした、リョウの地上吹っ飛ばし攻撃。
ネーミングセンスはともかく、特に96では積極的に使っていました。
バグ的小技のお陰で強かった記憶があります。

78話誤字報告適用しました。

さて、そろそろ物語を動かしませんとね。
次は誰を脱がすのか、それが問題です。
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