魔法少女育成計画 -Genocide Side-   作:天都ダム∈(・ω・)∋

6 / 6
◇ エピローグ ◇

 一年前、商店街が吹き飛び、多数の死者が出た。当時から数えて四年前の災害の再来だ、と騒ぎ立てる者もいた。

 

 加えて猟奇的な死に方をした少女の死体が、一日で七つも八つも見つかったのら、それは大きな事件にもなる。マスコミが熱烈な報道は半年にも及び、C市は不吉にも不幸にも、災厄都市等というあだ名を冠されることになった。

 

 マスコットも管理役だった魔法少女も居らず、また魔法の国からやってきた連中は、保身の為に誰にも何も伝えていなかった為、誰も隠蔽などという小賢しい事をしてくれなかったのが一番の問題だろう。時間が経つにつれて、少しずつ過去になっていく。

 

「で、お墓参りは今日だっけ?」

 

 目玉焼きの乗ったトーストを、ザクザクとかじりながら、七琴は同居人に尋ねた。

 

「うん、七琴さんは?」

 

 キッチンで、自分の分の皿にも同じ物を乗せながら――――弦矢弓子が答えた。

 

 児童養護施設を出て、仮住まいを探していた彼女に、『部屋空いてるしおいでよ、家賃安くするよ』と誘ったのは、七琴だった。ついでに家事もやってもらうことにした。

 

「しんみりするの嫌いなんだよねー、ていうか、真里ちゃんお姉さんパパママ兄さんで回るとこ多すぎ、一箇所に固まってくれ」

 

「それはいくらなんでも……」

 

 横暴が過ぎる事を言いつつ、香ばしく焼けたパンを詰め込んでいく。そもそも施設では、独り立ちをしやすくするため、家事はひと通り仕込まれたというが、以前の七琴の散らかしたら散らかしたままで、週二でホームヘルパーを呼ぶような自堕落な生活と比べたら、格段の進歩である。

 

「ま、しんみりしたのは嫌いだし、気が向いたら行くよ。お仕事もあるしね」

 

 笹井七琴こと、ジェノサイダー冬子。弦矢弓子こと、ユミコエル。

 

 この街の魔法少女は、たった二人しか居ない。たった二人で、守っている。

 

「……あの、七琴さん」

 

「ん?」

 

「なんで……魔法少女を続けようと思ったんですか?」

 

 弓子は、何も出来なかった自分が悔しかったから。今度は誰かを助けたいと思ったから。そんな感傷が、今の彼女の動力源だ。

 それでも、弓子が知る七琴という少女は、合理的で、損得勘定が上手く、打算で動く。まるで、彼女の親友だった少女、阿多田香奈子のように。

 

「損得で言ったら、その……損、ですよね」

 

「ま、そうだよね、別になにか貰えるわけじゃないし」

 

「なら、なんで……」

 

 弓子の問に、七琴は笑って答えた。

 

「まだ終わってないから」

 

「……え?」

 

「ドラゴンハートを解放したのは、真里ちゃんだった。動機は、それが自分が心酔した魔法少女だったから。もう一度支配してもらうために、私を利用した、それはいいんだ。終わったことだし、わかってたことだから」

 

 しかし。

 

「じゃあプリンセス・ルージュは誰が解放したの? そもそも真里ちゃんはどうやって魔法の国からドラゴンハートの封印珠を持ち出せたの?」

 

 誰かが居て、何かをした。何かを企んで、悲劇が起きた。その責任は、まだ誰も取っていない。

 終わってなんて、居ない。なんてことはなかった。笹井七琴は、合理的で、損得勘定で、打算で動いていた。

 ただ、その原動力は、意志だ。

 必ず責任を取らせてやるという、果てしないまでの怒りと決意。

 

「まだ終わってないから――終わるまでは、魔法少女で居るよ」

 

 弓子の背筋に、冷たいものが走った。

 ジェノサイダー冬子は、笹井七琴は、一年前のあの日、何をどこから、どこまで考えていたのだろう、彼女の視界には何が見えていて、彼女の頭は何を想っていたのだろう。

 

 彼女は知らない。阿多田香奈子をして、絶対に対処できないと言わせた魔法少女、ドラゴンハート、その無敵の魔法の弱点を、七琴は、親友と引き換えに的確に突いて仕留めた事を。

 

「そんなに、怖がらなくていいよ」

 

 そんな内心を見透かしたように、七琴は笑った。

 

「少なくとも、先輩に――ゆめのんに対して恥ずかしいことは、絶対にしないから」

 

悲劇も、惨劇も、喜劇も、絶望も、絶叫も、慟哭も、嗚咽も。

 

全てを飲み下し、全てを終わらせ、失い、傷つき、手に入れたはずのものをまた失った魔法少女、ジェノサイダー冬子が、生まれ、育ち、完成した物語はここで幕を閉じる。

 

「まだ、終わってない」

 

 少女の物語だけが、続いていく。

 

 

 

 

 魔法少女育成計画 -Genocide Side-  終

 

 魔法少女育成計画 -Suicide Side- へ続く

 





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法少女育成計画 -Suicide Side-(作者:天都ダム∈(・ω・)∋)(原作:魔法少女育成計画)

▼【挿絵表示】▼「魔法を封印できる不思議な水晶を作れる」魔法をもつ魔法少女、ルール・シール。▼彼女は拘束されていた。▼彼女は束縛されていた。▼彼女は支配されていた。▼彼女の所有者は彼女ではなかった。▼――――そう思っていた。▼----------------------▼「魔法少女育成計画 -Genocide Side-」の直接の続編として、▼2016年夏コ…


総合評価:784/評価:8.56/完結:10話/更新日時:2016年11月17日(木) 22:04 小説情報

魔法少女育成計画NoName(作者:赤葉忍)(原作:魔法少女育成計画)

人事部門のミスによって魔法少女名の登録ができないまま、一年間の間無名の魔法少女として活動していた少女は、偶然出会った先輩魔法少女に、魔法少女は全員魔法少女名を持って活動をしていることを知る。▼その事実を知り、人事部門に魔法少女名の登録を申請しようとするが、なまじ活動期間がそこそこあるが故に面倒な手続きが必要であり、すぐには対応ができないと告げられてしまう。人…


総合評価:495/評価:8.8/完結:46話/更新日時:2024年07月24日(水) 23:35 小説情報

魔法少女育成計画DonutHole(作者:皇緋那)(原作:魔法少女育成計画)

『魔法少女育成計画』の惨劇の中、スイムスイムの命と引き換えに生き残ってしまった魔法少女・たま。初めての殺人と、助けられなかった相手の悪夢に苛まれながらも魔法少女を続ける選択をした彼女の前に、やがて災厄が降り注ぐ──。▼【無印以降の内容でたまが生きていたら……?という妄想です。無印クラムベリー戦を分岐点として、スノーホワイト育成計画以降の内容に触れていきます】…


総合評価:413/評価:8.53/完結:88話/更新日時:2024年05月05日(日) 22:35 小説情報

その白スクで魔法少女は無理でしょ、スイムスイム(作者:超天才清楚系病弱魔法少女)(原作:魔法少女育成計画)

スノーホワイト(魔法少女狩り)▼「どうしてあなたが生きているの? スイムスイム」▼スイムスイム(憑依)▼「…………(だれかたすけて)」▼


総合評価:11003/評価:9.04/連載:48話/更新日時:2026年05月02日(土) 21:15 小説情報

【一巻発売中】裏切りや絶望が溢れるゲーム世界で、鬱展開全てぶっ壊す(作者:棘棘生命)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

(旧題:裏切り・絶望がテーマの同人ゲー世界で、全てぶっ壊す)▼ニッチな需要のあるゲーム世界で、鬱展開を破壊する話▼鬱を破壊した分、様々な種類の闇は主人公に降りかかるものとする▼オーバーラップノベルス様から、8月20日に第一巻が発売しました!▼皆様のおかげです。ありがとうございます!▼書影が公開されました!▼【挿絵表示】▼書籍のページはこちらになります!▼ht…


総合評価:16603/評価:8.89/連載:132話/更新日時:2026年08月20日(木) 19:21 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>