マスクドライバーエグゼイド! アポロンの獏   作:ホシボシ

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※11/15追記
一文追加と次回予告にミスがあったんで修正しました


第3話 勇者の権

 

「おはよう穂乃果ちゃん」

 

「おはようエムくん……」

 

 

RPGゲームはその多くのものにサブイベントがある。分岐点がある。しかしメインストーリーは一本だ。それは何週しても同じ事。

エムと穂乃果の朝も、些細な違いはあれど同じようなものだった。家の前で顔を合わせ、主食を交換し、他愛ない会話で学校に向かう。

その中で見える穂乃果の調子、どこか遠くを見つめて元気がない。なるほど、これは悩んでいる日と同じパターンだ。穂乃果は分かりやすい、そして今の悩みはエムにもすぐ分かる。

ただ問題は、だからと言ってなんと声をかければいいのやら。

 

 

「穂乃果ちゃん。あんまり無理しないでね」

 

「うん! ありがとう!」

 

 

結局無難な事しかいえなかった。

小走りに玄関へ向かう穂乃果の背を見つめながら、エムは複雑そうに頭をかいた。

 

そして同じような表情を、海未は生徒会室で浮べている。

 

 

「園田くん?」

 

「あッ! すみません会長、今書類の整理を――」

 

 

慌てて紙束に手を伸ばすが、焦ったのか紙が机から落ちて無数に散らばってしまう。

 

 

「ごめんなさいっ!」

 

「気にする事はない。手伝うよ」

 

 

ヒイロと海未は散らばった紙を一つにまとめていく。

 

 

「何か悩み事でもあるのか? 俺でよければ相談に乗るが……」

 

「会長……、ではお言葉に甘えて」

 

「ああ」

 

「会長は、ミノタウロスと言う単語をご存知ですか? 牛の化け物とは関係ありません。ミューズに関しての単語です」

 

「……知っている」

 

「ッ、では――」

 

「あの話は本当だよ」

 

「!」

 

 

タイトル、『ミューターとミノタウロスについて』。

ミューズの掲示板に先日見たミノタウロスの件が書かれたのはつい最近の事だ。

しかもそれはただの『荒らし』としてスルーされている。

なぜならば音乃木坂に通う生徒は花壇から花が消えた理由は『花が病気になり、一度全てを抜かなければいけない』と聞いていたからだ。

 

園芸部部長がそう言っていたし、そもそもミューズの掲示板をわざわざ見に来るのは熱心なファン。当日は屋上にてライブを確認していたものばかりである。

もちろん花壇にいたファンもいるだろうが、花を踏んでいたからどうなのか、それくらいの感想しかもっていないのも事実だった。

 

花には詳しくない者達が多い中、花に関わっている時間が長い咲子が病気で~と言ったのだから、誰も特に気にすることはなかった。

そもそももっと言えばラブライバーの中にはそういった行為をとるものが少なくは無い。

過激化するラブライバーとは最近のネットニュースにもなっているほどである。

そんな中で花壇の花を『踏んだかもしれない』では、取り上げられる話題にはならない。

 

だが、真実だった。本当に花は踏まれていたのだ。

それを知れば、海未の心に激しい痛みが走る。

 

 

「そんな……!」

 

「黙っていたのは申し訳ない。しかし園芸部部長の強い頼みだ、俺も無視はできなかった」

 

「しかし、それは――」

 

「書き込みは一件だけでミノタウロスはスラングとしては定着してない。話も嘘として認識されている」

 

 

うつむく海未。できればただの悪戯であってほしかったが。

 

 

「なんてお詫びをしたらいいのか……」

 

「キミは悪くない。悪いのは全てマナーを守れない連中だろう」

 

「ですが……」

 

「あれはもう終わったことだ。今更蒸し返したところで、それこそ園芸部の怒りを煽ることにはならないだろうか?」

 

 

戸惑う海未。どうして良いか分からないと言ったところか。

 

 

「しかしいずれにせよ、謝らないといけない。それは絶対……」

 

「……真面目だなキミは」

 

「不器用な――、だけです」

 

「しかし本当に分からない」

 

「なにがですか?」

 

「園田くん。キミは聡明だ。真面目で礼儀もしっかりしている。なによりも美しい」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「欠点はなさそうだが」

 

「ありますよっ。その、人前に出るのがあまり得意ではなく……」

 

「そこだ」

 

「え?」

 

「そんな欠点を持つキミが、なぜアイドル活動を行う?」

 

 

はじめは学校の宣伝のため。それは十分に理解できる事だ。

 

 

「しかしもう今は廃校の危機は免れた。であれば、ミューズを続ける理由はないはずだ」

 

「それは――……」

 

 

少し、言葉に詰まる。

今まであたり前の様に活動を続けてきた。改めて問われると少し返答に困る。

 

 

「それは、誰かを傷つけてまでする事なのかい?」

 

「!」

 

 

海未の表情が歪んだ。

 

 

「すまない。少し厳しい言い方になったな」

 

「いえッ、園芸部のみなさんが傷ついたのは……、事実ですから」

 

「高坂君に誘われたからか? 三年生への同情? 分からないが、キミがもしも今回の件で活動に全力が出せないようになるなら……」

 

 

ヒイロはメガネを整え、海未を真っ直ぐにみた。

 

 

「活動を止めるのも、一つの手かもしれないよ」

 

「は、はい……」

 

「あまり気負わなくて良い。あくまでも一つの意見だ」

 

「はい、ありがとうございます。会長」

 

「そろそろ練習の時間だね。さあ、後は俺はやっておくから、みんなのところへ行くと良い」

 

 

海未は頭を下げると生徒会室を後にする。

すると入れ替わりでノック、ヒイロが返事をすると、エムが姿を見せた。

 

 

「酷いじゃないですか会長。あんな言い方。まるで辞めろって言ってるようなもんだ」

 

「盗み聞きとは感心しないな」

 

「すいませんね、なんか入りづらくて」

 

「まあ、いい。何か飲むかい? インスタントの紅茶とコーヒーは揃えてる」

 

「あ、じゃあコーヒーください」

 

 

紙パックにお湯をいれ、粉末状のコーヒーを入れて、もう出来上がりだ。

同じようにヒイロは紅茶を作る。ヒイロは椅子に座り、エムは壁にもたれかかってチビチビと液体を口に運ぶ。

 

 

「園芸部だったんですか?」

 

「俺がか? 違うが……、何故?」

 

「関わりが深いんでしょ? じゃなきゃ、昨日あんな風には言わない」

 

 

山岸の家の件だろう。

ミノタウロスの単語を口にした時のヒイロの複雑な表情は今も鮮明に思い出せる。

 

 

「なかなか観察力が良い」

 

「ゲーマーなんでね」

 

「確かに俺は――」

 

 

ヒイロは咲子先輩と知り合いだという事を話した。

そしてあの日、どんな事があってああなったのかを詳しく話す。

花壇のこと、モニタを設置したこと、その結果ああなった事、咲子はミューズ達のために別の理由を用意したこと。

 

 

「そんな事が……!」

 

「一生懸命に育てた花を踏まれたときの気持ちは、想像するだけで心苦しい」

 

 

そして唐突に、ヒイロは口にする。

 

 

「咲子先輩は顔が悪い」

 

「ブッ!!」

 

 

いきなり何を?

エムは思わずコーヒーを吹き出しそうになる。

 

 

「歯並びは悪いし、声が良い訳でもないし、そばかすは酷いし」

 

「あ、あの会長?」

 

「なにより純粋に顔が好みじゃない。絶対に付き合いたくないタイプだ」

 

「アンタ酷いな!!」

 

「事実だ。もちろん本人の前では絶対に言わないが」

 

 

エムだけに教える本音が、そこにはあった。

 

 

「だが、俺はミューズに存在する誰よりも咲子先輩の方が魅力的だと思ってる」

 

「!」

 

「ミューズのメンバーが悪くないのは分かっている。しかし、そう簡単に思えないのが人間の心理だろう?」

 

「それは――……」

 

「質の悪いファンは、園田君達の質を落とす。本当の魅力を殺すんだ」

 

 

ミューズは凄いと思う。しかし純粋に尊敬できるのは咲子だけだ。

 

 

「あんな連中が増えていくのかと思うと、虫唾が走る」

 

 

ミューズはそうじゃない。ヒイロはミューズを尊敬できない。

 

 

「そしてこれは園芸部だけに波及する話ではない。これより先、ミューズが有名になればもっと『学園』に被害がでるかもしれない」

 

 

だから消したい。ミューズの魅力を理解しているからこそ。

学園を大切に思っているからこそ、丁度いいところでやめておくべきじゃないのだろうか。

 

 

「美しいものは、美しいまま消えていけばいい……」

 

「――そうでしょうか?」

 

「?」

 

「たしかに、過激なファンが出てくるのは大変な事だと思います。けれどそれは、スクールアイドル全てに当てはまる事です」

 

 

ヒイロの言うことは分かる。

しかし穂乃果達の頑張りを知っている以上、エムとしても思うところはある。

 

 

「問題が起きそうだから消すんじゃなくて、問題が起きないように対策を考えるほうがいいと思います」

 

 

似ているようで違う。

蓋をするのではなく、直視し、解決策を考える。

 

 

「……それも一つの考え方だな」

 

 

いずれにせよ、これもまたテイパーゲームの延長線でしかない。

エムやヒイロが何を言おうが、ミューズの行き先を決めるのはミューズだ。もちろんそこに介入はできるのだが。

 

 

「とにかく俺達はミューズの事を考えず、テイパーゲームを行えばいい。そうすれば、おのずと答えは出るだろ」

 

「……会長、一つだけ聞いて良いですか?」

 

「なんだ?」

 

「テイパーゲーム、昨日おれは貴方にルールを教えられた」

 

 

ミューズを襲う前のヴィランを倒すことに意味はない。

なぜ? ゲームの趣旨に反しているからだ、と。

 

 

「あなたは本当に――、それだけの理由でヴィランを逃がしたんですか?」

 

「………」

 

 

わざわざミューズの掲示板に、限られた者しか知らない情報を書き込んだ者。

そしてミューズに届いた脅迫の手紙。『学校内』で徘徊していたヴィラン、アランブラ。

 

アランブラの声にはノイズが掛かっていた。

向こうでそういう設定ができるのか、いずれにせよ声を変えるという事は、普通に考えれば学校にいるもの。もしくはミューズに声を知られたくない者。

そう考えてしまうのは仕方ない事だ。

 

 

「………」

 

 

ヒイロは紅茶を飲み干すと、紙コップをゴミ箱に捨てた。

 

 

「間違いじゃない。テイパーゲームの目的はミューズがいなければ成立しない」

 

「それはそうですが」

 

「ただ――」

 

「ッ」

 

「彼女は女神を殴る資格があるのかもしれない。そう思っただけさ」

 

 

彼女――。ちなみに余談ではあるが、園芸部に男は居ない。

 

 

「………」

 

 

エムは気だるそうにうな垂れると、そのままコーヒーを飲み干した。

その昼休み。いつもの様にエムはヨッシー君と昼食をとっていた。

 

 

「ねえヨッシーくん」

 

「なに?」

 

「アライズのファンなんだよね?」

 

「まあね。ミューズも応援してるよ。この前ことりちゃんが働いてるメイド喫茶行って来たよ。ことりちゃんはいなかったけど楽しかった」

 

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけど」

 

「?」

 

「アライズってさ、ファンの事でちょっと問題が起きたりとかした?」

 

「あぁ、アライザー? まあ特に聞いたことはないけど」

 

「なんかしてんのかな? アライズは」

 

「まあ、こればっかりはねぇ」

 

 

ファンはアイドルを映す鏡、そんな言葉がある。

であるなら、アイドルを殺すのはもしかしたらファン自身なのかもしれない。だとすれば随分皮肉な話ではないか。

だがしかし、一つだけ勘違いしてはいけないのはソレは『全』ではないと言うことだ。

尤も、そこがなかなか難しいところなのだが。

 

 

「とにかく、ファンを変えたいなら、アイドル自身が変わるしかないのかもね」

 

 

 

 

 

「本ッッ当に、ごめんなさいッ!!」

 

 

そのアイドルたちは、九人揃って頭を下げていた。

放課後、ミューズたちはいつもの様に屋上へ向かうのではなく、真っ先に『ある教室』を目指した。それは園芸部の部室である。

穂乃果たちはもちろんの事。三年生は三人とも独自に掲示板へたどり着き、一年生は真姫が掲示板にたどり着いて事情を知った。

つまりミューズは全員ミノタウロスの件を把握していたのだ。そして瞬時に出した答えが、とにかくまず謝ると言うことだ。

 

 

「あははは。もういいのに」

 

 

園芸部・部長、咲子は満面の笑みで穂乃果たちに頭を上げるように言う。

 

 

「たしかに最初はショックだったけど、もう気にしてないよ」

 

「でも――ッ!」

 

「気にしないでよぉ。それよりもうすぐライブやるんでしょ? 応援してるからね」

 

「うぅぅ!」

 

「もぅ、だから気にしてないのに。ねえみんな?」

 

 

咲子が部員達に意見を求める。

返って来た言葉はやはり咲子と同じように、気にしないでくれと言う類のものだった。

園芸部も音乃木坂に通う生徒なのだ。ミューズのおかげで学校が廃校にならずに済んだし、穂乃果達が毎日屋上で練習している姿も見ている。

ショックではあったが、だからと言ってそれが穂乃果達の責任だと思うわけが無い。

 

 

「だからさ、本当に大丈夫だから。ほら、笑ってよ! じゃないと私が隠した意味ないでしょ?」

 

 

結局言いくるめられる形でミューズは帰された。

とは言え、そのまま屋上に行く気にはならず、穂乃果たちは部室で顔を見合わせることに。

 

 

「アイドルやる以上、いつかこの問題に直面するとは思ってたけど、案外速かったわね」

 

 

部長であるにこは腕を組んで鼻を鳴らした。

ファンの行動をアイドルが決める事はできない。ファンのあるべき姿とはなにか。

それは全てのアイドル――、いや、ファンを持つ全ての者が直面する壁だろう。

どうしようもない事、仕方ない事、アイドル本人は悪くない。そう言うのは簡単だ。

しかしだからと言って眼を逸らすことは何より、ファンから逃げる事にはならないだろうか?

 

 

「穂乃果、あんたはどう思う?」

 

 

にこはリーダーである穂乃果を見た。他のメンバーの視線も一勢に集中する。

その中で穂乃果は少しうつむいている。何かを考えているようだ。

そして、真剣な表情を浮べて顔を上げた。

 

 

「やっぱり、なんど考えても同じだよ」

 

「?」

 

「誰かを楽しませるために、誰かを悲しませるなんて、そんなの絶対イヤだな」

 

 

そうでしょ皆? 穂乃果は皆を見る。

すると見られた者は次々と笑みを浮かべ、強く頷いた。

 

 

「そうだよね、アイドルはみんなを笑顔にする存在だもんね!」

 

 

笑顔を浮かべて立ち上がる凛。

にこも何度か頷いて拳を握り締める。

 

 

「よく言ったわ穂乃果! ファンもアイドルの一部。ファンの失態はアイドルの失態! あんた達、気合入れていくわよ!」

 

「でも、どうするん?」

 

「決まってるじゃない希。ライブよライブ!」

 

「え?」

 

「ライブで失ったプライドは、ライブで取り返すわよ!」

 

 

幸いとつい最近、新曲が完成したところだ。

これを披露する際に、アクションを起こしたいとの事だった。

 

 

「でもどこでするわけ?」

 

 

毛先を弄りながら真姫が言う。

 

 

「ステージでいいじゃない」

 

「ステージは演劇部が練習でしばらく使うとの事です」

 

 

花陽が即答。

 

 

「え、そうだっけ? じゃあ校庭とか――」

 

「使えるわけ無いでしょ。陸上部とかサッカー部の邪魔よ」

 

 

絵里が即答。

 

 

「……駐車場」

 

「吹奏楽部が近くの音楽教室さんと合同練習するらしくて、駐車場いっぱいなんだってぇ」

 

 

ことりが即答。

 

 

「屋上でいいじゃない」

 

「手すりが脆くなってないか点検するから、しばらく使えないって言ってたでしょー?」

 

 

凛がジットリした目をして答える。

 

 

「……真姫の家」

 

「ダメに決まってるでしょ! ンなに言ってるのよ!」

 

「じゃあどうすればいいのよーッ!」

 

 

にこは頭をかきむしり叫びを。すると海未が手を上げた。

 

 

「と、とりあえず、新曲を発表するなら今は練習に専念しませんか? ライブ会場は個々でも考えられますし」

 

「そ、それもそうね。よしッ、そうと決まれば早速練習よ!」

 

 

立ち上がるにこ。彼女の声は大きく、部室の外までよく聞こえる。

だから『部室の前で話を聞いていた者』は、さっさとその場から立ち去った。

 

 

 

 

「前から思ってたんですけど、このお茶おいしいですね」

 

「うん。パパとママのお気に入りだったんだ」

 

 

パパとママ、随分と欧米式な呼び方ではないか。まあいいか。人の家はそれぞれだ。

 

 

「山岸さんは知ってたんですね。花壇のこと」

 

「うぅッ!」

 

 

放課後、エムは山岸の家でお茶を飲んでいた。

山岸は熱心なミューター、当然掲示板も逐一チェックしており、ミノタウロスの件も知っていたようだ。当然その時のこともまた。

 

 

「用務員は花を取り除く手伝いをしたからね」

 

「なるほど……」

 

 

山岸もやはりあの件には胸を痛めているようだ。

とは言え、咲子と同じような理由でミューズには知らせなかったが。

 

 

「ファンの悪いところだよ。興奮すると周りが見えなくなるんだ」

 

 

エムも少しネットで調べた。

やはりこの問題は『あるある』のようだ。

立ち入り禁止の場所に入る。いきすぎた出待ち。ゴミ問題なども有名か。

 

 

「うん。だからね、僕もライブが終わったらなるべくゴミは掃除するようにしてるんだ」

 

「そんな事してたんですか! 凄い!」

 

「僕だけじゃないよ。友達とか他のファンもする人はするよ」

 

 

そういえばミューズのライブが終わってゴミが~なんて話は聞いたことが無かった。

それはきっと山岸達が努力してくれたからだろう。

 

 

「僕たちの行動はアイドルに影響しちゃうからね。だから少しでも恥ずかしくないような行動をしないといけないんだけど、なかなかね……」

 

 

悪意があるのか無いのかは知らないが、迷惑をかける行動をとり続けてしまうファンも多い。

そして報道されるのは、人の心に残るのは悪い印象ばかりだ。そして結果的にアイドル本人もファンも全部を含めて印象が下がってしまう。

 

なんだかエムは怯んでしまった。

煌びやかで分かりやすいエンターテイメントだとばかり思っていたが、その裏では小さな悪意がいつも蠢いているものなのか。

 

 

『ツ・クール』

 

「!」

 

 

なんだか強烈な違和感を感じ、エムは思わず外に飛び出した。

すると茶色いベールが学校に掛かっているのが見える。間違いない、あれはゲームエリアだ。

振動する携帯、ディスプレイを見るとつい先日連絡先を交換したヒイロの名が。

 

 

「会長!」

 

『エム君。気づいたか?』

 

「ええ。学校にゲームエリアが発生しましたね!」

 

『ヴィランだ。今どこにいる? コチラに来れるか?』

 

「ああ、はい。今行き――」

 

 

その時だった。茶色いベールが消滅したのは。

 

 

「ッ!? ゲームエリアが消えた?」

 

『……コチラも確認した。何がしたかったんだ?』

 

「たしか、ガシャット単体で使用するとヴィランになるんですよね」

 

『ああ。俺はそう聞いている。起動させたと言うことはヴィランに変身したんだろう。しかし何らかの理由ですぐに変身を解除したことになる』

 

「問題があったんですかね?」

 

『もしくは既に目的を達成したかだろう』

 

「と言うと?」

 

『今回のヴィランは魔法を使用するタイプだった。魔法で何かトラップを作ったか、小道具を作ったか――?』

 

 

 

いずれにせよミューズに直接接触する事は無かった。

だとすればエムたちにできる事はなくなる。

 

 

「面倒ですね。おれが戦ったのは分かりやすかったんですけど」

 

『中身は人間だ。いろいろな考えを持つのは仕方ない。ただ――』

 

「ただ?」

 

『もしかすると、本当に嫌がらせをしたいだけのヤツなのかもな』

 

「!」

 

『だとすれば、ナンセンス極まりない。ヴィランの役割を放棄した行動は罰せられるべきだ』

 

「……中身が、誰であったとしてもですか」

 

『――ああ。そうだ。だがいずれにせよ今の俺達では姿を見せないヴィランを止める術はない。いずれにせよヤツもその内、必ずミューズの前に現れるだろう。そこを叩く。いいね?』

 

「はい」

 

 

エムは電話を切る。そしてまた山岸の家に戻った。

 

 

「あぁ、エムくん。どうしたんだい急に出てって」

 

「いやちょっと電話が。そろそろ帰りますね」

 

 

カバンを持ってエムは今一度周囲を見てみる。

見えるのはミューズ、ミューズ、ミューズ。一見すれば引いてしまう光景かもしれないが、やはり人の印象は行動と関わりなのか。

 

 

「ファンがみんな、山岸さんみたいな人だったら良いんですけどね」

 

「僕は全然だよ。ただ、ミューズの印象を悪くしたくないから。それだけさ」

 

 

それに、と、山岸は表情を曇らせる。

 

 

「僕は容姿が悪いから……。ハゲだし、デブだし、それだけでミューズの印象を下げちゃう。だからせめて行動だけはちゃんとしないとダメなんだ」

 

「……カッコいいですよ」

 

「え?」

 

「あなたは、カッコいいですよ」

 

 

エムはそれだけを言い残し、山岸の家をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま帰りました」

 

 

練習が終わり、海未は自宅に帰ってきた。

玄関で靴をそろえていると、親から報告が。単刀直入に言うとプレゼントが届いたらしい。

綺麗に包装され、リボンがついた箱には一通の手紙が付与されていた。自室にプレゼントを持っていく海未、そこで彼女は手紙を確認する。

 

 

『いつもミューズ応援しています』

 

『病気の娘がいるんですが、園田さんのファンなんです』

 

『娘がどうしてもプレゼントを渡したいと言い、送らせていただきました』

 

『ご迷惑かもしれませんが、よろしければ使ってください』

 

「まあ、それは……」

 

 

海未は、なにも疑う事なくその箱を開けた。

すると箱から何かが飛び出して来た。その勢いと衝撃に、海未は一瞬心臓が止まったかと錯覚する。

箱に入っていたのはプレゼントではなかった。ビックリ箱である。歪な人形が飛び出し、その顔にはアイドルショップで売られている海未の写真が貼り付けてあった。

問題はその写真の海未が赤いペンでグチャグチャにされていると言うことだ。目の部分も潰され、血まみれに見える。

 

 

「――ッ」

 

 

そしてもう一通手紙が入っていた。

 

 

『嘘だよバーカ。ミューズは解散しろ解散しろ解散しろ解散しろ』

 

「……!!」

 

 

海未は恐怖を瞳に映したまま、しばらくへたり込んで動かなかった。

いや、動けなかった。

 

 

一時間後、海未は穂乃果の部屋にいた。

海未は全てをまず穂乃果とことりに打ち明けた。

それは他のミューズメンバーを信頼していないわけではなく、まずは一番付き合いが長い二人に話を聞いて欲しかったのだろう。

そして奇しくも丁度居合わせたエム。本当は売れ残ったケーキを穂乃果にあげるつもりだったが、海未はエムにも聞いて欲しいと。

 

 

「ひどい事するな」

 

 

エムは海未が持ってきた箱を確認する。

ご丁寧に手作りのビックリ箱だ。よくもまあこんな凝ったモノを――。

 

 

「……!!」

 

 

そこでエムは気づいた。ビックリ箱の中にあった人形。それは以前戦ったアランブラを模したものだった。

そういう事か。エムは察する。おそらく一瞬ゲームエリアが広がったのは、この箱を作るためだ。そして海未を狙ったという事か。

 

 

(姑息な手を使いやがって……)

 

 

たしかに襲うというのがヴィランの役割かもしれないが、こんな回りくどいやり方、エムとしては腹が立つことだった。

しかし気になるのは何故海未を狙ったのかだ。箱は一つ、穂乃果や他のミューズメンバーに届いている様子はない。

 

と言うことはアランブラはわざわざピンポイントに海未を狙った事になる。

なぜだ? その理由がエムにはまだ分からない。

しかしアランブラが動いたのは事実、エムは携帯でヒイロにメールを入れておいた。

 

 

「大丈夫? 海未ちゃん?」

 

 

ことりは海未を落ち着けるため、背をさすっていた。

一方で海未はうつむいたまま、ゆっくりと話し始める。

 

 

「私は今までアイドルを見る人は、ファンになるか、興味が無いままの人、二つの種類に分かれるとばかり思っていました」

 

 

スクールアイドルを結成した当時のことは今でも覚えている。

ステージを見たとき、ハッキリ言ってショックだった。お客は少ないと思っていたが、幕が上がったとき、本当に誰もいなかった。

それはみな興味が無かったからだ。その後の穂乃果の言葉、いつかステージを埋める。そこに海未も共感を抱いた。しかし今、思う。

自分は甘かったと。

 

 

「私達はただ歌って、踊って、それを楽しんでもらえるように頑張ってきました。けれど――」

 

 

その行為が誰かを傷つける。その行為が悪意を生ませる。

なぜ、なぜだ。そんな事、望んでないのに……。海未は望んでないのに、回りの人間はそうじゃないかもしれない。わからない、わからない……。

 

 

「私は――、ファンが分かりません」

 

「海未ちゃん……」

 

 

ミューズの活動がイヤになったわけじゃない。

訳じゃないが――、誰のために頑張ることなのか、それが分からなくなった。

人を傷つけるためにアイドルになったわけじゃない。人の恨みをかう為にアイドルになったわけじゃない。

 

 

「海未ちゃん……」

 

 

穂乃果はお茶を淹れてくると言い、部屋を出て行った。

 

 

「………」

 

 

エムもまた、それを見て部屋を出る。

 

 

「大丈夫?」

 

「うん、ちょっと、ね」

 

 

エムはお茶を淹れている穂乃果へ声をかける。

そこにはもちろん純粋に穂乃果を心配する意味がある。しかしその中に卑怯な考えがあったのは事実だ。と言うのも――。

 

 

「わたし、海未ちゃんに何て言ってあげればいいんだろう」

 

 

それはエムも同じだった。当たり前の話だがエムはスクールアイドルの気持ちなんてこれっぽっちも分からない。

ファンがいるわけでもないし、ファンと言うわけでもない。ミューズは好きだが、それはどちらかと言うと幼馴染の穂乃果達が入っているグループだからと言う印象が強く、まったく赤の他人をそこまで好きになる気持ちも、尊敬する気持ちも分からないからだ。

 

だからこそ、きっと自分が何を言っても海未には軽く聞こえてしまうだろう。

現に『貴方に何が分かるの?』だとか、『何も知らないくせに黙っていてよ』などといわれてしまえば本当に返す言葉が無い。

だから穂乃果に期待した。彼女は何を言うんだろう? そんな興味と期待。しかし穂乃果もまた、それが分かりかねているようだった。

 

 

「………」

 

 

だが、穂乃果の悩み。海未になんて声を掛ければいいのか? エムはその答えはすぐに思いつく事ができた。

なぜならばこれは苦悩するスクールアイドルに向ける言葉ではなく、幼馴染に向ける言葉だからだ。

 

 

「昔――」

 

 

まだ海未と知り合う前だ。と言うより海未と知り合ったときだ。

幼い海未は木の陰に隠れて遊んでいる自分達を見ていた。

あの時のエムにはただ女の子がコチラをずっと見ているだけにしか思わなかったが、穂乃果はしっかりと理解していたようだ。海未が混ぜて欲しい事を。

 

 

『次、あなた鬼だよ! 一緒に遊ぼ!』

 

 

子供ながらの力もあったのだろうが、穂乃果は強引に海未を引きずり出すと友達になった。そしてその関係は今も続いている。ずっと。

今でも思う。あれは穂乃果にしかできなかった事だ。あの日、あそこにはエムがいた、ことりがいた、ヨッシーくんもいた。

しかし誰も海未を誘うことはできなかっただろう。あれができたのは、穂乃果だけだ。

 

 

「なんていうのかな。ああ言うのでいいんじゃないかな?」

 

「ああ、いう、の」

 

 

ポカンとした様子の穂乃果。良く分かっていないようだ。

全然響いていないのか、エムは引きつった表情で笑みを。

 

 

「なん――ッ、て言うのかな? ほら、どうして穂乃果ちゃんはあの時、海未ちゃんを誘ったの?」

 

「それはだって――」

 

 

穂乃果は少し戸惑っていたようだが、強く目を輝かせて笑みを浮かべた。

 

 

「そっか、そうだよねエムくん! ありがとう、ちょっと行ってくるね!」

 

「あ、ちょっとお茶は!?」

 

 

穂乃果は鼻を鳴らして勢い良く飛び出していった。

そして自室の扉をぶち抜くように開くと、海未の前に迫る。

 

 

「わ、わ、わ、どうしたんですか穂乃果」

 

 

ことりに背中を摩られていたところへ、いきなり穂乃果の顔が迫るのだ。

混乱するのも無理もない。ことりも驚いていると、穂乃果は構わず口を開いた。

 

 

「大丈夫だよ海未ちゃん!」

 

「え?」

 

「大丈夫。とにかく大丈夫だからね!」

 

 

穂乃果は拳を握り締めて、笑みを海未に向ける。

 

 

「な、なにがですか?」

 

「えぇっと、何がって言われるとちょっとアレなんだけど……」

 

「よ、良く分かりません。もう、分かるように説明してください」

 

「だからとにかく大丈夫なんだよ!」

 

 

自分達のせいで傷つく人が出てきても大丈夫。

自分達の活動が気に入らないという人間が出てきても大丈夫。

変なものが送られてきても全部大丈夫なのだ。いや、大丈夫じゃないけれど大丈夫なのだ。穂乃果は強くそう言った。

 

 

「なんですかそれは……!」

 

「ぜ、ぜんぜん大丈夫じゃないと思うんだけど……」

 

 

さすがに励まし方が強引過ぎる。海未もことりも呆れ顔で穂乃果を見ている。

しかし穂乃果は笑い、大丈夫と口にする。

 

 

「だってわたし達がいるもん! ミューズの9人がいればどんな事だって乗り越えられるよ!」

 

 

傷つく人がいればどうやって癒すか考えられる。

恨みを買うなら消す方法を考える。

誰かが狙われればみんなで守る。それができるのがミューズだ。

 

 

「ううん、それに周りにはもっといろんな人がいる。もっと助けてくれる人がいる!」

 

 

丁度その時、穂乃果の部屋にエムが入ってくる。本来であるなら穂乃果が淹れるはずのお茶を持って。

 

 

「あの、穂乃果ちゃんのお母さんに会ったんだけど、お饅頭どうぞって」

 

「ほら! もう二人も助けてくれた!」

 

「え? な、なにが?」

 

 

意味が分かっていないエム。

一方で穂乃果はとびきりの笑顔を海未に向ける。

 

 

「だからね、大丈夫だよ海未ちゃん!」

 

 

ポカンとしている海未とことりだが、顔を見合わせると、プッと吹き出した。

 

 

「もう、穂乃果ちゃん。さすがに乱暴だよぉ」

 

「え? そ、そうかな」

 

「そうですよ。ほとんど大丈夫しか言ってないじゃないですか」

 

 

普通相手を励ます時は何か解決策だの、具体的な提案だのをするものだ。

なのに穂乃果は大丈夫の一点張りで。

 

 

「でも、楽になりました」

 

「!」

 

「ありがとうございます」

 

「うん!」

 

 

人間、たまにはただ話を聞くだけにしてほしいときがある。

なにも言わずに大丈夫と言って欲しい時がある。海未は笑顔だった。

エムはつくづく思う。自分だったら海未をこんな表情にはできなかっただろう。

 

 

(なにも考えてないようで、考えてるのかな……)

 

 

するとエムの携帯が震える。ヒイロかと思ってみてみれば、山岸の名があった。

こちらも何かあればと連絡先を交換しておいた。

その内容は、アイドルショップのキャンペーンでミューズグッズが当たったのだが、誰のがもらえるかはランダムらしく、山岸が引き当てたのが穂乃果であった。

 

以前エムが推しメンが穂乃果だと言っていたのを覚えていた山岸。

どうやら当たったグッズをエムにあげようとしているらしい。そしてたまたまエムの家の近くにいるから、今から会えないか、そんな内容だった。

 

 

『いいですよ』

 

 

と、打ったのだが、丁度そこで海未とことりが家に帰るようだ。

 

 

「わたし送っていくね」

 

「あ、じゃあおれも――」

 

 

いけない、山岸と会う約束をしてしまった。

しかもそこでヒイロから電話が掛かってくる。盛りだくさんだ、結局とエムは穂乃果達を見送る事に。

そして電話を取る。

 

 

「あ、もしもし、どうしたんです会長」

 

『園田くん達はまだそこにいるか?』

 

「あ、今丁度帰っていく感じです。送っていこうと思ったんですけど――」

 

『いや、いい。キミはそこにいろ』

 

「?」

 

『そのほうが都合がいい』

 

「どういう意味です」

 

『送るという事はつまりミューズ達の傍にいなければならないと言うことだ。まあいい、とにかくもうすぐ俺もそこにいくから、ちょっと待ってろ』

 

 

そこで電話は切れた。

勝手な人だ。そうは思いつつも切られてしまった以上、動くに動けない。

エムが困っていると、まず先に山岸ではなくヒイロが到着した。

 

 

「エムくん」

 

「あ、会長」

 

 

穂むら(穂乃果の家)と、エムの洋菓子屋の前にある道路にて合流する二人。

エムはまず海未に届けられたと言うビックリ箱をヒイロに見せた。アランブラの人形がついたソレ、するとヒイロはそのアランブラの人形を引きちぎる。

 

 

「………」

 

「ど、どうしたんですか会長」

 

「カメラが仕込まれてる」

 

「えッ!?」

 

 

人形を落とし強く踏みつけるヒイロ。

すると機械が壊れる音がして、人形も中身が引きずり出される。

 

 

「カメラに――、これは盗聴器だな」

 

「え? え!? まじっすか!」

 

「ああ。ヴィラン側のものである以上、カメラを仕組んだのもヴィランと考えるのが筋だろう」

 

「じゃ、じゃあさっき帰るって話も全部聞かれて――」

 

 

その時、強烈な違和感。

全身がビリビリと震える。この感覚。間違いない。一瞬茶色のベールが自分達を通過するもの確認した。

 

 

「これは!」

 

「ゲームエリアが発生したようだな……!」

 

 

エムは理解する。

もしもアランブラが海未を狙ったのでありカメラを仕込んでいたのなら、とうぜん海未の心がが折れなかったのを確認したはずだ。

であるのならば、作戦をシフトする可能性。

そうか、そうだ、アランブラは面倒な事をやめて『分かりやすい』手に出たのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「きゃああああああ!」

 

 

ことりは叫び声をあげて頭を抑えた。

一方で絶句している海未と、驚愕の表情を浮べている穂乃果。

そして目の前には杖を構えるヴィラン、アランブラが。

 

 

「ミューズ! お前達の存在は邪魔だ! 今ココで消させてもらうぞ!!」

 

「なん――ッ!?」

 

「なに? なに! なに!?」

 

 

怯える海未とことり。

一方で二人の手を引いて、穂乃果は思い切り地面を蹴った。

 

 

「走って! 二人とも!!」

 

「えっ! 穂乃果!?」「ど、どうしたの穂乃果ちゃん!」

 

「夢じゃなかった!」

 

「え?」「えッ?」

 

「夢じゃなかったのッッ!!」

 

 

全速力で走る穂乃果たち。一方のアランブラは杖から火球を発射して穂乃果を狙った。

 

 

「きゃああ!!」

 

 

穂乃果、ことり、海未の悲鳴が重なる。

火球は穂乃果たちのすぐ後ろに着弾し爆発。穂乃果たちは火球に当たらないように尚スピードを上げた。

しかし穂乃果たちは知らない。アランブラは火球を外したが、それはわざとだ。

 

 

【ごきげんよう、今からあなたはヴィラン、アランブラ】

 

 

アランブラの脳に響く声。

そう、アリアドネはマスクドライバーだけの機能ではなかった。

 

 

【ありとあらゆる手で、まずはミューズを怯えさせてください】

 

「それはいいけれど、当てちゃダメなのよね……?」

 

【別に少しくらいであれば構いませんわ。ここはもうゲームエリア。穂乃果達の体には傷一つつきません】

 

 

考えるのは攻撃を与えることではなく痛みだ。

 

 

【この状況ならば痛みはよりリアルに、より倍増して感じることになります。くれぐれもそのあたりの手加減を気をつけるように】

 

「もしも手加減を間違えれば?」

 

【なんども申し上げましたが、このゲームの目的はミューズ人気の獲得ですわ。もしもミューズのアイドル活動に支障が出るほどの傷を残せば、当然それだけペナルティが発生します。報酬金の減額、場合によってはコチラが請求させていただく事になります】

 

「……!」

 

【アランブラ様。お金が、必要なのですよね? でしたらリスクは避けるべきだと私は思いますが】

 

「それも……、そうね」

 

【あぁ、でも――】

 

「?」

 

【ミューズ以外でしたら、どれだけ攻撃してもらっても構いませんわ。痛みの手加減も全てお任せします】

 

「……ミューズはダメなのね」

 

【もちろん】

 

「………」

 

 

逃げる穂乃果たちをジッと見るアランブラ。

グッと、杖を握る力が強くなる。

ギリギリと音を立て、アランブラは脳が熱を放つのを感じた。

 

 

「やっぱり、憎いわ」

 

【はい?】

 

「理性を超える感情を知っているか?」

 

【……はて】

 

「憎悪だよ」

 

 

アリアドネが終了する。

我李奈はロケバスの中でインカムをつけて座っていた。そしてメガネを整え、舌打ちを一発。

 

 

「ゴミが」

 

 

そしてタブレットを操作すると、今度はエムとヒイロにコンタクトを取る。

 

 

【ごきげんようエム様。ヒイロ様。ヴィランが出現しましたわ】

 

「ッ、我李奈さん!」

 

「ああ、確認した。現在コチラから目視できる」

 

 

エムとヒイロは建物の影に隠れながらアランブラと穂乃果達の背を確認している。

既にドライバーは装着している状態、エムはガシャットを取り出すと、起動出せようとアランブラを睨む。

 

 

「待て、エムくん!」

 

「ッ、会長!?」

 

「言っただろ、キミは速いんだよ!」

 

 

つまり、まだ、『待て』の状態。

アランブラがミューズを襲い始めてまだ序盤も序盤。これではより鮮明な恐怖を撮影できないではないか。

 

 

「苦痛と恐怖は嗜虐欲、庇護欲、そして同情をかう事ができる」

 

「――ッ」

 

「それは確実にミューズの人気を上げるエサになる。スパイスになるんだよ!」

 

 

エムは影に隠れながらアランブラを見る。

炎が飛んでいった。悲鳴が聞こえた。日々の訓練で運動神経が上がっているのか、穂乃果たちはなんとか回避に成功しているように見える。

そう、回避だ。エムはゲーマーであり、エムが行うゲームはレーザーだのミサイルだのが飛び交うゲームである。

そのなかでエムは自分に当たるだろう攻撃を見極める力を養っている。その目が告げるのだ、アランブラは確実に攻撃をミューズのメンバーに当てようとしている。

 

 

「――ッ」

 

 

見ているだけ。

それがエムの心を見えないナイフでズタズタにしていく。

思わず、ガシャットを構えた。

 

 

「おい!」

 

 

しかしその腕を掴む者。

ヒイロだ。彼は冷静だった。表情を変えることなくメガネを整え、タイミングを待つ。

ヒイロが動かないのは、もう一つ、大きな理由があった。

 

 

「レベルワンで戦う事に意味はない。ナンセンスな事は止めろ!」

 

「それはどういう――」

 

「レベルアップの条件だ。知らないなら教えてやる!」

 

 

レベルワンは体が大きく戦いにくい。

それに戦う姿も間抜けだ。可愛らしいと言えば聞こえはいいが、ヒイロにとっては滑稽としか思えなかった。

だからこそレベルツーによりスマートに仕留めるのが最適だ。そのプランを整えているヒイロにとって、余計な事をされるのは腹立たしい事この上ない。

 

 

「いいか、良く聞け、レベルアップの条件は範囲内にいるミューズメンバーのストレス値の上昇だ」

 

「なんだって……!」

 

「我李奈!」

 

【はい。私から説明させて頂きます――】

 

 

各ドライバーには特殊なセンサーが内蔵されており、範囲内にいるミューズのメンバーを捉えます。

呼吸、心拍、発汗、眼球運動、震え、体温、脳波、さまざまな要素を独自に分析し、ストレス値を割り出します。

ストレス値は身体的な苦痛を感じることでも上昇していき、当然恐怖や苦痛を感じればその大きさに比例して上昇していきます。

そして、平均ストレス値が一定の値に達成するとアクチュエーションレバーのロックが解除され、レベルツーへの移行が許可されるのです。

 

 

「つまり、戦いを終わらせたかったら園田君達にさっさと絶望してもらうのが一番だ。でなければ苦痛を引き伸ばす事になる」

 

「――ッ!」

 

 

エムは唇を噛んで穂乃果達を見る。

いつも笑顔だったことりは涙を流しながら唇を震わせている。

海未も恐怖に青ざめ、腰が抜けているのか、必死に逃げている。

そして穂乃果も歯を食いしばり必死に恐怖に耐えているものの、目の端には涙が溜まってきている。

その姿は煌びやかなアイドルとは程遠い、哀れで惨めな姿であった。

 

 

『マイティアクションエーックス!!』

 

 

電子音と共にエムの背後に広がるタイトル画面。

さらに一勢にレンガブロックが飛んでいき、その中の数個がアランブラに直撃した。

 

 

「がはぁ!」

 

 

倒れるアランブラ。

一方でヒイロは怒りの表情でエムの胸ぐらを掴んだ。

 

 

「お前ェ……! 言っただろ、ヒーローごっこじゃないんだよコレは!」

 

「悪い、ヒイロ……!」

 

「それともなんだ? 好感度稼ぎか? 愛しい高坂くんを救うヒーローにでもなりたいのかな!?」

 

 

エムはヒイロの手を振り払うと、ポーズを取ってガシャットをエグゼドライバーにセットする。

 

 

「変身!」『ガシャット!』

 

 

回転するキャラクターアイコン。

 

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?』

 

 

エムは左手でエグゼイドのアイコンを左に弾いた。

 

 

「あんた、エグゼイドの名前の由来、知ってるか!?」『アイム ア エグゼイド!』

 

「なに……?」

 

「エクストリームとエイドで、究極の救いって意味らしいぜ」『ガシャコンブレイカー!』

 

 

エグゼイドは雄たけびをあげて走っていく。

間抜けな足音を響かせながら、丁度立ち上がったアランブラに武器を振るった。

 

 

「お前はエグゼ――ッ、ぐは!」【HIT!】

 

「勝負だ、ヴィラン!!」

 

 

杖を振るいハンマーと打ちつけるアランブラ。

一方の穂乃果たちはエグゼイドを見て唖然とし、しかえれども穂乃果に関しては笑みを浮かべた。

 

 

「エグゼイドくん!」

 

「ッ、穂乃果ちゃん、知ってるの!?」

 

「うん! 王子様!!」

 

「ッ、彼が……!」

 

 

戸惑い、混乱、しかし笑みと余裕。

穂乃果達を取り巻くものが絶望から希望へ転移していくのが分かった。

しかし、それを見て舌打ちを零すヒイロ。

 

 

【気づきましたね。ヒイロ様。そしてエム様】

 

 

脳に響く我李奈の声。

そう、レベルワンにもまた一つの意味がある。それは緊張の緩和、不安の払拭、絶望への中和剤。

 

 

【つまり言い方を変えれば、レベルツーへの移行条件とは真逆の効果を与えるのです】

 

「やはり……! おい、聞こえたかエム!」

 

 

アリアドネはドライバー所有者同士の会話にも使えるらしい。

エグゼイドの脳内にヒイロの声が響く。だからこそエグゼイドもまた脳内での会話を。

 

 

(ああ、聞こえてたさ)

 

「だったら今すぐ撤退しろ。時間の無駄だ!」

 

(……そうかな。そうなのかな?)

 

「はぁ!?」

 

(会長、あんた医者になりたいんだろ?)

 

 

ミノタウロスの件を話す際、それとなく口にした。それをエムは覚えていたのだろう。

エイドとは助手や救援を表す言葉である。それは主に医療の現場で使用される用語でもある。救援、救助、それはどういう意味をさすものなのか。

医者もそうだ。救いは、怪我を治せばいいのか? 問題を排除すれば過程はどうでもいいのか?

 

 

「違うだろ? 違うよな」

 

「……ッ」

 

「救助。怪我は体を治せばいいだけじゃない。心なんじゃないのか!」

 

 

ハンマーを振るうエグゼイド。しかしボッテリとした腕で振るわれるハンマーは軌道が単調になってしまう。

すぐに見切られ、エグゼイドの体に次々にアランブラの魔法が直撃していった。

 

 

「うっ、ぅううぅぅ!」

 

 

エグゼイドは耐える。踏みとどまり、言葉の続きを脳に浮べる。

 

 

(どれだけ不安を取り除けるのか。それが救いだろ)

 

 

守るだけじゃダメだ。救わなければならない。

向こうも、なにより自分も。

 

 

(はじめは穂乃果ちゃん達の活動を理解できなかった。でもアイドルの活動が他者に希望を、ある時は絶望を与える事が分かった!)

 

 

だが、前者、つまり希望を与えられる事は確かなんだ。

山岸の楽しそうな表情が眼に浮かぶ。すごい、他人をあそこまで楽しませるなんてエムには絶対に無理だ。それが分かる。

 

 

(希望だけを与えて欲しい。そのためには笑顔じゃないといけない……!)

 

 

ハンマーと杖がそれぞれの肩に命中する。

両者は手足をバタつかせ、地面に倒れた。

 

 

(おれは馬鹿だからさ。空気とか読めない――ッ! だから、動くしかないんだ!)

 

 

エグゼイドは立ち上がり、アランブラに向かっていく。

一方でヒイロは再び舌打ちを。そして両手を広げ、諭すように、けれど怒りを込めて声を震わせる。

 

 

「アホかお前は……! だからこれはビジネスだ! お前の勝手な大義名分を聞くための時間じゃない!」

 

「確かに、おれは勝手なことをしてる……!」

 

「分かってるならさっさと――」

 

「でも本当に、これはビジネスで終わる話なのか?」

 

「あ?」

 

「深くついた傷跡は、一生消えないんだ……!」

 

 

エグゼイドの全身をアランブラの雷が襲う。

激しい火花に揉まれ、エグゼイドの悲鳴が上がる。

 

 

「エグゼイドくん!!」

 

 

穂乃果の悲鳴が重なる。

だからだろう、本来倒れるべきエグゼイドは気合で踏みとどまり、アランブラを睨む。

全身に鈍痛と倦怠感。しかしエグゼイドは自らを叱咤させ、ハンマーを振るっていく。

 

 

(心の傷はなかなか癒えない。癒えたと思っても簡単な事でひらいてしまう)

 

 

エグゼイドはヒイロにちょっとした昔話をする。

今は戦闘中だ、かいつまんだ説明だ。要するに母親が癌で死んだこと。母から目を背けた事、死から目を背けた事。そして最期も同じだ。

 

怖かったのだ。死と向き合う事が。どうせ何も出来ないのに母に顔を合わせる事が怖かった。

無力感は惨めさを感じさせる要因だ。それを味わうのが怖かった。自分が無力である事を実感したくなかったのだ。

 

そして辛かった。痛かった。心が。何になる。死に近づいても、救えぬことに近づいても意味はない。

そしてその結果生まれたのが母に対する罪悪感、後悔、会いに行かなかった自己嫌悪。

負が心を刺す。それはトラウマ。それは永遠の刃になるだろう。

 

 

(もっと母さんに会いに行けばよかった。もっと母さんに優しくすればよかった)

 

「ッ」

 

「そうすれば、それは救いになった。救済になったんだ」

 

 

母も自分もこんなに苦しむ事はなかったのかもしれない。

なに、過ぎた話だ。どうとでも言える。むしろ後悔が過去を美化させてくれる良い要因になっているのかもしれない。

しかれども覚えた苦痛は本物だ、恐怖と苦痛は永遠に心を縛る。

 

人は仮面を被る。

人は鎧を纏う。

 

なぜか?

 

決まっている。

 

弱い心を守るためだ。

 

 

(別に傷を負っても笑える。人を笑顔に出来る。楽しいって感じる事はできる)

 

 

でも。それでも――。

 

 

(できれば、そんな想いはしないほうがいい)

 

 

そこでエグゼイドは煙をあげて倒れた。

そこへ、駆け寄る者が一人。

 

 

「エグゼイドくん!」

 

 

穂乃果は恐怖を振り切り、エグゼイドの傍についた。

そして、手を差し伸べる。

エグゼイドは、その手を包み込む様にとった。

 

 

(それに誰かのために手を差し出す事は、間違いじゃないっておれは信じてる……!)

 

 

テイパーゲームが見世物なら、せめて、それくらいは感じて欲しい。

 

 

(そして――、エグゼは拡張子を意味するんだ)

 

 

火の玉が飛んでくる。

エグゼイドは気合の咆哮を上げて立ち上がる。

そして穂乃果を守るように立つと、飛来する火の玉をハンマーで弾き飛ばしていった。

 

 

(拡張子はファイルを表す文字列。自己の証明!)

 

 

仮面をつけたラブライバー。

ラブライバーとはスクールアイドルを応援するもの。目指すファンの姿。そうだな、山岸のようにならなければ。

そして思い出す。海未を励ます穂乃果の姿。

大丈夫。大丈夫。平気だよ。大丈夫だからね。

 

 

「穂乃果ちゃん……! 大丈夫だからね――ッ」

 

「ッ、うん!」

 

 

不安はある。しかし確かに穂乃果は頷いた。

 

 

(穂乃果ちゃんが海未ちゃんにかけた言葉。あれが、心によりそうエイドの本質)

 

 

だからこそエグゼイドもそうでありたいと。

 

 

「偽善者が――ッ!! 一番腹が立つタイプだ!!」

 

 

壁を殴りつけ、ヒイロはエグゼイドを睨む。

とは言え、当の運営側である我李奈は笑っていた。

 

 

【まあまあ、それもありではないですか】

 

「なにッ?」

 

【テイパーゲームの本質はミューズの喜怒哀楽を引き出すことですもの】

 

 

それに、我李奈は心の中で続ける。

いろんなピエロがいてこそ、感情はより揺さぶられ、研磨されていく。

 

 

「理解できん!」

 

 

首を振るヒイロ。

するとその時、舞台に大きな動きが。

 

 

「フ・エール!」

 

 

好機があった。

穂乃果、エグゼイド、アランブラ。そしてその背後に海未、ことり。

この並びをアランブラは待っていたのかもしれない。新たな魔法が発動され、アランブラの体が発光する。

するとアランブラの背から、青いアランブラが出現する。

 

 

「!!」

 

「分身した!」

 

「「ウフフフフフフ!」」

 

 

二体のアランブラは杖を光らせる。攻撃の合図だ。

赤いアランブラは穂乃果とエグゼイドに向け。そして当然、背中合わせの青いアランブラはその先にいる海未とことりに向けて。

 

 

「やばいッ!」

 

 

ライダーアーツ、ドリフターブロックで壁を――。

ダメだ、壁はチャージを行わなければならない。チャージが行えるのはレベルアップしなければならない。

当然レベルワンで乱入したため、まだストレス値は目標を達していない。

 

 

「エグゼイドくん! わたしは大丈夫だから海未ちゃん達を!!」

 

「ッ!」

 

 

たしかに、ある程度慣れている穂乃果ならば動ける。

つまり攻撃が回避できると言うこと。一方で足が竦んでいる海未たちはまともに動く事すらできていない。心苦しいが優先すべきは明らかだった。

 

 

「ごめん、穂乃果ちゃん!」

 

 

海未達を守る。

そう決めたとき、アランブラは魔法を発動させた。

 

 

「んなッ!」

 

 

見えたのは巨大な炎の壁である。

視界を覆いつくす赤。それはゆっくりとエグゼイドたちに向けて進む炎の強制スクロール。

ココは住宅街の路地。その中、エグゼイドたちがいるのは直線状の道路である。周りは塀や壁。

 

炎の壁をすり抜ける事はできない。

どうすればいい? 周囲を見回すエグゼイド。すると後方に入り口がある家が見える。

炎の壁の幅は路地の幅に合わせている。少しでも左右にズレる。つまりあそこの庭に身を隠せば、炎の壁を回避できるだろう。

 

 

「穂乃果ちゃん!」

 

 

それを説明するエグゼイド。

 

 

「うん! 分かった!」

 

 

穂乃果は頷くと後方へ走った。

そう、回避するためには後方に行かなければならないのだ。

そうなると海未とことりからは距離が開く。それはダメだ。エグゼイドは空中ジャンプで炎の壁を飛び越える事に決める。

だが跳躍したときだ、アランブラが杖を振るったのは。

 

 

「オ・チール!」

 

「うわぁああ!」

 

 

空に舞い上がったエグゼイドだが、激しい抵抗力を感じた直後、地面に叩きつけられた。

空に発生したのは重力結界。その範囲に進入すると、下方向のベクトルへ強い力が加わる。

つまり一定の高さまでジャンプすると、下に押し込まれるのだ。言うまでもなく、その重力結界を超えないかぎり、炎の壁を飛び越えるのは不可能。

 

 

「……!」

 

 

運の悪い事にアイテムが入ったレンガブロックはその重力結界の上にある。

地面に置いてあるのは穂乃果よりも後方に。であればアイテムを拾いに行っている間に青のアランブラが――。

 

 

「くっそ!!」

 

 

こうなったら正面突破しかない。エグゼイドはダッシュで炎の壁に飛び込んだ。

 

 

「グッ! ぐぎぎぎぎぎぎ!!」

 

 

なんと言うことだ、炎のはずなのに泥沼に突っ込んだような抵抗感を感じた。

ましてや激しい熱を感じ、痛みが襲い掛かる。それは進む力を弱め、動きを鈍らせる。

そんな隙だらけのエグゼイドをアランブラが放置するわけは無い。

新たなエネルギー弾を発射、光弾は炎の壁を抜けようとしたエグゼイドに直撃し、炎の壁から引きはがす。

 

 

「うわぁぁぁぁ!」

 

 

地面を転がるエグゼイド。

ダメだ、炎の壁を突破できない。だったらもう一つしかない。

 

 

(頼む! 会長!!)

 

 

ブレイブならば、と。

しかしヒイロは冷静だった。

 

 

「断る」

 

 

エムは大げさなのだ。

与えられる苦痛は幻なのに。それに、もしも攻撃が一発でも当たれば海未達の恐怖は倍増し、レベルアップへの制限が解除されるだろう。

 

ヒイロはジッと見ていた。見ているだけだった。

そして青いアランブラは魔法を発動する。

杖から大きな氷柱が発射され、一直線に海未とことりへ向かった。

 

 

「ことり!」「海未ちゃん!」

 

 

二人は足がすくんで動けない。だから抱き合い、ギュッと目を閉じた。

すると、影が割り入る。

 

 

「―――」

 

 

氷柱が命中、炸裂する音が聞こえた。

 

 

「ッ!」

 

「なに……ッ?」

 

 

しかし、身を乗り出す青アランブラ。

そしてヒイロ。なぜならば氷柱が海未とことりに命中しなかったからだ。

氷柱は、一人の男がその背で受け止めていた。

 

 

「山岸さん――ッ!」

 

「―――」

 

 

白目をむき、絶句しているのは用務員の山岸だった。

背中に走ったのは激痛。呼吸がとまり、意識も一瞬どこかに跳んだ。

しかしそれでも、そうであったとしても、意識が戻った山岸は笑顔の仮面を被った。

海未とことりに、微笑みかけた。

 

 

「だ、大丈夫かい?」

 

「や、やまぎしさん……!」

 

 

震えることりの声。

それを聞いて山岸は強く頷いた。

 

 

「僕は大丈夫。あんまり痛くないね。ほら、さあ、速く、逃げるんだ」

 

 

山岸は海未とことりの肩を叩くと立ち上がらせ、走らせる。

悪くない行動ではあったが、良くはない。なぜならば海未とことりが逃げると言うことは、エグゼイドからますます距離を離すことになる。

山岸もまた海未達を追いかけた。額に大量の脂汗を浮べて。

 

 

「クソッ!」

 

 

エグゼイドは炎の壁を突破する事を諦め、一旦穂乃果のところまで走る。

そして迫る炎の壁をやり過ごすと、再び路地に出た。

だがそこには既に赤アランブラ。杖を突き出し、エグゼイドに接近戦を仕掛ける。

 

 

「フフフ! お前の相手はこの私だ!!」

 

「くそ! お前に構ってる時間は無いんだよ!」

 

 

既に青アランブラの背は小さい。

早く海未達を助けに行かなくては――。

しかしそう思えば思うほど焦る心。さらにココで追い討ちの情報が我李奈から入る。

 

 

【分身したアランブラは赤と青、同時に倒さない限り回復魔法が発動し続け、やられることはありませんわ】

 

「そんな……!」

 

 

そしてその衝撃がエグゼイドの動きを鈍らせ、隙を生ませた。

赤アランブラは拘束魔法を発動。無数の鎖がエグゼイドの体を縛り上げる。

 

 

「しまった!」

 

 

また足を拘束されてしまう。

しかし前回と違い、周りにブロックは無い。

エグゼイドはどうしようもなく、そのまま地面に倒れた。そしてそこへ無数のエネルギー弾が着弾していく。

 

 

「うわああああああああああ!!」

 

「エグゼイドくん!!」

 

 

爆発の中に消えていく悲鳴。穂乃果の悲痛な叫びが響いた。

一方でヒイロは青アランブラを追っていた。その青アランブラは海未とことり、そして山岸を追いかける。

 

 

「こ、こ、これは一体――」

 

 

山岸は困惑していた。

エムに会いに来たはずなのに、気づけば化け物に襲われるミューズを見つけてしまった。

訳がわからない。だが一つだけ分かるとすれば、守らなければならないと言うことだけだ。

とは言え山岸の足は遅かった。太ったからだ故なのか。モタモタとし、息もすぐに切れる。

 

 

「醜い」

 

 

青アランブラは山岸を一言でそう表した。

そして魔法を発動。先を走る海未とことりの前に巨大な氷柱が次々に地面を突き破って出現。氷の檻となり、海未たちの退路を立つ。

 

 

「さ、先に進めないよ海未ちゃん……!」

 

「い、一体どうすれば――」

 

 

不安。恐怖。緊張。海未とことりはそれを隠す事ができない。

ゆえに山岸は知った。知れた。

だから動いたのだ。

 

 

「この子達に手を出すなぁ!!」

 

 

情けない叫びを上げて青アランブラに掴みかかろうとアクションを起こす。

しかしそれよりも前に青アランブラの拳が山岸の腹部に抉り刺さった。

不摂生な生活が生んだメタボ腹が嘘のように凹む。もちろん悪い意味で。

 

 

「んごひゅぅ」

 

 

山岸の口から情けない音が漏れ、肺の空気が全て吐き出された。

耳鳴りがする。息を吐く事、吸う事ができなくなった。脂汗が全身に滲む。山岸は体をくの字におり、フラフラと後退していった。

そこで背中に衝撃。アランブラが杖で殴りつけたのだ。山岸はまたも気持ちの悪い裏声を上げると、地面に倒れる。

 

 

「気持ち悪いオッサンが、私の邪魔をするんじゃないよ」

 

 

アランブラは倒れた山岸の背中を踏みにじり、その上を歩いて乗り越える。

そして震える海未たちの方へ距離を――。

 

 

「……あ?」

 

 

足を止める青アランブラ。

真下を見る。すると、足に手があった。

足を掴む手が見えた。

 

 

「――な」

 

「あぁー?」

 

 

青アランブラの足を掴んでいたのは、倒れていた山岸だった。

 

 

「その子達に――、手を出すな……!」

 

「コゴ・エール!」

 

「うあぁぁあぁッ!」

 

 

杖からブリザードが発生し、山岸を包み込む。

 

 

「寒いよォ、寒いよぉぉお!!」

 

「あはははは! なさけない男だねぇ」

 

 

アランブラはそのまま杖で山岸を殴りつける。

 

 

「お前まさかミューターか? 気持ち悪い! 気持ち悪いよお前!」

 

「うぐぅ! うわぁ!」

 

「ハゲでデブで醜い豚がスクールアイドルにデレデレって最高に気持ちわりぃんだよ! このクソロリコンが! 今すぐ消えろ! ほら死ねよ!!」

 

 

杖で山岸を何度も殴る。何度も、何度もッ、何度もッッ、何度もッッッ!

ゲームエリアとはすなわち電脳世界。バーチャル世界だ。そこに引きずり込まれた人間は自らがバーチャル体になったと気づかない。

しかし今、全ての事情を知っているヒイロですら自分がどの世界にいるのか分からなくなった。

なぜなら殴られた山岸は血を流し、顔が腫れていくからだ。

 

 

「我李奈さん。アレは本当に怪我をしていないのか」

 

【ええ。そう見えているだけですわ。リアリティの獲得はまず視覚からですもの】

 

 

人間はほとんどの情報をまず目で判断している。ゆえにダメージ描写は鮮明に、そして正確に。

気づけば、山岸は青アザだらけになり、白目をむいて倒れていた。

 

 

「中年のドルオタ。底辺にはお似合いだよ」

 

 

青アランブラは山岸を蹴り退かすと、海未たちを攻撃しようと杖に魔力を――

 

 

「どこに……行く――、の」

 

「!」

 

 

背後に気配。

青アランブラが振り返ると、山岸が立ち上がろうとしているのが見えた。

怖いのか、手足がブルブル、がくがく。だからうまく立ち上がれない。

生まれたての小鹿みたいになって、手足を折り曲げている。

あまりにも滑稽。あまりにも醜悪。しかし、山岸はそれでも立とうとしていた。

 

 

「その子――、たち、に――、手を……、出しゅ――な」

 

 

呂律がうまく回らない。

怖い、怖い、助けて、ママ、パパ。山岸は鼻水と涙と涎で顔面をグチャグチャにしながら立ち上がろうとしていた。

 

 

「あの――、うん、ごめん。あのほんともういいから。おっさんお前気持ち悪いから。ナ・グール」

 

 

杖の攻撃力を上げて青アランブラは普通に、ごく普通に、なんなく山岸を殴ってダウンさせた。

別に大きく振りかぶったわけじゃない。ただ杖を軽く上にあげて振り下ろしただけ。それで山岸はまた地面に張り付く。

 

 

「うぎゅん!」

 

 

気持ち悪い声だった。

なんだか下等生物に馬鹿にされている気がして、青アランブラは不快になった。

とても不快になった。だから早く終わらせよう。杖を握り締めて海未とことりを睨む。

殴ってやろう。ぶん殴ってやろう。もう恐怖で歌えなくしてやろう。そう思って前に出る。

すると抵抗感。下を見る。山岸が青アランブラの足を掴んでいた。

 

 

「手を――、出すな……ッッ!!」

 

「ああああああああああああ!! うっぜえええええええええ!!」

 

 

殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

 

 

「気持ち悪りぃなおっさん! やま――ッ、アンタマジで――ッ! あぁあぁあぁ!!」

 

 

ムカツク。ムカツク。むかつく。むかつく。

殴る。殴る。殴る。まだ足りない。少ない毛を掴んで強制的に立ち上がらせると、杖で殴って地面に倒した。

青アランブラは踵を返し、今度こそ海未達を攻撃しようと心に決めた。

その時、背後に気配を感じたのは言うまでも無い。

 

 

「―――」

 

 

山岸は立っていた。立ち上がっていた。

既に意識は虚ろだった。だからだろうか。思い出したくないことばかり思い出す。

山岸は意図せずに口にしていた。それなりの大声で一つのお話を海未に、ことりに、青アランブラに聞かせていた。

暴力の中で見た過去は、哀れな男の昔話だった。

 

 

朝が、いつも暗かった。空はいつも灰色だった。世界はいつも濁っていた。

理由は――、その前に一つ、知っておいてほしい事がある。

 

男は父を、母を、両親を愛していた。

 

パパとママはいつも男を愛してくれていた。

男は恥ずかしがりやだったからか、顔がよくなかったからなのか、友達ができなかった。

でも両親だけは優しくしてくれた。いじわるされても、パパとママはいつも味方でいてくれた。

 

だから、いつか、パパとママに恩返しがしたかった。

いつも言っていた、いつか孫の顔がみたい。それを男は生涯の目標とした。

 

男の唯一のとりえは真面目な事だった。男は一生懸命に生きた。

夢があったから辛い事があっても平気だった。いつかパパとママに孫を見せてあげたい。

男の子が出来たら一緒にキャッチボールをしたい、女の子だったら一緒の遊園地に行きたい。休みの日には外食をしたりして――。なんてことを男は夢見ていた。

 

男は頑張った。

人を傷つけない生き方を選んだ。

だからだろうか、神様は男にご褒美をあげた。男は出会ったのだ、自分を愛してくれる女性に。

 

他者に必要とされる。男は幸せだった。

男は女性に指輪を買った。式を挙げた。小さな式だったが、彼女は喜んでくれた。男は幸せだった。

 

優しい両親。優しい奥さん。男の人生は完璧だった。

 

 

しかし一つだけ、足りないものがあった。

男の妻はなかなか子を成さなかった。努力はした。しかし身篭る事はなかった。

そんなとき、ママが病気になった。男は焦った。ママにだけは孫を見せてあげたかった。

頑張った。ダメだった。頑張った。ダメだった。そんなときだ、妻が子供を作れぬ体と知ったのは。

 

男は焦った。

子供だけは夢だった。ママに見せてあげたかった。パパに見せてあげたかった。

そしてなにより、男は自分の子供と遊ぶのが夢だった。

 

なのに妻は子を作れない。男は焦っていた。余裕が無かった。だから喧嘩になった。

男は一丁前に、妻の心を傷つけた。

 

 

「――ヵ」

 

 

気づけば、ボロボロの山岸はバカみたいに涙を流していた。鼻水を流していた。

涙がとめどなく溢れていく。

それは痛いからではない、怖いからではない。過去を思い出したからだ。

 

 

「ぼぐは……ざいでいだ――ッッ」

 

 

言葉が詰まっていた。濁っていた。

ガクガクと震える足が折れ、男は力なくへたり込む。

 

 

「がのじょは、ぼぐをあいじでぐれでたのに……!」

 

 

思い出す。

男は、奥さんに酷い事を言った。

とっても酷い事を言ってしまった。何度も、何度も、何度も。

 

 

「酷い事――ッ、言っちゃったなぁ……!!」

 

 

何を言ったかは語るつもりはない。けれど、言わなくて良い事を言ってしまった。

尊厳を傷つけた。アイデンティティを傷つけた。自尊心を傷つけた。

愛していたのに。カッとなっただけで傷つけた。そして男は妻と別れた。

 

 

「あぁぁぁぁ」

 

 

妻の名を呼び、山岸は泣いた。

 

 

「ママ……ッッ、ママぁ」

 

 

母の名を呼んだ。山岸は崩れ落ち、豚みたいな音を立てて泣きじゃくった。

男は――、山岸は哀れな男だった。山岸はママに何度も謝った。

孫を見せられなくてゴメン。離婚してゴメン。ゴメン。ごめん、ごめん。

 

ママは山岸を心配していた。

老後の事、これからの事、山岸は最期まで母親を安心させる事ができなかった。

そしてその後、すぐにパパの具合が悪くなった。介護が必要だと医者に言われた。

自宅で山岸はパパの介護を始めた。辛かった。大変だった。止めたかった。

 

隣に、支えてくれる人はいなかった。

 

 

「ァ、あぁぁあぁぁあぁ」

 

 

山岸は海未の前で、ことりの前で、情けなく泣いていた。

 

過去、あの時の山岸に趣味は一つもなかった。友達も一人もいなかった。

朝起きて仕事に行って帰ってきて父の介護をして死んだように寝ることの繰り返し。

どんどん髪が抜けていった。ストレスで暴食してどんどん太っていった。

 

ママのカレーが食べたかった。

奥さんが作った肉じゃがが食べたかった。もちろんもう二度と食べれない。

山岸は、幸せだった筈だった。

 

そして父が死んだ。

その日から山岸は一人暮らしをはじめた。

かつて大好きなママと、大好きなパパと、大好きな奥さんと一緒に暮らしていた家で、山岸は一人で暮らし始めた。

 

毎日はいつもどおりだった。朝起きて、仕事をして帰ってきて何をするでもなくボウっとして眠る。

テレビはどれもつまらなく見えた。外はいつも曇っていた。朝も、昼も、夜も、暗かった。

なんだか全然、楽しくなかった。

 

 

「いづも゛――ッ、ごばん……、ひどりで、食べて――ッッ」

 

 

ご飯。

ご飯は炊いて、おかずはお惣菜。

一人で食べた。

 

 

「………」

 

 

いつからか、食事の時はいつも思い出すようになった。

昔はママがいて、パパもいて、奥さんも近くで笑っていた。

 

おかわりが欲しかったら奥さんがよそってくれた。

醤油が欲しいならママが取ってくれた。パパがお酒を飲みながらテレビを見て笑っていた。釣られてみんな笑っていた。

そんな音が聞こえてきた気がした。もちろんそれは全て妄想だ。山岸がふと我に返ると、静寂が部屋を包んでいた。

 

 

「………」

 

 

食事は嫌いだ。変なことばかり考えてしまう。

いつからか、あったかもしえない未来を夢見るようになった。

この食卓で、子供と一緒にごはんを食べられたら……。

 

 

『ねえお父さん! 明日キャッチボールしようよ!』

 

『ダメでしょ、お父さん疲れてるんだから。お祖父ちゃんと行って来なさい』

 

『えー、わたし遊園地行きたいのにぃ』

 

『しょうがないわねぇ、あなた、どうします?』

 

『おじいちゃんと一緒に銭湯行こうよー』

 

『お父さん、お母さん、一緒に映画行きたい!』

 

『おばあちゃんのおはぎ美味しいね! お父さんも食べなよ!』

 

『あなた、今度家族で温泉でも行きましょうか!』

 

 

全て明晰夢だった。

気がつけば、誰もいなかった。

 

 

「ぼくは――、ぼくはッッ」

 

 

当然の報いか。

分からない。でもそんなときだ。ミューズに出会ったのは。

 

まだ穂乃果と海未とことりだけのときだった。

絵里がファーストライブを撮影しており、その時のDVDがたまたま手に入った。

音乃木坂からスクールアイドルを目指そうとする者が現われた。

しかし山岸はスクールアイドルと言うのがよく分かっていなかった。だからDVDを貸してもらった。そして夕食のとき、それを見てみた。

 

 

「………」

 

 

そこには必死に歌う穂乃果と海未とことりがいた。

久しぶりに夕食に音がついた。

 

山岸は愚かな男だった。

孤独の幻想が、ミューズに重なってしまった。気持ち悪いと罵ってくれ、馬鹿なヤツだと叫んでくれ。

山岸は妄想幻想にミューズを重ねた。つまり、山岸は穂乃果達を本当の娘のように思ってしまった。錯覚してしまった。

 

 

「………」

 

 

山岸はご飯を口の中に入れながらミューズを見ていた。

必死に見ていた。食い入るように見つめていた。

 

 

「………」

 

 

初めてだった。租借するたび、ご飯を口に入れるたび、ポロポロと涙が溢れてきた。

息子がいたら、アイドルに熱中していたのだろうか。娘がいたらミューズに入りたいと言っていたのだろうか。

そしたら奥さんと応援してあげよう。

 

そんな妄想。

でも不思議と、いつもより楽しかった。

 

なにより、穂乃果たちに愛を感じてしまった。

異性に向けるものではなく、本来子供に向けるはずで、ずっと身に溜め込んでいた家族愛を。

そして、山岸はミューズのファンになった。

 

 

「アハハハハ! キッッッッモ!」

 

 

話を聞いていた青アランブラはそう言って山岸を殴った。

地面に倒れる山岸。吐血し、涙が流す。

 

 

「子供が欲しかったけどできなかった……」

 

「それで正解だろ! お前の子供なんでどうせ不細工! 学校で苛められてたよ自殺してたよ!」

 

「一人ぼっちの食卓だった……! でも、ミューズを応援するようになって変わったんだ……!」

 

 

山岸は、確かに立ち上がった。

頑張る穂乃果たちにあったかもしれない幸福を視る。生まれて初めての趣味だった。

 

楽しかった。歌が心に響いた。ご飯の時間が明るくなった。

空が青くなった。朝が明るくなった。

ライブに行く目標があるから、グッズを収集する目的があるから、なんだかとても充実していた。明日を目指す欲望が生まれた。

 

 

「それに、それに゛ぃい――」

 

 

山岸は立ち上がり、青アランブラの前に立った。

両手を広げ、海未を守る意思を示した。ことりを守る意思を示した。

 

 

「どもだぢが……できたんだ――ッ!」

 

「はぁあ?」

 

「ぼぐに……! どもだちが――ッ!!」

 

 

アイドルショップに通ううち、ライブに通ううち、他のミューターたちと繋がることができた。

たにぐっちゃん。村山さん。シゲさん。森本のとっつぁん。重森の姉御。金山ちゃん。青島君。

いっぱい友達が出来たんだ。みんな良い人なんだ。初めての友達なんだ。

たにぐっちゃんなんて――

 

 

『山さん。これ、ほら、ミューズと山さん合成してみたよ。どう? 結構違和感ないでしょ?』

『いいよ遠慮しなくても! なははは! せめて気分だけでも味わいたいじゃんねぇ!』

『お金? 馬鹿言っちゃダメだよ山さん。これは俺が山さんのために作ったんだから!』

『なんで? あはは、友達じゃないのよ俺達!』

 

 

痛いプレゼントも、山岸にとっては世界で一番の宝物だった。

なぜなら、彼は『自分のため』に用意してくれたからだ。

生きている価値のないと思っていた男に、価値を示してくれたのだ。

山岸はボロボロ泣いていた。

 

 

「ぼくぁもう、一人ぼっぢじゃ――ッッ、ないんだ……!!」

 

「………」

 

 

ヒイロは黙って山岸の話を聞いていた。

一方で青アランブラは笑う。笑い、否定する。

 

 

「気持ち悪いな、お前。もう分かったからさっさと退けよ」

 

 

山岸は退かなかった。

退いたら青アランブラは海未を攻撃するのだろう。ことりを攻撃するのだろう。

だから、退かなかった。それに――

 

 

「僕は――ッ、かっこいいんだ……!」

 

 

声を震わせ、涙を流し、山岸はそこに立ち続けた。

フラッシュバックする記憶。エムが言ってくれた。

 

 

「初めてカッコいいって褒めてくれたんだ――ッッ!!」

 

 

なぜ? 決まっている。正しいと思うファンであったからだ。

それをエムが褒めてくれた。だったら間違いじゃなかった。自分がやってきた事は間違いじゃなかったんだ。

 

 

「ミューズのみんなが僕を変えてくれたんだ!!」

 

 

自分の人生は、間違いなんかじゃなかったんだ。

 

 

「だから僕の大切なミューズの子達を傷つけてみろ。僕はお前を絶対に許さないぞ!!」

 

 

山岸の前に、巨大な氷柱があった。

 

 

「ぐがぁあぁあぁぁあ!!」

 

「ウヒハハハハハ! ハーッハハハハ!!」

 

 

いろんな液体を撒き散らしながら山岸は海未たちの前に倒れた。

すぐに立ち上がろうとするが、もはや体が言う事を聞かなかった。手も足も震えるだけで、力が全く入らない。

そんな中で、アランブラは笑い続けた。

 

 

「キモ過ぎなんだよお前! アハハ! マジで最高にやべーな!」

 

「………」

 

「アホな自分語りで気持ち悪い情報垂れ流してよぉ、マジでイカれてるわ!」

 

「……ぁ」

 

「だっせぇ男だよアンタは。ハゲで、デブで、惨めで人生までかっこ悪いと来た!」

 

「――ぅな」

 

「ミューズみたいなクズにハマったクズ! 傑作だよ。最高に笑える話さ!」

 

「笑うな」

 

「は?」

 

「笑うなァア!!」

 

「!」

 

 

叫んだのは山岸ではない。その背後。

園田海未は涙を零しながら立ち上がる。

 

 

「貴方は何なんですか、何故笑うんですか!」

 

「ハハッ、面白いからさ!」

 

「今の話の何がおかしいのですか! どこが! なにがッ!」

 

「生きてる価値のない惨めなオッサンが人生語ってんのさ。傑作だろう!?」

 

「黙りなさい! 彼はッ、素晴らしい人です!!」

 

 

海未は走り、山岸の前に立つ。

海未は、山岸を庇った。

なぜ? 知っているからだ。山岸が守る価値のある人間であると言う事を。

 

 

「山岸さんは私達をいつも応援してくれた!!」

 

 

ライブではいつもその姿を確認できた。

学校ではみんなの為にいつも頑張ってくれた。

ライブが終わればゴミ拾いをしてくれた。

応援していると励ましてくれた。

いつも、誰に対しても笑顔だった。

 

 

「何も知らない貴女が、人の上辺だけを見て馬鹿にするな!!」

 

 

涙を流し、海未は叫んだ。

 

 

「私を応援してくれる人を馬鹿にする事だけは、絶対に許しませんッッ!!」

 

 

すると、ことりも強く頷き、海未の隣に並ぶ。

 

 

「山岸さんをいじめるなら、私が許さないから!!」

 

 

ことりも同意権である。

すると青アランブラは過去最大の音量で笑う。

そして杖を構え、魔力を集中させた。

 

 

「生意気だね、生意気だよ! 今すぐボロボロして、その口黙らせてやる!!」

 

 

海未とことりは恐怖を顔に浮べながらも、退く素振りは見せない。

それを、ジッと、ヒイロは見ていた。

 

 

【フフフッ! 山岸さんったら、全ては幻なのにあんなに頑張って。少し滑稽にも見えますわね】

 

「――いや」

 

【え?】

 

 

山岸は情けなかった。惨めだった。哀れだった。愚かだった。

しかしその姿が、誰かの心に火をつける事ができるのか。

 

 

「間違っていたのは、俺の方だ」『タドルクエスト!』

 

 

宝箱が飛んでいった。そして今まさに魔法を放とうという青アランブラに直撃し、大きく怯ませる。

一方でヒイロは左手に持ち、掲げたガシャットを振るった。

右肩の少し下までガシャットを持っていくと、そのまま左に真横へ振るう。

 

 

「変身」

 

 

そしてガシャットを、ブレイブドライバーに装填した。

 

 

『ガシャット!』

 

 

ヒイロを中心として回転するキャラクターアイコン。

 

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?』

 

 

ヒイロは右手を右へ伸ばす。すると真横へ弾かれるキャラクターアイコン。

 

 

『アイム ア ブレイブ!』

 

 

ヒイロの体が光り輝き、ブレイブ・レベルワンへの変身が完了した。

そして奇しくも、海未の涙がスイッチを入れた。

 

 

【ヒイロ様。お分かりかと思いますが――】

 

 

頷くブレイブ。レバーを軽く弾き、もう一方の手でレバーを引いた。

 

 

「術式レベル2」『レベルアーップ!!』

 

 

装甲が弾け飛び、まるで甲羅から手足を出す亀のように、レベルワンの顔の部分から新たな手足が、そして頭が伸びた。

 

 

『タドルメグル・タドルメグル・タドルクエストォー!』

 

 

レベルワン時の顔を背に装備し、現われたのはマスクドライバーブレイブ・レベルツー。

水色をベースにした西洋の騎士を思わせる風貌。左腕にはガントレットのように盾が腕に装備されている。

ブレイブは右手にガシャコンソードを持ち、物陰から路地へと飛び出した。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオ!!」

 

「ッ! お前は!!」

 

 

背後から迫るブレイブ。

青アランブラは反射的に狙いを変更し、無数の氷柱を海未たちではなくブレイブに向けて発射する。

しかしブレイブは足を止めなかった。次々と迫る氷の棘を次々に剣で切り伏せる。炎を放つ剣は氷を融解させ、時に剣を逃れた氷柱は盾で受け止め、あっと言う間にブレイブは青アランブラの眼前に迫る。

 

 

「俺の進化について来れるか!」

 

「ぐあぁあ!」【HIT!】

 

 

剣を構え、切り抜けるブレイブ。赤い残痕が青アランブラに刻まれた。さらに怯んでいる背にもう一撃。

 

 

【HIT!】

 

 

振り返った所を滅多切りに。

 

 

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

そしてフィニッシュ。全身を乗せた突きがアランブラの鳩尾に刺さる。

 

 

【HIT!】

 

 

うめき声を上げて後退していく青アランブラ。

ブレイブのペースだ。おまけにとエクスコントローラーにてブレイブはライダーアーツの使用を試みる。

 

→たたかう

 まもる

 どうぐ

 さくせん

 おやつ

 にげる

 

【B】

 

→フレイムソード

 レッドスラッシュ

 スカーレットクラック

 ノヴァブラスター

 ドラゴンテイル

 

【2(下)22】

 

 フレイムソード

 レッドスラッシュ

 スカーレットクラック

→ノヴァブラスター

 ドラゴンテイル

 

【B】

 

「吹き飛べ、ノヴァブラスター!」

 

 

ガシャコンソードが燃え滾ると、ブレイブの全身を炎が包み込む。

ブレイブを中心に誕生する巨大な火の玉。それはまさに新星。

巨大な炎の塊は、怯んでいる青アランブラに直撃すると、爆発を巻き起こす。

火の玉になり突進する、これがライダーアーツ、ノヴァブラスター。

 

 

「ぐあぁあぁあ!」【GREAT!】

 

 

青アランブラは手足をバタつかせ、黒煙を纏いながら地面を転がっていく。

一方でブレイブは振り返ると、海未とことりを見る。

 

 

「キミ達、怪我はないか」

 

「え? あッ、は、はい! あの、貴方は……?」

 

「名乗るほどの者ではない」

 

 

ブレイブは海未達の背後。つまり行く手を塞いでいた氷柱を切裂く。

 

 

「さあ、向こうへ逃げるんだ!」

 

「はい、ありがとうございます。あのッ、でも――」

 

 

海未とことりの視線の先。

分かっている。ブレイブは頷くと、そのまま山岸を抱き起こした。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「……ぁ、う」

 

 

山岸は既に意識が朦朧としているようだった。

しかしかろうじて意識があるのか、山岸はブレイブの腕を掴むと、震える声で呟いた。

 

 

「ふ、二人は……、ミューズの二人は、ぶ、ぶ、無事――ッ、ですか……?」

 

「――ああ。貴方が守ってくれたおかげで、傷一つない」

 

「よ、よよよかった……!」

 

「見事です。貴方は間違いなく、二人を救った勇者(ヒーロー)ですよ」

 

 

ブレイブは山岸を起こすと、海未とことりに任せる。

 

 

「さあ、行きなさい」

 

「はい!」

 

 

海未とことりは頷くと、山岸を支えて離れていった。

一方、穂乃果もまた目を見開いた。

赤く燃える炎の中で、電子音が響いたのだ。

 

 

『レベルアーップ!』

 

 

炎が消し飛び、さらに拘束魔法に使っていた鎖も弾け跳んだ。

 

 

『マイティジャンプ!』

 

『マイティキック!』

 

『マイティマイティアクション! エーックス!』

 

 

そして飛んでいく装甲パーツ。全てが弾け跳んだ中に構えていたのは、エグゼイド・レベルツー。

足や体の一部は縛られていたが、腕を動かしてレバーを引くことはできたようだ。

 

 

「さあ、はじめようぜアランブラ!」『ゲィムスタァート!』

 

「くっ!」

 

 

後ろにいる穂乃果は無事。そして遠く見える海未達も平気そうだ。

問題ない。エグゼイドは仮面の裏でニヤリと笑う。

 

 

「ノーダメージでクリアしてやるぜ!」

 

「黙れ!!」

 

 

赤アランブラは無数の炎弾を発射。

しかしエグゼイドは構わず前進していく。弾は無数だが中には完全に狙いが反れているものも多い。

ゆえにエグゼイドは無数の弾丸の中、自分に当たる炎弾だけを選出、そして最小限の動きで交わしていく。

 

 

「来るなァ!」

 

 

拘束魔法が飛んできた。

しかし一発目の鎖は首を僅かに斜めにする事で回避。二発目、三発目の鎖は体を逸らして回避。

 

 

『ジャ・キーン!』

 

 

最後の鎖はガシャコンブレイカーをソードモードに変える事で切裂いた。

そして一気に加速。アランブラと距離を詰めると、エグゼイドは存分に刃を振るう。

赤アランブラも抵抗するが、激しい剣技に杖が吹き飛ばされる。そしてガラ飽きになった胴体へ刻まれる強力な一閃。

ライダーアーツ、ワイドスラッシュ。エネルギーを纏った刃を相手に刻み込む技だ。

それを受けて赤アランブラは地面を滑っていく。

 

 

【エムくん、聞こえるか!】

 

(会長。ええ、聞こえますよ)

 

 

遠くに見えるブレイブに手を振るエグゼイド。

アリアドネにより、マスクドライバー同士は距離が離れていてもスムーズに会話が出来るのだ。

 

 

【すまない。俺は少々、頭が固かったようだ】

 

(結構、だと思いますけどね)

 

【フッ。まあいい。それよりキミの言うとおり、これよりはミューズに一切のダメージを負わさずに終わらせるぞ】

 

(了解。でも、聞きました?)

 

【ああ。奴らは同時に倒さなければならない。そうだろ?】

 

(結構難しいと思いますけど?)

 

 

ブレイブは剣を構える。

 

 

「できるさ、俺とキミが力を合わせればな」

 

「ぐあぁぁ」【HIT!】

 

 

炎の剣で放たれた突きが、青アランブラを吹き飛ばす。

 

 

「協力プレイか。悪くない!」

 

「がぁあ!」【HIT!】

 

 

ピンクの刃が赤アランブラを吹き飛ばす。

敵が地面を転がっている間にエグゼイドとブレイブは脳内で作戦を伝え合う。なるほど、これならばと納得。先に動いたのはブレイブだった。

ガシャコンソードのAボタンを押すとモードが変形。剣が反転し、刃の色がオレンジから淡い水色に変わる。

 

 

『コ・チーン!』

 

 

モードチェンジにより、炎の剣は氷の剣に。

さらに構えが変わった。先程は右手で剣の柄を握っていたが、今は剣を逆手にして左手で持っていた。

距離をつめ、振るう刃。水色の一閃が青アランブラに刻まれると、切られた部分から冷気が発生し肉体が凍結していく。

 

 

「ぐぎぎぎいっ!」

 

 

青アランブラは抵抗に杖を振るう。

しかしブレイブは左腕の盾で受け止めると、そのまま大きく腕を払う。

盾が杖を弾き、持っていた剣が青アランブラにカウンターの一撃をくらわせる。

 

氷の剣は、炎の剣に比べると威力は落ちるものの、凍結効果により相手の動きを鈍らせる。

ブレイブはステップでさらに距離を詰めると、ライダーアーツを発動する。

 

 

斬狼(ざんろう)――ッ」

 

「ギッ!」【HIT!】

 

 

氷剣で切り上げながら跳躍。空に打ち上げられる青アランブラ。

 

 

氷牙(ひょうが)!!」

 

 

落下時、刃を青アランブラの肩に突き刺し、そのまま地面に叩き落とす。

切り上げの後に、突き刺しながら相手を落とす斬狼氷牙。

さらに突き刺した剣からは大量の冷気が発生し、青アランブラの体内に氷結エネルギーが流し込まれる。

 

 

「ア――ッ、ガ……!」

 

 

青アランブラの体が完全に凍りついた。

その隙にブレイブは周囲に散らばっている宝箱を手当たり次第に開けていく。

エナジーアイテムが次々とブレイブの体に吸い込まれていき、あるアイテムを手に入れたとき、ブレイブは強く頷く。

 

 

「これだ!」

 

 

→たたかう

 まもる

 どうぐ

 さくせん

 おやつ

 にげる

 

【22】

 

 たたかう

 まもる

→どうぐ

 さくせん

 おやつ

 にげる

 

【B】

 

→スピードアップ×1

 体力回復×1

 防御力アップ×1

 硬化装甲×1

 テンションゲージ回復×1

 

【2222】

 

 スピードアップ×1

 体力回復×1

 防御力アップ×1

 硬化装甲×1

→テンションゲージ回復×1

 

【B】

 

 だれに?

→エグゼイド

 ブレイブ

 アランブラ

 

【2】

 

 だれに?

 エグゼイド

→ブレイブ

 アランブラ

 

【B】

 

「アイテムを使用する」

 

 

ブレイブテンションゲージが回復し、50を超える。

一方で離れたところにいるエグゼイドも既に動いていた。

赤アランブラに向けて走り出すエグゼイド。しかし向こうもこのままではマズイと思ったのか、先程エグゼイドを苦しめた炎の壁を出現させた。

もちろん上空には重力フィールドも見える。

 

 

「悪いな、同じ手は食らわないぜ!」

 

 

しかしエグゼイドは怯まない。宙返りで一旦炎の壁と距離をとるとライダーアーツを発動。

ドリフターブロック・レベル2。巨大なレンガブロックの壁がエグゼイドの前に出現し、炎の壁を受け止めた。

 

 

「なにっ!」

 

 

怯む赤アランブラ。

そして敵は気づいていないだろう。レンガブロックの壁に隠れたエグゼイドの行動に。

 

 

「決めますよ会長」『ガッシューン……!』

 

 

ガシャットを抜き取ると、それをガシャコンブレイカーに装填する。

 

 

『ガシャット!』『キメワザ!』

 

 

カラフルなエネルギーがハンマーに収束していく。

そしてエグゼイドはトリガーを引き、必殺技を発動させる。

 

 

『マイティ! クリティカルフィニィッシュ!』

 

【MIGHTY・CRITICAL FINISH!!】

 

 

丁度そこでレンガブロックが完全に炎の壁をかき消した。

今が好機だ。エグゼイドは跳躍、飛び蹴りでレンガブロックを破壊すると、そのまま怯んでいる赤アランブラまで飛んでいく。

 

 

「ぐぎゃ!」【HIT!】

 

 

蹴りで体勢を崩した。

エグゼイドは宙返りで地面に着地すると、そのままエネルギーがチャージされたハンマーをすくい上げる様にして打ち込んだ。

 

 

「ウッラッァア!!」

 

「グアアアアアアアア!!」【GREAT!】

 

 

絶大な威力と衝撃に赤アランブラは凄まじい勢いでぶっ飛んでいく。

そして吹き飛んだ先には――。

 

 

「見事な軌道。完璧だな」『カ・チーン!』

 

 

ブレイブはガシャコンソードを炎の剣に。

 

 

【TADDLE・CRITICAL FINISH!!】

 

 

そして同じく必殺技を発動。

赤と青のエネルギーが剣に纏わりつき、刃が巨大化した。

 

 

「「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」」【GREAT!】

 

 

そして突き刺す。

目の前にいる青アランブラの腹部に突き刺さった刃は背を貫き、飛んできた赤アランブラの腹部を貫いた。

そう、エグゼイドが敵を吹き飛ばし、まとめてブレイブが刺し貫く。それが作戦だった。

 

 

「な、何故だ! お前ら、なんでそんな強くな――ッ! って!!」

 

 

アランブラは信じられないと首を振る。

 

 

「これが、レベルツーの力だ」

 

 

なにより、ココでブレイブとエグゼイドが負けてしまえばアランブラは海未達を狙いにいくのだろう。

そうすれば、海未達を守った男の努力が無駄になる。

 

 

「それだけはしてはいけない。そう思っただけさ」

 

 

剣を振るうブレイブ。

二体のアランブラが悲鳴を上げて地面に墜落。そのまま大爆発を起こした。

 

 

「ナンセンスな男には、なりたくないからな」【GAME CLEAR!】

 

 

軽快な電子音と共にガシャットが砕ける音が聞こえる。

爆煙の中で倒れたのは、アランブラの変身者であった。

 

 

「あぁぁ、ぐっぁ!」

 

「貴女は……」

 

 

そこにいたのは山岸と同じ用務員、城嶋であった。

 

 

【ヒイロ様。彼女は少々規定に反した行動を取っていました】

 

 

過度な暴言。行き過ぎた攻撃思考。

きちんとルールに乗っ取り行うのがビジネスだ。それに反すれば注意が必要である。

 

 

【指定する場所まで連れて来てもらえますか?】

 

「分かった。さあ、立ってください」

 

 

ブレイブが城嶋を掴んで立ち上がらせると、城嶋は笑い始めた。

 

 

「ひはっ! うへはははは! あははは!!」

 

「ッ」

 

「海未ちゃーんッ! 聞こえるぅー? ごめんなさいね変なもん送っちゃって!!」

 

 

ビックリ箱の事を言っているのだろう。

 

 

「でもねッ、あの手紙に書いてあった事ほんとなのぉお!」

 

 

なぜ城嶋(アランブラ)が海未を狙ったのか。

それは、城嶋の娘が海未のファンであったからだ。城嶋の娘もまた、元スクールアイドルであった。

娘はその魅力に取り付かれ、結果――。

 

 

「あのこ、わざと留年したわ! ひははは! スクールアイドル続けたいからだって! ハハハッ、馬鹿でしょ! 私立で! 金掛かるのに! ひははは!」

 

 

病気の娘、城嶋はそう称した。

 

 

「気をつけてね皆。楽しい時間はいつまでも続かないからね! チヤホヤされるのは永遠じゃないからね! 卒業しなくちゃいけない趣味もこの世にはあるからね! ハハハハハハ!!」

 

 

城嶋はブレイブに連れて行かれ、いなくなった。

 

 

【エム様も、撤退をお願いします】

 

「ああ」

 

 

飛び上がるエグゼイド。そのまま空中ジャンプで消えていった。

ポカンとしている穂乃果たち。

 

 

「ことり、私は夢を見ていたんでしょうか……」

 

「そんなこと、ないと思うけど――」

 

 

そこで、ことりは気づいた。

あれだけ殴られてたはずの山岸だが、ふと顔を見ると傷一つついていなかった。

 

 

 

 

 

ライブで失ったプライドは、ライブで取り戻す。

にこの発言どおり、後日すぐにミューズのライブは行われた。

新曲発表、そして生徒以外も観覧できるとあってか学校には多くの人が集まった。

 

その中で、穂乃果たちがライブ会場に選んだのは中庭だった。

穂乃果は咲子に頭を下げ、中庭を使用させてもらった。

どうしてもこの場所が良かった。この場所でなければならなかった。

 

人が多く集まるため、整理やナビゲートをいろいろな人に頼んだ。

いつもミューズを助けてくれるヒデコ、フミコ、ミカの三人組はもちろん。エムやヒイロ、ヨッシーくんに、なかには我李奈とクロトの姿もあった。

 

 

「やあ、応援しているよ。頑張ってね」

 

「ありがとうございます。頑張ります!」

 

 

ライブ前、エムとヒイロはクロトと穂乃果が握手をしているのを見つけた。

まあ、だからどうしたというわけでもないが。

 

そしてライブは始まった。

新曲が一つと、既存の曲が一つだけの簡単なライブだが、それでもそれなりの人が集まった。

そんな無数の人を前にして、穂乃果たちは歌ではなく、過去を口にした。

 

 

「みなさんに一つ、とっても大切なお願いがあります」

 

 

全てを語った。あの日、何があったのか。

もちろん咲子の名前は出さないが、ミューズのせいで傷ついた人がいる事。

そしてそれだけじゃない。海未が前に出る。思い出すのは城嶋が言った言葉だ。

娘が海未のファンだったから。それだけの理由で海未は憎悪の対象にされた。

スクールアイドルとして人の注目を集めるとはそういう事だ。知らぬ間に人を悲しませてしまう。その辺りの自覚や覚悟が足りなかった。

 

 

「しかし、それでも――」

 

 

山岸のように、希望を覚えてくれる人もいる。

救いを求めてくれる人もいるのだ。その全ての人に会うことはもちろんできない。どこかで傷つき、どこかで癒され。

だからこそ、切に願う。

 

 

「わたしたちを応援してくれるのは本当に嬉しいです! でもだからこそ、他の人を傷つけないで欲しい!」

 

 

難しい話だ。できないかもしれない。

心無い人は沢山いる。仕方ないと割り切ってしまう人もたくさんいる。

けれど、それでも――、気をつけて欲しい。穂乃果たちは頭を下げた。

 

 

「ミューズのキャッチコピーは、『みんなで叶える物語』です!」

 

 

たとえ周りの人間全てが赤信号を渡ろうとも、どうかあなたは青になってから信号を渡って欲しい。

たとえどれだけ腹の立つ事を言われたとしても、憎しみが続くようならそこで断ち切って欲しい。

たとえどんなに笑われようとも、きっちりルールを守って欲しい。

 

 

「どうか、お願いします!」

 

 

9人全員が深く、深く、頭を下げた。

盛り上がろうとやってきたファン達は、突然向けられた真面目な話に困惑しているようだった。

マナーの悪いファン問題はなにもスクールアイドルだけに限った話しじゃない。

もはやそれは『あたりまえ』になってしまっている。だから今更そんな事を言われても、もちろん自分たちは気をつけるが、無くならないんじゃないか?

 

そう思ってしまうのは当然だろう。

だからどんな反応をしていいのやら。ギャラリーたちは困惑していた。

 

 

「!」

 

 

その中で、拍手の音が聞こえた。

たった一人、一番初めに拍手を行った者。誰もがその人間を見た。

咲子は目を潤ませながらも、必死に手を叩いていた。

 

 

(咲子先輩……!)

 

 

そして園芸部が続いて拍手を行う。

並んで座っていたエム、ヒイロ、ヨッシー君も拍手を行った。

山岸を見ると、シンバルを叩くお猿の人形みたいに必死に拍手を行っていた。

徐々に大きくなっていく拍手の音。そしてギャラリー達も次々に伝染していき、中庭は拍手の音に包まれた。

 

それは『わかった』よの合図。穂乃果たちは笑顔を浮かべる。

そのタイミングで真姫がつくった新曲のメロディが聞こえて来た。

急遽海未が書き直した歌詞。それは花の美しさを謳ったもの。

ミューズはそれを言葉でつむぎ、ギャラリーの心に少しでも届くように、パフォーマンスを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ライブ、すごく良かった」

 

「はい」

 

「ますますファンになったよ私」

 

 

ライブが終わり、皆が帰っていく中、ヒイロと咲子は肩を並べていた。

後片付けを行っているヒデコ達やエムを見ながら、ヒイロはメガネを整える。

 

 

「咲子先輩」

 

「ん?」

 

「ミューズの掲示板にミノタウロスの件を書き込んだのは貴女ですね」

 

「……うん」

 

「脅迫じみた手紙を送ったのは?」

 

「……私」

 

 

ヒイロは――、ブレイブは城嶋に二つの件を問うた。

しかし城嶋がやったのはビックリ箱を送った事だけ。他のは知らないと。

であるなら、もう咲子か他の園芸部しか思いつかなかった。ヒイロはなんとなく、確信を持っていた。

だから聞いた、そして返事はご覧の通りである。

 

 

「なんか、自分でもビックリするくらい傷ついてたんだね。ミューズの事、応援してるつもりだったのに、有名になればなるほどムカついちゃってさ」

 

「……人間の、複雑なところでしょう」

 

「ちっちゃいね。でも。だからさ、もう、ほら、消したよ」

 

 

ミノタウロスの事について書いてあった部分が確かに消えていた。

ラブライブが管理する掲示板は、投稿者であれば書き込みを削除することができる。

 

 

「俺もまた、似た様なことが有ります」

 

「?」

 

「あるクラスメイトを偽善者と言い、苛立ちを露にしました」

 

「へえ」

 

「しかしその実、俺は彼に嫉妬していたのでしょう。だから彼の考えが正しいとどこかで思いつつ、否定したかった」

 

 

無力感が負を作る。エムの言った事はよく理解できる。

ヒイロも、ずっと後悔の刃で胸を切裂かれていた。

 

 

「あの時、背を向ける貴女に何か声をかけられれば良かったと、今でも思います」

 

 

花を踏まれ、泣いている咲子を見て、ヒイロは何も言わなかった。

 

 

「たとえ――、偽善であったとしても」

 

 

あの時なにか一言でも思いやる気持ちを示す事ができれば、咲子も救われたかもしれないのに。

 

 

「かけてくれた人がいたよ」

 

「え?」

 

「貴方は確かに何も言わずに消えたけれど、掛けてくれた人はいたんだよ」

 

 

ヒイロが帰った後、クラスメイトが声を掛けてくれたと。

 

 

「今の彼氏」

 

「……ほう」

 

「ぶっちゃけ、ね、顔はあんまりかっこよくないけど、世界で一番好きなんだ」

 

 

咲子は空を見て笑った。

 

 

「人間中身だよ。カッコよくても、中身がよくないと男としては終わってるからね」

 

「なるほど。気をつけます」

 

「まあでも、って言ってる私がこれじゃあなぁ」

 

 

醜い。咲子は自分をそう表した。

 

 

「私もブスなのに、性格までブスじゃ終わってるね」

 

「……しかし貴女は間違いに気づいた。違いますか?」

 

「そうだね。ダメだね。いけないね。もうしないよ。うん。絶対。もう絶対ミューズに変なことしない」

 

 

応援してるのは本当だった。ずっと。でもあんな事をしてしまった。なんでだろう?

 

 

「たぶん、うん、本当に花が好きだったんだよ。私」

 

 

だからどうしようもなく悔しくて、悔しくて、悔しくて……。溢れてしまった。

だがやった事は逆に花の質を落とす最低な行為だ。いけない。ダメだ。後悔。

 

 

「弱い私は殺すよ。最低な私はもうおしまい。うん、うん、もう絶対に」

 

 

花を愛でること、それは優しさを養う事だ。

愛情をもって接しなければ花は枯れてしまう。分かっていた筈なのに、ああ、ああ。

 

 

「結局私は花が好きなんじゃなくて、私が好きなことが好きなだけだったんだね」

 

 

咲子はヒイロに背を向けて手を振った。

 

 

「今度は、ちゃんとお花を愛するよ。じゃあね」

 

「………」

 

 

残されたヒイロはしばらくその場に立ち尽くした。

すると、声が聞こえる。

 

 

「会長!」

 

「やあ、園田くん。お疲れさま」

 

「ありがとうございます」

 

 

さきほどまで咲子が立っていた場所に海未は立つ。

 

 

「会長も見にきてくれたんですね」

 

「ああ。まあ」

 

 

僅かな沈黙。

すると、海未は微笑んだ。

 

 

「会長に言われて、少し、考えたんです」

 

「?」

 

「なぜスクールアイドルを続けるのか。スクールアイドルでありたいのか」

 

「ああ。答えは出たかい?」

 

「はい。それは――」

 

 

海未は、穂乃果を思い出した。

幼い頃、塞ぎこんでいた自分を穂乃果は連れ出してくれた。

きっと自分だけじゃ永遠に木の陰に隠れて誰かが遊んでいるのを見ているだけだったろう。

でも、穂乃果が引っ張ってくれたから、ことりとも会えたし、エムたちとも会えたし、なにより、ミューズのみんなに出会えた。

ソレは永遠の財産だ。一生消える事のない希望である。

 

 

「これは穂乃果には内緒にしていてほしいのですが……」

 

「ああ。約束しよう」

 

「幼い頃、穂乃果は私のアイドルでした」

 

 

憧れの存在。こうなりたい、こうでありたい、ああなりたい、ああしたい。

さすがに今はもう淡い憧れは消え、友情になったが、それでも穂乃果の隣で歌い、踊っている事は――。

 

 

「私にとって、誇りです」

 

「そうか」

 

「スクールアイドルは本当にやりたい事だから」

 

「ああ、ああ……」

 

「だから、続けます。どうか応援してくださいね」

 

 

海未は微笑み、歩いていく。

 

 

「園田くん!」

 

「!」

 

 

ヒイロは、呼び止める。

 

 

「応援しているよ。心から、ミューズの事を……!」

 

「ッ! はい! ありがとうございます!!」

 

 

嬉しそうに笑い、駆けて行く海未。

すると今度は入れ替わりでエムがやって来た。

 

 

「片付け終わりましたよ。一緒に帰ります? ラーメンでも食べに行きましょか?」

 

「いや、やめておこう」

 

「ああ、そう。じゃあおれは――」

 

「エムくん」

 

「はい?」

 

「ついてきて欲しい所があるんだ」

 

 

エムは既視感を覚えていた。

ミューズが頭を下げたのと同じ光景が目の前に広がっていたからだ。

頭を下げていたのはヒイロ。彼の前には、山岸が困惑した様子で座っていた。

 

 

「も、もう頭を上げてよ。ヒイロくん。僕ぁ、全然気にしてないから」

 

「いえッ、俺は貴方に大変失礼な事を。全て俺の浅はかな考えが生んだことです」

 

「い、いや、誰にでもそういうときはあるよ。ね、エムくん」

 

「え? あ、ああ、そうですね。そうですよ会長」

 

「エムくんにも無礼な事を言ったな。どうか許して欲しい」

 

 

ヒイロもまた教えられた。

人が人を好きになるのは容姿ではなく、その考えに共感したり、憧れを見出す事だ。

そこに年齢や性別の壁はない。こうしたい、ああしたい、カッコいいからマネをしたい。

そういう純粋な理由をもつ者も確かにいるのだろう。

 

 

「本当に、すいませんでした」

 

 

現にヒイロもまた、ステージの上にいるミューズたちに輝きを見た。

特に副会長の海未には大きく怯まされたと。生徒会室にいる彼女とは全く違う海未がいて、ギャップが凄かったと。

 

 

「じゃあキミは海未ちゃん推しだね」

 

「え? あ……」

 

 

そうか、そうだな。ヒイロは笑みを浮かべる。

 

 

「山岸さん。俺はミューズにあまり詳しくありません。しかし山岸さんは詳しい、そうでしょう?」

 

「うん。まあね」

 

「できれば俺に、ミューズの事を教えてくれませんか!」

 

 

山岸はニッコリと笑った。

即答だった。

 

 

「もちろん!」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 

笑い合うヒイロと山岸を見て、エムも安心したように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「おはよーッ! 海未ちゃん、ことりちゃん!」

 

「おはようございます。穂乃果、石神くん」

 

「おはよう穂乃果ちゃん。石神くん」

 

「おはよう二人とも」

 

 

朝、登校。

穂乃果と海未、ことりの三人の楽しそうな話し声を聞きながらエムは昨日の事を思い出していた。

 

 

(会長も山岸さんとはすっかり友達になっていたし、良かった良かった)

 

 

それにしてもヒイロが謝るのは少し意外だった。

ああいうタイプは自分のミスを是が非でも認めないと言うのが正直な印象ではあるが、その点についてはエムも誤解していたと反省である。

 

 

(ミスをミスと認め、謝るか。わかっていてもこれが意外と難しい)

 

 

それをヒイロは行った。伊達に生徒会長は勤めてないか。

 

 

(やっぱり、会長は人間ができてるなぁ……)

 

「やあ、おはよう皆!」

 

 

丁度考えていたからだろうか。

背後からヒイロの声が聞こえて来た。

 

 

「あ、おはようございます。会長」

 

 

振り返り挨拶を行うエム。

海未たちも、笑顔を浮かべて振り返る。

 

 

「おはようございます、会――」

 

 

時間が止まった。

そこにいたのはヒイロ――。そう、ヒイロ。

ヒイロなのだが……。ヒイロのはずだった。

 

 

「……どちらさまですか?」

 

「いやだな海未くん! 朝からジョークかい? ユーモラスだね!!」

 

 

全体的に青。

帽子を被っており、そこには海未のプリントが見える。

背中にはマントのように海未の全身が載っているバスタオルが巻かれていた。

 

ちなみにバスタオルには文字も刻まれており、そこには『うみキチ』と書かれている。

首には『我名はミューター。愛するは海未』と書かれたタオルが掛かっており、カバンには鬼の様に海未のバッジがついている。

さらにベルトの周りには大量の海未ちゃんぬいぐるみが装備されており。手には海未の顔が印刷されているうちわが見える。

 

 

「か、か、会長、それは?」

 

 

引きつった表情で海未が問いかける。

表情が引きつりすぎて、もはや顔芸の域に達していた。

 

 

「やあ、驚いたよ。そして素晴らしい。海未くんの頑張りに俺もすっかり心奪われてね。ファンになってしまった」

 

「ぎ、儀式か何かの途中ですか?」

 

「え?」

 

引きつった笑みを浮かべ、引きつった声を出し、海未はじりじりと後ろへ下がっていく。

釣られて穂乃果とことりも仮面のような笑みを浮かべてヒイロから少しずつ距離をとっていった。

 

 

「お、おほほほ! か、会長、私はちょーっと用事を思い出したので、先に行きますね。ほほほ、おほほほ……! ひぃいいい!!」

 

「あッ、待ってよ海未ちゃんおいてかないで!」

 

「ひやぁああぁぁぁあ!!」

 

「???」

 

 

逃げ出す三人と、首を傾げるヒイロ。

エムは大量の汗を浮かべてヒイロを指差した。

 

 

「か、会長。それは一体?」

 

「おお! エムくん! これだろう? 聞いたよ山岸さんから。これがラブライバーやミューターの正装であると! だからとりあえず俺も応援する海未くんで固めてみたんだ!」

 

「そ、そう――ッ、ですか」

 

「しかもちょっとコレを見てくれ」

 

 

うちわを見せるヒイロ。

 

 

「海未くんだろ? 海未くんなんだけど――、マ・キーン!」

 

 

うちわをひっくり返すヒイロ。すると裏面には真姫の顔が刻まれていた。

 

 

「見てくれ、反対には真姫くんの絵柄なんだ! 実は真姫くんもアンテナに少しビビッてきてね! ハハハハ! まあ海未くんほどじゃないんだけどね!」

 

「……ヵ」

 

「ほら、ひっくりかえすとウ・ミーン。で、これほら、海未くんになるんだよね。ブレイブのほら、あれ、ガシャコンソードを見て考え付いたんだ!」

 

「――ぅ」

 

「海未くんが青だろ? それで真姫くんが赤だろ? どうなのかな、二人は仲いいのかな? 良かったら俺はテンション上がるよな! ハハハハ!」

 

「ぃ」

 

「作曲と作詞のコンビはいいよなぁ! うみまきは最高だなおい! それにしても考えれば考えるほどミューズによりハマッちゃうよぉ。なははは! そういえばエムくんは穂乃果くん推しなんだろう? どう思う!?」

 

 

言葉は、自然に出てきた。

 

 

「きもちわるい」

 

「え?」

 

 

ヒイロはラブライバー(ミューター)に進化した▼

 

ヒイロは海未推しに進化した▼

 

ヒイロは真姫ファン(弱)に進化した▼

 

ヒイロはカプ厨に進化した▼

 

ヒイロは百合豚に進化した▼

 

 

 

【……See you Next game】

 




【次回予告】

次回、マスクドライバーエグゼイドは!


【第三の適合者、鋼タイガ!】

「世界のYAZAWAこそが神になるべきだとは思わねぇか!?」
「写真部部長、鋼タイガ。三年だ」

【ライバーバトル勃発!?】

「アイドルほどクソな職業も中々ねーぜー?」
「なにするんだよ! お前!!」
「潰しあいがアイドルの本質だろうが。オレ達もマネすりゃ良いんだよ」

【アイドル崇拝に潜む光と影】

「アイドルにどんだけ夢見てんだよテメェらは」
「ウンコもすればセックスもする。それが人間だろ!」
「ぶち殺すぞクソガキがゴルァアアア! 脳みそフライにして深海魚に食わせてやんよォオオッッ!!」


【次回 第4話・虚像のメタトロン】


………

社長室でパラドとグラファイト出てくるの早すぎじゃね?
あれまだ、えむ部屋のなかにいたからね( ;´・ω・`)

エグゼイド面白いです。
まだ今から見直しても全然追いつけるので、見てない人は見てみてね
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