マスクドライバーエグゼイド! アポロンの獏   作:ホシボシ

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12/9 追記。

すいません、はじめは行間詰めてみたんですけど、やっぱりいつものに戻しました。
やっぱり自分的にはこっちがしっくり来ますので(´・ω・)


第4話 虚像のメタトロン

 

 

巨大なテレビで男は朝のニュースを見ていた。

 

 

『近頃、美術館や博物館にて展示作品が盗まれる事件が多発しています。警察は近隣の――』

 

 

チャンネルを変える。

 

 

『えー、やはりですね。我々は自分が健康だと思っていても、実際は病が体内で進行していて取り返しのつかない事になると言うケースもありますので、定期的な検診を――』

 

 

チャンネルを変える。

 

 

『今日の運勢、第一位は――』

 

 

テレビの電源を切るクロト。

立ち上がると、そこには我李奈の姿が見えた。

 

 

「失礼します、社長」

 

「ああ。なんだい?」

 

「現在捜索は続けていますが、やはりクリスタルの場所は……」

 

「ふむ。そうか。アレはプログラムを狂わせる大きなバグだ。なんとしても探し出してくれたまえ」

 

「かしこまりました」

 

「ところで、二つのデータの方はどうかな?」

 

「そちらの方はまずまずと言ったところですわ」

 

 

我李奈は持っていたタブレットをテレビにつなげると画面を映し出す。

よく分からないグラフやデータの文字列が並び、クロトは相変わらずの細い目でそれを見ていた。

 

 

「なるほど、適合者君たちは頑張っているみたいだね」

 

 

画面には四つのドライバーが表示され、各データーが表示されている。

 

 

「社長の思惑通り、やはりエグゼドライバーの性能が光っていますね」

 

「当然だ。最も高い完成度だ。数値も安定している。しかし――」

 

 

クロトは、貼り付けていた笑顔を消した。

 

 

「まだ足りない」

 

「……そうですか」

 

「最後のピースをはめ込まなければ、神に至る黄金の矢は完成しないんだ」

 

「ではなんとしてもその最後のピースを」

 

「ああ。そうだね。そのためには異物を排除し、安定のシステムを築かなければ」

 

 

クロトは窓の外を見る。

音乃木坂が見えた。

 

 

「彼女達は――?」

 

「ええ。順調ですわ。調和、同調、全て順調に進んでおります」

 

「フム、エグゼドライバーの数値を見るに、やはり双方、感情エネルギーが数値の上昇率を左右しているのか」

 

「はい。しかし気になる事が少し」

 

「バグの事だろう。私も確認している」

 

「やはり異物は異物。異形は完璧に構築されたプログラムまでも歪ませ破壊していきます」

 

「であるなら、そろそろ影響が出るという事か。第二ステージに進んだのは正解だったな」

 

 

クロトは笑みを浮かべると、我李奈を下がらせる。

 

 

「はい。それでは失礼します」

 

 

我李奈は頭を下げると社長室を後に。

そしてその足で、別室に入った。そこに座っていた男は我李奈に気づくと、立ち上がり、深く頭を下げた。

 

 

「おはようございます宇佐美(うさみ)重雄(しげお)様」

 

 

タブレットを操作し、我李奈は男の情報を把握する。

 

 

「利用規約は――、ご存知ですね?」

 

「はい、もちろんです」

 

「報酬金の使い方をお聞きしても?」

 

「家族が病気でして……、その治療費に」

 

「分かりました。それではコチラが――」

 

 

我李奈はタブレットの他に小さなケースを持っていた。

そのケースの中身を、今、重雄に差し出す。

 

 

「ガシャットです。これを使用すれば、貴方はヴィラン、リボルとなりますわ」

 

「は、はい……!」

 

「これを使い、ミューズの心を揺さぶってください。期待していますよ、重雄さま」

 

 

我李奈はニヤリと笑い、メガネを整えた。

 

 

 

 

朝、今日も今日とてエムは穂乃果たちと登校中である。

特に変わったことは――、あるにはあったか。

 

 

「評判いいよね、アポロンTV」

 

「そ、そうかな? えへへ、ちょっと恥ずかしいけど」

 

 

スクールアイドル応援番組、アポロンTV。

 

 

「特にほら、あれ……」

 

「?」

 

「え、エグゼイド」

 

「もうッ、やめてよエムくん! その話はしないでってばぁ!」

 

 

やっと編集が終わったのか、ミューズ応援番組であるアポロンTVでマスクドライバーエグゼイドのコーナーがスタートした。

ドッキリとヒーローショーを組み合わせたというコンセプトのソレは、先日放送されると同時に早速話題になっていた。

 

まずは当然ソルティに襲われる穂乃果の部分が一話としてピックアップしており、当時はあれだけ鬼気迫る状況であったと言うのに、編集の力によってずいぶんとファンシーな光景に仕上がっている。

さらにワイプでは芸人やナレーションの合いの手も入っており、視聴者にはライトな印象を与えるに成功していた。

 

 

「かっこ、いいよね、エグゼイド……、うん」

 

 

エムは目を逸らしながら呟いた。

ああ、なんてヘタレな男であろうか。アプローチにしては斜めにぶっ飛びすぎている。

そもそもこれは言い方を変えれば『おれってかっこいいでしょ?』と聞いているようなものなのだ。

もちろん穂乃果はそれを知らぬわけで。

 

 

「うん! わたしが危なくなったらいつも助けに来てくれるんだ。本当、王子様って感じ!」

 

「王子様……」

 

 

ニンマリと笑うエム。完全にアホである。

 

 

「や、やっぱりもうそんな歳じゃないかな」

 

「いやいやッ! 全然良いと思うよ、うん! 颯爽と現われるもんね!」

 

「え? いやほら、なんていうかさ、髪が王冠っぽくない? ギザギザで」

 

「え? そっち? ま、まあいいよね、うん」

 

 

笑う穂乃果だが、少し前を歩いていた海未はどんよりと沈んだ様子であった。

 

 

「よくありません。あんな隠し撮りみたいな。おかげで人様に泣いている姿を見られるんですよ……?」

 

「ちょっと恥ずかしいよねぇ」

 

 

ことりも恥ずかしげに頬を染めている。穂乃果たちはエムと同様、アランブラ戦も全てドッキリであると我李奈から説明されていた。

これからもこういう事があるかもしれないと言う随分アバウトな今後を教えられたが、とりあえず経験と割り切っているようだ。

 

 

「でもかわいいよねレベルワンのエグゼイドくん。ぬいぐるみも発売されるみたいだし、私買っちゃおうかな」

 

「ええ、愛らしいシルエットですよね。私はあの青い方が騎士っぽくてかっこいいと思うのですが……」

 

「あぁ、ブレイブね」

 

「そう、ブレイブ――、ですか。詳しいんですね石神くん」

 

「―――」

 

 

やらかした。エムの背筋にゾクリと冷たいものが走る。

つい調子にのってヒイロが変身するマスクドライバーの名を口にしてしまったが、思えば何故エムがブレイブの存在を知っているのか、と言う話である。

まだ放送分ではエグゼイドしか登場していないのに。これではまるでエムが関係者であると言っているようなものでは?

 

 

(終わった……!)

 

「どうしたの? 石神くん。つらそうだよぉ?」

 

「いやッ、ことりちゃん、これは――」

 

「大丈夫!? 平気? おなか痛いの!? 熱!?」

 

「いやいや、あの、しょの……」

 

 

すると背後から声が。

 

 

「ブレイブの名前は公式サイトで確認できるんだ」

 

「!」

 

 

振り返ると、そこにはヒイロが。

いつかのクソみたいな正装は過ちだと理解したのか、普段どおりの制服姿である。

ヒイロは携帯の画面が穂乃果たちに見えるように持っていた。そこにはアポロンTVの公式サイトが。

キャラクター紹介と言うページを表示させており、そこにブレイブレベルワンの姿が確認できる。

 

 

「エムくんはココを見たんだろ?」

 

「あ、そ、そう! そうですよ! ハハハ」

 

「会長! おはようございます」

 

「ああ、おはよう。良い朝だね」

 

 

穂乃果たちと挨拶を交わすヒイロ。そのままエムと耳打ちを。

 

 

『危なかったね。意図しない発言でもボロが出る事はある』

 

『たすかりました会長。ありがとうございます』

 

『ああ。お互い気をつけよう』

 

 

小声でやり取りを交わして一同は学校を目指す。

 

 

「それにしてもブレイブですか。勇気や勇者を意味する名前ですね。ますますカッコいいです」

 

「ぬいぐるみほしいねぇ」

 

「はい。ふふっ、私も買ってしまうかもしれません」

 

 

おお、と、思う。

海未がブレイブを褒めている。これはヒイロは嬉しいのではないか? エムはチラリと横目でヒイロを見てみるが――

 

 

「………」

 

(お、おお)

 

 

ヒイロは真剣な表情で遠くを見ている。

目を細め、訝しげな表情で虚空を睨んでいた。

なにか、すこし、負けた気がするというか申し訳なくなった。きっとヒイロはこれからの事を真剣に考えているのだろう。

自分も気を引き締めなければ。エムは頷くと、少し歩くスピードを速めた。

 

 

「ねえ、エムくん」

 

「ん? なに?」

 

「どう、だった……?」

 

「え?」

 

 

靴箱の前で穂乃果は立ち止まる。

 

 

「わたし、変じゃ無かった、かな?」

 

 

アポロンTVの事を言っているのだろう。

密着やエグゼイドが出てくるヒーローパート。いろいろな表情を見せてしまった。

 

 

「変じゃ、ないよ……」

 

「そっか、ありがとう……!」

 

 

頬を桜色に染めて穂乃果は微笑んだ。

その後、なんだか気恥ずかしくなって穂乃果とエムは無言で靴を履き替える。

なんだこの空気は。全身に汗が浮かぶのを感じるエム。

 

 

「高坂さん」

 

「わッ!」

 

 

ヌッと後ろから幽霊のように現われたのはエムの友達ヨッシーくん。

思わず驚きに固まるエムをしりめに、ヨッシー君は穂乃果と会話を。

 

 

「アポロンTV見たよ。エグゼイドを庇うシーンすごくカッコよかったね」

 

「ほ、本当? あはは、あの時はもう何がなにやらで」

 

「まあまあ。え? 今日練習はあるの?」

 

「あ、今日はね。ちょっとみんなの都合が合わないからないんだ」

 

「へえ、でも本当大変だね。毎日毎日レッスンで。エムも言ってたよ、全然一緒に帰れる日がないから寂しいって」

 

「え?」「え!」

 

「あ、そうだ。僕図書室開けないと。じゃあもう行くね」

 

 

ヨッシー君はそれだけを言い残すとさっさと図書室へ向かっていった。

 

 

「………」「………」

 

 

エムの穂乃果の目が合う。

 

 

「ほ、本当?」

 

「え? なにが!?」

 

「あのッ、寂しいって……」

 

「あッ、ああ! まあ。はは、ははは……」

 

「じゃあ、今日一緒に帰ろっか」

 

「えッ!?」

 

「あ、ごめん。イヤだった?」

 

「まさか!」

 

 

目を逸らし、穂乃果は顔を赤くして頷いた。

 

 

「じゃあ、放課後、ね」

 

「うん!」

 

 

結果、授業中。1限目。

 

 

「………」

 

 

エム、にっこりである。

 

 

「………」

 

 

2限目。エム、にこにこである。

 

 

「……んふっ」

 

 

3限目。エム、にんまりである。

 

 

「――おほほ」

 

 

4限目。エムから気持ち悪い声が漏れた。

 

 

「――ッッ!!」

 

 

しかしまさにその笑みが凍りついた。

と言うのも、頬杖をついて窓の外を見ているヒイロを見つけたからだ。

あの真面目なヒイロが授業に集中せず、どこか遠い目を見て真剣な表情を浮べている。

きっとテイパーゲーム関係に違いない。またも冷静になるエム、そうか、そうだな、本当は喜んじゃいけないんだな。

 

でも一緒に帰るくらい……。

表情を暗く落とすエム。するとチャイムが鳴り、昼休みに。

 

 

「大元帥、一緒に食べようよ」

 

「あ、ああ。会長もどうです?」

 

「………」

 

 

反応は無い。

 

 

「ヒイロくん?」

 

 

今度はヨッシーが呼んでみるが反応は無い。

 

 

「会長、どうしたんです、ボウッとして」

 

「え? あ、ああ。エムくん、なにかな?」

 

「お昼一緒にどうです?」

 

「――ああ。いいね、ご一緒するよ」

 

 

生徒会室に言って弁当を広げる三人。

食事を開始して気づいたが、またもヒイロは真剣な眼差しで虚空を睨んでいた。

テイパーゲームの事を考えているのだろう。これからマスクドライバーのあるべき姿とは何か。

 

いや、待て、もしかしたら生徒会長として音乃木坂の事を考えているのかもしれない。

また新たなミノタウロスが現われるのかもしれないという危惧か。

いずれにせよヒイロは生徒会長として、マスクドライバーブレイブとして世界を憂いているのだろう。

 

かたや片思いの相手と一緒に帰れるかもしれないくらいで浮き足が立って。

なんだかやっぱり情けなくなる。

 

 

(おれも会長のように自分を律しないと……)

 

 

それにしても。

 

 

(会長は人間ができてるなぁ)

 

 

そんなとき、ヨッシー君が言う。

 

 

「ヒイロくん、なんか今日ずっとボーっとしてるね」

 

「え? あ、ああ。少し考え事をしててね」

 

「へえ、どんな」

 

「ああ。海未くんは一体どんな下着をはいているんだろうかって」

 

「ゥォオオオオオオオオオオオオオオオオオオイッッッ!!」

 

「気になって夜も眠れん」

 

「寝ろよ! って言うかむしろ永遠に寝てろよ! 何考えてんだアンタ!」

 

「いや、分かるよヒイロくん。僕もことりちゃんのタオルの匂いを想像してお風呂入ってるから」

 

「分かるなよ! ヤバすぎだろ!」

 

「僕の見立てではことりちゃんと花陽ちゃんは絶対良い匂いだよ。あと矢沢先輩のカーディガンも絶対間違いないから」

 

「お前がまず間違ってるよ!」

 

「個人的にはことりちゃんはミルクの匂いがしててほしいな。なんならちょっと臭い方が――」

 

「だあああああもう止めろ止めろ!!」

 

 

吼えるエムだが、目の前にいるヒイロとヨッシー君は固い握手を交わしていた。

 

 

「やはり清純な海未くんだ。下着は安定の白か。それとも直球の青……」

 

「しかしヒイロくん。青と言ってもその数は多種にわたる」

 

「その通り。セルリアンブルー、シアンブルー、深い青なのかライトなブルーなのかが俺の脳を惑わせる」

 

「おまけに上下が違う色と言う可能性は考えられないかな、ヒイロくん」

 

「失念していた……! なるほど、確かにありえない話ではないか」

 

「上がシアンブルー、下がセルリアンブルー」

 

「悪くない判断だ。しかし個人的な事を言わせて貰うのであればあえての赤、もしくは赤紫はどうだろうか?」

 

「ヒイロくん。正気ですか?」

 

「ヨッシー君、キミの言いたい事はわかる。しかしときにボーダーラインを越えた冒険が新たな世界を創造する事もあると言うことだ」

 

「……なるほど。深い――ッ」

 

「浅せぇよ! 子供用プールより浅せぇわ! そこ納得するなよ!」

 

「ほう、なるほど。思考の深い浅いをプールに例えたね」

 

「あッ、え――、えっとあの、ごめんなさい会長。そこだけは触れないでもらえると――。あの、なんていうか、ごめんなさい、恥ずかしくなっちゃった……」

 

 

真っ赤になって縮こまるエム。

しかしそこでとんでもない言葉が飛んでくる。

 

 

「いやだな大元帥。そんな事言ったってさ、キミも穂乃果ちゃんの下着姿がどんなのか興味くらいあるだろ?」

 

「いや、おれは別にそんな目で見てないから!」

 

「いや見てるか見てないかとかじゃなくて、興味あるのか無いのかだよ」

 

「え?」

 

「あのね。なにも僕達は本人が目の前にいる状況でこんな話はしないよ。でもココには僕と大元帥とヒイロ会長の男三人だけ。かわいい女の子の下着に興味があるって話をしてるんだよ」

 

「お、おれは無いよ!」

 

「本当に?」

 

「ほ、本当だよ」

 

「じゃあ穂乃果ちゃんが見せてあげるって行っても興味ないって言うの?」

 

「そうだよ! 言えるよ、おれは!」

 

「ヒイロくんは?」

 

「興味あるに決まってるだろ。海未くんだけじゃなくて全員見たいわ。金払ってでも見たいわ」

 

「………」

 

「………」

 

「うん、あの、ごめん。嘘ついた。おれも見たいです」

 

 

うな垂れるエムと無言で肩を叩いてくるヨッシー君。

そういうものなのだ。ましてや高校二年の男子。これは健全なのだ。

 

 

「それで匂いの件なんだが――」

 

「まだ続けるんですか会長!」

 

「当然だ」

 

「や、や、やっぱりダメですよ! こんな話!」

 

エムは机を叩いて立ち上がった。

確かに興味はあるが、だからと言ってやっぱりどうしても認める事はできない。

 

 

「穂乃果ちゃん達は純粋にダンスや歌で頑張ってるんですから、そういう目で見て応援するのはどうなんでしょう」

 

「おいおい、エムくん。俺は性欲は無いぞ」

 

「嘘つけよ!」「それは嘘でしょ」

 

 

ヒイロの発言にさすがのヨッシー君も噛み付いた。

しかしヒイロは真顔である。

 

 

「本当さ。確かに俺は海未くんの下着姿が気になるし、髪の匂いも嗅ぎたいし、ふとももに触りたい」

 

「おいおいおい、いきなり何言ってんだコイツ……!」

 

「だがその全てに性欲はない。あるのは純粋な興味だ。だから常に真顔でいる自信はあるし、リアクションも全て『なるほど』で良い」

 

 

下着見ました。なるほど。

匂い嗅ぎました。なるほど

ふともも。なるほど。

 

 

「な?」

 

「な? じゃねぇよ、アンタまじで何言ってんだ!? この短くない時間でアンタの言葉が一つも理解できねぇぞ!!」

 

 

吼えるエムだが、仕方ない話なのかもしれない。

いくらスクールアイドルとは言えどメディアに取り上げられ、人々の目に触れ、応援される以上、中には『そういう目』で見てくる人間もいる。

特に男性ファンは顕著だ。それはクロトも散々言っていた事ではないか。

 

男女の友情はありえないとは言ったもので、人間は理性にセーブを掛け、心に蓋をしているだけだ。

誰もがみんなスイッチを持っている。欲望にスイッチを入れてファンになるのか。理性にスイッチを入れてファンになるのか。

アイドルは選べないし、当然ファンの中には無自覚の者もいる。

 

 

「アイドルは商品だよ。僕らが思っている以上に」

 

 

ヨッシー君の台詞が、少し、エムとヒイロの心に刺さった。

 

 

「あ、そういえばさ」

 

 

ただそこで湧き上がる新たな疑問。

アイドルは商品。まさにその商品がミューズにもある。ポスターやバッジ、そこには当然ミューズの写真が使われているのだが――。

 

 

「あのグッズの写真とかってどうしてるの? なんか本人も知らないヤツがあるらしいけど?」

 

「ああ、あれはこの学校の人間が撮影した写真をアイドルショップ側がグッズに変えているんだ」

 

「へえ、誰なんです? 写真撮ってるのって」

 

「写真部部長、(はがね)タイガ。三年だ」

 

 

 

 

 

「いいよゥ! いいねいいね最高ーッ!」

 

 

フラッシュが瞬き、室内にはシャッターを切る音が先程から何度も聞こえてくる。

 

 

「ソーキュートソーキュート!!」

 

 

写真部は部員が一人であり、活動内容が取り上げられることは少ない。

 

 

「はい可愛い! 今のも頂きぃ!」

 

 

少年は先程からカメラを構えていろいろな角度で被写体を撮影し続けていた。

撮る人間に様々な表情を引き出させるため、少年は何度何度も褒めたり要望をくり返す。

しかしその声、恐ろしいくらい感情が篭っているはずなのにどこか軽く感じてしまうのは気のせいだろうか?

 

 

「はいオッケー! とりあえずこんなモンだろ!」

 

 

レンズから目を離し、カメラを机の上に置いたのはこの部室、写真部唯一のメンバーにして部長、鋼タイガであった。

校則で禁止されているラインギリギリに髪を伸ばし、体質で髪の一部分の色素が失われているため、白いメッシュが入っているように見える。

タイガの前にいたのはミューズのメンバー。その中の三年生組みであった。

 

 

「ちゃんと撮れてるでしょうねぇ」

 

「あたりめぇだろ。オレの腕前ナメてんじゃねぇぞ」

 

 

カメラを持って撮影した写真を見せる。

さすがは写真部なだけはあるのか。プロには劣るだろうが、学生にしては申し分ない出来栄えである。

 

 

「アイドルは清純さが命だろ? それはもちろんの事、絢瀬は凛とした強さ、東條は艶やかなミステリアスさ二割増しにしておいたからよ」

 

「あ、ありがとう」

 

「ふふ、でもちょっと照れてしまうね! ウチ、写真のポーズって言ったらピースくらいしか思いつかんし」

 

「いいじゃない、いいじゃない! それで、私は何を増したの!?」

 

「おお! 見ろ矢澤! お前が前に被ってた帽子にインスピレーションを受けてな! ほら、茶色のタイプの帽子を使ったんだ!」

 

「つまり!?」

 

「ウンコ度100パーセント増しだ!」

 

「ウォラッッ!」

 

「ラブリーーーーーーッッッッ!!!!」

 

 

掌底が頬に直撃し、タイガはきりもみ状に回転して床に倒れた。

 

 

「なにすんだよテメーッ!」

 

「黙りなさい! 女の子になんてモン被せんのよ!」

 

「ノリノリで被ってたくせに……」

 

「まあまあ、にこっち、そういうのもいいやん? 意外と可愛いかもよ?」

 

「ウンコが可愛くなったら世の中終わりよ!」

 

 

にこ、一旦停止。

 

 

「って何言わせんのよ!」

 

「バンバンッ!!!!」

 

 

再び掌底が命中してタイガは仰向けに倒れる。理不尽である。

しかしこれにはタイガとにこの関係性が現われていると言っても良い。

絵里が呆れ顔で見ている中、タイガとにこはなにやら二人で盛り上がっている。

 

 

「まあ待て矢澤! おちつけ未来のスーパースター!」

 

「ッ!」

 

「オレはな、常にミューズを見ている。そして一つの結論が出た」

 

「なに?」

 

「明るく行動力のあるリーダー高坂。可憐な園田。癒しの南。美しさの西木野。活発な星空。守ってあげたい小泉。凛とした絢瀬。包容力の東條。みな素晴らしい才能を持ったメンバーだ。しかれども、世間は忘れてねぇか? その全てを持ち合わせたミューズの頂点に立つべき女がいる事を!」

 

「ききましょう! いいなさい、誰なのソレは!」

 

「YZ☆ZA★WA!!」

 

「イェーイ!!」

 

 

手を上げて飛び上がるにこ。ノリノリである。

 

 

「オレは思うんだ。なぜ世界はもっと矢澤にこの魅力に気づかないのだろうか!」

 

「そうよね! そうなのよね! 私自身も不思議で仕方ないわ!」

 

「世界のYAZAWAこそが神になるべきだとは思わねぇか!?」

 

「じゃあもっと撮影しましょう! ミューズ! そしてこの矢澤にこがラブライブの頂点に立つためにッ!」

 

「イェーイ!!」

 

 

様々なポーズを取り始めるにこと、それを素早くカメラにおさめるタイガ。

 

 

「YAZAWA! YAZAWA! YAZAWA! YAZAWA!」

 

 

矢澤コールの中でにこはサングラスをつけてマラカスを振り回していた。

 

 

「なにを撮影してるのよ……」

 

「にこっち楽しそうやし、いいんやない?」

 

「お気に入りだもんね、にこ」

 

 

にことタイガは三年生になってから同じクラスになったのだが、同じ波長を持っているのか、すぐに仲良くなったようだ。

おまけにタイガが写真部と言うことなので、にこは勝手に契約を結んでミューズ専属のカメラマンとして扱っているのだ。

 

タイガはミューズの撮影を手伝い、その全ての写真をにこに見せ、にこがオーケーしたものをアイドルショップに流している。

なかば盗撮まがいのモノまであるが、そこはタイガもにこも節度を弁えてる。おかげでメンバーからは文句はあれど、止めてくれとまでは言われなかった。

 

まあミューズメンバーも全員スクールアイドルをやる以上、自分の顔が晒される事くらいは覚悟している。

海未は苦手だの嫌いだのといっているが、それはあくまで『苦手』であって理解してないわけじゃない。

 

 

「っじゃあ今日は特別に出しちゃおっかなぁ! 行くわよタイガ、しかとレンズに焼きつけてね!」

 

 

にこは両手でお馴染みのポーズを取ると、満面の笑みを浮かべた。

 

 

「はい、にっこにっ――」

 

「お茶のもうかな」

 

「撮れよ!!」

 

 

にことタイガのやり取りはいつもの事だ。希はそれをニコニコと優しい目で見ているし、絵里は呆れ顔で興味なさげに見ている。

 

 

「タイガ、こういうのはどう? やっぱり私の魅力は――」

 

 

ふと、リボンを外すにこ。ツインテールの髪がおろされ、ストレートに。

 

 

「おい馬鹿止めろ!」

 

「へ?」

 

「お前の一番の魅力は何だ!? ツインテールだろうが!」

 

「そ、そうなの?」

 

「そうに決まってんだろ! つうかよ、おめぇがストレートにしたら完全に園田の劣化じゃねぇか! とくに、ほら、胸! 胸! 胸!」

 

「………」

 

「むしろストレートにするとブスになるぞ! いやこれマジで! ツインテールは矢澤にこ。ストレートは矢澤ブス!」

 

「………」

 

「なんならちょっとオッサンに見えるぞ! マジでストレートだけはやめとけ。つうかツインテール以外にすんなよマジで! お兄さんとの約束な!」

 

「………」

 

「おい聞こえてんのか!? もう一回言うぞ! ツインテール以外のお前はブス! 矢澤クソウンコブス!」

 

「オラァアア!」

 

「ニコニーッ!!」

 

 

にこは掌底でタイガを吹き飛ばすと、そのまま肩を揺らしながら写真部の部室をあとにした。

 

 

「まったく! 本当にムカツクわねアイツ!」

 

「よく言うわよ、あれだけノリノリだったくせに」

 

 

にこの後を追って絵里と希も肩を並べる。

 

 

「冗談じゃないわよ。私がアイツに合わせてやってんのっ!」

 

「はいはい。それにしても当然どうしたん? 写真撮りたいやなんて」

 

「どうしたもこうしたも……」

 

「まさか焦ってるの?」

 

「う゛ッ!」

 

「図星やね」

 

「そ、そりゃあ少しは焦るでしょ! 私は部長なのよ!」

 

 

アポロンTVが始まり、公式サイトではミューズの総選挙コーナーまで始まる始末。

にこたちは知らぬものの、エグゼイドとブレイブの活躍によりソルティとアランブラ、既に二体のヴィランが討伐されている。

 

当然それはクロトが仕組んだルールに乗っ取り、宣伝と言う形で担当学年に報酬が入る。ちょっとした有名人が二年を呟いたり話題にしたりする。

もしくはミューズの宣伝映像で二年がよく映るようにする。これにより当然見ている人間にも無意識に穂乃果、海未、ことりの印象が強く残るようになるのだ。

先日ソルティ戦が放送されたこともあり、総選挙一位は現在、穂乃果。そして二位と三位に海未とことりがいるわけだ。

 

 

「別に順位なんてどうでもいいじゃない。私達は9人でミューズ。みんな対等、それで良いと思うけど?」

 

「そ、それはそうよ。私だってそれは分かってるわ。ただ――……」

 

「ただ?」

 

「こ、こころ達に……一位になるって約束しちゃった」

 

「はぁ」

 

「なによ! いいでしょ!」

 

 

にこは二人の妹と一人の弟がいる。兄妹たちに見得を切るのはいつもの事だ。

結果としてそれがにこの首を絞めるのだが。

 

 

「でも変に意識するとかえって失敗しそうになるね」

 

「そうなのよねぇ。まったく、最近は変なイベントが多いこと」

 

 

アポロンTVもあんなヒーローショーみたいなコーナーをやるなんて聞いてない。

そう、そうだ、その点に注目しよう。

アポロン側はヴィランたちを既に自らが用意したとタネ明かししている。

だからこそソルティ戦が地域限定とは言え、テレビを通して発信されたのだ。

 

正直、エムたちとしてはもう少し続けるものかと思っていたが、そこは意外であった。

もちろんだからと言ってテイパーゲームが終わったわけではなく、ますますアポロン側の目的に困惑しているところである。

とは言え、にこ達にとっては少し変わったドッキリショーが仕掛けられるかもしれないという点だけ。

気になるのはやはり総選挙であろう。順位を上げるため、三年だけのグッズを作ろうとしていたという事だった。

そしてもう一つ、にこ達には危惧する所があった。

 

 

「面倒なヤツもいるみたいだしね」

 

「………」

 

 

絵里と希の表情が険しくなる。

なにやら最近ラブライブやその周辺のネット掲示板に『荒らし』が出現するようになってきた。

早い話が、ラブライブに参加するスクールアイドルの誹謗中傷――、もっと言えば悪口を羅列する輩が出てきたのだ。

 

もちろんネットの世界だ。過去にもそう言った者がチラホラと出てくるのは珍しい話ではない。

しかしそのいずれもが、しばらく放っておけば勝手に消えていくのに対し、今回の荒らしは中々粘着性が強い。

おまけにラブライブ公式側もなぜかアクセスを禁止できないと来た。緊急で対応するとは言っているが、どうなる事やら。

 

 

「ハンドルネーム、メタトロン。ほんと厨二の最低野郎だわ」

 

「それを厨二って言われると、ウチ結構、傷つくんやけど……」

 

 

メタトロンはミューズと同じく神話、正確には天使から取った名前であろう。

その称号は、『神の代理人』といわれ、炎の柱として表される。さらに特徴は『無数の目』を持っているらしく、謎の多い天使である。

 

しかしさきほどの通り、ネット上で今話題になっているメタトロンはただの粘着質なラブライブを荒らす者。

ファンはもちろん、スクールアイドル全員から嫌われている存在である。

 

 

「くだらないわ。あんな幼稚なヤツ、無視無視」

 

 

にこはそう言ったものの、その拳は強く握り締められていた。

 

 

 

放課後。

写真部部室では、タイガが窓のそばで電話をかけていた。

 

 

「そう。どうだ? いい案じゃね?」

 

『フッ、まあキミの言うことは尤もだね』

 

「だろ? ならさっさと用意しな」

 

『面白そうだ。そういうのもアリかもね。手配するよ』

 

「速くしてくれよ――……ん?」

 

 

タイガは窓の外を見て言葉を止める。

 

 

『どうかしたかね?』

 

「いやッ。とにかく早くしろよ」

 

 

タイガは、ニヤリと笑った。

 

 

「オレはもう動くぜ」

 

 

どうやら、タイガは何かを企んでいるらしい。

一方で何も考えずに笑みを浮かべている者がいた。

石神エムは、校門を出たところで待っていた穂乃果と合流する。

 

 

「ご、ごめんね。遅れて」

 

「ううん。私も今来たところだから……!」

 

「そ、そうだよね。別々に教室出ただけだもんね。行こうか穂乃果ちゃん」

 

「う、うんッ!」

 

 

なにもおかしな事はない。一緒に帰るだけだ。普段はいつも一緒に登校しているのだ。

なのに何故だろうか。口数が全く違う。何を話していいのか分からなくなる。

朝にだいたい話したから? それもあるが、もっとこう、純粋に――。

 

 

「あ。ごめん」

 

「いやッ、おれもごめん」

 

 

目があった。

お互いは顔を赤らめてすぐに目を逸らした。

なんだろうか、放課後に一緒に帰ると言うのは登校するより『デート感』が溢れると言うか。

しかし変に意識するのも疲れる。エムは首を振ると、穂乃果に笑いかけた。

 

 

「聞いてよ、また大会優勝したんだ」

 

「あ! うん! 聞いたよ朝!」

 

「あッ、そ、そっか……! いや、でも、うん、その続き」

 

「へえ、聞かせて!」

 

「うん。このまま順調に優勝していけば今年中にはマキシマムブースターの挑戦権獲得できるかも」

 

 

つまりプロになれる大きな一歩が踏み出せるわけだ。

 

 

「ほんと! 凄いよ! 凄い凄い!」

 

「穂乃果ちゃんも春までにはラブライブが決着するよね」

 

「うん。ふふ、やっぱり競争だね」

 

「ああ、追いついてみせるよ。おれは、キミに……!」

 

「………」

 

 

そこで、ふと、穂乃果は立ち止まった。

隣を見ると、そこにはいつかの日、永遠を誓った公園があった。

 

 

「でもさ。わたしは――」

 

「え?」

 

「わたしは、ずっと……一緒だったよ」

 

「ッ、穂乃果ちゃん?」

 

「ずっと、ずっとね」

 

 

エムもそこで公園に気づく。

そうだ、ココで将来を誓った。だがあれは子供の約束。決して真実じゃない。

それでも抱いた想いは、『あの時は』確かに本物だったのだと。

 

 

「……そうだね、一緒だった」

 

「え?」

 

 

エムは笑みを浮かべ、穂乃果に過去の話を振る。

 

 

「覚えてる? 子供の時さ穂乃果ちゃん家でテレビ見てたら心霊特集だったヤツ」

 

「あ! うん! えへへ、懐かしいね。覚えてるよ。わたしブルブル震えちゃって」

 

「そうそう、おれは平気でさ。でも家に帰るとき何か気配を感じてさ」

 

「そうそう! そしたらエムくん急に怖がり出して」

 

「そう、もうビビりにビビっちゃて。涙目で動けなかった。そしたら穂乃果ちゃんが守ってくれるって」

 

「あはは。あの時はエムくん本当に震えてたから。でもさ、覚えてる? お化けの正体」

 

「ゴキブリでしょ? 今度は穂乃果ちゃんが悲鳴あげてたよね」

 

「忙しかったねあの時。でも最後はエムくんが潰して助けてくれたんだよ!」

 

 

不思議と、過去の話はどんどんと出てくる。

そういえば一緒に映画に行ったり、外食に行ったり、思い出した、一緒にお風呂も入ったな。

これを話せば空気が凍るため、エムは言葉を深層に飲み込んだが。

 

 

「ねえ、エムくん。あれは覚えてる? お星様、捕まえようとした事」

 

「覚えてるよ。木に登って虫取り網で捕まえようとしたよね」

 

「ザリガニバーベキューは?」

 

「ロブスターだと思って食べそうになったよね。って言うかおれはちょっと食べたよね」

 

「ゲロゲロになっちゃったよね」

 

「あの、うん、それ黒歴史にしてたんだ」

 

「あ、ごめん。でも、じゃあアレは? わたしが乱暴な子に意地悪されたとき」

 

「……覚えてるよ」

 

「エム君。助けに来てくれたよね」

 

「うん」

 

「言ってくれたよね。いつでも、どんな時だって助けてくれるって。守ってくれるって」

 

 

穂乃果は夕焼けと同じ色になっていた。

だから、好きになった。

 

 

「………」

 

 

とは言え、エムは引きつった表情だったが。

 

 

「あの、でも、おれ、なにもできずボコボコにされたよね」

 

「うん。結局ヨッシー君が大人の人を呼んで来てくれて」

 

「そう、うん、そう。だからおれ、何にもしてないっつうか……」

 

「でも、嬉しかったよ」

 

「………」

 

 

エムは、拳を握り締める。

 

 

「今も――」

 

「え?」

 

「今も、変わってないよ」

 

 

再び、二人の視線がぶつかる。

しかし今度はお互い目を逸らさなかった。頬を赤く染めつつも、お互いの瞳をしっかりと目に映す。

 

 

「おれは君を守るよ」

 

「あ……、ありがとう……!」

 

「あ、あはは! って、何言ってんだおれは! ご、ごめんね何か変な事!」

 

「ううんッ! 嬉しかった!」

 

「え?」

 

「うれしいよ……! エムくんッ」

 

 

もし、今、あの時の約束を口にすれば。

どうなるのだろうか? エムはそう思った。

だが、しかし、その時だった。

 

 

「!!」

 

 

遠くの方、名前も知らない建物。

その屋上に、エムは『エグゼイド』を見た。

 

 

「ッッ!?」

 

「ん? どうしたのエムくん?」

 

「え……? あっ、えっと」

 

 

穂乃果の方を見るエム。

しかしすぐにまた屋上の方を見る。

 

 

「ッ?」

 

 

だがそこに『エグゼイド』の姿は無かった。

 

 

(……いない。おれの気のせいだったのか?)

 

 

エムは首を振ってもう一度屋上を見る。しかしやはりそこにエグゼイドの影も形もなかった。

やはり見間違いだったのだろう。エムはそう割り切る事にした。

しかし何故一瞬とは言え、幻を見たのだろうか。

それも、"黒いエグゼイド"の幻を。

 

 

「大丈夫? エムくん」

 

「うん。大丈夫だよ。行こうか」

 

 

歩き出した二人。すると前方からジョギング中の男性が見えた。

現在エムと穂乃果は道に並んで歩いている状況。一応まだ道にはスペースはあるものの、邪魔になってはいけないと穂乃果はエムの背後に並んだ。

コレで大丈夫だろうと思っていたのだが――。

 

 

「きゃ!」

 

「え? わ!」

 

 

男性が通り過ぎる。

すると、エムの背に衝撃が走った。

振り返ると、穂乃果がエムにもたれかかっている。

 

 

「え? え! えぇ!?」

 

「ご、ごめんね! なんか今、押されて……!」

 

「押された? だ、大丈夫?」

 

 

要するにエムの後ろに並んだ穂乃果。すると背中を押さえれて前に倒れた。

とは言ってもそこにはエムがいたので地面には倒れずに済んだのだが、思い切りもたれかかる姿勢になってしまった。

エムは穂乃果の方を向くと、彼女を支えるために、腕と肩に手をまわす。

 

 

「大丈夫? 押されたって――、酷いな」

 

「な、なんでだろう? えへへ」

 

 

男は既に曲がり角に逃げたのだろうか?

 

いや、待て。

 

 

(ヴィランか!)

 

 

こんな中途半端な悪戯をするのは、イコールで傷つけない事の証明にもなる。

ヴィランはミューズを驚かすが傷つけるのはNG。なるほど、ならば納得がいく。

しかし今は穂乃果が傍にいる。後を追おうにも動けないし、仮にヴィランに鉢合わせても変身できない。

 

 

(一旦、見逃すしかないか)

 

「あの、エム君……」

 

(いちおう会長に連絡入れておくか)

 

「エムくんっ」

 

「え? あ……」

 

 

気づく。思えば穂乃果を支えるため肩に手を置き、腕を掴んでいる。

そして穂乃果はエムに支えられている。その距離は限りなく近く、見ようによっては抱きしめようとしている風にも。

 

 

「あぁあ! ご、ごごごごごめん!!」

 

「う、ううん! あ、ありがとね支えてくれて!!」

 

 

たぶん、そこからは競歩のように早かったと思う。

お互い目を合わせず無言でひたすら歩く。そして家の前にやってくると、真っ赤な顔で挨拶を交わして別れた。

 

 

(び、びっくりした……)

 

 

まだ心臓がドクドク激しい音を立てている。

穂乃果を間近に感じ、体温や匂いもよりリアルに感じた。

 

 

「はぁ」

 

 

なんだか、嬉しいような、複雑なような。

するとエムは気づいた。玄関に見慣れない靴がある。丁度父親が見えたので、エムは声を掛ける。

 

 

「ただいま父さん」

 

「ああ、エム。お客さんだぞ」

 

「え? 誰?」

 

「お前の学校の先輩だ。部屋で待ってもらってる」

 

「先輩……?」

 

 

はて、誰だろうか?

エムはすぐに自室へ走る。

そして扉を開けて、エムは怯んだ。なぜならば全く知らない人がそこにいたからだ。

 

 

「え? え?」

 

「よぉ、二年。邪魔してるぜー」

 

「ど、どちらさま?」

 

「オレは鋼タイガ。三年、写真部部長。よろしくー」

 

「!」

 

 

タイガ、ミューズのグッズ写真を撮影している少年だ。

ヒイロたちとの会話で出てきただけに怯んでしまう。

しかし気になるのはそのタイガが何故ここに?

 

 

「オレはさ、ほら、写真部だからさぁ、写真撮るのよ」

 

「は、はぁ」

 

「そしたらさ、ほら、こんなの撮れちゃったぁ」

 

 

タイガは制服の内ポケットから一枚の写真を取り出し、エムに見せた。

 

 

「あ゛ッ!!」

 

 

それは間違いなく、先程のエムにもたれかかる穂乃果の写真だった。

 

 

「なんで――ッ、これ!」

 

「いけないなぁー。いけない、いけない」

 

 

汗を浮かべるエムの前に、ニヤリと笑うタイガの顔。

 

 

「いけないぜぇ、エグゼイドォ」

 

「なッ! アンタまさか!!」

 

 

そう、タイガが次に見せたのは、間違いなくガシャットであった。

 

 

「ドライバーも持ってる」

 

 

つまりタイガもまた、そういう事である。

 

 

「オレは三年担当だ。まあよろしくな後輩くん」

 

「な、な、な……!」

 

「ああ、それでさ、いやいやいや、これはいけないよなぁ!」

 

 

写真をテーブルの上におき、タイガは指でそれを何度も叩き、指し示す。

 

 

「クロトの野郎から話は聞いただろ。お前、マジで何考えてんだ?」

 

「……? 何言ってるんだ」

 

「そりゃコッチの台詞だぜ。こんな所見られたらよ、高坂穂乃果は終わりだぞ」

 

「そ、それは――」

 

「アイドルは清純であれ、常識だろ。処女じゃねぇアイドルなんてゴミクズ以下だ」

 

「しょ! しょ――って、何言って――!」

 

「ネット見てねぇのかよお前。スクールアイドル応援してる野郎のSNSアイコンなんざほぼアニメキャラよ。どれだけ処女厨いると思ってんだ」

 

 

固まるエムをよそに、タイガは楽しそうに語る。

 

 

「付き合う=ヤってる思考の連中が、こんなに刺激の強い写真を見たらどうなるだろうなぁ?」

 

「いや、そもそもおれは穂乃果ちゃんとは付き合ってない!」

 

「抱き合ってるようにしか……、見えないぜ?」

 

「いやッ、あれはたまたま――って言うか、写真撮ったなら分かるでしょ!」

 

「いやいやオレさぁ、男女の付き合いに疎くって」

 

「……?」

 

 

何を言っているんだ?

一瞬そう思ったが、直後、エムの脳に理解の電流が走る。

 

 

「まさか! アンタ!!」

 

「あの男はオレが用意した」

 

「!」

 

「上出来だな! ハハハハ!」

 

 

つまり、穂乃果とエムを密着させたのは全てタイガの狙いであったと。

 

 

「なあ、知ってるか石神ぃ。スクールアイドルの中には彼氏の存在が見つかって解散したところもあるんだぜ」

 

「ッッ!」

 

「あー……、リーダーが消えるとみんな悲しむだろうなぁ。9人揃ってラブライブがみんな物語だったのにぃぃぃい」

 

「な、何が目的なんだよアンタ」

 

「――ハッ、決まってんだろ」

 

 

タイガはガシャットの先をエムに向ける。

まるで銃のように。

 

 

「お前、これから先、テイパーゲームに勝つな」

 

「はぁ?」

 

「つうか正確にはオレに勝たせろ。あのな、そもそも考えてみろよ」

 

 

ドライバーの数は四つ。一つは二年担当ヒイロ。

一つは二年担当エム。

一つは三年担当タイガ。

もう一つは一年担当。

 

 

「なんで二年担当が二人もいるんだよ。不公平だろ?」

 

 

ヒイロかエムのどちらかが雑魚ならばまだしも、アランブラ戦を見る限り双方実力は高いと判断する。

 

 

「アランブラって、アンタあそこにいたのか!」

 

「まあな。ドライバー所有者はゲームエリアの発生を確認できる。観察させてもらったぜ? エグゼイドのパワー」

 

「……ッ」

 

「とにかく、お前は邪魔なんだよ。お前らに手ぇ組まれたらオレに勝ち目はねーも・ん・な!」

 

 

写真をつつきながらタイガは笑う。

 

 

「ぐぐぐぐっ!」

 

 

しかしこうなるとエムとしても厳しいものがある。

マスクドライバーはミューズを影ながら助ける存在。なのに今のエムの行動一つで穂乃果が窮地に立たされかねない。それだけは避けなくては。

 

 

「わ、分かった……!」

 

 

だから今は、とにかく相手の要求を呑むしかなかった。

 

 

「それでいい。あともう一つ」

 

「まだあるのか!」

 

「オレの手伝いをしろ。写真部は人気がなくてな、部員はオレだけなんだ」

 

「雑用係ってことか!」

 

「もちろんオレもそこまで鬼じゃねぇ。報酬くらいやるよ」

 

 

タイガは新たな写真を取り出すと、それをエムの前に投げた。

そこには気持ち良さそうに眠っている穂乃果が見える。

 

 

「んなッ!」

 

「練習大変なんだろうな。部室でぐっすりよ」

 

 

無防備な姿だった。

そういえば授業中に眠っているのは見たことがあるが、こんなに気持ち良さそうにしている所は見たことがない。

 

 

「オレが部室に勝手に入っても気づきやしねぇ。でも言い換えれば、それだけ頑張ってるって事だよな?」

 

「それは……」

 

「そんな頑張りをよぉ、お前のせいで崩されるのは可哀想だなー!」

 

「く、グググググッッ!」

 

「その写真はやるからさ。オレの従順な後輩になってくれよ! ド・エ・ムくん!」

 

「お前ぇえ……ッ!」

 

「じゃあオレは帰るわ。石神、また明日よろしく頼むぜー」

 

 

キレそうだった。いや、むしろ少しキレていた。

それでも理性はある。穂乃果のために、エムは全ての怒りを封じ込めた。

 

 

「お気をつけてーッッ!!」

 

「ハハハハ! 理解力があるヤツは嫌いじゃないぜ。あばよエグゼイド」

 

 

そう言ってタイガは帰っていった。

エムは唸るように叫びながら、テーブルにおいてあった穂乃果の寝顔写真を懐に収めた。

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「あ、おはよう大元帥」

 

 

ヨッシーくんは廊下の向こうから歩いてくるエムを見つけ、手を振った。

 

 

「どうしたの、今日は速い――」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」

 

「……ヵ」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」

 

 

エムは阿修羅のような表情を浮べてヨッシーくんを通り過ぎていった。

ヨッシー君はしばらく立ち尽くし、その内ポンと手を叩いた。

 

 

「あぁ、ついに民度に飲まれたか」

 

 

そして、とうのエムは部室のドアを乱暴に開いた。

 

 

「ぶち殺すタイガ! 間違えました、おはようございますタイガ先輩!」

 

「なにをどう間違えたらそうなんだよ……」

 

 

写真部に入ったエムは持っていた荷物を不服そうにタイガへ渡す。

 

 

「おー、いいねぇ。バナナオレにやきそばパンな。はいおつかいご苦労ー」

 

 

コインを弾くタイガ。五百円玉がエムの足元に落ちる。

 

 

「金を投げるなよ!」

 

「いいじゃねぇか。金はコッチが払う、釣りはお前のもの。オレ様優しい! 文句いってんじゃねぇよ」

 

「くぅぅううぅ!!」

 

 

エムは悔しげに落ちた金を拾うとポケットのなかに入れる。

 

 

「あー、それにしてもアレだ。なんかポテチ食いたくなったな」

 

「は?」

 

「まだ学校始まるまで時間あるし。学校からすぐのところにコンビ二もあるよな」

 

「おい、アンタまさか……」

 

「石神ぃ。ゴーッ!」

 

「ふ、ふざけんな! アンタ自分で買いに行けよ!」

 

 

するとタイガは伝家の宝刀。写真をチラリ。

 

 

「高坂穂乃果。電撃引退。彼氏に唆され、ミューズの絆をブレイク」

 

「ォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

怒りの咆哮を上げながらエムはコンビニへ走っていった。

その背を見ながらゲラゲラとタイガは笑っていた。

とにかく、こうしてタイガの助手となったエム。その一日は随分と多忙だった。2限目が始まる前、エムの携帯にタイガからの着信が。

 

 

「もしもし?」

 

『助手。お前次の授業、受けるな。抜け出せ』

 

「はぁ? な、なんで!」

 

『写真、高坂、引退』

 

「了解ッしましたーッッ!!」(殺す)

 

 

エムは青筋を浮べながら震える手で携帯をしまう。力が入りすぎて破壊してしまうのではないかと言うほど。久しぶりだ、ここまで苛立っているのは。

だがココは言う事を聞かなくては。エムは近くで本を読んでいたヨッシーくんへ声をかける。

 

 

「ごめん――ッ、うんこ出たそう」

 

「……え? うん? どういう事? 出たそう? 出たの? うそでしょ?」

 

「そう、だから保健室行って来る……! このままだとヤバイから」

 

「え? あ、うん? じゃあ先生に言っておくね」

 

 

適当な理由だがヨッシー君は理解してくれたようだ。

そして鳴るチャイム。エムと、同じく授業を抜け出したタイガは誰もいない廊下を歩いていた。

 

 

「姿勢を低くしろよ。誰に見つかるか分かんねーからな」

 

「なにするつもりだよ、アンタ」

 

「決まってんだろ? 撮影準備だよ」

 

 

タイガがやってきたのはアイドル研究部、そこの鍵を開けると中に進入する。

 

 

「なんでアンタが鍵を持ってるんだよ」

 

「矢澤と仲がいいんでな。鍵借りてスペア作った」

 

 

そしてなにやらゴソゴソと。

 

 

「何してるんだ?」

 

「隠しカメラだよ。携帯のアプリで遠隔操作できるんだ」

 

「な、なにしてんだ! そんなの盗撮だ!」

 

「じゃないと良い写真が撮れねーんだよ! 特に小泉と西木野、園田はカメラ向けられると妙に緊張して表情が硬くなる」

 

「だからってこんな――ッ! もしココで着替えたりしてたらどうするんだ!」

 

「ここじゃまず着替えねぇ。ちゃんと更衣室使うだろ。そもそも着替えてたとしても撮らないだけだ。あ、もしほしいなら撮影してお前にやろうか?」

 

「いるか! とにかくこんな事――」

 

「初めてじゃねぇから大丈夫だって。うるせー童貞だよテメーは」

 

「どっ!」

 

「いいか? ファンはな、偽りの無いアイツらの写真がほしいんだよ。それを提供すれば、それだけミューズの人気が上がる」

 

 

はい、おしまい。

タイガは立ち上がると、次は屋上にカメラを仕掛けに向かった。

 

 

「クロトのヤツが言った事が全てだ」

 

「なにが?」

 

「男性ファンの大半はアイドルとあわよくば付き合いたいと思ってる。性的な目で見てんだよ。当然だろ、それが男の心理だ」

 

 

より理想の姿を妄想するために様々な材料を提供する。

それが結果として人気に繋がるんだ。

 

 

「だからって盗撮は盗撮だろ! おれは許さな――」

 

「あーあ、かわいそうになぁミューズも、お前の存在が原因で解散――」

 

「さ、タイガさん。次は屋上ですね。おれがご案内します」

 

「ご苦労」

 

 

写真を見せられるとどうしようもない。

エムは大きくうな垂れてタイガと共に屋上へ行き、カメラをセットした。

 

 

「じゃあ次はこれだ」

 

「メガネ?」

 

「ああ。オレの言うとおりにしろ、助手」

 

 

昼休み。

エムはタイガから受け取ったメガネをかけて穂乃果たちのところに向かった。

 

 

「あ、どうしたのエムくん。イメチェン?」

 

「え? あ、ああ、うん。それよりちょっとお願いがあって……」

 

「どうしたんですか石神くん?」

 

「いや実はさぁ」

 

 

弁当、忘れた。穂乃果からのおにぎり、落とした。

ヨッシー、もう弁当食べてた。財布、家に忘れた。

 

 

「そっかぁ、じゃあいいよ。わたしのでよければ食べて!」

 

 

穂乃果はパンをちぎってエムに差し出す。

 

 

「私もいいですよ。好きな物を食べてください」

 

 

弁当を差し出す海未。

 

 

「私もあげる。さあ、どうぞ」

 

 

ことりも同じく。

 

 

「あ、ありがとう三人とも。助かるよ、ハハハ……」

 

 

モグモグしながら、エムは引きつった笑顔を浮かべていた。

そして写真部へリターン。メガネをタイガへ渡す。

 

実はこのメガネ、小型カメラが仕込まれているのである。

瞬きを合図にシャッターを切るように設計されており、タイガは受け取ったメガネからメモリーカードを抜き取ると、パソコンで確認し始めた。

 

 

「ほーん。っておいおい、あーんしてもらえって言っただろ」

 

「できるか!」

 

「ヘタレが。まあこれでもいいか」

 

 

一緒に弁当を食べるシチュエーションの写真が撮れた。

これを加工すれば擬似的な恋愛が楽しめるグッズになるだろうと。

 

 

「はいご苦労ー」

 

「くっそ……」

 

 

そこでエムは気づく。なにやらタイガはネットの掲示板を見ていたようだ。

そこにはいくつかの掲示板があった。そして書き込みがチラリと見える。

 

 

「メタトロン……」

 

「ああ、お前も知ってんのか。荒らし野郎だよ」

 

 

パソコンを覗き込むエム。

そこにはメタトロンがアイドルの悪口を書いているのが見える。

 

 

『アライズ踊り下手すぎww顔も可愛くねーしww』

 

『ミューズ地味すぎだろ……w』

 

『ミュータントガールズとかクソ過ぎワロンツェルww』

 

『やっぱハッピーフォー以外のスクールアイドルはカスだわww』

 

「ミューズの悪口まで書いて……! あれ?」

 

 

しかしそこでエムは気づく。

 

 

『ハッピーフォー最高。他のカスアイドルとはレベルが違います!』

 

『今度の新曲いつかなー! ハッピーフォーの曲良すぎて他のカスアイドル涙目ww』

 

『ハッピーフォーがラブライブ優勝は確定。他が優勝すればやらせだろ』

 

「コイツ、なんでハッピーフォーって言うグループだけは褒めてるんだ?」

 

「信者装ってるアンチだからだろ」

 

「え?」

 

「つまりよ。一方を褒めて他を下げれば、当然その下げられた側のファンは、荒らしが上げてるファンに良い印象を持てない訳だ」

 

「あ、つまり、ヘイトを集めているって事か!」

 

「そう。コイツはハッピフォーを応援しているように見えて、一番応援してるのはミューズなんだよ」

 

「えっ!?」

 

「見ろ。他のグループに比べてミューズに対するコメントは随分と遠慮がちだ」

 

 

一見すれば悪口にも見えるが、地味といっているだけで他のグループよりはキツくない。

何も知らない人間は当然荒らされた側を見て引き、荒らし(メタトロン)が上げているハッピフォーの印象も下がる。

しかして荒らされている側は可哀想と思い、名前が出れば注目する。

ちょっと活動を覗いてみようかなと思うわけだ。

 

 

「マナーの悪いファンを装ってるって事か!」

 

「ミノタウロスと同じだな。つか、そう、コイツがミノタウロスなんだよ」

 

「そ、それはまだ、分からないだろ」

 

「分かるぜ。だって、メタトロンはオレだからな」

 

「……は?」

 

 

一瞬、沈黙。

 

 

「はああああああああああッッ!?」

 

「まあ見てろ」

 

 

文字を打ち込むタイガ。ネームの部分には確かに『メタトロン』と打ち込まれていた。

タイガは早速、他のアイドルの中傷を掲示板に書きなぐっていく。

 

 

『コイツブスすぎだろ! アイドルなめんなww』

 

『黒子多すぎだろww きたねぇww』

 

『一人だけメチャクチャ可愛くねぇなw 脱退しろ』

 

 

続いて長文の否定。

 

 

『アライズ。なにやら人気らしいけど個人的には魅力は皆無かと感じます。そもそもスクールアイドル自体が目くそ鼻くそ。稚拙なダンスに幼稚な歌詞やメローディで見るに絶えない。アライザーは本当にアホっていうか、脳みそがないんだなぁw』

 

「あえて誤字をつくる事で余計に不快感を煽る。あと次に、別アカで擁護するぞ」

 

 

メタトロンとは別の名を使い、タイガは掲示板に書き込みを。

 

 

『はぁ? アライズ馬鹿にすんな。アライズは頂点ですけど? お前が応援してるハッピーフォーとか言う格下と一緒にすんな』

 

「こうする事でアライザーは荒らしに構う短気なヤツ、プラス、他のアイドルを下げる要因になる」

 

「印象操作を自作自演で行うのかよ……!」

 

「そう、あぁ、もちろんミューズへの応援は忘れずにな」

 

『ミューズ地味だなぁ。よく見たら、そんなに可愛くないかもなぁ』

 

『ミューズに一人ペンギンみたいな動きで踊っているヤツいるな』

 

『おい! ミューズのダンスで、これパンツ見えてね?』

 

「ランキング上位に入るには注目されるのが一番だ。こういう風に曖昧な具合にかけば人は一度ミューズを見てみようってなるだろ?」

 

「パンツってマジか……!」

 

「嘘に決まってんだろ。こういう風に書けばアホはパンツを見ようといろんな歌をチェックする。あとはパーフォーマンスで引き込めばオッケーだ」

 

 

ちなみに、よく見たら可愛くない。

つまりこれを見た人間はミューズを良く見てみようと思う。幸いミューズは容姿には恵まれている。

ならば『あれ? ミューズ全然かわいいじゃん』と、なるわけだ。

 

 

「さて、もう少し荒らしを続けるか」

 

『あのグループ、仲悪いって噂だよ』

 

『清純は気取ってたクセに彼氏いるって話だぞ』

 

『この前DQNグループと歩いてるの見たわ。あれは――』

 

「やめろ!」

 

「あ?」

 

 

タイガの手を、エムが止める。

 

 

「こんなやり方、間違ってる!」

 

「なんでだよ。潰しあいがアイドルの――、ラブライブのルールだろ!」

 

「そんなわけあるか!」

 

「おいおいウゼぇなお前。写真バラまいちゃおっかなぁー」

 

「グッ! そ、それだっておかしいだろ! おれ達はミューズを応援する側だぞ! なのになんでこんな穂乃果ちゃんを貶めるようなやり方!」

 

「決まってんだろ。オレは別にミューズがどうなろうが知った事じゃない」

 

「なにッ!?」

 

「オレはそこまで熱狂的なファンじゃないしな。もしも解散したらその時はそれまで。ドライバーとガシャットを返せばいい。オレにとっては良い暇つぶしだ」

 

「お前……!」

 

「まあでも、興味が全くないわけじゃない。だから思うんだ。高坂っているか?」

 

「はぁ!?」

 

「ミューズってよぉ、別に三人でもよくね? 三年だけで完成品だろ」

 

 

女に必要なものは三つであるとタイガは説く。

 

 

「かわいさ、美しさ、エロさだ」

 

「ッ」

 

「矢澤はあざとさを理解してるから可愛さはオッケーだろ? 絢瀬はご存知ロシアの血。東條はあの胸だ。もうクリアしてんだよ」

 

「そんな事――」

 

「変に多くても不人気女が出てくるだけだろ。無駄は切り捨てれば良い」

 

「ミューズは9人でミューズだ! いらない子なんていないだろ!」

 

「分かってるよ。別にこれは個人的な意見だ。だからオレはこうしてちゃーんとミューズの人気を上げてあげてるんだよ」

 

「盗撮をしたり、ネットで他のアイドルの悪口を書く事がかよ!」

 

「ああ、そうさ!」

 

「お前ッ、いい加減にしろよ! どうして純粋に応援してあげる事ができないんだ!」

 

「決まってんだろ! 純粋さとは無縁の世界だからだよ!」

 

 

タイガは笑い、自分が欠片も間違っていないといった様子であった。

 

 

「アイドルほどクソな職業も中々ねーぜー?」

 

「ふざけるな! そんな手を使わなくても、穂乃果ちゃん達は頑張ってる! みんなもそれを分かってくれる!」

 

「馬鹿が! この世は印象操作によって成り立ってる!」

 

 

三年は才能があるといったが、あくまでもスクールアイドルだけの話だとタイガは笑った。

 

 

「ロシア人はすぐブスになる」

 

 

絵里の事を言っているんだろう。

 

 

「東條は胸しか褒める所がない」

 

「はぁ!?」

 

「矢澤には、そもそも才能がない。あんな奴らはすぐに終わりだ」

 

 

だったら、せめて、今は夢を見せてあげる。

それがタイガは優しさであり、マスクドライバーの目指すところと言った。

 

「どんな手を使ってもミューズを一位にすればいい。アイツらに夢を見せてあげることがオレ達の役割だろ? だったらテメェもツマンねぇ綺麗ごとぬかしてないで、他のアイドルぶっ潰してミューズのランキング上げる方法を考えろ」

 

「他のアイドルを下げて得た一位なんて、穂乃果ちゃんたちが喜ぶと思ってんのか!」

 

「知るかよ。バレなきゃいいだろ。つうかそもそもオレがやってるのはネットで他のグループのアンチコメント書き込んでるだけだ。ネットの中傷なんざどこにでもある便所のらくがきと一緒だろ。こんなもんで崩れるくらいのアイドルグループなら、さっさと消えたほうがいいんだよ」

 

「お前ぇえ……ッ!」

 

「ったく、馬鹿な野郎だ。つうかそれよりよ、オレがメタトロンだってバラしたらぶっ殺すぞ。分かったな」

 

 

写真をチラつかせながらタイガは笑った。

 

 

「グッッ! グゥウウウ……!」

 

「ハッ! 明日は祭日だろ。お前も出かける準備しておけよ。お呼び出しがきっとあるぜ」

 

「分かった……!」

 

「ははは。いいものが見れるかもな」

 

「ッ?」

 

 

タイガはそれ以上何も言うことは無かった。

結局エムとしても写真がある以上は刺激できない。拳を握り締めながらもその場は立ちさるしかできなかった。

こうして放課後になる。

 

 

「会長ォオオオオオオオオオオオ!!」

 

「わ!」

 

 

いざ帰ろうとしたヒイロに衝撃が走る。みればエムがしがみ付いており、おいおいと涙を流している。

 

 

「いじめです会長! 悪質ないじめが発生しています。もうおれは耐えられません。お願い助けてぇぇえぇぇ!」

 

「ど、どうしたんだエムくん」

 

「これ以上アイツといるとおれの中の殺意がはじけりゅぅう! あッ、今日の放課後タイガでもぶっ殺そうッかな!」

 

「お、おちついて! 何があったんだ? 話を聞こう」

 

 

と言うわけで十分後、二人はエムの部屋に。

 

 

「――なるほど。まったく、卑怯な男だ」

 

 

ホールケーキをナイフとフォークでいただきながらヒイロは鼻を鳴らした。

エムはここにいたるまでの経緯を全てヒイロに話すことに。

 

 

「会長、どうしたらいいんでしょう……!」

 

「ふむ。やはりまずは写真を何とかするしかないね」

 

 

そこでヒイロはティッシュで口の周りについていたクリームをぬぐい、唸る。

 

 

「しかし一つ引っかかるな」

 

「なにがです?」

 

「タイガのヤツはテイパーゲームやミューズにそれほど入れ込んではない」

 

 

興味があるとは言っていたが、終わるならいつ終わっても良いと言う態度だった。

 

 

「そんな人間がこんな手を使ってくるとは。それも理由が俺達の戦力を見てなんて」

 

「そ、それもそうですね」

 

 

ガッツリ勝ちに来ているじゃないか。

それにメタトロンの件だって、逆を言えば『あんな手を使ってでも勝ちたい』と取れる。

 

 

「まあ、いずれにせよ事情は分かった。俺に任せろ」

 

「本当ですか……!」

 

「ああ。ただ少し時間が掛かるかもしれない。最悪、明日は耐えてくれ」

 

「分かりました。すいません、助かります会長」

 

 

 

翌日。電車に乗ってすぐにある遊園地。

その隣にある大きな室内レジャープールにミューズの姿はあった。

 

 

「はぁー、あったかいねぇ」

 

 

南国をモチーフにしたテーマパーク。全て温水となっており、肌寒い季節でも快適に泳ぐ事ができる。

しかしふと、穂乃果が気づいた。

 

 

「あれ? 誰もいない……」

 

 

祭日ともなれば、それなりの人が集まるはずだが、今日は見渡す限り人一人いない。

 

 

「当然よ、今日は私達の貸切だもの」

 

「えぇ! 本当?」

 

「そう。我李奈さんが用意してくれたの。今日はココで撮影するわよ――って昨日メールで説明したでしょ!!」

 

「えへへ、そうでした……!」

 

 

舌を出す穂乃果。

所謂水着グラビアである。海未や花陽は恥ずかしそうに体を隠しているが、凛やことりは意外とノリノリである。

 

 

「撮影が終わるまで泳いじゃダメよ。髪ぬらすと面倒なんだから」

 

「でもカメラマンさんは?」

 

 

キョロキョロとあたりを見回す花陽。それらしい影は無い。

 

 

「さすがにそこまではお金が――って事で、コッチが用意したわ」

 

「用意? にこちゃんが?」

 

 

髪を弄りながらアンニュイな表情を浮べている真姫。

 

 

「ええ。もう少しで来ると思うから、ちょっと待ってなさい」

 

 

腕を組むにこ。

そう、そのカメラマンがタイガと言うわけである。

事実、既にタイガはプールにやってきていた。

レジャープールは広く、ミューズがいる区間である『キッズゾーン』とは別の『ウォータースライダーゾーン』にてタイガと、呼び出されたエム、そしてエムについてきたヒイロは立っていた。

 

 

「おいおい、おまけまでついてくるとはな」

 

「フン。お前が俺の友人をこき使っていると聞いてな」

 

「そんなコエー顔すんなよ会・長・さん! ミューズの水着が見れるんだ。テンション上げていこうぜ」

 

 

スライダーがある高台から下を見ると、遠くの方に小さな9人が見えた。

水着のミューズたちと普段着のエムたち。その間には大きな壁があるのだ。

 

 

「ところで何故俺達はココにいる?」

 

 

実はミューズが来る前にすでにプールに到着していたタイガたち。にも関わらずタイガはミューズに合流する気は無い。

 

 

「もうすぐ来るんだよ」

 

「ッ、何が!」

 

「決まってんだろ」

 

 

タイガは時計を見る。

そしてニヤリと唇を吊り上げた。

 

 

悪役(ヴィラン)だよ」

 

 

茶色と黒が混じった幕が通り抜ける。

刹那、轟音が響いた。天井に張り巡らされていたガラスが吹き飛んだのだ。

破片と共にプールサイドに着地したのは、どこからどう見ても人間ではなかった。

ヴィラン、リボル軍曹。頭部には巨大なロケット砲。右腕にはガトリングガン、肩には手榴弾。

左腕にも小さな砲身がある、まさに全身凶器のモンスターである。

 

 

「会長!」『マイティアクションエーックス!』

 

「ああ」『タドルクエスト!』

 

 

エグゼドライバーとブレイブドライバーを装着し、ガシャット起動させるエムとヒイロ。

一方でグレーベースのカラーリングに赤いレバーの、スナイプドライバーを装着するタイガ。

そしてガシャットを銃のように構え、銃口に当たる部分を自らのこめかみに突きつけた。シルエットを見れば、それは拳銃自殺のソレである。

そして引き金を引くように、ガシャットを起動させた。

 

 

『バン! バン! シューティング!』

 

 

タイトル画面が広がると、無数のドラム缶が出現してプールに設置されていく。

 

 

「変身!」『ガシャット!』

 

「変身」『ガシャット!』

 

「変――ッ、身」『ガシャット!』

 

 

エムは左斜め上にガシャットを持っていき、左手でそのガシャットを掴み取り、振り下ろすようにドライバーにセットした。

ヒイロは左手に掲げたガシャットを右に振り払い、そのまま真横に振るう。そしてそのままドライバーにセットした。

タイガはガシャットを銃に見立て、まず一回転、そして硝煙を吹き消すように銃口部分へ息をフッと吹きかける。

そしてそのまま銃を回しながらドライバーへセットした。

 

 

『レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?』

 

 

回転するキャラクターアイコン。

エムは左手の甲でアイコンを左へ吹き飛ばす。

ヒイロは右手を伸ばし、アイコンを右横へ吹き飛ばす。

タイガは薬指と小指を曲げ、ひとさし指と中指を伸ばして銃の形をつくる。

そして真後ろにあったアイコンを撃つジェスチャーを取る。するとそれがセレクトとして認識されたのか、アイコンが後ろに吹き飛び、タイガの体が光に包まれた。

 

 

『アイム ア エグゼイド!』

 

『アイム ア ブレイブ!』

 

『アイム ア スナイプ!』

 

 

現われる三体のマスクドライバー。

エグゼイド、ブレイブ、そしてタイガが変身したスナイプ。

 

 

「さあ!」『ガシャコンブレイカー!』

 

「………」『ガシャコンマグナム!』

 

 

ハンマーを取り出すエグゼイドと、銃を取り出すスナイプ。

 

 

「ノーダメージでクリアし――」

 

 

スナイプは銃口をエグゼイドに向けて引き金を引いた。

 

 

「うわぁあ!」

 

 

エグゼイドの装甲から火花が上がる。

悲鳴をあげて倒れるエグゼイド。一方で同じようにブレイブを撃つスナイプ。

とは言え、ブレイブは持っていた盾で銃弾を防いだ。

 

 

「何をする」

 

「まあ待てよ。気にならないか、何か一つ」

 

「……タイガ、何故お前がヴィラン到着を知っている」

 

「オレがクロトにヴィランの妨害方法を提案したんだよ!」

 

「妨害方法だと?」

 

「ああ。まあ見てろ。アイツ、いつもと違うからよ」

 

 

立ち上がったエグゼイドとブレイブはリボルを凝視する。

悲鳴を上げるミューズたち。しかし一瞬驚いたものの、皆これがアポロンTVのワンコーナーだと理解した。

凝ったドッキリ、しかしリボルの攻撃は誰もが予想していないものだった。

 

 

「くらえッ!」

 

 

リボルはガトリングガンから大量の弾丸を撃ち出す。

皆反応し逃げ出す中、怯んでいたにこは全身にその銃弾を受けた。

 

 

「ぎゃああああああああああ!!」

 

 

一瞬ヒヤリとするエムとヒイロだが、すぐに気づく。

にこには傷一つついていないし、痛みも無かっただろう。なぜならばリボルのガトリングガンから放たれたのは『液体』だったからだ。

 

 

「な、なによこれぇ!」

 

 

白濁したネバネバでヌルヌルの液体が、にこの全身を汚す。

危険な液体をかけられたのかと思ったが、特に変な匂いはしない。当然だ、これはただ白っぽいローションなのだから。

そう、ローション。リボルはその銃口から次々にローションを噴出していった。それらは逃げ惑うミューズたちに次々と命中していき、全身を濡らしていく。

 

 

「ひゃあ! なにこれぇ! ぬるぬるにゃぁ……!」

 

 

髪にまで白い液体が纏わりつき、さらにそのヌルヌルさ故にまともに立てなくなる。

へたり込む凛。それだけじゃなくて穂乃果も滑って尻餅をついていた。

大きく晒された肌色の太ももに絡みつく白濁のローション。それがより一層、穂乃果の太ももを光らせる。

 

 

「………」

 

 

白目をむいて固まるエグゼイド。

中腰になりながらヒョコヒョコと後ろに下がっていく。

一方でスナイプの笑い声が響いた。

 

 

「いいねぇ! エロいねぇ! 上出来だぜリボル!」

 

「どういう事だ?」

 

「クロトの言った事、覚えてるか? アイツはアイドルの魅力はどれだけ欲望を満たしてくれるかッつってたな」

 

 

スナイプは赤い瞳でミューズ達を見ていた。

 

 

「人間の三大欲求って知ってるか?」

 

「食欲、睡眠欲、性欲か」

 

「アイドルが食欲満たしてくれるか? おねむの手伝いでもしてくれんのかー? 違うよなぁ、アイドルが満たしてくれるのは性欲だ!」

 

 

それは最も簡単にラブライブを勝ち抜く方法だとスナイプは訴えた。

いや、ラブライブだけじゃない。プロでも勝ち抜く方法だ。

 

 

「あいつ等の最大の武器は若さだ! 女子高生が半裸で白濁塗れになってんだ。それを見た業界のオッサン共はもうビンビンだぜ! ひゃははは!」

 

「ど、どういう事だよ!」

 

「お前に言っただろエグゼイド。アイドルほどクソな仕事なんてねぇってよ!」

 

「まさか……!」

 

「枕だよま・く・ら! おっさんの上で腰振ればラブライブも優勝よ。そうでなくても、良いお仕事はゲットだぜ!」

 

「お前! どこまで穂乃果ちゃんたちを馬鹿にすれば気が済むんだ!」

 

「何キレてんだ! ああそうか、お前の愛しい穂乃果ちゃんがいたっけな!」

 

 

つかみ掛かるエグゼイド。

スナイプとの距離が近づく。

 

 

「でももしかしたらもうヤッてるかもな! お前の知らない所で穂乃果ちゃんはガバガバかもよー!」

 

「テンメェエ!!」

 

 

エグゼイドの中で何かがキレた。

拳を振るいスナイプへ殴りかかるが、その時腹部に衝撃、スナイプはガシャコンマグナムを連射し、エグゼイドを引き剥がす。

 

 

「清純であれ! アイドルの絶対条件だがコレほど破られる嘘もねーよな!」

 

 

恋愛禁止こそ処女性が重要視されれるアイドルの尤もたるルール。

しかし律儀に守る者がどれだけいる? 守らせぬ者がどれだけいると思っているのだ。

ましてや恋愛禁止こそファンに対する性の捌け口であれといっているようなものではないか。

 

 

「ましてやそれを信じてるドルオタ共。クソ笑えるぜ。間抜けにも程がある!」

 

「ふざけんな! ミューズだけじゃない、スクールアイドルたちは、いや本当のアイドルたちだって真面目に頑張ってる! お前の勝手な想像でイメージを下げるな!」

 

「その通りだ。お前は間違っているスナイプ。純粋な彼女達がそんな事に手を出すわけがない。それは他の娘達も同じだ」

 

「ハハハ! 笑えるぜ!」

 

 

一蹴。

 

 

「アイドルにどんだけ夢見てんだよテメェらは」

 

 

ここで少し、ミューズ達の様子を見てみよう。

 

 

「うぇぇ、ベトベトだよぉ」

 

 

ぐったりとへたり込む花陽。

既に全員ローションを受けたようで、みな床に倒れるか、へたり込んでいる。

立ち上がろうとしてもうまくいかず、丁度今真姫が尻餅をついた。

 

 

「いったぁ……! もうサイアク!」

 

「べっとりやぁ……!」

 

 

おまけに希にいたっては顔面にローションを受けており、白濁塗れの顔を拭っていた。

そして一番酷いのはにこだ。全身髪までドロドロになっており、白い肌のいたるところに白濁が絡み付いている。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ!」

 

 

引きつった表情でにこは叫んだ。

 

 

「うがぁああ! なんなのよもぉおお!」

 

 

叫び。そしてガチャリと『解除音』。

ミューズの人数が多ければ多いほど、怒りやすい者が多いほど、当然蓄積されるストレスエネルギーは増えていく。

全身ドロドロになる不快感、それは間違いなくミューズの心に強い苛立ちを齎したようだ。

スナイプはレバーを引いて装甲を吹き飛ばす。

 

 

「ウンコもすればセックスもする。それが人間だろ!」『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

 

現われたのは右目を前髪のようなパーツで隠し、蛍光イエローのローブを纏った戦士、スナイプ・レベルツー。

 

 

「そして死んだら燃やされ骨になる。アイドルだって同じさ!」『ババンバン! バンババン! バンバンシューティング!」

 

 

人は人だ。絶対ではない。誰もが仮面を被る中、仮面しか見ていない人間に何が分かるというのか。

分かっていたつもりであったとしても、それは仮面を細部まで理解しただけにしか過ぎない。

その素顔が仮面と同じなのか、全く違うものなのか、他人は決して理解することはできない。

それに今は白であったとしても、黒の世界に入れば穢れに染まるかもしれない。

 

 

「アイドルの世界なんてな、所詮、金と色欲に溢れた薄汚ねぇ世界なんだよ。枕やお持ち帰り。面倒だよな女ってのは!」

 

「下らない」

 

「あ?」

 

「彼女達の品位を落とすな。幼稚なんだよ、お前」

 

 

ブレイブはスナイプを激しく睨みつけた。

 

 

「ははは、なんだよ本当の事だろうが」

 

「アホかお前は」『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

 

同じく装甲を吹き飛ばすブレイブ。

 

 

「真実や正論でも言って良い事と悪い事があるだろ。高校三年にもなってそんな事も分からないのか」『タドルメグル・タドルメグル・タドルクエストォー!』

 

「おおー、学がないもんでねぇ」

 

「フン。とにかくいずれにせよ、こんなお喋りを続けるつもりはない。俺達の役目はテイパーゲームを遂行する事だ」『ガシャコンソード!』

 

 

芸能界の裏事情を何も知らない人間が語る時間ではないのだと。

 

 

「だよなぁ」【B――】

 

 

ガシャコンマグナムのBボタンを長押しするスナイプ。

すると彼の前にホログラムの画面が広がった。円形のモニタ。中央には何も書かれていない丸い部分が。

そしてそれを囲むように四分割されたモニタがある。それらには銃弾の絵柄が書かれており、スナイプはガシャコンマグナムをコントローラーにして一つの銃弾を選択(うっ)た。

 

そして再びBボタンをプッシュ。

すると装填音と共に、選択された銃弾がガシャコンマグナムにリロードされる。

今選んだ弾丸は連射弾(マシンガン)、先程は一度引き金を引くと一発弾丸が発射されたのに対し、今は引き金を引き続けることで光弾が連続発射されるようになる。

そうやってスナイプは無数の光弾をブレイブへ撃ち込んだ。

 

 

「ッ!?」

 

 

かろうじて盾で銃弾を防ぐブレイブ。

しかしそこへスナイプの飛び回し蹴りがヒットする。足が盾を弾き、ブレイブの胴体に光弾が次々に命中し、火花が吹き上がる。

 

 

「おらよッ!」

 

「ぐあぁ!」

 

 

そして思い切り蹴り。

ブレイブは柵を吹き飛ばすと、そのまま真下へと落ちていく。

 

 

「おい!」

 

 

声を荒げ、エグゼイドはスナイプの腕を掴む。

 

 

「なにするんだよ! お前!!」

 

「潰しあいがアイドルの本質だろうが。オレ達もマネすりゃ良いんだよ」

 

 

そう言って腕を振り払うと、同じく無数の光弾をエグゼイドへ命中させていく。

そもそも、テイパーゲームのルールはヴィランを倒すことにあるが、なにもマスクドライバー全員が仲良く協力プレイをしなさいとは言われていない。

 

なぜならエグゼイドとブレイブは同じ二年担当だが、スナイプは違う。

つまりエグゼイドとブレイブ、どのどちらかがヴィランを倒しても齎される恩恵は同じなのに対し、スナイプは自分が止めを刺さなければ三年には恩恵は訪れない。

だからこそスナイプはエグゼイドを陥れたのだ。

 

 

「エグゼイド、分かってると思うがオレの邪魔をするなよ。じゃねぇとお写真がみんなの目に触れることになるぜー!」

 

「グッ!」

 

「穂乃果ちゃんのファンに殺されちまうかもなー! ヒャハハ!」

 

 

スナイプは高台を飛び降りるとリボルを倒すために走り出す。

最後に置き土産の言葉。

 

 

「まあもしかしたらもう貫通済みかもしれねぇけどな。業界人のパパとかいるんじゃねぇの? ハハハハ!」

 

 

それをジッと見ているエグゼイド。

拳をグッと握りしめ――。

 

 

『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

『マイティジャンプ!』『マイティキック!』

 

『マイティマイティアクション! エーックス!』

 

 

装甲が弾け、刹那、エグゼイドはウォータースライダーへ飛び込んだ。

寝転ぶ事で最高速に、水しぶきを上げながらあっと言う間にゴールへと到達する。

プールへ飛び込み、底へつくと思い切り地面を蹴って跳躍。大量の水を巻き上げながらエグゼイドはスナイプの前に着陸した。

 

 

「!」

 

「スナイプ、忘れ物だぜ!!」

 

「はぁ?」

 

 

直後、エグゼイドの拳がスナイプの顔面を捉えた。

 

 

「ぐあぁあッ!」

 

 

吹き飛び、ジャグジーコーナーに倒れるスナイプ。

すぐに水を纏いながら起き上がり、ガシャコンマグナムから光弾を発射する。

しかしそこにエグゼイドの姿は無い。跳躍で飛び上がると、ヤシの木を模したオブジェの真上に着地する。

 

 

「テンメェエ! 何してるか分かってるだろうな!!」

 

「コッチの台詞だ! アンタはもう許さないぞ!」

 

 

アリアドネを起動させるエグゼイド。

ブレイブとの通信会話を開始する。

 

 

「会長、スナイプはおれが止めます」

 

「わかった、任せたぞエムくん。リボルは俺が倒す!」

 

 

立ち上がり、走り出したブレイブ。

炎の剣を構えて全力疾走、途中、ドラム缶や宝箱を破壊しながらアイテムを回収していく。

 

→たたかう

 まもる

 どうぐ

 さくせん

 おやつ

 にげる

 

【22】

 

 たたかう

 まもる

→どうぐ

 さくせん

 おやつ

 にげる

 

【B】

 

→スピードアップ×1

 体力回復×1

 変化無効×1

 

【22】

 

 スピードアップ×1

 体力回復×1

→変化無効×1

 

【B】

 

 だれに?

→エグゼイド

 ブレイブ

 スナイプ

 

【2】

 

 だれに?

 エグゼイド

→ブレイブ

 スナイプ

 

【B】

 

 

「アイテムを使用する」

 

 

変化無効のエナジーアイテムが発動された。

状態変化やフィールドの変化に影響を受けなくなる効果だ。おかげでローション塗れのプールサイドもなんなく走り抜ける事ができた。

 

 

「ッ! お前は!」

 

「ヴィラン、お前を排除する!」

 

「ブレイブさん!」

 

 

ミューズ達の間を走り抜けるブレイブ。

一方でリボルもブレイブに気づいたのか、ローションではなく実弾状のエネルギーを銃口から発射した。

ガトリングや銃から迫る弾丸、しかし盾でそれを防ぎながらブレイブは確実に距離を詰める。

そして範囲内に入ると前転。銃弾を回避しながらリボルの胴を切り抜けた。

 

 

「ぐッ!」【HIT!】

 

 

怯むリボル。

それを遠くに見てスナイプは舌打ちを漏らした。

ブレイブにリボルを倒されるのはよくない展開だ。はやくエグゼイドをなんとかしなくては。

 

 

「ハアアア!」『ガシャコンブレイカー!』

 

 

一方エグゼイドはハンマーをふるってスナイプを足止めしようと。

スナイプは側宙でハンマーを交わすと、水を撒き散らしながら銃弾を発射する。

エグゼイドもまた跳躍で銃弾を交わすと、一旦スナイプと距離をとって様子を伺う。

 

 

「なあブレイブさんよ! リボルを倒すの早くねーか!」

 

 

アリアドネを起動し、脳内会話を行いつつスナイプはエグゼイドを追いかける。

 

 

「ヴィランにもう少しミューズを襲わせる。これ常識っしょ?」

 

 

もっとローション塗れにして、なんなら少し水着もはだけさせればもっと盛り上がるのに。そんなスナイプの言葉にブレイブは舌打ちで返した。

 

 

「レベルツーになれた時点で十分だ。それにお前の低俗な目的にミューズ達をつき合わせるのは俺のプライドが許さん!」

 

「なに言ってんだよ! 大衆は下品な目で女を見るぜ。今のうちに慣れておくのも勉強だろ!」

 

 

エグゼイドは跳躍でプールを飛び越えると、流れるプールに飛び込んだ。

 

 

「オレは心配してるんだぜ? アイドルなんてクソみたいなモンに憧れを抱いてるあいつ等のイカれたオツムを治してあげるのさ」

 

 

プールの中を潜水するエグゼイド。そこをに銃弾の雨を降らすスナイプ。

つまりスナイプが言いたいのは――、アイドルの世界は汚いから、初めからもっと下品な方向で行けばいい。

 

 

「それがイヤなら――、アイドルなんて目指さなくて良い」

 

「お前はどうしてそんな捻くれてるんだよ!!」

 

 

エグゼイドは水中を猛スピードで泳ぎ、銃弾を回避しながらチャンスを伺った。

そして頃合を視たのか、地面を蹴ると再び大きな水しぶきをあげて飛び出した。

 

 

「どうして素直に応援して上げられないんだ!」

 

「生憎、オレはアイドルが嫌いなモンでね!」【B】

 

「なんだと……!?」

 

 

銃弾変更。ガシャコンマグナムからワイヤーとアンカーが射出された。

アンカーが刺さった場所はウォータースライダーの高台。ワイヤーが引き戻され、スナイプは一気に高台の上に降り立つ。

 

 

「楽な仕事だよな。歌は口パク、スポンサーとヤれば仕事はホイホイ!」【A】『ズ・キューン!』

 

 

ハンドガンが展開し、ライフルモードに変形。

スコープレンズを覗くとチャージ開始。スナイプはエグゼイドの足元を狙い引き金をひく。

大きな発砲音と共に圧縮された高エネルギーの光弾が発射され、エグゼイドはかろうじて前転で回避を行うが、すぐ背後に着弾した弾丸は爆発を巻き起こし、その爆風でエグゼイドは地面を転がる。

 

 

「ぐッ! くぐぅう!」

 

 

倒れている暇は無い。スナイプを見れば再びチャージを開始している。エグゼイドは立ち上がると、全速力で高台を目指す。

直後次々に巻き起こる爆発。エグゼイドはジグザグに走る事でなんとか回避を成功させている。

 

 

「意外とセンスあるじゃねぇか」

 

 

笑うスナイプ。

一方でアリアドネを使用し、ブレイブへ声を投げる。

 

 

「おい会長さん。聞いてただろオレの話。リボルへの攻撃は止めな」

 

「ふざけるな、お前の話は聞いてない!」

 

 

見よ、ブレイブの剣がリボルの体に無数の炎痕を残す。

 

 

「唸れ、炎帝の咆哮!」【B】

 

 

赤く発光するガシャコンソード。

ブレイブはそのまま剣を、下から上へすくい上げる様にして振るった。

 

 

「スカーレットクラック!」

 

 

ライダーアーツ、スカーレットクラック。

地割れのように広がる赤い亀裂、そこから炎が吹き上がり、リボルの体を焦がしていく。

 

 

「ぐあぁああ!」

 

 

炎が体に纏わりつき、リボルはそれを消すためにプールへ飛び込む。

追撃を行おうと足を前に出したブレイブ。しかしその脳内にタイガの声が纏わりついた。

 

 

「だぁかぁらぁよぉ! なぜ拒む! ラブライブなんて面倒な事しなくても、一気に芸能界を駆け上がるチャンスだろ!」

 

「お前は根本を間違っている。その階段の登り方は、ミューズが望んでいる道なわけがない! 彼女たちは夢と希望を歌う。その姿を皆に見せたいんだ。お前のような下劣な人間が、彼女達の輝きを汚すな!」

 

「夢ぇ? アホかよお前! 大衆を楽しませるのがアイドルの仕事だろ!? だったらほれ、多くの男性ファンを楽しませるのが一番だ」

 

 

性的な姿を見て喜ばない連中はいない。口ではどうとでも言えるが、本能が喜びを放つのだ。

 

 

「そんでよ、枕がバレれば次はAV堕ちか? そうすりゃもっとネットや世間は盛り上がるぜ!」

 

「お前はどこまで腐ってる!」

 

「そうかなぁ? どうだろうな、試しに園田を見てみろよ!」

 

「はぁ? 何を言って……!」

 

 

つい、ブレイブは釣られて海未の方を見てしまう。

立ち上がろうとして力をこめたが、無駄だったのか、海未は疲れたように仰向けに倒れていた。

それなりに露出の多い水着だ、肌はキラキラと光っており、倒れている海未は疲れているのか呼吸を荒げている。

 

 

「………」

 

「どうだ! 分かるだろ! オレの言っている事の意味!」

 

「馬鹿言えよ! 会長がお前の言葉に惑わされるわけないだろ!」

 

 

吼えるエグゼイド。そういえば三人で話し合う際、ブレイブは性的な目でミューズを見ていないと言っていた。

きっとブレイブの事だ、本当なんだろう。

なにより――

 

 

会長(ブレイブ)はな! 人間ができてるんだよ!」

 

「ほーん」

 

 

エグゼイドからは見えないが、スナイプは高台から確かに確認していた。

中腰になり、剣を杖にしているブレイブを。

 

 

「――ヵ!」

 

 

改めて周りを見る。ミューズたちは当然、全員水着。

とくに海未やことりと言った距離の近い人間が露出の高い格好をしている。

特に海未はそう言ったイメージはなく、普段は常に露出を抑えているスタンスだと思っていただけに――、これはギャップが……。

 

 

「んっ!」

 

「!?」

 

 

海未が小さく呻いた。

疲労からだろうが、今の格好からしてみれば嬌声にしか……。

 

 

「欝だ、死のう……!」『ガッチョーン』

 

「会長? 会長!? かッ、会長ォオオオオオオオオオオ!!」

 

「ハハハハハハハ!!」

 

 

レベルダウンしたブレイブは膝を地面について崩れ落ちた。

 

 

「会長! どうしたんですか会長!」

 

「俺は最低な男だ……、ゴミクズ以下の害虫なんだ……」

 

「落ち込みすぎだろ! 何があったんですか会長!」

 

「ギャハハハ! それでいいんだよブレイブ! それが男の(さが)ってもんだろ!」

 

「ぎゃああ!!」

 

 

動きを止め、ブレイブの方を振り返ったエグゼイドへ打ち込む弾丸。

背が爆発し、エグゼイドは手足をバタつかせながら大きく吹き飛びプールの中に落ちた。

銃弾を放ったスナイプは高らかに笑い、へたり込んでいるブレイブを見ている。

 

 

「ぷはっ! か、会長しっかりしてください! もっと自分を信じて!」

 

 

だがプールから這い出たエグゼイドの言葉。

それを聞き、ブレイブはハッとして立ち上がる。

 

 

「そう、そうだ! 俺は惑わされない!」『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

 

再びレベルツーとなり立ち上がるブレイブ。

一方、再び脳内にスナイプの言葉が。

 

 

「歌と踊りだけやってりゃいいアイドルが水着を着るのは何故だ? 分かりやすいセックスアピールだろ!?」

 

「そうかもしれない。欝だ……、死のう」『ガッチョーン』

 

「会長!」

 

「そうだ! 俺は何を考えてるんだ!」『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

「お前だって園田を見て興奮したんだろ!? 他の人間も当然そうなるよなぁ! 中学生のボウズ共なんざアレでサルみたいに抜くぜ!」

 

「俺の海未くんで……! 欝だ……!!」『ガッチョーン』

 

「会長ッッ! そもそも海未ちゃんはアンタのものじゃない!」

 

「ハッ! その通りだ! 俺は何て低俗な!」『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

「だがそれが人気に繋がるんだぜぇ? 業界のオッサン共もきっと抱きたくなるぜぇ! バンドマンも舌なめずりさ! お持ち返されれば話題になるかもなぁ!!」

 

「富士の樹海……、東尋坊――……、うぅうぅ」『ガッチョーン』

 

「会長ォオオ!!」

 

「ギャハハハハ!」

 

 

良い調子だ。スナイプは飛び跳ねながら笑い始める。

この煽りの最大の目的はスナイプの考えている事を明かす――、と言う事じゃない。

 

まずはなによりブレイブとエグゼイドの行動を制限する事だ。

これはあくまでもテイパーゲーム。リボルを倒せばそれだけ担当学年に報酬が入る。

スナイプの狙いは初めからそこだ。エムに接触したのも今ブレイブを煽っているのも全ては心を砕きテイパーゲームのやる気を削ぐ事にある。

 

 

スナイプは幸運だった。

幸いにもエムは穂乃果、ヒイロは海未、それぞれ推しメンがいる状況下。

さあ問題だ。ドルオタにとって一番心が揺らぐのはなんだろうか?

 

決まっている。先程も言ったがその処女性が疑われる事だ。

これはクロトも言っていたが、アイドルを応援しているものは心のどこかに『あわよくば付き合いたい』もしくは『付き合えるものなら付き合ってみたい』と思ってしまっているものなのだ。

そう言った者達はアイドルは純潔なものだと信じて疑わない。

そもそも処女で『付き合った事がない』と言う前提を既に頭の中に入れてしまっている。

 

 

(中古の人形より、新品のお人形さんの方が欲しいもんなぁ)

 

 

交際のニュースが出ればネットは荒れる。中には面白がって名言を残そうとしている者もいるが、中には本当にショックを受けている者もいる。

そういう世界だ。それはどこでも同じはず。アイドルの中には恋愛禁止なんてスローガンを掲げているところまである。

ゆえに、スナイプはそこを狙う。

 

 

「お前もだエグゼイド。本当はぶっかけられた高坂の所に行きたいんだろぉ?」

 

「ざけんなッ! おれは、おれは――ッ、違う!!」

 

「お前は違くても他のヤツはどうかな? 今日のテイパーゲームが放送されれば猿共は高坂で抜くぜぇ!」

 

「ッ」

 

「高坂はミューズのリーダーだ。それだけ注目度も高い! 言ったよな、もうヤリまくってるかもしれないってよ! 間違いじゃねぇかもな!」

 

「ッッ」

 

「調べたぜぇ! お前ら幼馴染なんだってな! 何? お前もしかして高坂が好きなんじゃねぇの?」

 

 

動きが鈍るエグゼイド。

そう、揺れている。ブレている。

 

 

「残念だなぁ。高坂はもう別の男が手ぇつけてるよ。なんだったらテメェの家にダブルピースしてるビデオレターでも届くんじゃねぇの!?」

 

 

発砲。

圧縮光弾は一瞬でエグゼイドの胸部に直撃すると爆発を起こして再びエグゼイドを大きく吹き飛ばす。

 

 

「ちょろいな。童貞共はこれだから困る」

 

 

しかしそこで凛とした声がスナイプの脳に響いた。

 

 

「なるほど。そういう事か」

 

「ッ!」

 

「視えたぞ。貴様の狙いがな」

 

「!」

 

 

スナイプが視線を移したのはブレイブのところだった。

そこにはムクリと立ち上がるブレイブが。同じくしてリボルがプールから這い上がってくる。重い体ゆえ、なかなか苦労したのだろう。

しかしそこへ炎の斬撃。再びリボルは悲鳴をあげてプールの中に沈んだ。いや沈められた。

 

 

「助かったエムくん。キミのおかげで客観的に物事を見ることができたよ」

 

「ど、どういう事ですか会長!」

 

「スナイプは俺達を動揺させようとしている。そういう事さ」

 

(チッ、羽水のヤツ、さすがに馬鹿じゃ終わらねぇか)

 

「ヤツもまた結局はテイパーゲームの参加者と言うわけか」

 

「うるせぇ!!」

 

 

スナイプは照準をブレイブに合わせると引き金を引いた。

発射される光弾。しかしブレイブはそこへ盾を重ねていた。

衝撃、ビリビリとした感覚に骨が軋む。しかしブレイブは確かに光弾を防御していた。

 

 

「悪いな鋼タイガ。この羽水ヒイロ、いつまでも掌で踊り続けるほど愚鈍ではないぞ!」『ガッチャーン!』『レベルアーップ!』

 

 

弾け飛ぶ装甲。

 

 

「俺の進化についてこれるか、スナイプ!」『タドルメグル・タドルメグル・タドルクエストォー!』

 

「偉そうに!」

 

 

再び弾丸が飛んでくる。

しかしブレイブは体を逸らし、見事に弾丸を回避して見せた。

 

 

「なにッ!」

 

「フン。明鏡止水により無我の境地にたどり着いた俺は、まさに泰然自若なり! 貴様の言葉などもはや心には届かぬ!」

 

「クソッ! なんだよそれ!」

 

「さすがは会長!」

 

「エムくん。冷静だ。冷静になるんだ。低俗な言葉に惑わされるな。キミはキミが信じるミューズを視ろ。当然、その心でな!」

 

「はい!」

 

「何偉そうに言ってんだよカスが! ぶち殺すぞテメェ!!」

 

「はっ! 哀れだな。性だの殺すだのカスだの。汚い言葉を使う人間など所詮は低俗。器が知れるな。ナンセンス極まりない存在だ」

 

「おいおいおい、さっきまで園田見て興奮してたサルが何言ってんだ!?」

 

「勝手に言ってろ、俺には最早届かん虚しい言葉だ」

 

「ッ! 流石です会長!」

 

「ああ。さっさと終わらせようエムくん」

 

 

大きな舌打ちを漏らすスナイプ。

まだエグゼイドはノックアウトしていない。これでは足止めをされている間にブレイブがリボルを倒してしまう。

それはまずい。スナイプは声を張り上げる。

 

 

「お前には届かなくとも視聴者どもには映像が届く! 園田もきっと目を付けられるぜ!」

 

「無駄なんだよスナイプ! 会長はもうお前の言葉になんか怯まないぞ! ねえ会長!」

 

「ああ、その通りだ」

 

「ハッ! じゃあ指をくわえてみてるんだな。園田はきっと声を掛けられるぜ! アイツのことだ、断れずに受け入れちまうかもなぁ!」

 

「フン!」

 

「可哀想に、力ずくで犯されてしまうかもな!」

 

「くだらん!」

 

「お偉いさん共の慰みものさ! そんで最終的には自殺がお似合いだぜ」

 

「………」

 

「無視すんなよー! なんだったら今頼んでヤらせてもらえよ! 園田くらいなら土下座でもすれ断らねぇだろ!」

 

「どうでもいい」

 

「あぁ、でも意外と無理やりされるのも好きかもな! 園田みたいなタイプは真面目そうに見えて意外と――」

 

「いい加減にしろよスナイプ! 負けを認めるんだな!」

 

 

スナイプを指差すエグゼイド。

 

 

「会長はもうお前の空虚な言葉になんか惑わされないんだよ!」

 

「ぐッ! ちぃい!」

 

「なんたって会長は人間ができてるんだからな! ね! 会長!?」

 

「ぶち殺すぞクソガキがゴルァアアア! 脳みそフライにして深海魚に食わせてやんよォオオッッ!!」

 

「えー、会――ッ、えぇ……」

 

 

怒号を上げたブレイブはスナイプの方を見て中指をおっ立てていた。

 

 

「スナイプ今からテメェを殺しにいくからちょっと待ってろ!」

 

「お前マジか……。オレが言うのもなんだけどもっと冷静になれよ」

 

 

しかしスナイプにしてみればコレはチャンスだ。

ブレイブがスナイプの所に向かえば、リボルはフリー。ならば遠距離を持つスナイプがリボルを倒せる場面ができるのではないかと。

しかし意外にもブレイブはまず、スナイプに背を向けた。

 

 

「だがまずはお前からだ!」【A】『コ・チーン!』

 

 

剣を逆手に持ったかと思うと、ブレイブは刃を地面に突き刺した。

すると刃から強力な冷気が放たれ、プールサイドを氷で覆う。そして丁度顔を出したリボルの方へと冷気は侵食していった。

 

 

「うおっ、うぉおん! なんだこれは!!」

 

 

リボルが入っていたプールの水が完全に凍りつく。

胴体から上は水面に上げていたが、下は水の中だった為、リボルは身動きが取れない状態に。

一方でブレイブは剣を構えたまま凍った地面の上をスライディング。高速でリボルの方へ距離を詰めると、そのまま地面を滑りながら切りつけていく。

 

 

「ぐあぁ! うごおぉ!」【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

青白い斬撃がリボルに刻まれ、さらに冷気がより一層凍結効果を高めていく。

さらにテンションが非常に高いため(悪い意味でだが)、一発一発のゲージ回復量が多い。

 

 

「燃え上がれェエ!」『カ・チーン!』

 

 

続いてブレイブはガシャコンソードを炎の剣に変えて氷に突き刺した。

凄まじい熱波が巻き起こり、氷は瞬く間に融解し、水蒸気となって消滅していく。

結果として空になったプールと、そこに転がるリボルがさらけ出される。

 

 

「竜尾よ駆けろ! ドラゴンテイルッ!!」【B】【B】

 

 

剣を構え高速回転しながら上空へ巻き上がるブレイブ。

リボルもまた刻まれながらその重厚感のある体を浮かしていく。

 

 

「燃えあがれェエエ!!」

 

 

そして切る。

 

 

「グッ!」【HIT!】

 

 

斬る!

 

 

「ガァ!」【HIT!】

 

 

炎を纏わせ斬る切る斬るッ!

 

 

「止めだ! ノヴァブラスター!」【B】【B】

 

「ぐあぁああ!!」

 

 

空中で紅蓮の塊となり突進。

直撃時に爆発が巻き起こり、リボルはプールサイドを黒煙を纏わせ転がっていく。

一方で着地したブレイブはさらにライダーアーツを発動。刃にたっぷりと炎を纏わせ、思い切り真横に振るった。

すると三日月状の炎の斬撃が発射され、丁度立ち上がったリボルの胴体に直撃する。

 

 

「フレイムソード!」

 

「うあぁぁあ!」【GREAT!】

 

 

斬撃に押し出され後方へ滑っていくリボル。

そして直後――。

 

 

「ァああああああああああああ!!」

 

 

大爆発。

凄まじい爆炎が巻き起こり、思わずミューズたちは悲鳴を上げる。

一方でブレイブは踵を返し、全力ダッシュ。目指すは高台にいるスナイプのみ。

 

 

「スーナーイープ君! あーそーぼっ! なんて嘘じゃボケェエ! ぶっ殺しやっかんよぉオオ!!」

 

(会長ってあんなキャラだっけな……)

 

 

汗を浮かべるエグゼイドの脇を走り抜けるスナイプ。

その途中ブロックやドラム缶、宝箱を破壊し、無数のアイテムをゲットしていく。

 

 

「アイテムを使用する!」

 

 

ジャンプ力強化。

ブレイブが足をそろえて跳び上がると、その凄まじい飛距離であっと言う間にスナイプの前に着地する。

 

 

「海未くんの高潔なイメージを汚した罪は重すぎる」『コ・チーン!』

 

「チッ!」『バ・キューン!』

 

 

ライフルモードでは分が悪い。スナイプはガシャコンマグナムをハンドガンモードに変えて応戦する。

しかし弾丸はブレイブの盾に防がれ、どんどんと距離が詰まる。

ならば足だ。ブレイブの盾は防御力こそあれど何より小さい。

 

 

「雪月花!」【B】

 

 

ブレイブの盾に雪の結晶を模した紋章が張り付くと、それが回転。

これは結界。紋章は大きく、ブレイブの足元もしっかりガードしてくれる。

そのままブレイブは銃弾を弾きながら盾を構えたまま、スナイプに突っ込んだ。

シールドバッシュ。ブレイブとスナイプは手すりを突き破り真下へと落下する。

 

 

「うぐッ!」「フン!」

 

 

墜落し叩きつけられるスナイプと、地面を転がり受身を取るブレイブ。

当然先に動いたのは後者だ。氷剣を構え、スナイプに追撃を行おうと走り出す。

が、しかし、スナイプは冷静だった。彼にはまだライダーアーツが残されている。

スナイプのライダーアーツは4つ。テンションゲージを25消費して放つ、大技。

 

 

「キングモーメント!」

 

 

スナイプの周りに纏わりつくエネルギーオーラ。

そのままスナイプは地面を蹴って飛び上がった。自分自身を弾丸に変えて突撃する攻撃。

反動ダメージはあるが、発動中は無敵であり、ブレイブの刃を物ともせずにスナイプはそのまま突進を成功させた。

 

 

【HIT!】

 

 

スナイプの笑い声が響く中、爆発が起こり、ブレイブは苦痛の声をあげてプールサイドを転がっていく。

しかしその間、エグゼイドはずっとチャージを行っていた。そしてスナイプが着地したと同時に、思い切りハンマーを床に叩きつける。

 

ライダーアーツ、ドリフターブロック。

チャージの長さによって性能が変わる技であり、レベル1は相手の頭上からレンガブロックを落とす。

レベル2は自分の前か相手の背後にレンガブロックで作った壁を落とす。

そして今使用したレベル3は、相手の真下に巨大なレンガブロックの階段をつくるのだ。

 

 

「うぉお!? な、なんだ!」

 

 

レベル1とレベル2が『落とす』のに対して、レベル3は『生やす』のだ。

しかし階段なんて生やしてどうするのか。階段に何か仕掛けが? スナイプが周囲を確認していると、目の前にハンマーが見えた。

 

 

「ぐあぁあ!」【HIT!】

 

 

エグゼイドはガシャコンブレイカーを投げた。

怯んでいたスナイプは回避が遅れ、それを受けてしまう。

衝撃に後退するスナイプだが、彼が立っているのは階段、当然真後ろにはレンガブロックが一つ段差として置いてある。

 

レンガブロックには相手がぶつかると『弾く』と言う特性を持っている。これを利用してソルティ戦では壁コンボを行った。

そして今回もまた同じ、レンガブロックに接触したスナイプはレンガブロックに弾かれ前方へよろける。

このままだと階段を転げ落ちるのだが――。

 

 

「スナイプッ!!」

 

 

そこへ跳躍するエグゼイド。

そのジャンプ力を活かし、エグゼイドはスナイプの頭部を『踏みつけた』。

 

エグゼイドの脚部、クイックファイトシューズは足裏からダメージプログラムを相手に流し込む事ができる。

当然踏みつけもまた立派な攻撃となる。衝撃を感じ、スナイプは再び後退する。するとあるのはブロック、それに当たると再びスナイプは前方に弾かれる。

 

一方で踏みつけた際の反動で跳ね上がるエグゼイド。

そして跳ねれば当然落ちる。その落ちたとき、エグゼイドは再びスナイプの頭を踏みつける事になる。

 

つまりエグゼイドがスナイプを踏みつけ、跳ね上がってから落ちるまでの間でスナイプがブロックに弾かれ再びエグゼイドの真下にやってくるのだ。

ぽこっ、ぽこっ、ぽこっ、可愛らしい踏みつけ音が響く中、エグゼイドは声を荒げた。

 

 

「おれはずっと、穂乃果ちゃんを真っ直ぐ見る事ができなかった! なんでか分かるか!?」

 

「グッ! がはっ! し、知るかそんなもん!」【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

「眩しかったからだよ!」

 

 

そこでスナイプは気づく。

ダメージと衝撃で思考が鈍る。一方で飛んでくるのは足、足、足。横に逸れようにもダメージの反動とブロックの性質により、体が麻痺して思うように動けない。

つまり――、抜け出せない!

 

 

「眩しく、輝いてた! だからどうしようもなく嫉妬した! 怖かった!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

「ずっと屋上で練習しているのを知ってた! みんなで集まって曲作りをしてるのを知ってた! 時には遅くまで、寝る時間を削って!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

「なんでか分かるか! それだけ、穂乃果ちゃんはミューズが好きだったんだ!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

「ミューズの活動を誇りに思ってたからだろ! ラブライブに賭けてたからだろ!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

「適当な練習ならッ、生半可な覚悟じゃ嫉妬もしない!」

 

 

踏みつける音が変わった。

ピロリロリン! ピロリロリン! ピロリロリン!

 

 

「本当に頑張ってるからこそ、その姿が眩しかったんだ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

「お前は知ってるのか! 穂乃果ちゃんたちが、どれだけ踊っていたのか! どれだけ走ったのか!」

 

「んなモンンン! オレが知るかァアァアァアア!!」

 

「ならおれが教えてやる! いや、おれの知らない所でもきっと彼女達はもっと頑張ってる! 彼女達の努力は本物だ! そして賭ける夢も! 視る夢も!」

 

「うがぁあああぁあぁあぁあぁあ!!」

 

 

スナイプの手からガシャコンマグナムが落ちた。

 

 

「ミューズの努力を否定するな! 穂乃果ちゃん達の夢を汚すな!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

 

ラブライブの頂を目指す全てのスクールアイドルたちは皆努力している。

中にはしていない者もいるかもしれないが、それこそマイノリティだ。

 

みな自分が一番なのだと、自分を応援してくれるファンを裏切らないためにもと頑張っている。

確かにスナイプの言う汚い面もあるのかもしれない。しかし少なくとも彼女達はそんな物を視てはいない。

ただ純粋に、ただひたむきにファンのために歌い、踊り、そしてその姿をラブライブは評価する。

そこに不正は無い。そこに悪意は無い。ただ純粋に、夢と希望と努力があればいい。

 

 

「それを目指そうとするアイドル達を、低俗な発言で汚すな!!」

 

 

ラブライブで正論を言わずにどうする。

綺麗事を目指さずにどうすると言うのか。

汚い部分を見せつけるのではなく、それを消して綺麗なものだけにしようとする意思が必要なんじゃないのか?

 

 

「お前は間違ってるスナイプ!」

 

「ぐあぁぁあぁああぁあああ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「グッ! ガハッ! ゴッ! ダハァ! ガガッ!」

 

ピロリン! ピロリン! ピロリン!

 

「ウオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「――って、いつまで続くんだよコレェッッ!!」

 

「無限にだ!!」

 

【HIT!】

【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】【HIT!】

 

 

「終わりだァア!」

 

「ぐあああああああああああああああああ!!」

 

 

それはまさに無限1UP。

角度、タイミング、威力、全てを計算されつくされた攻撃が成功したのは、ゲーマーのスキルゆえか。

エグゼイドがスナイプを踏む、スナイプが後退しブロックに弾かれたところをまた踏む。それの繰り返しである。

そしてフィニッシュ。スナイプのライダーゲージがゼロになり、階段を転げ落ちながら変身が解除される。

 

 

「むっ! いかん!」

 

 

そこで動くブレイブ。

 

→たたかう

 まもる

 どうぐ

 さくせん

 おやつ

 にげる

 

【8】

 

 たたかう

 まもる

 どうぐ

 さくせん

 おやつ

→にげる

 

【B】

 

ブレイブは『にげる』コマンドを選択。

するとガシャコンソードが高速回転を始めた。次々と選択される炎と氷。すると大量の水蒸気がガシャコンソードから発生する。

水蒸気と言うよりは発炎筒による煙幕とでもいえばいいか。あっと言う間にブレイブ達は白い煙の中。

 

 

「もうッッ、なんなのよぉおおおおおおおおおお!!」

 

 

にこの悲鳴が聞こえるなか、エグゼイドとブレイブはタイガを回収し、男子更衣室へと逃げた。

 

 

 

「ぐあぁ!」

 

 

ブレイブに放られ、タイガは更衣室の床を転がる。

 

 

「ライダーゲージがゼロ。これでお前はしばらく変身できない」

 

「少し、頭を冷やせよ、アンタ」

 

 

変身を解除するブレイブとエグゼイド。

タイガは悔しげに二人を睨む。

 

 

「確かに俺達の役目はテイパーゲームを行い、ミューズを頂点に持っていく事だ。しかしどんなやり方でもいいと言うわけではない。お前がやっている行為は間違いなくミューズやラブライブの質を落としている」

 

「あぁ!?」

 

「そうだ! もっと穂乃果ちゃん達をちゃんと見ろよ! そうすればアンタだって自分のやってる事が間違っているって分かるはずだ!」

 

「――ッ!」

 

 

その時だった。タイガが立ち上がったのは。

一瞬でエムの眼前に迫ると、直後、顔面に拳がめり込む。

 

 

「ざけんじゃねぇえ!!」

 

「がは!」

 

 

吹き飛び、ロッカーに叩きつけられるエム。

 

 

「うぜぇ! ウザ過ぎるぜ石神ぃ! 羽水ィイ!!」

 

 

次はヒイロに殴りかかろうとタイガは目を光らせる。

 

 

「分かった様な口を聞きやがって!」

 

 

しかしその拳をヒイロは受け止めた。

 

 

「落ち着け! ヴィランがいないのに争いあってどうする!」

 

「うるせぇ! 正しいのはオレだ! お前らはオレを否定するんじゃねぇええ!!」

 

 

回し蹴りが飛んでくる。腰にそれを受けたヒイロは大きくよろけ、床に膝をついた。

一方で拳を振り上げるタイガ。だがその瞬間、今度はタイガの顔面に拳がめり込む。

 

 

「ごはあぁ!」

 

「ッ、エムくん!」

 

「会長は下がっててください!!」

 

 

前に出たエムはタイガに掴みかかり、取っ組み合いが始まった。

拳が飛び交い、蹴りが互いを撃つ。

はじめは止めようとしていたヒイロだが、これが不思議な事になかなかエムが倒れない。

むしろ少しタイガを押していると言ってもいい。正直少し意外だった、ゲームばかりやっていると思っていたが――。

 

 

「エムくん、キミは何か武術を習っていたのか?」

 

「いえッ、我流です! ゲーセンで鍛えました!」

 

「は?」

 

「おれのやるゲームッ! 民度が低くて! 負けたやつが突っかかってくる事があるんです! はじめはボコボコにされて金とか取られたけど、それをくり返すうちになんか、ちょっと、喧嘩強くなって!!」

 

「お、おう」(どんなゲームなんだ……)

 

 

その時だった、エムの拳とタイガの拳が同時にそれぞれの頬に直撃した。

クロスカウンターの形。二人は吹き飛び、ロッカーに背を打って大きな音を立てる。

しかし二人はすぐに体を起こして立ち上がる。

 

 

「おい! まだやるつもりかタイガ。いい加減にしろ!」

 

「うるせぇ! テメェらはなんにも分かってねぇ! それにムカっ腹が立ってしかたねぇのさ!」

 

 

するとニヤリと笑うタイガ。

忘れてた、自分には武器があったのだと。

 

 

「石神ぃ、悪いが約束だ。あの写真をバラまいて――」

 

 

タイガは真顔になる。

 

 

「ッ!?」

 

 

無い。ポケットにいれていたはずの写真が消えている。

するとロッカーを叩く音。一同が振り返ると、そこにはロッカーにもたれかかっている我李奈が見えた。

 

 

「ッ、我李奈さん!」

 

「どうも皆様。ごきげんよう」

 

 

なんと、我李奈の手に、エムと穂乃果が写っている写真があった。

 

 

「タイガ様、お探し物はコチラですか?」

 

「ッ、テメェ!!」

 

「さきほど、煙幕の中で抜き取らさせていただきました」

 

(い、いつの間に……。全然気づかなかった)

 

「ちなみに、パソコンにあるデータも全て消去させていただきましたので」

 

「お前ッッ!!」

 

 

我李奈はヒイロにウインクを行う。

そう、ヒイロはエムに『何とかする』と言ったが、それが我李奈に報告を行うことだった。

アポロン側はタイガの提案(リボルやローションの件)を受け入れ、協力した。しかし写真の件に関してはNGと捉えたようだ。

さらに物音を聞きつけたか、それとも我李奈が呼んだのかは知らないが、男性更衣室ながらミューズの面々が入ってくる。

当然入ってきた者達は中の光景に驚く。エムとタイガが殴り合っているのだから。

 

 

「大丈夫エムくん!?」

 

「ちょっと、何してんのよタイガ!!」

 

 

戸惑うメンバーの中で穂乃果はエムに、にこはタイガに駆け寄った。

一方で体をタオルで隠しながら海未はヒイロの傍に。

 

 

「会長、どうしてここに? それにこの状況は――?」

 

「海未くん、それは――……」

 

 

なんと言えばいいのか。ヒイロが渋っていると、代わりに我李奈が口を開いた。

 

 

「私から説明させていただきますわ」

 

「ッ?」

 

「今日の撮影のためにタイガ様はアシスタントにエム様とヒイロ様をお連れしました。けれど――、その途中である事実が明らかとなり、この険悪な状況となってしまったのです」

 

「あ、ある真実?」

 

「そう。タイガ様がメタトロンであると言う事ですわ!」

 

「!!」

 

 

表情が変わる一同。ミューズはもちろんヒイロでさえメタトロンの名は知っている。

ラブライブをメチャクチャにするタチの悪い荒らし。今メタトロンと聞けば天使の方ではなく、そちらの方が浮かぶのは当然だろう。

それがタイガである――、と。

 

 

(そこまで言えとは言っていないが……)

 

 

戸惑うヒイロだが、我李奈は涼しげな顔でメガネを整えていた。

 

 

「スクールアイドルの質を落とし、ラブライブの品位を落とす。タイガ様、これはルール違反でございます!!」

 

 

ルール違反、それはいろいろな意味でだろう。

写真の件にしてもそうだ。テイパーゲームの運営に支障をきたすタイガは、我李奈たちにとっては目障り以外の何者でもない。

 

 

「メタトロンだけではなく、貴方はいろいろなやり方で他のグループを落とし、ミューズを上位に上げようとした。既に自演を含めた書き込みは削除してあります。もう二度と、この様なことがないように気をつけてください」

 

 

言葉こそ続けなかったが、目が語っていた。

コレ以上、ややこしくするならば、ドライバーを剥奪すると。

 

 

(上等だぜクソ女!)

 

 

タイガは笑った。

そうだ、もはや彼はドライバーなどどうでも良かった。

こうなったら自分がスナイプであること、エグゼイドがエムであること、スナイプがブレイブである事をバラしてやろうと。

 

 

「―――」

 

 

しかし。

 

 

「!?」

 

 

声が。

 

 

「――ッ」

 

 

沈黙。

それは他の人間の目にはどう映ったのだろう? おそらくはバツが悪く、何も言えない状況なのだと理解されたはず。

だからにこはタイガの前に立った。

 

 

「本当なの?」

 

「あ?」

 

「今の話」

 

「あ、あー、嘘だよウソウソ! 矢澤助けてくれよ! オレってば冷血メガネ女にハメられて――」

 

「本当の事、言って」

 

 

にこは真っ直ぐにタイガを見ていた。

その目、その感情、全てがタイガをイラつかせる。だから半ばヤケになり、タイガは笑いながら答え。

 

 

「ああそうさ! オレがメタトロンだ! だがそれの何が悪いってんだ! あぁ!?」

 

「………」

 

 

にこの目が据わる。

それもまた気に入らない。

 

 

「お前らクソみたいなお遊戯グループを一位にしてやろうってんだ! お前らはオレに感謝するべきだ!」

 

 

どいつもこいつもスクールアイドルスクールアイドル。

下らない、気に入らない、笑える。ゴミみたいな連中がゴミみたいにはしゃいでる幼稚な文化だ。盛り上がるヤツも、応援するやつも、アイドル本人もムカツク。

 

 

「それでもオレは協力してやってんだ! ありがたく――」

 

 

にこに詰め寄り、顔を近づけるタイガ。

すると一瞬だった。

にこは思い切り振りかぶり、その手でタイガの頬を強く叩く。

 

 

「……!」

 

「アンタをいいヤツだと思ってた、過去の私を全部ぶん殴りたいわ……」

 

「にこっち……!」

 

 

希が一番初めに気づいた。

にこはボロボロと涙を流していた。

 

 

「私達は、スクールアイドルはみんな必死に頑張ってる。それをアンタみたいなヤツがいるから……! ちくしょう!」

 

 

にこはグッと拳を握り締め、タイガから離れていく。

だがタイガはその表情にありったけの憎悪と怒りを宿していた。彼もまた拳を握り締め、にこに向かって足を一歩踏み出す。

はっきり言おう。タイガはにこを殴るつもりだった。生まれてはじめて女を殴る日になった。しかしタイガは拳を止めてしまった。

ローションに塗れているが、にこはツインテールだった。

 

ツインテールだったのだ。

 

 

「……ッ」

 

 

タイガは拳を握り締めたまま沈黙し、停止する。

一方で、にこは激しくタイガを睨みつけた。

 

 

「アンタは最低よ。最低のクズ……! もう二度と私達の前に現れるなッ!」

 

 

にこは唇を噛んで走り去った。

 

 

「にこ!」「にこちゃん!」

 

 

追いかける面々。エムも穂乃果の肩をたたき、にこの方へ行くように促す。

 

 

「穂乃果ちゃんも行って!」

 

「ご、ごめんね、エムくん、せっかく来てくれたのに! またね!」

 

「すみません会長。私はこれで!」

 

「あ、ああ」

 

 

走り去るミューズの背を見ながらエムたちは戸惑い、立ち尽くす。

その中で轟音が響いた。タイガが握り締めた拳をロッカーにたたきつけたのだ。大きな音に肩を震わせるエム。しかし我李奈はピクリともしない。

 

 

「今はまだ、貴方に預けておきましょう。くれぐれも自らの行動には注意してください」

 

 

それだけを言うと我李奈はさっさと帰っていく。

 

 

「クソがぁあ!」

 

 

タイガも吼え、更衣室を出て行く。

 

 

「やれやれ、面倒な事になったな」

 

「………」

 

 

ヒイロは首を振り、エムは複雑そうにタイガが出て行った場所をジッと見ていた。

 

 

 

 

 

「………」

 

 

にこは電車の窓の外をジッと見ながら、先程からつまらなさそうな顔をしている。

それを希と絵里は少し離れたところで見ていた。

 

 

「にっこち、ちょっぴり寂しそうやね」

 

「まあ、タイガがお気に入りだったから。少なくともショックは受けてるでしょ」

 

「でも本当なんかな。タイガっちがメタトロンやなんて」

 

「本当なんじゃない? 我李奈さんが嘘を言うとは思えないわ。それに――」

 

 

複雑そうな表情で言葉を止める絵里。

同じく、希の表情を歪めた。二人は一年のときからタイガと同じクラスだった。だから知っている。タイガの事を。

 

 

「おかしいと思ってたのよ。タイガが私達に協力してくれるなんて」

 

「スクールアイドル、嫌いやったもんね」

 

「結局、まだ、彼はあの時に縛られて……」

 

「ッ」

 

 

タロットカードを取り出し、一枚抜き取る希。

しかし眉を八の字にして、首をかしげた。

 

 

「視えんなぁ」

 

 

 

 

一方アポロンではクロトが我李奈からの報告を聞いていた。

メタトロン、タイガ、しかし全ての報告を聞いてもクロトは最初に浮べた笑みを一瞬も崩すことは無かった。

なぜならば、クロトは既に全てを知っていたからだ。

 

 

「あーあー、おしいなぁ、黙っておけば良かったのに」

 

 

そもそも、ラブライブ運営はいつでもメタトロンの書き込みを削除する事ができたのだ。

別にタイガはプログラムも弄っていなければハッキングをしていたわけじゃない。ただの荒らし。

しかしずっと書き込みや自演が許されていたのは、クロトがそういう手回しをしていたからだ。

 

 

「まあタイガはどうでもいいや。それよりクリスタルは?」

 

「すみません。まだ……」

 

「ああそう。なら、『あっち』の方は?」

 

「ええ、おそらく、社長の読みどおりかと」

 

「そう。正直、そうなってほしくはなかった」

 

クロトは笑顔で舌打ちを。

 

「こりゃ、面倒な事になるかもね」

 

 

そしてその日の夜。住宅街に銃声が響いた。

加えて爆発音。言っておくがココは日本だ。銃社会の国ではない。

その結果、とある一軒のお家が大破した。崩れ落ち、炎が思い出と共に家具を焼き尽くしていく。

 

周囲が炎に包まれる中、そこに立っていたのは化け物――、リボルの姿であった。

 

 

【……See you Next game】

 




【次回予告】

次回、マスクドライバーエグゼイドは!


【何がタイガを狂わせるのか!】

「人間は自分の事しか考えてない! そんな生き物が、他者に夢を与えるアイドルなんてやれるわけねぇだろ!!」
「アイドルに裏切られたって……」
「オレが最期に見たエミは泣いていた。そうだ! アイツは、泣きながら死んでいったんだ!」

【ついに侵食をはじめるバグ】

「つまり、現実世界でヴィランが活動できると言うことですわ」
「致命的なバグが見つかった。なんとかしなければ、大変な事になる」
「ヤツは自分の娘を殺す気だ。手にあるご立派な銃をぶっ放してな」

【偶像は真実になれるのか!】

「奈々は幸せになるべきなんだぁあ!!」
「最悪のタワーディフェンスって訳か」
「スクールアイドル、ナメんじゃないわよ」
「悪いな……。ここまで付き合せて」

【次回 第5話・涙】

………

次回は投稿遅れます。たぶん12月入ってからかな。
こんなんですが次回もよろしくお願いしますな(´・ω・)
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