機竜使いの異世界訪問記 作:水や氷系統が好きな人
一夏が実の姉、織斑千冬が働いている姿を初めて見ていた頃、1年1組の廊下の前に二人の少年と少女が立っていた。
少年の方は銀色の髪を持ち、顔は童顔である。名をルクス・アーカディアといい、首には黒の首輪を、腰には2本の剣を付けている。
少女の方はピンク色の二つにまとめられた髪を持ち、どこか幼さの残る顔で、ぼんやりとした雰囲気を醸し出している。名をフィルフィ・アイングラムといい、彼女も腰に1本の剣を付けている。
彼ら二人はこの世界の人ではない。それにも関わらず、この二人がここにいるのにはとある理由がある。
今からさかのぼること数日前…
「そこのウサギの耳みたいなのを頭につけてる侵入者に告ぐ、無駄な抵抗はやめて大人しく捕まりたまえ。君はもうこの学園の名物である自警団、
「てすてす。今すぐ捕まらないと、後でその頭についてるウサギの耳を壊すっすよー!」
「Yes.そこの二人はそんな感じですが、本気ですので今すぐ投降を」
城塞都市『クロスフィード』内にある
「やだよ、そんなの。もっと見て回りたいんだもん」
「そうかなら… うわぁ!」
「きゃぁ!」
「……っ!?」
侵入者は投降を拒むと取り押さえにかかった三人を一瞬のうちに返り討ちにした。
「へへへ、私ったら細胞単位でオーバースペックなんだよねー!さぁさぁ、もっと新しい世界を探検しよう!」
「それは認めません、わたしの判断は不許可です。」
三和音の三人を撃退した侵入者が振り向くと、そこには色白で金髪の少女が、神秘的とも言える超然とした空気を纏いながら近づいてきていた。
「セリス!気を付けるんだ、油断したらやられるぞ!」
「セリス先輩、その人めっちゃ強いっす…」
「Yes.私たちも白兵戦の訓練は積んでいたのですが…」
「分かりました、心遣いありがとうございます。」
セリスは、未だ地面に倒れながらもセリスに忠告をした三和音の三人に対しお礼を言いながらも、その目はずば抜けた身体能力をもつ侵入者に鋭く向けられていた。
「ふーん、この束さんを捕まえるつもりなのかなぁ~?でも、そんなこと君にできるのかな?」
「そうですか。痛い目をみたい、ということですね」
セリスが言葉を発するのと同時に、二人が動いた。
セリスは高速で
セリスは攻撃が失敗したと分かると後ろに跳んで退避し、機攻殻剣を構えた。そして、次の瞬間セリスは彼女の神装機竜、《リンドヴルム》を無言で召喚して身に纏った。
「無人の神装機竜なのですか!? それに、そのニンジンみたいなのは何なのですか…? あなたは一体?」
セリスが警戒しながら無人のISと、巨大なニンジンを見つめていると、束の方も束自らが開発したISに似た異世界の兵器に興味を示していた。
「気になることは調べてみないとね!それじゃあいってみよう!」
束の言葉が終わるのと同時に、無人のISが3機一斉にセリスに向かって襲いかかった。だが、セリスは洗練された槍さばきで襲いかかってくるIS3機を次々といなしながら高空へと飛び上がった。
「へぇー、3機一斉に相手取ってしかもまだまだ余裕だなんて、これはちーちゃんといい勝負になるんじゃないかなー」
束はセリスと自らの作った無人機との戦いを面白しろそうに見ながら、自分の唯一の親友のことを思い出していた。
「あら、かなり騒々しかったようだから来てみたのだけど、こんなところにいたのね。もしかして、あなたが天才科学者の束さんかしら?」
束と三和音の三人がその声がした方向に顔を向けると、すらりとした体、端正な顔立ちで長い青色の髪をもつ少女が立っていた。ユミル教国からの留学生、クルルシファー・エインフォルクだ。
「そうだよ~、私が天才の束さんだよー!それにしても、私の名前を知ってるなんてどういうことなのかなー?」
「クロエ・クロニクルと言ったかしら?彼女、あなたを追って未知の時空の歪みに入ってみたら、この世界に来てしまったそうよ。彼女が色々と教えてくれたのよ。あなたが、あなた達の住んでいた世界で『天才』と呼ばれていたこともね。今さっきセリス先輩に撃ち落とされた物体はISという、あなたが作ったものなんでしょう?あなたにもいろいろと聞きたいことがあるのだけれど、とりあえずクロエさんもいる所に案内したいから、一緒に来てくれるかしら?」
学園の図書館の中にある隠された一室では、七竜機聖の隊長マギアルカ、学園長のレリィ、ルクスやセリス、リーシャなどの
「おい、天然娘!それと、クロエといったか?なんでルクスにくっついているんだ!さっさと離れろ!」
「ルクス君も嫌がっていないみたいだし、どこか幸せそうなのは気のせいなのかしら?」
「僕は大丈夫ですからって… ちょっと!クルルシファーさん、変なこと言わないでよ!」
束たちがここに来てから今まで行われてきた会議の間中ずっとルクスの腕に自らの腕を巻き付けていたフィルフィとクロエに対し、ついにリーシャが我慢出来なくなり、クルルシファーもルクスに追撃をかけた。ルクスが周りをみてみると、セリスはセリスでいつものようにどんよりした雰囲気を醸し出していた。助けを求めて夜架に目を向けると、夜架はにっこりと微笑みながら「はやくお世継ぎを。まずはキスからしてくださいませ」などと言い、火に油を注いでいた。
「くーちゃんにも好きな人が出来たんだねー!」
「はい、束様」
「うんうん、束さんはくーちゃんが好きになった人なら大歓迎だよー!じゃあ、君はこれからルー君って呼ぶからねー!」
「…あぁ、はい」
ルクスは束のハイテンションに圧されつつも、束からはこの世界において初の名前を覚えられるという快挙を達成した。
「兄さんには後でお話が必要ですね」
「No.アイリ、それは必要ないかと。これ以上ルクスさんに言ってもルクスさんの女の子を口説いていく癖は治らないかと」
「ア、アイリ?怒ってる?ノクトも助けてくれるんじゃなかったの!?」
ルクスがその声に恐る恐る振り向くと、そこには穏やかな笑みを作っていたアイリがいた。だがアイリの目が笑っていない。アイリのルームメイトで親友でもあるノクトもいつものようにルクスを助けると思わせておいて、絶望に落としていく、というスタンスを変わらずに取り続けていた。
「えぇ、怒っていませんよ。兄さんは
完全に怒っていらっしゃった。この状態のアイリにルクスは一度も勝てたことがない。ルクスは後でアイリからのお話という名のお説教がくることをこの時覚悟した。
そんな中においても、フィルフィはルクスの腕に自らの腕を絡ませながら「くー、ルーちゃん」と寝言をいっている。そんなマイペースすぎる幼馴染みにルクスは少しほっとした。
「さすがはわしが見こんだ男じゃのう。こうも次々と女を作っていくとはのう。うん?」
「あははは…」
「まぁ、それはおいといてじゃ」
マギアルカは姿勢を正し、部屋にいる人を見回した。今までルクスを取り合っていた少女達も一斉に静かになり、真剣な表情で部屋の真ん中のイスに座っている七竜騎聖の隊長を務めるマギアルカを見つめた。
「ルクス・アーカディアよ、そちに新たな任務を与えよう。この二人が来た世界に調査、そして彼方に行っている可能性のある幻神獣を討伐しに行くのだ」
しばしの沈黙の後…
「ししょうー、わたしもルーちゃんに付いていっていい?」
「おい、待て!なんでそうなるんだ!」
フィルフィの言葉が引き金となり、リーシャをはじめとした少女達が再び一斉に騒ぎだした。
「もう、いやーーー!」
ルクスの叫びが学園中に響きわたった…
そして今に至る
あの後、話し合いをした結果、異世界に行ける神装機竜使いは、立場上フィルフィと夜架だけに絞られたが、レリィの強い後押しによってフィルフィが選ばれた。
その後で、ルクスのワイバーンとバハムート、フィルフィのテュポーンには束とやや不満そうなリーシャによって改造が施され、IS同士の模擬戦にも対応できるようになった。フィルフィのテュポーンの神装、『
ルクスの方は再び女子学生だらけの学園に入るということで緊張していたが、フィルフィの方は持参してきたらしいお菓子をポリポリと食べている。
「あの、フィーちゃん?もうすぐ呼ばれるはずなんだけど?」
「うん、分かってる… はい、ルーちゃん。これあげる」
「ありがとう… じゃなくて、そのお菓子そろそろ仕舞ってよ!」
「じゃあ、最後に一個…」
「それ、さっきからずっと言ってるんだけど!というか、フィーちゃん砂糖が沢山あるからってそんなに食べちゃダメだよ。」
そうなのだ。
フィルフィは甘いものに目がない。
夜架が『主様があの時空の歪みに入る前に、安全確認のために、先に道具であるわたくしが行きますわ』と言って、一人で事前調査に向かった時に夜架がこの学園の厨房から盗んできた食材の中にあった、大量の砂糖を見つけたときのフィルフィの目の輝きようは、普段の彼女からは考えられないほどの物だった。ちなみに、夜架いわく、片っ端から食材を持ってきたのは、毒味をするためだったらしい。
どうやらフィルフィの中ではこれからの学校生活よりも、無尽蔵と言ってよいほどまでに、この世界にある砂糖のことが頭の中での関心を集めているらしい。
フィルフィが最後の一個を食べきった時、ついに教室の扉が開いた。
ルクスとフィルフィの新たな学園生活の始まりである。
「フィーちゃん、行こっか」
「うん、ルーちゃんこれからもよろしくね」
「さぁ、入れ」
千冬から促されルクスはフィルフィと一緒に教室に足を踏み入れた。
「失礼します」
「キャーーー!」
「男の子よ!しかも千冬様の弟様の一夏君とちがって、今度はかわいい系の男の子よ!」
「ようやく話せる男子がきたぞー!」
だが、ルクスが足を踏み入れた瞬間、ルクスとフィルフィを窓を揺るがすほどの大音量が襲いかかった。その音源はもちろんクラスの女子全員と、話が出来る男子を待ち焦がれていた一夏によるものである。ということは、クラス全員の大歓声が一斉にルクスとフィルフィを襲ったのである。
「うわぁ!」
「…うるさい」
「お前ら、静まらんか!さぁ、自己紹介を。一夏、良く見とくんだぞ」
千冬がそういうと、クラスがすぐにシンと静かになった。ルクスは自分達の世界の圧倒的人気を誇る、クラスの女教官、ライグリー教官を思い出した。
「えっと、ルクス・アーカディアです。よろしくお願いします…」
ルクスがこんなものでいいのかなぁ?と思っていると、クラスの女子全員がズゴゴゴっと転けて、一夏は目を輝かせて、千冬は頭を押さえ込んでしまった。
「えーと、みんなどうしちゃったの?」
「気にするな、アイングラム挨拶をしろ」
ルクスがクラスメイトの反応に戸惑っていると、千冬によってさえぎられた。
「フィルフィ・アイングラム。よろしく」
「え~と、ほ、他になんか無いですか?趣味とか?」
ルクスとフィルフィの簡潔すぎる自己紹介に対して堪らず、山田先生がルクスとフィルフィに問いかけた。
「あははは、特には」
あまり迂闊に余計なことを喋れないため、ルクスが笑ってごまかそうとしていると、クラスの女子の一人から質問が飛んできた。
「はいはい!質問!二人の関係ってどんな関係なの?」
「幼馴染みってと「ルーちゃんはわたしの、旦那さんだ…」ちょっ!フィーちゃん!?」
ルクスがフィルフィの口を押さえようとしたが、それは無駄におわったようだった。
「キャーーーーーー!」
「王子様とお姫様ってとこかしら!」
「神は残酷すぎるわ!」
「残りは織斑君だけよ!」
今日一番の大音響がクラスだけに留まらず、IS学園中に響き渡った。
「もういい、ホームルームはこれで終わりだ。次の時間の準備をしてから、休み時間に移れ。」
さすがの千冬でもこれを静めるのには、堪えるものがあるのかあきらめたようだった。
「アーカディアにアイングラム、お前たちの席は一番後ろだ。ホームルームは今終わったところだから、先程渡した教材でも読んで、予習でもしておくんだ。」
千冬はそう言うと教室を後にし、その直後チャイムがなり休み時間に突入した。
ルクスがまた一人おとしてしまいましたw
最弱無敗の神装機竜の10巻で、フィルフィがルクス争奪戦を1歩抜け出したようなので、機竜側のヒロインはフィルフィにしました。
メインヒロインのはずのリーシャ様…