機竜使いの異世界訪問記 作:水や氷系統が好きな人
放課後、ルクスはIS学園内に密かに設置された《ワイバーン》、《テュポーン》そして《バハムート》のために造られた格納庫にやって来て、とある三人組を待っていた。ちなみに、この格納庫の存在をこの世界の人で知っているのは束とクロエ、千冬、山田先生、そしてこのIS学園の実質的な理事長轡木十蔵の5名だけである。けれど、この5人にもルクスが5年前に起こした革命の事は伝えるわけにはいかないので、《バハムート》は燃費が悪すぎるため非常手段としての機体とだけ説明をしている。
ちなみに、フィルフィはルクスを追ってくる女子生徒の大群を撒くために、時間稼ぎをしてくれているらしい。
「おやおや?ルくっち。お嫁さんと一緒にいないけど、どうしちゃったのかな?」
「ルクス君、君はフィルフィ嬢とさっそく夫婦喧嘩でもやらかしたのかい?」
「Yes.これはアイリにいい報告ができそうです」
ルクスが声のした方向に顔を向けると、そこにはルクスが待っていた三和音の三人がやってきていた。
「どうもしてないから!というか、夫婦っていう設定まだ続いてたんですか!?それに、なんでいい報告になってるのっ!?」
異世界に来ても相変わらずの三人組にルクスはそれぞれに素早く突っ込みを入れた。
三和音の三人は今回のルクスとフィルフィの異世界への調査に、前回のルクスのヘイブルク共和国へのフィルフィとの新婚旅行を装っての潜入捜査と同じく伝言役としてルクス達と会うことになっている。それと今回は、長期間に及ぶ調査も予想され、ルクス達の機体の整備をしているリーシャによるメンテナンスが長い間困難になるため、ノクトの《ドレイク》によるルクスやフィルフィの装甲機竜の修理も三和音の主な任務の一つになっている。
「まぁ、そんなことより。また決闘騒ぎに巻き込まれたようだね、ルクス君」
「あの~ なんでその事知ってるんですか?」
ルクスがシャリスの言葉に苦い顔で三人に質問をすると、ノクトからその答えが返ってきた。
「No.ルクスさんのこの女の子ばかりの学園での初日が気になっていたからといって、《ドレイク》の機能で傍受などをして、三人で聴いたりはしていませんでしたので、ご安心ください」
「せめて僕の顔を見てから言ってよ!」
ルクスの叫びが格納庫内にこだました。
その後ルクスは、シャリスに女装をすることを勧められたり(これはこの世界に来る前に三和音に妹のアイリや、学園長のレリィにも勧められたが、ルクスは断固拒否した)、ティルファーにこの前フィルフィの誕生日にルクスが贈った剣帯のことでからかわれたりしながらも、朝の千冬との模擬戦で欠けた《ワイバーン》の装甲部分の修理をノクトにしてもらった。
「ではルクス君。私たちは来週またここへ来るから、ルクス君もあの子に負けないよう頑張りたまえ」
「他の皆にも無事に入学できたって伝えとくからねー」
「Yes.ルクスさん、アイリのフォローはお任せください」
「うん、ありがとう。皆にもよろしくね」
ルクスがそうして三和音達と別れて、しばらくするとドタバタという音と共に山田先生が格納庫にやってきた。
「あ、アーカディア君。ここにいたんですね」
「はい、今ちょうど機体の修理をしてもらった所です」
山田先生はルクスの言葉を聞くと、それぞれなかなかの存在感を出している三機の装甲機竜に目を向けた。
「それにしてもすごいですね。アーカディア君もアイングラムさんも。私なんか試合開始と同時にいきなり引き寄せられたかと思ったら、次の瞬間にはもうアイングラムさんにアリーナの反対側まで飛ばされて、壁に激突してしまってましたから」
「あはは……」
さすがのルクスでもフィルフィの格闘技を取り入れた独特な操作術、そして今日の圧倒的な戦いには苦笑いしかでてこなかった。
「あの、山田先生どうしてここに?」
「あ、そうでした!アーカディア君の部屋が決まったので部屋の鍵を渡しに来たんですよ」
山田先生はそういうと、ルクスに部屋の場所と番号の書かれた紙と、部屋の鍵を渡した。
「ありがとうございます」
「私は今から会議があるので、これで。アーカディア君も消灯時間までには部屋に戻っていてくださいね」
ルクスは自分に割り振られた部屋、1024室の前で固まっていた。ルクスの隣には、同じく山田先生に教えられた自分の部屋、1025室の前で固まっている一夏が立っていた。
IS学園は基本的に全寮制かつ二人部屋である。そのことをルクスはフィルフィと共に、今日の朝千冬から説明を受けていた。そしてこの学園の男子生徒はルクスと一夏の二人だけである。にもかかわらず、ルクスと一夏の部屋は同じ部屋ではなかった。つい3分前に、部屋に向かおうとしていたルクスは一夏と出合い、その事実を知ってしまった。
ルクスと一夏の頭のなかには、今二通りの答えが存在している。
一、一人で二人部屋を広々と使える
そして……
二、この学園の女子生徒の誰かとの相部屋
このどちらかである。目の前にある扉を開けた瞬間に答えが分かる仕掛けだ。
「じゃあ、三、二、一で入ろうぜ」
「うん」
「じゃあ、行くぜ。三、 二、 一 」
一夏のカウントダウンと共に、男子二人はそれぞれの部屋へと入っていった。
そして、部屋割りの答えは…
「ルーちゃん、また一緒だね」
ルクスが部屋に入って最初に視界にとらえたのは、以前レリィがフィルフィに与えたネグリジェを着て、いつものように無表情ながらもルクスにしか分からないぐらいの微笑みを浮かべていたフィルフィだった。
「あぁ、うん。そうみたいだ『ズドン!』…」
ルクスがフィルフィの姿にどぎまぎしながらも、フィルフィに返事を返していたが、その声は隣の部屋(一夏の入った部屋)からの破壊音によって遮られた。
「ちょっと待ってて、フィーちゃん」
「ダメだよ? …えい」
「って、なんで!?」
ルクスが一夏の様子を見に行こうとすると、その行動はフィルフィによって止められた。ルクスは後ろから完全にフィルフィに抱きしめられていた。
っていうか、色々とまずいんだけど!
ルクスが自分の背中に当たっているフィルフィの胸に、自分の胸の鼓動が高まるのを感じていると
「お姉ちゃんに夜にルーちゃんを逃がしちゃダメ、って言われたから」
とフィルフィから説明された。
「あの人、何考えてるの!?」
いや、何を考えてるのかは分かりきっている。レリィはルクスとフィルフィをこの機会にくっつけようと考えているのだろう。
ルクスの頭のなかには、笑顔で手を振りながら「妹をよろしくね」といっているレリィの姿が思い浮かんだ。
「ルーちゃん逃げたら一緒に寝るよ?」
「……」
ルクスの抵抗はこの言葉によって終わった。
ルクスがやっとのことでフィルフィから解放されるまでに、隣の部屋からは一夏と、箒と思われる女子の叫び声や、また何かを破壊したような音などが聞こえてきた。
この話、書くかどうか迷ったんですけど、三和音にこれらの任務を与えることで、機竜側からある人を送れそうなのでこの話を入れてみました。