機竜使いの異世界訪問記   作:水や氷系統が好きな人

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Episode 7 クラス代表決定戦!~前編~

今、IS学園に所属するほぼすべての教師や生徒達の目線の先にはそれぞれ白のIS『白式』を纏った一夏と、蒼の機竜《ワイバーン》を纏ったルクスが空中で対峙していた。

 

 

 

ルクスは学園中の人達がなぜかほぼ全員集まってきているこの状況に、アカデミーに入るきっかけとなった、風呂場に覗きに入った侵入者として捕らえられた後に行われた、リーシャとの決闘の事を思い出していた。

 

「なんか懐かしいな…」

 

「おーい、ルクスどうかしたか?なにか考え事か?」

 

ルクスがそんなことをぼやいていたら、目の前にいる一夏に声をかけられた。

 

「えっ!?ううん、何でもないよ」

 

「そうか?」

 

「うん。それよりも一夏は武装とかは何も出さないの?」

 

「あっ!『白式』装備は? …… えぇい!まぁ無いよりましだぜ!」

 

ルクスの質問に一夏はハッとした表情になり、『白式』の武装を確認した後、少しの沈黙の後、夜架の《夜刀ノ神》のブレードに似た形の近接ブレードを形成した。

 

「一夏どうしたの?」

 

「いや、武装がこれだけなんだが…」

 

「そ、そうなんだ…」

 

ルクスは、武装がブレード一つだけというとんでもない機体を回されてきた一夏に流石に同情した。

 

「まぁ、そろそろ始めようぜ」

 

「うん、そうだね」

 

一夏とルクスは言葉を交わすとそれぞれ一夏は近接ブレードを、ルクスはリーシャがルクスのために以前作った、機竜の障壁と同じ力場をエッジ部分に形成している障壁牙剣(スケイルブレード)をいつものように構えた。

 

 

その時、ルクスの《ワイバーン》に千冬から通信が送られてきた。この機能も束とリーシャによる機竜の改造によって機竜同士の通信能力『竜声』が進化した結果、ISとの通信や束との通信ができるようになっていた。

 

『アーカディア、始めていいか?』

 

『僕は大丈夫ですよ、織斑先生』

 

『そうか、では一夏を頼むぞ』

 

千冬はそういうと通信を切った。

 

 

 

 

………………

 

ルクスは試合の前日、寮の自室にいた千冬を捕まえていた。

 

「織斑先生、少しいいでしょうか?」

 

「いいぞ、私の部…、いやちょっと待っていろ」

 

 

しばらくしてからルクスは千冬の部屋に入ることを許された。

 

「あの、それは…?」

 

「気にするな」

 

ルクスは部屋の一角のスペースが気になったが、話を切り出すことにした。

 

「クラス代表の件なんですけど、明日の結果に関わらず辞退させてくれませんか?」

 

「あの、幻神獣とかいうやつらのためか?」

 

「はい」

 

「そうか」

 

短い返事を返すと、それからしばらく千冬は目を閉じて考え始めた。

 

 

「アーカディア、お前の話は分かった。お前とアイングラムの二名はクラス代表にならないように私が調整しておこう」

 

「ありがとうございます」

 

「ところで、アーカディア一つ聞きたいのだが。お前は私と戦って、ある程度はISと幻神獣の戦力差を把握しているだろう。もしISで幻神獣と戦うことになった場合、どうなると思う?」

 

「織斑先生と同等の操縦者なら、相手の幻神獣の特性を事前に記憶した状態で専用機に乗って戦えば、中型の幻神獣ぐらいまでなら対応出来ると思いますし、量産型の『打鉄』でも小型の幻神獣ぐらいは退治できると思ってます」

 

ルクスは千冬との模擬戦の後に考えていたことを、そのまま千冬に伝えた。尤もルクスのいう『織斑先生と同等の操縦者』と呼べる人がこの世界に何人いるかはルクスもこの世界に来て一週間が経とうとしている今、分かりきったことではあるのだが。

 

「要するに操縦者次第ということか…」

 

千冬はそう言うと、険しい表情をして黙りこんだ。

 

 

 

千冬が黙ってから10分ぐらいした後、再びふたりの会話が再開した。

 

「アーカディア、もし幻神獣がこの世界に出現した場合はその対応をお前とアイングラムに任せていいか?」

 

「もちろんです。それは僕たちの任務ですし」

 

「すまないな」

 

「いえいえ」

 

「アーカディア、それとは別に個人的に頼みたいことがあるのだが、いいか?」

 

「なんでしょうか?」

 

「明日の試合で一夏が明日届く予定の専用機になれるまで、30分ぐらいはあいつに付き合ってやってくれないか?」

 

ルクスは瞬時に千冬の言いたいことを察した。

 

千冬はぶっつけ本番に等しい一夏に、ルクス戦の時に出来るだけ機体の感覚や武装の取り扱いや、ISに乗ったときの戦い方を学ばせたいらしい。

 

ルクスに迷うことはなかった。一夏はルクスにとって初めての同年代の男友達なのだから。

 

「分かりました」

 

ルクスは千冬の言葉に、一夏の友達として返事をした。

 

………………

 

 

 

『それでは両者、試合を開始してください』

 

ピーッという音とともに試合は開始された。

 

 

開始の合図とともにルクスは一夏との距離を取るため後ろに飛んだ。障壁牙剣を用いた攻撃してきた相手の攻撃発生点をそのまま押し返し破壊するという、ルクスの見切りの技術が無くてはできないルクスの《ワイバーン》使用時の絶技『極撃』を使うためにも、まずは一夏の動きを見切る必要があるからだ。

 

「ルクスが攻撃してこないのなら、俺から行くぜ!」

 

一夏はそう言うと、ルクスに向かって突撃した。

 

 

 

 

 

 

 

試合開始から30分、『白式』のダメージはほぼゼロ、機体の反応もどんどん良くなってきている。ブレードの扱いにも慣れてきた。

 

だが…

 

ルクス相手にはどんなに俺が押してても、勝ちきれるイメージが全くわかない。

 

俺のダメージはほとんど無いにも関わらず、勝てるイメージが全く持てない。今も俺の前で隙のない構えを取って、俺の次の攻撃に備えている。

 

ルクスと戦って分かる。ルクスがなぜ千冬姉に勝てたのか。試合前の千冬姉の言葉の意味が。

 

恐らくルクスはもう俺の動きを見切っている。それもきっと試合開始間もない内に。

 

でも、ルクスから攻撃してこないのなら、まだ少しはどうにかなるはずだ。

 

 

 

 

「おおぉーーーっ!!」

 

一夏は叫び声とともに無理矢理の加速を行いルクスめがけてブレードで斬りかかる。

 

これまでにも何度か速さや力でルクスの防御を突破しようとし、その度にルクスの振るったブレードに一夏は弾かれていたり、かわされていただけだったが、今回のルクスが取った行動は今までとは違うものだった。

 

 

そもそも、ルクスは『無敗の最弱』という二つ名をもらうほど王都のトーナメントで一切の攻撃をせずに時間切れによる引き分けを狙うという戦法を何年も続けてとってきていた。だからこそ、初心者の一夏の攻撃を永遠と防ぎ続けることなどルクスにとって難しいことではなかった。

 

だが、ここで問題が発生する。

 

そもそもこの模擬戦には時間制限が儲けられていないため時間切れを狙うことはできないし、あまりに長時間の戦いとなるといくらルクスが《ワイバーン》を纏っていたとしてもいつかは稼働限界時間に達するのだ。そうなればルクスは引き分けではなく負けという結果になるのだ。

 

ということはこの世界では、ルクスが負けという結果にならないためには、ルクスからも攻撃をしていかなければならないのだ。

 

 

 

一夏のブレードとルクスのブレードがぶつかった瞬間、キィンという甲高い音が響き渡るとともに一夏の振るったブレードが中心からポキリと折れ、折れたブレードの小さな破片が宙を舞った。

 

『極撃』が決まったのだ。

 

「あれ…? うわぁ!?」

 

一夏はブレードが折れた事を認識すると間抜けな声を出したが、声を出したのとほぼ同時にルクスの振るったブレードが正確に一夏の肩の装甲部分に命中した。

 

ルクスがついに反撃を開始したのだ。

 

一夏はルクスによる初めてのまともな攻撃の命中を受けて、くるくると回りながら地面に落ちていった。そして、一夏が現状を認識する前、地面に墜落する直前にルクスの繰り出した神速の挙動による二撃目の攻撃が一夏に命中した。

 

ルクスも一夏も集まっていた観客も誰もがルクスの勝利を確信したその時、『白式』が眩い光とともに変化を開始した。

 

 

ルクスは『白式』の変化を確認すると構えを取りながら、一夏から距離を取った。

 

 

そしてアリーナにいる全ての人の視線が注がれるなか『白式』は真の姿となって現れた。新たなる武装、近接特化ブレード・《雪片弐型》をその手に持って。

 

 

ルクスは今まで学んできたISの知識と今の状況から、『白式』が一次移行を遂げたのだと気付いた。そして、何よりも一夏の右手に握られていたブレードに警戒した。束からISの戦闘シーンとして映像を見せられた際に見て、解説もされた千冬の使っていた武装《雪片》に似た形だったのだから。

 

そして、ルクスは一夏の持っているブレードが千冬の専用武装の後継としての武装ならば、一夏の持っているブレードも全てのエネルギーを消すことのできる『零落白夜』を使えるのだろうと予想した。

 

 

 

「俺は世界で最高の姉さんをもったよ。俺は、俺の家族を守る。今はまだルクスに勝てなくても、一太刀ぐらいは入れて見せる!行くぜ、ルクス!」

 

一夏はそう宣言すると今までとは比にならないほどの加速でルクスに突撃した。

 

ルクスの予想通り『零落白夜』が一夏のブレードから発動し始めるなか、ルクスも動く。

 

「調律、開始-」

 

ルクスが短く呟くと《ワイバーン》の周囲に光の像が浮かび上がった。

 

古代文字の数値や図形、様々なものを示した、調律の形態。

 

本来は装甲機竜の出力や、構成、武装などを調整するための機能だが、ルクスは七竜騎聖の副隊長、シングレンとの模擬戦を通してそれを用いた戦技を身に付けていた。

 

 

「うおおおぉーーー」

 

「-戦陣(センジン)流転(ルテン)

 

「うわっ!?」

 

一夏とルクスの戦いが最高潮に達し交錯したとき、一夏の渾身の一撃は、本来なら機竜の操縦者の危機に際して自動発生し、更に操作によって強弱を調整によってする障壁の自動発生を止め、相手の攻撃が命中する直前に力場を発生させ、勢いで攻撃を弾く技、『戦陣・流転』によるルクスの右から左へと発生した障壁の力場によって完全に弾かれた。

 

全力の攻撃を防がれ、致命的な隙をさらし身を固くしていた一夏に更なる衝撃が走った。

 

「-戦陣(センジン)劫火(コウカ)

 

障壁、推進、駆動の全エネルギーをブレードに集約し放つ強打、『戦陣・劫火』が一夏に命中し、一夏は地面に墜落した。

 

 

それと同時に試合の決着を告げるブザーがなった。

 

『試合終了。勝者、ルクス・アーカディア』

 

その瞬間、アリーナで固唾を飲んで見つめていた観衆が歓声や拍手をあげた。勝者のルクスに対して、そして、ISでの初めての戦闘で千冬に勝ったルクスとここまでやりあえた一夏に対しての。

 

 

 

そんな中、ルクスは一夏の元へと降りていた。

 

「一夏、大丈夫?」

 

「ちょっと痛いけど、まぁ、大丈夫さ。今はまだルクスや千冬姉には届かないけど、これから練習していつかは超えて見せるからな」

 

『おい!そこの男子二人。さっさとプラットホームに戻れ。お前たち二人がだらだらやってると今日中に全ての試合を終えられん』

 

そんな二人のもとに千冬の声が回線を通じて届いた。

 

「相変わらず厳しいんだね、千冬さん」

 

「まぁな」

 

二人は苦笑いをしながら次の試合に備えるべくプラットホームに戻っていった。

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