とある不幸少年と幸運の剣士   作:魂魄木綿季

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7月19日 禁書目録side

7月19日 21時頃 学園都市 第7学区

完全下校時刻はとうの昔に過ぎ去り。街の灯りすら消え始めるこの時間帯

昼間の活気が嘘かのように静かな第7学区。

 

カラーンッ

そんな中で空の缶を蹴飛ばす音が街に響いた

そして瞬く間に...

 

「待てコラ、クソガキ!」

「逃げてんじゃねぇぞこの逃げ足ウニ頭坊主!」

そんな罵倒を背中に受けつつも走るのを止めない人間がいた...

 

「ヒッヒッ、あーもー!不幸だー!」

そう。俺、上条当麻さんですよ!!畜生!!

 

 

・・・・・・・・・

 

 

30分前 第7学区端サイゼリアにて

そう。物語は少し時間を遡る。

義妹の明日の食事の用意をする必要がなくなった上条は

『明日から夏休み』という浮かれた感情でファミレスに入り

偶然にも不良にナンパされている後輩と同中と思われるとある女の子

を見かけて『助けてやろうかなぁ』と思ったのが運の尽きだった

 

 

「・・・」

「なぁ、いいだろ?常盤台の子ならお金もってるでしょ?

 遊びに行こうぜ。」

なお無視を続ける常盤台の少女を

舐め回すような視線でナンパを続ける不良

 

上条「お、おほん!すみませんその子困ってるじゃないですか。」

一つため息をつき喉を落ち着かせる。そして言い切った。

そこまでは良かったのだ

 

「・・・。」

「あぁ?ンだテメェ?」

ナンパを中断し上条に向き直る

 

上条「流石にこの時間帯にナンパはどうかと思いますよ。

   あぁっと。抵抗しないでくださいよ。俺、喧嘩結構強いんで」

よし、決まった!と言わんばかりドヤ顔までしてナンパ男を見る。

しかし、上条は今の時点で自分の判断ミスに気付けていなかった。

なぜなら上条の後ろにあるトイレから男の声(8人程)が聞こえてくる

 

上条「と、言いますと?」

 

「ンだテメェ。」

「なんか用か?あ?」

というわけで今現在上条は第7学区内を走って逃げ回っていた

 

 

第7学区 とある鉄橋

上条「はぁはぁ。何とか撒いたか」

走っていた時間は感覚麻痺してしまいもはや分からなかった

 

『何やってんのよアンタ』

後ろから飛んできた声は上条にとってに聞きなれてしまった声

 

上条「ビ、ビリビリ中学生...」

 

美琴「誰がビリビリ中学生よ!

   まったく。不良を守って善人気取りか、熱血教師ですか?」

馬鹿にするように上条を睨む

 

上条「もしかして、アイツらが追って来なくなったのって。」

 

美琴「うん。面倒だから私が焼いといた。」

髪のあたりから電流を迸らせる

 

上条「...まったく、アイツら人の親切をなんだと。」

そう、上条は目の前の少女

『御坂美琴』を助けようとしたのではない。

不用意に彼女に近付いた不良達を守ろうとしたのだ

 

美琴「アイツらもバカよね。私がLEVEL5だとも知らずに

   LEVEL0の無能力者共が私をナンパだなんて。」

声は嘲るように出し、顔は失笑である。

 

上条「お前がこの街に7人しかいない。

   LEVEL5の1人ってのは知ってるけどさ...

   あんまり人をバカにしたような態度。取らない方がいいぞ?」

出ないと今後社会に出たりした時に損するからな。と付け加える

 

美琴「・・・まったく、強者のセリフよね。」

美琴の間を置いた声には明らかな敵意が含まれていた。

 

上条「ちょっ、オイオイオイ!俺だってLEVEL...ッ!」

美琴の怒号に続き上条に向けて電気の塊が飛ぶ

 

ドォォォンッ!

鉄橋の上には美琴の飛ばした電気が地面などを這い回っていた

 

美琴「それで?そのLEVEL0のアンタが...」

美琴言葉に応えるかのように飛ばした電気が霧散してゆく

 

上条「・・・」

霧散してゆくその中心には上条が立っている

 

美琴「なんで、五体満足出たっているのかしら?」

 

上条「...ホント、ついてねぇよ。不幸っつうかなんて言うか。

   お前、ホントにツイてねぇよ!」

上条の声にはハッキリとした怒りが混じっていた

 

美琴「ッ!〜〜〜クッ!!」

三度、彼女を中心に電気が迸る。

そして彼女の元に電気柱が立ち上がった。

より正確には、雷が落ちた。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

ミーン!ミンミンミーン!

この音を聞くと嫌でも夏だと意識させられる。

上条「〜〜〜はっ!」

虫の音と熱気のコンボにより嫌でも目を覚ます。

クーラーの故障により俺の部屋は茹だるような熱気に支配されていた

卓上時計の表示では30.2℃の表示。

俺は嫌々ながらも二段ベットの下段から這い出る

しかし、ここで違和感に気付いた。

 

上条「あれ?テレビがつかねぇ。」

新着ニュースなどはないかと思い付けようと

リモコンを操作したのだのだが

画面が点灯せず仕方なく側面のスイッチで電源を入れようとしたが

案の定点灯することは無かった

 

しかし、その原因はかなり早く判明した。

上条「・・・あんのビリビリ電撃娘め」

そう、昨日の雷によって俺の部屋は完全に停電になっていた

 

上条「...ちょっと待てよ、まさか!!」

そしてそれは、

 

上条「・・・嘘だろ。全滅かよ。」

それは冷蔵庫の中身が完全に傷んで全滅していることを意味する

 

上条「残ってるのはこの焼きそばパンくらいなもんかよ。トホホ」

やべぇ。マジ泣きたい。

そう思っていた俺に何故か無事だった固定電話が着信を知らせる。

ちなみに焼きそばパンは異臭を放っていたので放り投げた

 

『あ、もしもし上条ちゃんですかー?

 えっと上条ちゃんはまだまだ補講が間に合わないおバカ

 ちゃんなので今日も補習です!』

担任教師からの電話は非常にも追試の追加を知らせるものだった。

 

上条「・・・不幸だ。」

一気に肩を落とすが俺の成績が原因である以上は仕方がない。

諦めて補講を受ける事にしよう。

こんなバカな俺でもあの先生は見捨てないでくれているんだから

 

上条「...何時までも気を落としていても仕方ないか。

   布団でも干して気持ちを切り替えよう。」

俺はそう決心すると二段ベットの敷布団を干すために

自分の分の敷布団を抱えベランダへと向かった。

 

すると、グニュッ

上条「いッ。この感触は...ま、まあいいさぁ。

   まったく、空はこんなに青いのにお先は真っ暗d...」

明らかに先程までの投げた焼きそばパンを踏んだらしいが

気持ちを切り替えて布団を干しにベランダの戸を開ける。

この切り替え能力は俺の体質柄恐ろしいほど早く身についた

そして、ベランダに出た俺。だが、

 

上条「・・・あれ?もう干してある?」

ベランダの柵にかかっているのは真っ白い何か。

既に干したかと思いベットを確認するが俺の掛布団は腕の中だし

義妹のはまだベットに乗ったままだ。

 

上条「・・・この子、シスターさんか?」

見れば白い何かはすれ違えば10人中10人が振り向くであろう

美少女だった。水色の髪と白い肌が彼女の着ている真っ白の修道服と

よく似合っている。

 

「・・・う、うぅん。」

俺の声に反応したのか美少女は目を覚まし辺りを見回す。

 

上条「そ、その。大丈夫ですか?」

あまりに現実離れした光景に抱えた布団を落とす

 

「・・・お、」

 

上条「お?」

 

 

グギュルルルル

「お腹減った。」

その一言に俺はそれは見事にコケた。

 

「お腹いっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな!」

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「あむっ。〜〜♪♪」

 

「お気に召していただけましたでしょうか。」

現在俺はシスターさんに料理(?)を振舞っている。

 

「うん!すっごく美味しんだよ!!

 それに何気なくすっぱい味付けにして疲労を回復を狙ってくれてる

 のがものすっごく嬉しいかも!!」

シスターさんの表情は本心から言ってる事を証明しているが...

それどころではない。

 

「む、無理して食うなよ!?こんな男料理じゃ美味いわけねぇし」

そう、『なんでもいいから食べさせて』その一言に俺は

踏んづけた焼きそばパンを差し出したが

天丼と言うべきか俺の腕ごとパックリいかれ

今は“全滅した冷蔵庫の中身をぶち込んだ野菜傷めもどき”

を彼女に出しているのだ

※“野菜傷め”は誤字ではありません。

 

「そんな事ないよ!

 見ず知らずの私に無償で出してくれたご飯だもん!

 優しさを感じるし美味しくないわけがないんだよ!!」

 

上条「く〜!!地獄には俺が1人で落ちる!!」

俺は罪悪感に耐えきれずシスターさんの手から野菜傷めを奪い取り

口に勢いよく放り込む。

味は酸っぱいなんてものじゃない。むしろこれは、死ね...る。

 

 

数分後

上条「んで?なんで家のベランダに干されてたわけ?」

 

俺の問にキッチンから見つけだしたクラッカーを

ポリポリと食べながら答える

「落ちたんだよ。

 本当は屋上から屋上に飛び移るつもりだったんだけど。」

 

上条「え?でもここ7階建てだぜ?飛び移るったって。」

 

俺の次の言葉を理解したかのようにシスターさんは答えた

「しょうがなかったんだよ。急いでたからね」

 

上条「ふーん。」

 

「・・・自分から聞いておいて興味なさげだね?

 と、自己紹介がまだだったよね?

 私は禁書目録(インデックス)っていうんだよ!」

 

上条「(インデックス...)」

 

 

《科学と魔術が交差する時、物語が始まる》


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