高度五千の武士道…GIRLS und PANZER 作:鋼鉄の咆哮
私は提督もしておりまして、イベントでSAN値直葬な羽目に陥りまして…おのれ秋イベ!おのれE2!
…と、いうことで第三話です。
そして翌日。
昨日の帰り、角谷さんに「放課後の3時半、戦車格納庫に集合だよ。遅れたら…分かってるよね?」と脅されてしまったのですっぽかす訳にはいかない。まぁ帰ってもすることはないからすっぽかすメリットもないんだがね。
しかし航空道とはいえ、戦車道のようにこの学校に機体が置いてあるということはあるまい。第一ここは少し前までは女子高だったのだから。
それでは機体はどうするのだろう?流石に機体のない航空道なんか聞いたことがない。集めるのか買うのか。しかしここの高校が機体を買えるほど裕福だとは思えなかった。
基本俺は授業中は起きている。そこそこ集中もしているが…今日ばかりは集中できない。先生の声がお経に聞こえるレベル。何それ俺超信心深い。
結局俺は一度も当てられず、平穏に5限の終を告げるチャイムが鳴った。ありがたやありがたや。
この学校の5限の終わり───つまり一日の終わり───は午後3時。3時半までには時間がある。
いつもなら縁のない運動場へと続く廊下を歩く。運動場への出口にあった自販機で俺のソウルドリンクたるカルピ○ソーダを買って、運動場へ出た。
…あれ?戦車格納庫ってどこだったっけ?
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俺が戦車格納庫に着いたのはヒトゴニマル、つまり3時20分。10分前なら充分間に合ったと言える。カル○スソーダはまだ半分近くある。飲み干してしまおう。俺は一気に缶を呷った。さっぱりしているのにやや重目の甘味が染み渡る。やっぱり俺のソウルドリンク。俺の校内でのエネルギー源の3割くらいはこいつである。
そして人がせっかく味わって飲んでいるのに───
「おい、おせぇぞ岩本。」
────何でこいつがいるんだ。
「あ、いや、なんでお前いるのん?」
オブラートに包む必要を感じない。
「へ?おいおい、俺の家系忘れてないか?やらざるを得ないんだよ。」
「嘘だろう?お前、そんなド近眼でか?」
「当たり前だ。眼鏡かけてるから問題ないね。」
「はぁ…そうかよ、坂井。」
こいつは坂井 晋一。眼鏡をかけてそれなりのインテリな見た目とは裏腹に、俺とは十年来の(一応)悪友だ。頭の程度も似たような感じなので非常に話しやすいのは確かだが。
話している間に、俺の腕時計の短針は3と4の丁度中間に来ていた。集合時間の3時半。何が始まるのかね。
集まった男の数を数えてみる。角谷さんが言ったようにかなりの数が集まっていた。
とりあえず俺と坂井。名前は知らないが7人くらいで話しているグループが2つ。7人か…7人居れば中攻が使える。
3人で話しているグループが2つ。これで22人だ。
後は大体────1年が6人か。あまり話していなさそうなところを見ると、恐らく知り合いではないのだろう。これで総勢28名。まぁ少なくはないはずだ。
航空道志願者がなんとなく並んでいる横には戦車道履修者の女子がこれまたなんとなく並んでいる。その中から1人の女の子が出てきた。
そう、皆さんおなじみの西住みほ、隊長である。
俺はある程度理解した。多分西住隊長が航空道と戦車道を統合した隊長になるのだろう。別に構わない。俺がしたいのは作戦立案よりも、敵機に20mmをぶちこんで叩き落とすことや敵戦車に熱い爆弾の洗礼を浴びせることだ。やはり、隊長らしく人前ではキリッとしてるのだろう。噂ではおどおどしてて可愛いとか言うらしいが、こと戦車道においてはそんなことはないはず…
「あっ、あのっ、こ、これから航空道志願者の皆さんにせ、説明しましゅ!」
…噛んでいた。盛大に噛んでいた。しかも物凄くビビってるし。この女の子がプラウダを倒し、更に黒森峰まで倒したのだから、「見かけによらず」というのは彼女の為にある言葉なのだろう。
もちろん航空道志願者の男共は(俺含む)隊長が話し始めると同時に黙って隊長を見ている。当たり前だがね。
「え、えと、航空道の皆さんはこれから戦車道と協同で作戦を実施することになりますっ!」
何故か物凄く気合が入ってるように聞こえる。何も最初の説明てそこまで気合いを入れなくても良い気がするが。
「そ、それと…この学校は今まで航空道は導入された事がありません。だから…機体を校内で探すのは…」
だろうな。
予想はついていた。航空道が男子の武道である以上、女子高で航空道が導入されるということは論理的かつ実際的に不可能だ。となると、機体のアテが心配になる。
…まさか山中で探せとか言うんじゃないだろうな。
「えっと、この中で、今まで航空道をしていた人は?」
ようやく落ち着きを取り戻した隊長が問う。まぁ、そうなるよね。
俺と坂井が手を挙げた。まぁどちらとも航空道をしていたと言うかさせられていた。その理由も自分の家の事情という珍しいパターンだが。
「あ、2人いるんだね。良かった…名前は?」
「岩本です。」
「坂井です。」
「あっ…そ、そうか!もしかして…」
隊長が何かに気づいたように呟く。俺達の名字である程度察しがついたのだろう。ビンゴである。
「はい、俺と坂井は一応『岩本流』と坂───」
「俺は『坂井流』です。」
────井流と言おうとしたところをぶった斬られた。まぁ自分で言いたいか。
「よ、良かった!それなら、凄く申し訳ないんだけど…」
だろうな。これも分かっていた。
そりゃ機体の融通も頼みたくなるだろう。一応その名字を冠しているから尚更。
でも、現実はそこまで甘くはない。
「あ、いや、その…」
先に坂井が口火を切った。
こいつが言いたいことはわかる。俺もそうだから。
「俺たちは『分家』です。つまり…俺たちは『傍流』なんです。そして、本家は岩本流や坂井流の家元でして…そこに俺たちが『機体を融通してくれ』と、大きな顔をして言うわけには行きません。それは俺たちの家の順位とかではなく、我々の誇りです。そのような事は、マナーとして、分家として、何より航空道のメンバーとして言えません。」坂井はきっぱりと言った。
その通りである。本家を犠牲にして自分達が航空道をやるわけには行かない。確かに岩本流の家元────俺の叔父に当たる────は温厚な性格で、俺のことを常に可愛がってくれる。ただ、それとこれとは別。第一に俺はそんなことは言えないのだ。
坂井流の家元が晋一とどんな続柄にあり、そして家元がが晋一とどのように接しているのかは知らない。ただ、分家、傍流である以上、特に航空道関係では遠慮せざるを得ないというのは明らかだった。
「え、えぇ…そ、それじゃぁ…」
隊長が困ったような声を上げるが、こればかりはどうしようもない。ただ────
「分かりました。交渉はしてきます。それと、俺達は一応専用機を持っています。それを持ってくるのはできるはずなので。それでいいでしょうか?」
────これくらいならできる。ただ、期待せずに待っていてほしいところだ。
隊長の顔が明るくなった。
「そ、そう?それなら、お願いしてもいいかな?」
「分かりました。一応やってみます。」
約束してしまったがまぁ何とかなるだろう。叔父も、まだ俺の専用機は売り飛ばしたりしていないはずだ。
晋一にも専用機はあるはずだ。あいつも一応坂井流の一族である。
そう思って晋一を見ると、奴は指折り何かを勘定していた。大方持ってこられる機体の数だろう。
俺の家は学園艦内にある。親とは別の住まいだが、親も学園艦内に住んでいるのでその辺の問題は無い。まぁ、結局家元、つまり叔父の許可をもらって専用機を受領するのは次の日曜日になるだろう。今日は金曜日。土曜の朝に学園艦が大洗に入港するから、そこからは電車で叔父の住む大阪まで。叔父が出かけることはほぼ無いので家にいてくれと念押しする必要も無い。その後は本家にでも泊まろうかと思っていた。本家の後継ぎ────俺の従兄弟だが────は俺より六歳上。俺のことを弟のように可愛がってくれるので、たまには顔を出さないといけない。この間も電話がかかってきて、「早く大阪に遊びに来い」とまで言われたからなおさらである。
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土曜日。
俺は学園艦の入港と同時に学園艦を出た。昨日の時点で親には全てを話した。航空道に入る(入らされたのが本当だが)こと。母親は泣き崩れていた。自分の息子一人ともう一人の指一本を吹き飛ばしたのだから。しかし俺は押し切り、そのための機体の融通の為の大阪への旅行を主張した。かくして、俺の大阪への18きっぷ独り旅はつつがなく認められ、俺は既に常磐線の電車の中にいた。急がねばならない。少なくとも今日の晩には大阪に着いておきたいところだ。昨日のうちにとりあえず叔父の家には電話をかけた。そこで夜には着くと言ってしまったのである。だからあまり心配はかけたくない。俺はまだ覚醒しようとしない目をこすった。眠い。4時起きで入港とほぼ同時に学園艦を出て、始発から鹿島臨海鉄道、そしてJRである。
関東弁のアナウンスと共に東京に到着した。まだ朝飯すら食べていない。駅弁でも買うか。
駅弁を買って東海道本線に移動する。ここからは各停に乗らねばならない。
大阪に着いたのは17時15分。12時間以上の移動だった。
そこから地下鉄やらなんやらを乗り継いで叔父の家に向かう。
叔父の家に辿り着いたのは18時を回ってから。道を覚えていてこれだから、忘れていたら更に遅くなっていただろう。
意を決してインターホンを押す。本家に行く時には、常に緊張してしまうのだ。
「はい」という声の後、インターホンの向こうがにわかに騒がしくなる。待っていてくれたのだろうか。
…ドアが開いた。叔父が真っ先に出てきて言った。
「おう、良く来たな!ほら入れ!」
豪放な性格は変わらないようだ。
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その後俺はたらふく夕飯を食わされた。
いや、もてなしてくれるのは嬉しいんだけどね…食べさせすぎじゃないかな…
結局俺は腹痛を起こして寝転がっていた。突然大量に食ったのが良くなかったらしい。
そしてその横では────
「ったく…あんたはいつもいつもこんなに食べさせて…」
「ごめんなさい…」
────叔父が怒られていた。どうやら頭が上がらないらしい。
あまりにも叔父が哀れに見えてきたので助け舟を出すことにする。腹痛も治ったし。
「いや、まぁもう治ったから」
あんましフォローできてないな。…もういいや。
さて、そろそろ本題に入らねばならない。大丈夫だとは思うがね。
「叔父さん?」
「なんだ?お前も俺にお説教か?」
ニコニコと笑って聞いてくるが、生憎本気の話である。
「いや、割と真剣な話だから…」
「そうか。何の話だ?」
「ん」
俺は話した。高校に上がると同時にやめていた航空道をやること。ただ、その高校の部活であり他の奴の機体がいること。自分の専用機も使うこと。正直、他の奴の機体については半分諦めていた。気前の良い悪いではなく、これは流派の運営に関することにもなる可能性があるから。
が、
「そうか…良かろう。お前の専用機はまだハンガーの中だ。帰りは飛べばいいだろう?整備はしてある。整備班の教育用に使わせてもらっていたからな。」
ありがたい限りだが、整備班候補生の練習台になったとしたら、整備の精度はどうなんだろうか…
「いや、毎回練習の後徹太が整備しているよ。」
徹太は岩本流の跡継ぎ。そして俺の六歳上の従兄弟である。さっきは整備着のツナギのまま食卓に現れ、大量の白米をかっ食らっていた。運動不足とは無縁の締まった体躯をしており、戦闘機乗りにはぴったりらしい。俺は徹太を兄として尊敬している。
「分かった。徹太兄さんが整備してるなら、間違いはないね。」
「それと、他の機体についてだが、何機必要なんだ?」
どうやら出してくれるらしい。一層頭が上がらなくなりそうである。
一応金曜日に晋一と相談した結果のリストを見せる。それを見ると、叔父の顔が一瞬強ばった気がした。…やってしまっただろうか。
しかし叔父はいつもと変わらない顔でリストを上から下まで見てから、言った。
「分かった。全機、一応うちのハンガーにある。ただ…」そこで叔父は言葉を濁した。
「あるけれど…?」つい聞いてしまってから、後悔した。念を押すのを叔父は嫌うという程ではないが、機嫌の悪い時はそれで少し怒ったりする。
「いや、あるんだが、整備ができてないんだ。」
…整備。
戦車道でも非常に大切な要素になるそれは、航空道ではより重要な要素になる。
何しろこちらは三次元を移動するのだ。きちんとした整備の上に航空道は成り立つと言っても過言じゃない。整備不良の機体で飛ぼうとすると、墜落する危険性もあるのだから。
それなら、大洗で整備してしまえばいい。
「いや、構わないよ。大洗学園で整備する。整備班の先輩達は信用できるから、任せるさ。」
「分かった。それなら陸攻も出してやろう。」
「了解。他は…」
「ほかは全て整備が完了した機体だ。運が良かったな。」
「そうか。ありがとう叔父さん。」
「ただ」
突然厳しい顔になった。
「やるなら、その大洗学園とやらを優勝させてみろ。ここまで叔父さんが気前良くしたんだ、いい試合を見せてみろ。ふふっ…黒森峰の航空チーム、ボン…なんだっけ?には…」
叔父がそういうのはなんとなく分かっていたようで、分かっていなかったような気もした。ここまで無理を言ったから尚更。
しかし、今の叔父の含み笑い。叔父もやはり昨日のニュースで淳二を見つけたのだろうか?
「最善を尽くす。見ていてほしい。」
俺はそれだけ言った。
「整備不良の陸攻は後日ギャラクシーで送る。他は徹太や私が大洗まで飛んで渡す。それでいいな?」
「了解。外部の空港があるから、そこでいい。」
徹太に小さい頃は良くからかわれたものだ。徹太とはよく喧嘩もした。俺が勝ったことは無かったが。
「とにかく、機体は明日受領するよ。」
「ああ、分かった。」
それだけ聞いて、俺は自分の寝室へ戻った。
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日曜日。
俺は朝からハンガーにいた。1年ぶりに専用機を見ることになる。
俺の横には徹太がいた。顎でハンガーの奥を指す。
「あっちだ。」
ここのハンガーは異様に広い。使用頻度の低い機体程奥にあるので、俺は専用機まで100mくらい歩くことになった。
「こいつだ。」
徹太が指したその機体────専用機────は、確かに俺が2年前に見たその機体と、「同じ種類」だった。
そう、「同じ種類」なのだ。機体番号まで同じ、「同一の機体」には見えない。違和感があるのだ。
「あのさ、徹太兄さん」
徹太は俺の言わんとすることを察したらしい。俺が最後まで聞く前に答える。
「ああ、これは同一の機体だぞ。正真正銘お前の専用機だ。塗装は変わっている。それと────エンジンも換装した。誉一一型が故障してな。再起不能と判断されたんだ。」
ショックだった。あいつの音とともに俺は航空道の道を歩んできたのに…自分の相棒だったエンジンは換装されてしまったという。まぁ、故障を避けることは不可能だ。徹太が再起不能というのなら再起不能なんだろう。俺は諦めることにした。
「で、代わりのエンジンは?」そちらの方が大切だ。
「誉二五型…戦後に中島、つまり富士が誉一一を再設計したエンジンだ。航空道協会からの認証済み、推奨エンジン。」
誉二五型。その名前は俺も知っていた。
なんでも、小型で出力は高いものの故障が多く保守もやりにくい誉一一型を再設計し、全体的に誉一一型の構造を継承しながら出力を増強、更に部品数を減らして整備性も上げたとか。
ただ、あまりにも性能が上がったりする機体も存在するので生産は少数かつ短期間に留まったと聞いている。
なんで叔父がそんなレア物エンジンを持っているのかは知らない。何かの伝で手に入れたのだろうか。
塗装も少し変わっていた。
前までは機体上面が暗緑色、機体下面は銀色の無塗装、そしてエンジンカウルはつや消し黒で、ナンバーなどは書いていなかった。もちろん、日の丸は書いてある。
ただ、今見た専用機の垂直尾翼には「752-10」の数字が、尾翼の暗緑色と数字の黄色でよく映えていた。
更に、水平尾翼にも白線が描いてあった。史実で流星改を運用したほぼ唯一に近い部隊である「第七五二航空隊」の塗装。目立ちそうだが、もしそれで実害があるなら大洗で塗り替えてしまえばいい。
「分かった。昼飯をこっちで食べてから大洗に飛ぶよ。試運転してきていいかい?」
「構わないぞ。ただ、練習があるはずだから地上運転のみでいいか?」
練習があるのか。俺も丁度ブランクが空いている。
「僕も練習に入って構わないか?」
「…いいぞ。」徹太は渋顔で了承した。技量には自信がある。少なくとも墜落するような真似はしないと確信していた。
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練習はそこそこハードだった。
真っ直ぐ飛ぶことまで忘れていたということはなく、模擬空戦までやることができた。爆弾の命中率が落ちていたがそこに触れてはいけない。2年前はほぼ全弾命中だったのだが。流星のエンジン音はほとんど変わっていなかった。少し音が小さくなった気がしたが、それだけだ。しかし馬力はやたら上がっていた。800kg爆弾1発の過負荷状態で580km/h。速度計がイカれてるんじゃないかと最初は思ったがどうやら本当らしい。高高度性能も上がっていたので戦いやすくなっていた。これなら高高度迎撃にも使えるだろう。
2時間ほどの練習の後着陸。エンジンの回転数をゆっくり落とし、やがて0にする。試運転にしては上々だった。飛行にもなんの問題もない。飛行後の軽いチェックも済ませた。
そろそろ大洗学園に戻らねばならない。まだブランクのある身で夜間飛行はやりたくない。「事故の可能性を最小限にしてこそ、1人前の飛行機乗り」と叔父が言っていたことを思い出した。
叔父や叔母、徹太に見送られながら離陸する。滑走路の周りをゆっくり一周したあと、俺は機首を北東、大洗の方向に向けた。
改めて自分の文筆力の無さよ。
ああ、コミケに行きたい…と思う今日この頃です。
かなりの亀更新ですが、許してヒヤシンス…