オーバーロード〜小話集〜   作:銀の鈴

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帝国の公爵令嬢シリーズ
帝国の公爵令嬢


(わたくし)はフリアーネ・ワエリア・ラン・グシモンドと申します。

 

バハルス帝国のグシモンド公爵家の娘として、この世に二度目の生を受けました。

 

そう、二度目です。(わたくし)にとってこの人生は二度目となります。つまり、(わたくし)には前世の記憶があるのです。

 

 

記憶にある前世の世界は、今世の世界とは似ても似つかぬ地獄のような世界でした。

 

その世界の土地は毒に侵され、口にできるものは合成された食料だけでした。しかも大気すら猛毒を含んでいましたので、外出時に防毒マスクがなければ数分で肺が腐るほどです。

 

そんな地獄のような世界でしたが、(わたくし)は仕事にて成功を収め、ささやかな幸せを享受することが出来ました。

 

そんな人生を終え、愛する人達に看取られながら逝くことが出来た(わたくし)は、深い満足と共に永遠の休息を迎えた筈でした。

 

それが何の因果なのか再び生を受けました。

 

今世では公爵令嬢という、前世とは違い恵まれた立場での人生です。

 

しかも前世ではフィクションに過ぎなかった魔法や魔物が存在する世界です。

 

(わたくし)も前世で若かった頃は、そのような夢のような(ゲーム)世界で青春を過ごしたことがありました。

 

今世での(わたくし)には、前世と違い圧倒的な権力を有し、そして前世の記憶という才能(チート)もあります。

 

これらを使い、この二度目の人生を後悔のないように生きていきます。

 

そう誓ったのは屋敷の階段からスッテンコロリンとコロコロと転げ落ちて頭を打ち、前世の記憶を取り戻した六歳のとき――つまり、たった今のことですわ!!

 

「おーほほほほほ、(わたくし)の時代がやって来たわけですね!」

 

宝クジで一等を10連続で当選させる以上に稀であろう転生をした(わたくし)は、神に選ばれし人間なのでしょう。

 

ならば、この世界に(わたくし)の名を刻みつけましょう。

 

この偉大なる“フリアーネ・ワエリア・ラン・グシモンド”の名を永遠の伝説として未来永劫語り継がせますわ。

 

「おーほほほほほ、世界征服というのも面白いかもしれませんわね」

 

バラ色の未来に(わたくし)の胸は高鳴りました。

 

 

「大変です! お嬢様が頭をお打ちになったのに笑い始めました!」

 

「医者はまだか!? お抱えのクレリックを早く呼んでこい!!」

 

「もう、呼びに行かせています!!」

 

「早くしろ!! お嬢様がケタケタと笑い始めたぞ!!」

 

 

なんだか周囲が騒がしいです。まったく、今日は(わたくし)が目覚めた記念すべき日なのですよ。

 

本当に困った人達ですね。

 

 

 

 

この世界の魔法は前世でプレイした“ユグドラシル”というゲームに似通った部分がありました。

 

私が前世で随分とやり込んだゲームです。

 

その成長システムも魔法なども覚えています。

 

もちろん、ゲームそのままのわけが無いでしょうが、参考程度にはなることでしょう。

 

私が調査したところ、この世界の魔法詠唱者達は随分とレベルが低いようです。

 

使える魔法の位階は、帝国の最高の魔法詠唱者ですら第5位階魔法が限界でした。

 

国に囲われた魔法詠唱者なら訓練は欠かさないはずです。

 

それなのに低レベルということは、この世界の魔法詠唱者のレベルは訓練では上がりにくいことを示しています。

 

前世で読んだ小説では、魔力を使い切るとその後の回復時に最大魔力量がアップする。というものが定番でしたが、この世界では当て嵌まらないようですね。

 

別に魔力量だけが魔法詠唱者のレベルを決めるわけではありませんが、厳しい訓練を行なっている魔法詠唱者が呪文を唱えても発動しないというのは単純に魔力量が足らない。

 

または、“その呪文を唱えられるレベルに達していない”ことが考えられます。

 

普通、レベルというのはその個人の習熟度を表す比喩的なものですが、もしも本当にレベルという概念があったなら?

 

前世の世界での“ユグドラシル”のようにステータスが見えないだけで、実際には“ユグドラシル”のようにステータスが存在している。

 

もしも、この想定が正しいならレベルを上げる為には訓練は無駄でしょう。もちろん、魔力制御力を向上させるには訓練は有効だと思います。基礎ステータスも上がるかもしれません。

 

だけど、レベルアップは出来ない。

 

もちろん、私がこう考えるには理由があります。

 

一般的に国に仕える兵士よりも冒険者の方がレベルは高い。でも、兵士の中にも冒険者よりもレベルが高い者達がいる。それは実戦部隊に所属して常に盗賊や魔物退治を行なっている者達です。

 

つまり、レベルの高い冒険者は兵士よりも魔物退治などを行なっています。

 

一部のレベルの高い兵士も魔物退治などを行なっています。

 

恐らくレベルアップに必要なのは訓練ではなく、魔物退治――つまり経験値稼ぎです。

 

 

 

 

自分の適性を考えました。

 

公爵令嬢の私が戦士職に進むのは難しいでしょう。無理を通せば可能かもしれませんが、父に勘当とかされては堪りません。

 

自動的に魔法詠唱者に決まりです。

 

そして、魔法詠唱者といっても系統は色々とありますが、私は信仰系の召喚術師を目指そうと考えています。

 

その理由は簡単です。

 

私は美しい天使を召喚したいからです。

 

美しい私が、美しい天使を使役する。

 

きっと、見る者を魅了することでしょう。

 

その神話のような光景は、きっと伝説となって永遠に私を讃えることでしょう。

 

うふふ、ではレベルアップの為にまずは強化呪文を覚えるとしましょう。

 

何故、ここで強化呪文を覚えるのか疑問に思う人がいるかもしれませんね。

 

レベルアップの為には魔物を倒して得る経験値が最も効率的だと私も思います。

 

ですが、現時点で子供の私では魔物退治には行けないでしょう。ならば、どうやって経験値稼ぎをするか? それが問題になります。

 

前世の記憶を持つ私には答えが分かります。

 

それは補助呪文です。

 

補助呪文は魔物退治をせずとも、呪文を唱えて効果を現せば魔物退治の経験値よりは遥かにその量は少ないですが経験値を得ることが出来ます。

 

そして、強化呪文ならいつでも唱えられます。失敗する確率も低いです。

 

経験値を稼ぎ放題ですね。

 

ここは回復呪文ではないところが重要です。

 

回復呪文は役に立ちますが、日常的に使えるわけではありません。

 

自分自身に傷をつけて回復するようなマゾ的な行為が好きな方ならともかく、私では使う場面が少ないですね。

 

街中の治療院で回復呪文を使う方法はありますが、伯爵令嬢の私には立場があるので、そのような真似は安易に出来ません。

 

強化呪文なら誰にも気付かれずに唱えられます。自分だけではなく召使いにも唱えれば能力アップで仕事の効率も上がることでしょう。

 

まずはレベルアップを優先してから有効な魔法を効率的に得ていきます。

 

ある程度、私が大きくなったら魔物退治を行なって、より効率的にレベルアップを目指すとしましょう。

 

さて、では経験値稼ぎを行うとしましょう。

 

「プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション、プロテクション…」

 

 

「大変です! お嬢様がブツブツと独り言を繰り返しております!」

 

「頭を打った後遺症かもしれません! 早く医者を呼びなさい! お抱えのクレリックは何処に行ったのですか!」

 

 

何かしら? 今日は騒がしいですわ。

 

 

 

 

私は10才になりました。

 

魔法は、毎日の日課のお陰で第2位階に達しました。

 

そして、今日はお父様におねだりをしてゴブリン共の捕獲をして貰いました。

 

本当は魔物が棲む森に魔物退治に行きたかったのですが、お父様の強硬な反対にあい断念しました。

 

その代わりに魔物を生きたまま捕らえて連れてきて欲しいとお願いしたところお父様が了承してくれました。

 

うふふ、むしろこの方が自分で直接魔物退治に出掛けるよりも効率的かもしれませんね。

 

自分で森の中を駆けずり回って魔物を探すより、冒険者に生け捕りにしてもらう方が安全でもあります。

 

生け捕りにできる魔物の場合、低レベルのものが多いかもしれませんが、その分は数で補えばいいでしょう。

 

私の目の前では鎖で縛られたゴブリン共がギャアギャアと騒いでいます。

 

早速、私の経験値になってもらいましょう。

 

「マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー、マジックアロー…」

 

 

「お嬢様がゴブリン共を虐殺しております!」

 

「ゴブリンなら問題ありません。ただの魔法の練習でしょう。それよりも死骸の後始末を頼みますよ」

 

「私だけでこの量を!? お、お嬢様! 死骸も残さずに焼き尽くして下さい!」

 

 

マジックアローで焼き尽くすのは無理ですわ。第3位階のフャイヤーボールを覚えるまでお待ちになって下さい。

 

 

「そんなあ!?」

 

 

まったく、騒がしい召使い達ですわ。

 

 

 

 

私は12才になりました。

 

毎日のように経験値稼ぎに精をだしたお陰で第3位階に達しました。

 

でも残念ながら先日、お父様に魔物捕獲を断られました。

 

増え続ける冒険者への依頼料で公爵家の財政に影響し始めたらしいです。

 

まったく、天下の公爵家のくせに情けないことですわ。

 

それにこの間、跡継ぎのお兄様が女である私の為に家のお金を使うことに対して、お父様に文句を言っていたので、そのことも影響しているのでしょう。

 

くそう、あのバカ兄め。いつか追い落として私が公爵家を乗っ取ってみせますわ。

 

それまでは代わりの経験値稼ぎの方法を見つける必要がありますね。

 

どうしようかしら?

 

 

 

 

親戚のジル兄様にお願いして、王国との戦争に参加させてもらいました。

 

ジル兄様は皇帝をしているので、このような無茶なお願いも簡単に叶える力を持っています。

 

お願いをした当初はジル兄様も渋っていましたが、帝国最強の魔術師であるフールーダ様が私の才能を認めてくれて口添えをしてくれました。

 

戦争に参加した私は、帝国軍と小競り合いを繰り返していた王国軍に対して全力で呪文を唱えまくりました。

 

「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール…」

 

 

「もう、お止め下さい! グシモンド嬢! 敵軍は戦意を喪失しております。これ以上はただの虐殺です! お止め下さい! お願いします、どうかご慈悲をお与え下さい! お願いもします! おねが……だから止めろって言ってんだろ!!」

 

 

ふう、いい汗をかきましたわ。

 

うふふ、レベルが高さそうな騎士や兵士達を集中的に狙ったので大量の経験値を得たようですね。

 

なんとなくですが、今の私は第4位階に手が届いた感覚があります。

 

やはり戦争は効率的に経験値稼ぎが出来ますね。来年もジル兄様にお願いをして参加させてもらいましょう。

 

 

 

 

ジル兄様に来年の戦争参加を断られてしまいました。

 

なんでも帝国軍の兵士達から反対が続出したそうです。

 

きっと、私のような可憐な少女が戦場に出ることに兵士達が心を痛めてしまったのでしょう。

 

ジル兄様もこの私の予想を否定されなかったので間違い無いですね。

 

まったく、そんな事を気にしなくてもいいのに。むしろ迷惑ですわ。

 

でも仕方ありませんね。来年は公爵令嬢だとバレないようにジル兄様に変装するというのはどうでしょうか?

 

ジル兄様と私は親戚同士ですから顔立ちは似ています。私が兜を被れば分かりませんわ。

 

えっと、“俺の評判が落ちるから止めてくれ”ですか? 仰られている意味がよく分かりませんが、私の参加はダメだという事ですね。

 

分かりました。残念ですが諦めますね。

 

 

 

 

帝国の高位の神官から天使の召喚魔法を学びました。

 

その神官は莫大な借金があったため、こっそりと個人的な寄付金を行ないましたら、非常に頑張ってくださり教会に秘蔵されていた天使の召喚魔法についての書物を手に入れてくれました。

 

その書物には最高位の熾天使(セラフィム)召喚の記載までありました。

 

これに記載されている内容が真実なら途轍もない価値がありますが、今まで誰も最高位天使の召喚に成功した者はいないそうです。なので内容の信憑性に疑問が感じられます。

 

けれど、私が呪文を唱えたところ第4位階までの“天使召喚”“大天使召喚”“権天使召喚”は成功したので本物の可能性は高いと判断しました。

 

これからの経験値稼ぎは召喚魔法を利用しようと思います。

 

私が天使を召喚するだけで経験値を得ることが出来ます。また、天使が魔物退治を行えばその経験値は私が得ることが出来ます。

 

一粒で二度美味しいというヤツですね。

 

後は経験値稼ぎの場所を探すだけですが、それが難しそうですね。

 

どうすればいいかしら?

 

 

 

私は竜王国で猛威を振るっているというビーストマンに目をつけました。

 

魔物の中では比較的レベルが高く、量も多いビーストマンは経験値稼ぎに最適でした。

 

私が召喚した無数の大天使の群れがビーストマン共を天空から一方的に殲滅していきます。

 

この地に来るためにお父様を騙くらかすのに苦労しましたが、その甲斐はありました。

 

大地を埋め尽くすビーストマンの死骸を対価として、私は第5位階という帝国最強の魔術師であるフールーダ様に並ぶことが出来ました。

 

うふふ、どうやら私の時代は近いようですね。

 

 

 

 

私は15才になりました。

 

数え切れないビーストマン共を贄として、私は第6位階を超え第7位階という伝説の英雄クラスまで上りつめました。

 

もちろん、この程度では私は満足しておりません。

 

私にとっては御伽噺の第10位階ですら通過点に過ぎませんもの。

 

天を覆い尽くすほどの能天使達を従えて、私は無人の野をいくが如く、ビーストマンの都市を蹂躙していきます。

 

私に捧げられるビーストマン共の無数の屍。

 

その前に立ち塞がるは、ビーストマンが誇る伝説に謳われしゴーレム共。

 

「うふふ、(わたくし)の可愛い天使達、愚かなる土くれ共に永遠の眠りを与えてあげなさい」

 

次の瞬間、ビーストマンの都市は文字通りの灰燼と化した。

 

 

 

 

私は17才になりました。

 

今の私は帝国魔法学院で生徒会長を務めております。

 

ビーストマンを退け、周辺の手頃な魔物も軒並み屠ってしまったので、仕方なく勉学に励むことにしました。

 

現在は第8位階にまで達しました。

 

敵がいないため、最近は初心に戻り高位の防御呪文を唱える毎日です。

 

周囲とはレベル差が大きいため話も合わず、薄っぺらい表面上の付き合いのみです。

 

少し見どころのあったアルシェという同級生は、あっさりと学院を退学してしまったので孤独な日々を過ごしています。

 

「そういえば、アルシェはワーカーになったらしいですね」

 

冒険者と違いギルドの保護を受けないワーカーという職業は危険が多く、元貴族のアルシェには厳しい世界ではないか?

 

そんな風に思った私は、暇潰しを兼ねて久しぶりにアルシェに会いに行くことにしました。

 

 

 

 

「それじゃあ、この依頼を受けることでいいな」

 

「面白そうな依頼ですわね。もちろん異論はありませんわ」

 

「…あんたは誰だ?」

 

「生徒会長!?」

 

 

アルシェに会いにいった私は、アルシェのチームが受ける依頼内容を偶然耳にしました。

 

その際にアルシェのチームを束ねるリーダーに是非とも共に参加してほしいと請われたため、依頼を共に受けることになりました。

 

「俺はそんなこと言ってないぞ!?」

 

うるさいです。あなたは黙っていなさい。

 

もちろん、お父様には内緒ですよ。

 

うふふ、新発見された遺跡とは楽しみですね。

 

私の経験値となる魔物がたんまりと巣食ってくれていれば言うことなしです。

 

私は希望に胸を膨らませて冒険に旅立ちました。

 

 

 

 

私達の目の前に立つ魔物達。

 

それらは全て伝説に謳われるほどの存在でした。

 

アルシェはその特殊能力ゆえに誰よりも魔物達の力を感じ怯えています。

 

アルシェのチームリーダーが何とか生き延びようと魔物達の親玉らしき骸骨と交渉をしていますが望み薄ですね。

 

私は魔物達を観察した結果、私が召喚できる最強の天使でも瞬殺されるだけだと理解出来ました。

 

長かったようで短かった今世と、私だけが持つ前世の記憶に思いを馳せながら安らかな死を望むことしか出来いようです。

 

「ナザリックに許可なく土足で入り込んだ者に対し、無事に帰したことは私達が占拠して以来一度も無い。例えお前達が勘違いしてようが、知らなかっただろうが関係は無い。その命をもって愚かさを償え」

 

アインズ・ウール・ゴウンと名乗った骸骨が無情な言葉を放たれます。

 

それも仕方ありません。所詮はこの世は弱肉強食です。私がこれまで魔物達を屠ってきたように今回は私の番になっただけです。

 

ただ、骸骨の言葉に僅かな懐かしさを感じました。

 

偶然でしかありませんが、アインズ・ウール・ゴウンとナザリックという言葉には聞き覚えがあります。

 

うふふ、とはいっても前世での事なのでまるで意味がありませんけどね。

 

「ナザリック大地下墳墓にいるアインズによろしく頼むといっていましたね」

 

「…アインズ?」

 

必死に言い訳を言い募るチームリーダの言葉に骸骨が首を傾げる。

 

あらあら、ナザリック大地下墳墓だなんて本当に懐かしい言葉ですね。

 

だけど、ナザリック大地下墳墓の骸骨ならアインズではありませんわ。

 

公爵令嬢としての(わたくし)は、ここが死に場所なのだと覚悟を決めました。

 

ならば最後ぐらいは、前世を思い出して今世の公爵令嬢ではなく……前世の“俺”として(かぶ)いてみせるぜ!!

 

「ナザリック大地下墳墓に立ち入る許可なら俺が出したぜ。このアインズ・ウール・ゴウンがギルドメンバーの一人、ペロロンチーノ様がな。

それでモモンガさん、どうしてあんたはアインズ・ウール・ゴウンを名乗っているんだ?

それは俺達のギルド名のはずだろ?」

 

あーははははははははっ!!!!

 

言ってやったぜ!!

 

この場の全員が俺の意味不明な言葉に目を丸くしてやがる!!

 

しかも、公爵令嬢の俺がいきなり男言葉で喋り始めたんだから余計に混乱するってもんだよな!!

 

恐らく俺が恐怖のあまり狂ったと思っているんだろうな。

 

だが、ここが俺の死に場所なら関係ない。

 

思う存分にペロロンチーノとして振る舞ってやる!!

 

「シャルティア!! 転生せし我が身なれど、我が子である貴様ならこの声が聞こえるだろう!! 今すぐに我が下に馳せ参じよ!!」

 

次の瞬間、地下でありながら星の輝きを見せていた空が砕けた。

 

「ペロロンチーノ様ァアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

砕けた暗闇の向こうから姿を現したのは、前世での俺がその全ての想いを込めて生み出したシャルティア(理想の女の子)だった。って、本当に現れやがった!? どうなってんだよ!!

 

「ずっと、ずっと、ずっとぉおおおおっ!!!! 再びお会いできると信じておりましたぁああああっ!!!!」

 

泣きじゃくりながら俺の胸に飛び込んできたシャルティア(理想の女の子)を力一杯に抱きしめる。

 

「待たせて済まなかった。シャルティア(理想の女の子)よ」

 

「ペロロンチーノ様ぁあああああっ!!!!」

 

抱きしめ返してくれるシャルティア(理想の女の子)

 

ちょっと、いやかなり、苦しい…です。

 

内臓が飛び出しかけて俺は反射的に助けを求めて周囲に目を向けた。

 

アルシェ達は全員、茫然自失といった感じで頼りになりそうにない。

 

骸骨に目を向けると……目が合った。

 

「本当にペロロンチーノさんなのですか?」

 

「うふふ、嫌ですわ。モモンガさん。こんな超絶美少女の(わたくし)が、あの凛々しくて頼もしい天空を駆ける英雄と呼ばれたペロロンチーノ様のわけがありませんわ。もしもそうだったなら、それなんてエロゲー?って、いうところですわね。ちなみにこれは何てエロゲーですの? モモンガさん」

 

茶目っ気たっぷりの台詞に骸骨――たぶん本物のモモンガさんが泣きそうな声で返してくれた。

 

「お、お帰りなさい。ペロロンチーノさん」

 

「うん、ただいま帰りました。モモンガさん」

 

 

 

うふふ、どうやら(わたくし)の伝説は、まだまだ続くようですわね。

 

 

「ペロロンチーノ様ぁああああ!!!!」

 

 

「本当に中身が出ちゃうゥウウウウ!!!!」

 

 

いや、ここで人生が終わる…かも

 

 

「ペロロンチーノさん!?」

 

 

 

モモンガさん……助けて。

 

 

 

 

 

 




今回の主役はWeb版だけのキャラです。中身は別人ですけどね。

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