大洗女子のとある工場ではここ数日同じ光景が広がっている。その日も朝から工場では連日お祭り騒ぎのような活気に満ちていた。活気と言っても端から見ればただの騒音であるがこの場にそれを不快に感じる者はいない。皆一様に充実感をもって作業に掛かっている。
とはいえ先日発見された戦車二両のレストアに加えⅣ号戦車の戦車砲の交換、これ等の作業を行うには工場内の人手はあまりにも少なすぎた。全体の作業自大は概ね順調であるが日程的にはかなり厳しいものがあった。
「お前ら徹夜で直せー!!」
そう叫ぶのは生徒会公報の河嶋桃。クールな風貌で知的な印象とは裏腹にその実、猪突猛進の上なかなかのポンコツ具合な豆腐メンタルとかなりのギャップをみせる。
今回も次の試合まであまり時間がない事を考慮しても戦力の強化はこれからの試合を勝ち抜く上で避けては通れない道である。少しでも現存する戦車の稼働率を上げていかなければまともな戦闘など到底無理なことは火を見るよりも明らかだった。
「あっちゃ~まただ」
河嶋の激をどこ吹く風といわんばかりに目の前の戦車のレストア作業を進めているのは自動車部部長の中島悟子(通称ナカジマ)。数人の部員で長年放置されていた大洗の戦車を1日でレストアし、車両の回収や試合後の整備などを担う大洗女子の縁の下の力持ちとして陰ながら活躍している。
そんな彼女が今まさに手掛けているのはポルシェティーガー。攻撃力、防御力ともに大洗現行戦力最強であるが足周りに数多くの問題を抱える言わずと知れた欠点兵器である。
「落ち着いて桃ちゃん」
そう言って河嶋をなだめるのは生徒会副会長の小山柚子。学園トップクラスの成績で雑用から書類整理までほぼ一人で行っている。会長と河嶋によく振り回されている苦労人である。
「そ、それにしても自動車部の皆さんはスゴいですね!?これだけの戦車を整備しているんですから」
とっさに話を変えようと柚子は当たり障りのない話をふった。
「ま、普通は無理なんだけどね~」
そんな当たり障りのない話に柚子に宥められて多少なりとも頭の冷えた河嶋にはフとした疑問が浮かんだ。
「なら一体どうやってるんだ?」
そう車両全般に言えることであるが戦車は重い。それこそ3~40tを越えるものも珍しくない。大洗女子の戦車は比較的軽量のものが多いがそれでも20tを越えるものもある。試合中よく破損する履帯も一枚20キロ、それが何十枚もつながったものなど動かすだけでも大仕事である。
「まあ内の部にはスーパーウーマンがいるからね」
そう言うナカジマの言葉を聞いて頭に?マークのつく二人。
すると彼女は手に持っていたスパナを工具箱に戻し曲がった腰を伸ばしながら工場の奥を指差した。
そこにいたのは遠めでも分かるほどの長身の女性。彼女は二十枚はついているてあろう履帯をワイヤーに繋ぎ犬の散歩でもするかのように無造作にひきずっていた。