戦国†恋姫~織田の美丈夫~   作:玄猫

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感想でタイトル変更の声もありましたが、現状は変更なしで書かせていただきます。


21話 稲葉山城攻略戦(前編)

「失礼いたします」

 

 そんな声と共に入ってきたのは演習後すぐに美濃へと城やそのほかの状況を確認すべく送り込んだ忍であった。

 

「報告を」

 

 久遠ではなく蘭丸がそういうと忍が口を開く。

 

「はっ。恐れながら、稲葉山の確認を行いましたが特に変化はありませんでした。周囲の村も共に確認いたしましたが、鬼の姿かたちもなく平穏といったところです」

「そうですか。引き続き調査の続行を」

「はっ」

 

 返事と共に忍が姿を消す。

 

「ふむ……お蘭よ、どう考える?」

「……確証はありませんが、やはり鬼の襲撃は何者かの陰謀の可能性があると」

 

 蘭丸の言葉に静かに目を閉じる久遠。

 

「……今までには考えられんかった話ではあるが……鬼という存在自体が不明(わけわからず)なモノであるからな。否定はできまい」

「はい。……ですが、現時点では論ずる意味はあまりないかと。結果として美濃は無事……といっていいのか分かりませんが鬼の影響はなさそうです」

「うむ。良かったのか悪かったのかは難しいところであるな。……ふむ」

 

 再び久遠がなにやら考え込む素振りを見せる。蘭丸がそれを見て一瞬だけ何かを考える顔をしたが、久遠はそれに気づくことはなかった。

 

 

「何、殿が出陣されるやもしれんと?」

「それは……蘭ちゃんが言うのならあり得る話かもしれませんね」

 

 久遠のもとを辞してからすぐに蘭丸は壬月と麦穂のところへと向かっていた。

 

「はい。……恐らく、ですが早ければ今夜にでも出陣される可能性もあるかと」

「はぁ……まったく、私や麦穂はほとんど準備は済んではいるが……三バカは遅れるかもしれんな」

「そうですね……先ほど確認したところ準備は八割といったところでしたね」

「勿論、私たちの部隊の準備は終わっています」

「あの馬鹿どもにも見習わせたいものだな」

「ふふ、うちには軍師もいますからね。……此度の戦、私と新介、小平太の三人は久遠さまのお傍に仕えておく予定ですので……」

「えぇ。剣丞どのたちのことは任せて置いてください」

「うむ。……恐らく森の……桐琴も出張ってくるだろうからその必要があるかどうか分からんがな」

 

 

「……よし!」

 

 日も沈み、夜の足音が聞こえてくる時間。久遠がパシンと座っていた足を叩き立ち上がる。

 

「久遠さま、ご出陣ですか?」

「うむ!機は熟した。……準備は出来ておろう?」

「はい。久遠さまの具足などもこちらに」

 

 既に準備万端の蘭丸の言葉に満足そうに頷く久遠。蘭丸が刀を久遠に手渡し、具足を取り付ける。二人で共に城の正面の門へと向かう。

 

「殿に蘭丸さま!?こ、このような時間に一体……」

「今より久遠さまと共に出陣します。陣触れの陣貝(かい)を!」

「は、はいっ!?」

「新介、小平太!」

「「ここに!」」

 

 蘭丸の声に答え、新介が久遠の、小平太が蘭丸の馬を引いてくる。

 

「出陣します。供を。新介は馬廻りへの指示をお願いします」

「はいっ!」

「いつでも!」

「……よし、それでは行くぞ!」

「「「はっ!!」」」

 

 

「わわっ!?ほ、ホントに陣触れの陣貝ですよぉ、剣丞さま!!」

「マジか……さすがは蘭ちゃんだなぁ」

「剣丞さま、感心してる場合じゃありませんよ!」

「剣丞さまはご自身のしたいようにしてくださって結構ですよ」

「詩乃ちゃん!?」

 

 剣丞に詩乃が言う。

 

「剣丞さまには自由にさせるようにと蘭丸さまからご指示を頂いておりますので。……蘭丸隊の準備も済んでおりますが、剣丞さまはどうなさいますか?」

 

 詩乃の言葉に一瞬目を閉じ何かを考えるが、すぐに目を開くとまっすぐに詩乃を見る。

 

「……俺にも準備のことを教えてほしい。時間に余裕があるわけでもないことは分かってる。でも……」

「……分かりました。それでは剣丞さまはころと兵糧の最終準備を。出陣して後、蘭丸さまとは別行動になりますのでその際にご説明させていただきます」

「ありがとう!」

「剣丞さま、こちらへ!」

 

 剣丞と転子が一緒に走っていくのを見たあと、ひよ子が詩乃をじっと見つめる。

 

「……何か?」

「今のも蘭丸さんからの指示?」

「……内緒です」

 

 

「久遠さま。まもなく稲葉山城が見えてくるころです。……このあたりで」

「うむ。後続を待つとしよう」

「はい。小平太、後方よりついてきている新介たちにも一度止まるよう伝えてきてください」

「分かりましたっ!」

 

 小平太が離れた後、蘭丸が久遠へと視線を向ける。

 

「久遠さま、また壬月さまと麦穂さまに怒られますね」

「ふふ、お蘭も一緒なら我は大丈夫だぞ?それに前もって近く出陣する旨は伝えておったであろう。……それに、お蘭のことだ。壬月あたりには伝えておるだろう?」

「流石は久遠さま。お見通しですか」

「……しかし、正直あまり時間はかけられぬな」

「はい。内応の約束をした将たちも我らが不利となれば迷わず約束を反故にするでしょう。……城を囲んでからあまり時間はないと見たほうがいいですね」

「デアルカ。……さて、そうなるとどれだけ早く門を破れるかが重要であるな」

「殿ぉー!」

 

 久遠と蘭丸の会話に割り込むように後方から声が聞こえてくる。

 

「壬月か。苦労」

「苦労、ではありません!いつもいつも突然のご出陣、それだけは勘弁してくださいと言っているでしょう!」

「まごついておれば時機を逃す。……さっさと動かん貴様らが悪い。それにお蘭から話は聞いていただろう?」

「相変わらずの仰りようですねぇ……。たしかに蘭ちゃんから伺ってはいましたが、少しは後ろを追いかける者の身にもなってください」

「気が向いたらな。……それで、兵は?」

「私と麦穂、二人の衆が先行し、これが千。その後ろに蘭丸隊の百」

 

 壬月が言う。

 

「その後ろに三千ほど。更にその後続に三千。ついで二千と荷駄といったところでしょう」

「九千前後か。ふむ、予想以上に来て居るな」

「蘭ちゃんからの言葉もですが、近々陣触れがあることは予想しておりましたからね。……母衣衆は一番後ろをついてきておりますが」

「……あの馬鹿どもは……」

 

 しかめっ面で髪を掻き揚げる壬月を見て蘭丸がクスクスと笑う。

 

「待っている時間が惜しい。壬月は我と共に先行せよ。麦穂は後続を纏めておけ」

「「御意」」

「蘭ちゃん!」

 

 剣丞、ひよ子、転子、詩乃の四人が馬で駆け寄ってくる。

 

「剣丞さま!これより私は新介、小平太と共に久遠さまにつきます。詩乃から聞いているとは思いますが……」

「うん、部隊は俺たちに任せて。あと、ひとつ案があるんだけど」

「案、ですか?」

 

 

「……成程。侵入できる経路、か」

「剣丞さま、それは流石に危険すぎます!」

「うん、危険だとは思う。だけど、戦況を考えて最も有効な手段になると思う」

 

 考える久遠と危険と言う蘭丸に剣丞が力強く説明する。

 

「……お蘭よ、どうする?」

「久遠さまの決定に従います」

「分かった。ならば剣丞よ、見事その役、果たして見せよ!」

「あぁ!任せてくれ!」

「……良かったのですか、殿。これで孺子が死んでしまっては元も子もないと思いますが」

「奴も覚悟を持って決断したことであろう。ならば我は信じてやるだけだ。……お蘭は不満か?」

「……いえ。いずれは剣丞さまにも命を賭けるときが来るとは思っていましたので」

「殿、少し不満そうですぞ。後で機嫌をとっておいてくだされ。……蘭丸と殿が喧嘩をされては家中が割れますぞ」

「わ、分かっておるわっ!……お、お蘭はそんなに怒ってそうか?」

 

 少しだけ動揺を見せる久遠に苦笑いの壬月。

 

「……そこまででは。殿からやさしい言葉をかけていただければすぐに落ち着くかと。……しかし相も変わらず蘭丸は殿の弱点ですな」

「……煩いわ」

 

 

「……お蘭、まずは井之口を制圧した後、建物を焼き払おうと思う」

「はっ。既に町の代表への話は通してあります。あとで補償する旨も伝え、協力もしていただけるとのことです」

「流石はお蘭だな。我の考えることはお見通しか」

「ふふ、稲葉山を落とすだけで久遠さまの足が止まるとは思えませんから。少しでも被害を減らすのであればそれが優良な選択かと思いましたので」

「西濃衆、稲葉様より伝令!斉藤龍興は織田の動きの早さに恐れをなし、稲葉山城に籠もることを選択したとのこと!また美濃各地と、飛騨、越前に援軍を乞う早馬を出した由!お気を付けられたし、とのことです!」

「苦労!」

 

 伝令の言葉を聴いた久遠がねぎらいの言葉をかけ、視線を蘭丸と壬月へと向ける。

 

「予想通りの展開ですな」

「うむ。援軍の要請に果たして誰が答えるのか……。共々、急ぐぞ!」

 

 途中で小豪族を吸収しながら軍の人数を増やしつつ稲葉山城へと向かう久遠たち。更に後続の部隊も合流し、井之口の焼き払いも無事に進み、仮屋の建設も着々と進んでいた。

 

「久遠さま、後続の麦穂さま方も到着されました」

「うむ。お蘭、すぐに軍議を始める。主だった者を集めてくれ」

「はっ!」

 

 

「知っての通り、稲葉山城は天下に名だたる堅城だ。包囲したからといってすぐには落ちんだろう」

「先々代・利政さまが築城の粋を注ぎ込んで造ったのが、あの稲葉山城ですもの。厳しい戦いになるでしょう」

 

 久遠の言葉に続けるように麦穂が言う。

 

「殿、調略が行き届いていない各地の豪族がいつ背後を襲うか分からない状況です。……いつまでも包囲を続けることは出来ますまい」

「その通りだ。……よって今回は強攻する」

「なんと……」

 

 壬月の言葉に答えた久遠に驚きの声が上がる。

 

「しかし強攻したからとて、城が落ちるはずもございません。(いたずら)に消耗しては……」

「麦穂の意見も(もっと)もである。が……剣丞」

「ほいよ。ころ、地図を広げて」

「はいっ!」

 

 剣丞の作戦は、稲葉山城の裏手から侵入し三の丸を直接開ける……というものであった。道は獣道で、既に蘭丸隊の数人を派遣して場所の確認もしているとのことだった。

 

「……確かに剣丞どのの仰るように事態が進めば、稲葉山城は落ちたも同然となります。しかし……私は賛成できません。危険すぎます」

 

 麦穂が反対意見をあげる。

 

「……うむ。危険なのは我も重々承知している。だが剣丞と話し……我は剣丞にすべてを託そうを思った。これには蘭丸も同意してくれている」

 

 その言葉に何かを言おうとした麦穂も黙り込む。

 

「ありがとう、麦穂さん。だけど大丈夫。きっとやり遂げてみせるから」

「……決まったな。蘭丸隊以外の者どもは、まず七曲口より部隊を移動し鬨の声を上げ続けよ」

「注意がそっちに向いている間に、俺たちが三の丸の西門を開ける、ってのが流れかな

「そうだ。丹羽衆は、百曲口が開門したと同時に内部に突入し、二の丸を落とすべく火のように攻め立てよ」

「お任せください!蘭ちゃんとの約束……剣丞どののお働きを無駄にせぬように、必ずや二の丸を落としてご覧に入れましょう!」

「気合を入れすぎて、察知されんようにな」

「うっ、気をつけます……」

「ではこれにて軍議を終了する。……各々、励め」

 

 こうして、稲葉山城攻略戦は始まる。




続きも早めに上げられるように頑張ります!
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