戦国†恋姫~織田の美丈夫~   作:玄猫

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長らくお待たせしました!
引越しなどのどたばたも落ち着いたので久々の更新です!

……とはいえ、亀更新になるとは思いますが。


46話 二条館防衛戦 後編

 一葉の御家流で多数の鬼が消滅される。だが、それでも次々と現れる鬼の群れ。

 

「一葉さまの御家流はすごいですが……乱発は出来ないですよね?」

「うむ、使えて一日に二回……といったところじゃな」

「ご自愛を。ただ、減ったとはいえ……」

「きりがないね」

 

 蘭丸の呟きに剣丞が答える。その言葉にうなずくと再び鬼と対峙する形になる。一時的なものであったとはいえ、態勢を整えることが出来たのはとても大きい。

 

「あともうちょっと……!もうちょっとしたら援軍が来る!みんな頑張ろう!」

「応っ!」

 

 剣丞の言葉に足軽たちが答える。

 

「ちっくしょう!絶対……生き残ってやる!」

 

 今のところは士気も低くはない。だが、この状況がいつまで持つか……。

 

「この調子なら大丈夫……」

 

 剣丞がそう呟いた瞬間、背筋が凍る。遠方から聞こえてきた鬼の遠吠え。

 

「剣丞さま!北門に鬼の姿を発見しました。数、五百です」

 

 小波からの報告に剣丞はうなずくと。

 

 

「蘭ちゃん!」

「はい、剣丞さまの判断にお任せします」

 

 蘭丸の言葉を聞いてすぐさま指示を飛ばす。

 

「(詩乃!)」

「(聞こえておりました。長柄上手を二十人、弓を十人、北門に移動させます。そちらにも何人か派遣しましょう)」

「一葉!鞠!」

「うむ」

「いけるの!」

「蘭ちゃんはここをお願い!俺たちは北に行く!状況次第で自由に動いていいから!」

「わかりました。ここは私が死守しましょう」

 

 

 

 どれだけの鬼を屠っただろうか。蘭丸と足軽たちの手によってぎりぎりのところで死守していた門だったが、ついに突破される。

 

「ひぃ!城門が突破されたぁ!もう駄目だ!」

「落ち着きなさい!ここは私たちが死守しなければ、日の本の未来も、私たちの護りたいものも護れません!」

 

 蘭丸の檄で何とか再び鬼と向かい合うが、じりじりと攻め寄ってくる鬼に襲われそうになる。

 

「私の仲間から離れなさい」

 

 一閃。足軽に襲い掛かっていた鬼を一刀両断すると、すぐさま陣形を整えるように指示を飛ばす。

 

「とはいえ……」

 

 一進一退……ではなく、明らかに一方的に攻め込まれる現状。

 

「せめて、指揮をする鬼が見つかれば話は変わるのですが……」

 

 もしくは、圧倒的なまでの力。……自らに剣の道を教えた人物を思い浮かべる。

 

「……今は、出来ることをやるだけですね」

「うわぁっ!?な、何だこいつ……っ!?」

 

 そんな声と共に陣形が崩される。蘭丸が驚きそちらに駆け寄ると明らかに異質な鬼が姿を現す。

 

「カッカッカッ!例の刀とは違うが、なにやら面白い匂いの女子ではないか」

「……中級の鬼……ですか。皆は他の鬼を!」

 

 刀を抜き、じりじりと距離をつめる蘭丸。

 

「鬼……鬼か。確かに見た目は鬼となったが、人の皮を被っていた頃より、甚だ気分は爽快よ」

 

 グッグッとくぐもった声で笑う。

 

「この釣竿斎宗渭に逆らいし、小童公方の頸を頂きに参ってやったのだ。有り難く思え」

「残念でしたね。公方さまはこちらにはおられません」

「カカカ!ならば貴様の頸を土産に小童公方のところへといってやろうではないか。ついでにあの小娘も殺して……」

「やってみなさい、下郎」

 

 宗渭の言葉を切るように蘭丸が言い放つ。

 

「所詮は人の身を捨てねば何も出来ぬ愚か者が、一葉さまや双葉さまを殺すなどと……!」

 

 明確な殺気が蘭丸から放たれる。

 

「怒ったか?残念だったな、泣いて、喚いて、怯えて顔を歪める公方の姿を見れぬのだからな」

「そうですね、貴方の泣いて、喚いて、怯える姿を一葉さまにお見せできないのはとても残念に思います」

 

 その言葉と同時に二人の刀が交差する。一合、二合と刀を交え互いに驚きの表情を浮かべる。

 

「ほぅ!?」

「っ!」

「なかなかやるではないか!人の殻を破れぬ愚かな人間の割にはな!」

 

 激しさを増していく二人の攻防であったが、じわじわと蘭丸が押されていく。

 

「人の殻、ですか。貴方が人を捨て、鬼となった理由はなんですか?」

「そのようなこと考えもせぬわ!だが、人を捨てたことで本当の意味での強者となれたのだ!」

 

 宗渭の一撃が蘭丸の頬を掠める。ぴっと蘭丸の頬に血が走る。ニヤリと嗤う宗渭に対してふっと口元に笑みを浮かべる蘭丸。

 

「何だ、気でも触れたか?」

「ふふ、確かに膂力などは恐るべきものですが……私の母や姉、師との修練などと比べる必要もないほど」

 

 ぶん、と刀を一振り。

 

「弱い」

「弱い、だと?強がりを。貴様はまだ一太刀も浴びせることが出来ていないではないか」

「そうですね。ですが、貴方は弱い」

 

 再び構える欄丸。

 

「織田家棟梁織田久遠信長が小姓、森蘭丸成利。鬼に名乗る必要性は感じませんが……此処からは我が名と主の名の元に」

 

 周囲の空気が変わる。それを感じ取った宗渭も警戒を強める。

 

「推して参ります」

 

 先ほどまで以上の速度で斬撃を繰り出す蘭丸に次は防戦一方になる宗渭。

 

「ぐっ!?貴様どこにそれほどの力を!」

「元からですよ。ただ、どれくらい中級の鬼がいるか分からない以上、力を少し出し惜しんでいたのは事実です。中級の鬼の力が分かった以上既に貴方は用なしです」

「何を……」

 

 ふっ、という呼気と共に振るわれた刀によって宗渭の刀は吹き飛ばされる。

 

「き、貴様っ!」

「語彙がなくなっていますよ?」

「ぐっ……かかれっ!!」

 

 宗渭の言葉と共に無数の鬼が蘭丸へと迫り来る。蘭丸がそれに対応しようと構えたそのとき。

 

「ははは、蘭丸よ。よい武者振りではないか!」

 

 懐かしくも恐ろしいほどの気を滾らせ、蘭丸と鬼との間を駆ける修羅。

 

「!まさか……!?」

 

 一刀の元に迫り来ていた鬼を切り捨てたのは信綱。蘭丸の師であった女性である。

 

「な、なぜ貴様が此処にいる!?」

「何、山より降りて昔なじみの弟子の下へいってみれば、なにやら大変そうではないか。色々と理由をつけてここに逗留していたんだが……まさか、私の存在に気付いていなかったとは。鬼になると頭が悪くなるのか?」

 

 最強の剣豪とまで言われている信綱にはさすがの宗渭も近づけないようだ。

 

「蘭丸、話は後だ。ここは私に任せて先に一葉と合流するといい。私はここのごみを片付けてからいくとしよう」

「……はい。信綱さま、お気をつけて」

「はは!この程度の相手であれば、何も気をつける必要はないがそうしよう」

 

 

 道中、蘭丸は屋形に入り双葉の元を訪れる。

 

「双葉さま、幽さん、ご無事ですか」

「蘭丸どの。こちらはご心配召されますな。もしものときはそれがしの身命を賭してもお守りします故」

「それでは困ります。お二人には幽さんが必要ですから。……双葉さまもご安心ください。我が師である信綱さまも合流しましたので、幾分かは余裕が出来たかと」

「信綱さまもこちらにお戻りになられていたのですね。蘭丸さまもご無事で何よりです」

「私はこれから北門へと向かい、一葉さま、剣丞さまと合流します。何かあればすぐに動けるようにしておきますのでそれをお伝えに」

「わざわざありがとうございます。お姉さまを……よろしくお願いします」

 

 

「一葉さま、剣丞さま!」

「蘭ちゃん!無事だったんだね!」

「はい。宗渭……三好政康がせめて来ましたが何とか」

「ほう、蘭丸が倒したのか?」

「いえ、決着の前に信綱さまが助けにきてくださって、私は一足先にこちらに来たのです」

「信綱……蘭ちゃんの師匠の上泉さんだっけ?」

「はい。それはそうと、現状はどうですか?」

「今のところは細い糸でなんとか持ってるような状態かな。詩乃が頑張って全方向に指示を出してくれてるからなんとか……」

 

 足軽たちも互いに声を掛け合い、ぎりぎりの精神を保っているような状況だ。圧倒的な戦力が合流したとはいえ、一人では限界がある。

 

「大丈夫だ。余が居る。鞠が居る。信綱も、剣丞も。蘭丸もだ。だからきっと大丈夫だ」

 

 一葉の言葉に剣丞と蘭丸はうなずく。更に増え、せめてくる鬼の数は八百。

 

「最後の一踏ん張りだ!みんな、気合を入れていくぞ!」

「応!!」

 

 二条の夜空に八百の鬼の猛りきった咆哮が木霊する。そのときだった。

 

「てぇーーーーっ!」

「てぇーーーーーーっ!」

 

 どこからともなく響く鉄砲の音と共に次々と倒れていく鬼。

 

「鉄砲の音!?それもニ方向からだ!」

「どこからだっ!?」

 

 剣丞と一葉の言葉と共に小波が降り立つ。

 

「ご主人様。正体不明の集団が乱入し、鬼の横腹に向けて一斉射撃をしたようです」

 

 

 小波の報告によると見えた指物は藤巴紋と藤巴と橘。それと八咫烏の紋をあしらった装束を纏った鉄砲隊だったという。

 

「藤巴……というと」

「播州・御着領主、小寺家の家紋ですな」

 

 蘭丸の呟きに答えるように姿を現したのは先ほど別れたばかりの幽であった。

 

「幽さん!?双葉さまは」

「双葉さまならば、南門の守備がそこそこ安定しているようで、エーリカ殿が護衛を名乗り出てくださいました。で、こちらに助勢に参ったのです」

「うむ。ならば手伝え。……しかしなぜ播州におる小寺の者が、余の加勢に入るのだ?」

「小寺の者というよりも、恐らくは小寺の客家老、黒田家の官兵衛どのでしょうな」

 

 幽の言葉に少し考える一葉。

 

「おお、確か時折余に献上品をくれていたあの官兵衛か」

「御意に。八咫烏の紋というのは、きっと烏たちが助けに来てくれたのでしょう」

「双方共に信用しても大丈夫なようですね。……鬼が崩れた今が好機です。剣丞さま!」

「応っ!!みんな、押し返せっ!!」

「幽よ、久方ぶりに舞うか」

「御意。我が児手柏を振るうとなれば、曽我物十番斬など如何でしょうかな?」

「なるほど。今宵に相応しい」

「おーい幽さーん!八咫烏隊到着だよー!へへー、公方さまの危機に駆けつけたんだから、お給金は弾んでくれるよねー!ねー!ねー!」

「雀か。やれやれ、相変わらずやかましいことで」

 

 幽の前に現れた少女はぴょんぴょんと飛び跳ねながら幽に言う。軽く頭を振りながらも苦笑いの幽。

 

「……烏よ。良く来た。これからも余を守れ」

「……(コクッ)」

 

 無言でうなずく先ほど現れた雀と似た少女はうなずくと同時に背負っていた鉄砲を構える。それは一般的な火縄を圧倒的に越えた大きさのものだった。

 

「な、なんだそりゃ!?」

 

 驚愕する剣丞。その大きさが彼の知るゲームの中などで見る巨大な……対戦車用のライフルと同じくらいだから仕方のないことだろう。

 

「準備は良いようだな。……では幽よ」

「はっ。相方仕る」

 

 目を合わせ、映し鏡のように同時ににやりと笑った二人が、鬼に向かってゆっくりと歩き出し。

 

 同時に地面を蹴った。

 

「なっ!?」

 

 驚きの声を上げたのは剣丞だ。声は上げなかったが蘭丸もまた、驚いていた。全力の蘭丸と変わらないほどの速度で駆け出した二人が鬼の集団へと突入する。

 

「あーん!二人だけで遊んじゃヤなのーっ!」

 

 そんな二人に続けとばかりに、鬼の方へと鞠も駆けていき、集団の中で刀を振るう。

 

「剣丞さま!私たちも行きますよ!」

「ちょ!?さ、さすがに無理だって!?」

「まぁあの公方と幽さんはあれでいいんだよー。だってあの二人、鬼強だもん」

 

 動揺している剣丞にそういった雀たち八咫烏の面々も突撃する。

 

 

 

「蘭ちゃん!」

「剣丞さま!後方が厚くなったようですが?」

「うん。後で紹介するけど、さっき一葉たちが言ってた黒田……小寺の人と、詩乃たちが合流して支援をしてくれる!」

 

 鬼を撫で斬りにしながら言葉を交わす二人。

 

「いやはや、鬼に囲まれた状況とはいえ、中々に風情のある光景ですなぁ」

「なの!まるで蛍みたいにぱーっとなって綺麗なのー!」

 

 激しい銃声の中、時折来る銃弾を避けながらの会話とは思えないと剣丞は呟く。そんな中に居る彼も彼なのだろうが。

 

「しかし、減りませんね」

 

 じわじわと狭まってくる鬼の輪。幾ら一騎当千の者が集まったとしても数の暴力には勝てない。

 

「蘭ちゃん!一葉、幽、鞠!一旦退こう!このままじゃ、包囲されてすり潰される!」

「剣丞さま、現状で退くのは下策です」

「で、あるな」

「一度、敵を押し返してからでないと、返す刀で背中を斬られるでしょうな。臆病傷は御免被りたいものです」

「じゃあ何で前に出たの!?」

「その場の勢い?」

「うむ。何事も勢いは大事であるからな」

 

 あっけらかんと言い放つ幽と一葉に愕然とする剣丞。苦笑いの蘭丸も否定しないことから実際そうなのだろう。

 

「あははっ!でもこうやってみんなで戦うの、楽しいね、剣丞!」

「楽しいって……鞠も暢気に言ってるなよぉ……」

 

 剣丞の言葉にくすっと笑った蘭丸が空を見上げる。

 

「ですが、剣丞さま。お忘れではありませんか?しっかりと聞いてください」

「流石は蘭丸であるな。余にも聞こえておるぞ」

「うん!鞠にも聞こえてたの!」

「それがしも、それなりには」

「聞こえる?」

 

 皆の言葉に首を傾げる剣丞。

 

「剣丞さま、耳を澄ましてください」

 

 

 心の底から嬉しそうな笑顔で蘭丸が口を開く。

 

「我らが主……久遠さまが来られます」

 

 

「あれは……っ!」

「ああ……!やっと……やっと来てくれた!」

 

 遠方から来る軍勢に気付いた詩乃とひよ子が呟く。

 

「武士の衣をかなぐり捨てて、鬼と変じたど外道どもが、一体誰に触れようとしているのだ!三好衆ぅ!」

 

 久遠の凛とした声が響き渡る。

 

「そやつは我の夫であるぞ!貴様ら外道の小汚い手で我の夫に触れること、我は許した覚えなし!掛かれ柴田よ!鬼五郎左よ!」

「「応っ!」」

「攻めの三左よ!槍の小夜叉よ!」

「「応っ!」」

「我が頼もしき母衣衆どもよ!」

「応!」

「はい!」

「おー!」

 

 すっと大きく息を吸った久遠が怒号を発する。

 

「蹂躙せよっ!!」

 

 

 その言葉と共に最速で駆け出したのはやはり森一家であった。

 

「行くぞクソガキ!」

「応よっ!母ぁ!」

「織田の家中が一番槍はぁっ!」

「悪名高き、森一家ぁ!」

「逆らう輩の返り血浴びてぇ!」

「槍を朱色に飾り立てーん!」

「喧嘩上等、鬼上等!森一家ぁ、腐れ三好に目にもの見せてやんぞぉ!」

「人の妹に手ぇ出してんじゃねぇぞっ!ひゃっはーーーっ!皆殺しだぜぇぇぇー!!」

 

 

「うわー……すごーい!」

「……なんですかアレは」

 

 驚く鞠と、若干ひいている幽。

 

「あはは……なんていうか、相変わらずだねぇ」

「あれは姉さま……天性の戦人ですよ」

「剣術とかしたことないらしいけどすっごく強いの!」

「強い、ねぇ。……押し返すというよりも、なんと言うか……虐殺してますなぁ」

「ははっ、森一家らしいよ」

 

 そう笑う剣丞。

 

 

 久遠たちの合流によって、戦況は大きく変わる。

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